あらすじ
平和の訪れたアースシーで、自分の持つ力をつきとめるため、大賢人不在の魔法の学院ロークへやってきた、ある少女の物語「ドラゴンフライ」。アースシー世界を鮮やかに映し出す短篇「カワウソ」「ダークローズとダイヤモンド」「地の骨」「湿原で」。さらに作者自身による詳細な解説を収録する。『ゲド戦記外伝』を改題。
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Posted by ブクログ
ゲド戦記、アースシーを舞台にした短編集だが、これは4と6と同時進行で読むか、4、5、6と順番に読むのがいいかもしれない。
作者がどうしてフェミニスト作家と呼ばれるのか、よくわかった。フェミニストといっても、エコロジカルフェミニストという範疇にはいるのではないだろうか。
女をどう描くかというのは常に挑戦のようなものではないかと思う。女の描き方は画一化されていたり、変に理想的だったり、添え物のようだったり、ヒロイン、登場人物として魅力的、オリジナリティがある人物像を描くのは難しいと思う。
しかし、ル・グウィンの描く女たちはどうだ。ファンタジーなのにリアル。等身大なのに奥底に何かとても価値があるものが秘められているような感じがする。どの女もそうだ。
「ドラゴンフライ」のアエリアンもそうだが、女は待ち、受け入れ、導き、そして自分だけで完結することもできれば、仲間とつながることもできる。根のように大地に広がり、揺るがない。支配ではなく連帯、男とでさえもそういうことができる。男は有史以来、女の支配しか頭になかったのに。
そういう不条理とそこからの脱出、解放を書いたのが、女の側から見たゲド戦記かなと思う。ゲドという英雄の物語ではあるものの、その英雄さえ魔法の力を失ってただのおじさんになり、力があると思われていた知の拠り所ローク学院が、実は女によって作られて女によって救われるっていうのが、象徴的である。現実の世界でままならないことをファンタジーの世界でやってのけ、かつそれが実現することを夢として描き出すというのは、まさに文学的だと思った。
Posted by ブクログ
ゲド戦記、読み終えた。どこかで読んだような。と思ったら、西のはての年代記と似た作り……いや。作者さんが同じだから似てて当たり前なのだけど、ゲド戦記から魔法と竜をぬいたら西のはての年代記になるのねと思った。
本編を終えてから、伝外を読んでよかった。『アースシーの風』を先に読むか、伝外を先なのか……迷った。結果。私は伝外を後にしてよかったと思った。
迷うのはこの伝外に帰還とアースシーの風の間の物語が入ってるから。時系列順に読みたいというこだわりがあるなら、伝外が先の方がいいのかも。……私、時系列よりもメイン重視。脇道の話は後からじっくり読みたい。
物語は5つ。
「カワウソ」
魔法の島、ロークの学院がどうやってできたのかという物語。最初のゲド戦記のようにあちこちに移動するのは楽しかった。そして、最初の成り立ちには女性たちの力が必須だった……というのを読みながら、でも権威が確立したら女たちを追い出してしまうのはえぐいなぁと思う。
「ダークローズとダイヤモンド」
魔法使い見習いと魔女の恋愛の物語。うーん。恋愛? 書かれてない部分が多すぎて、正直いまいちわかりづらい。
「地の骨」
地震を食い止めた魔法使いの物語。
地面の中の骨の描写が好き。この雰囲気すごく好き。魔法は結局よくわからないけど、こういう描写が好きだなぁ。
「湿原で」
最初の「影との戦い」を思い出してしまった。影との戦いは思いあがったゲドが影に追われる物語だったけど、これは思いあがった男がそれに破れ自分の愚かさに気が付く物語。追いかけてくるのがゲドだけど、結局ゲドは一人でロークに戻る。
「トンボ」
帰還とアースシーの風の間のアイリアンの物語。アイリアンがロークの学院に行き、ロークの学院でどのように過ごしていたのかが描かれてる。これはこれで面白いんだろうな。
「アースシー解説」
アースシーの世界の事があれこれ書かれてる。
今までの物語の設定を、アースシーの歴史に沿って説明してあるので、わかりやすかった。
これ、ゲドの物語だと思ってたけど違うのね。『アースシーの物語』だったのね……と思った。『ゲド戦記』というタイトルが紛らわしい。
世界設定が緻密だけど、あちこちの文化を入れてるなぁとわかるのが楽しいな。
ごちそうさまでした。