【感想・ネタバレ】世に棲む日日(三)のレビュー

あらすじ

狂躁の季節が来た。長州藩はすでに過激派の高杉晋作をすら乗り越え、藩ぐるみで暴走を重ねてゆく。元治元(1864)年七月に京へ武力乱入するが会津藩勢らに敗北、八月には英仏米蘭の四カ国艦隊と戦い惨敗……そして反動がくる。幕府は長州征伐を決意し、その重圧で藩には佐幕政権が成立する。が、高杉は屈せず、密かに反撃の機会を窺っていた。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

長州藩や高杉晋作が色々な出来事を経るたびに攘夷・佐幕・開国と立場がコロコロ変わっていくのが興味深い。また奇兵隊を作った高杉晋作が、自分のために奇兵隊を使わず、他の人間に運用を任せていたという点も興味深い。幕末を経て近代の日本の国家ができるまで、色々な人間が関わるため、日本の細かい歴史を知る点では非常に興味深く読むことが出来た。攘夷・佐幕・開国と揺れに揺れた長州藩が、最終巻でどうなっていくのか?。引き続き読んでいきたいと思う。

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2017年10月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

「藩の天地は俗論が満ちている」と、晋作は言い、いきなり「やるかね」と、言った。人を説得するにしても、晋作という男は鳥の声ほどの短さでしか言わない。あとは相手の目をじっと見、その精神から立ちのぼる気のうごきをみるだけである。
 山県は、天性、農民のように自重ずきで、軽快な行動力をもっていない。かんじんの軍略の才も二流で、志士であるために多少は必要な教養も歌学のほかになく、さらに歴史像をみる目も聴衆の未来を洞察するような目もなかった。ただ一つ、かれは人事の才があった。自分の隊内権力を安定させるための配慮はじつにみごとであり、この才があるがために隊士も自然この軍監こそ奇兵隊秩序の中心だとおもうようになっている。
 この時期、奇兵隊氏は二百人ほどであった。山県は、わずか二百人で、全藩士を向うにまわしてのクーデター戦争ができるとはおもっていなかった。山県は、そのことを言った。
「なるほど」晋作は、さからわなかった。かれはその生涯で一度といえども他人を説得したことがない。相手に気がなければそれでしまいさ、とつねにあっさり割りきっている。それに、藩論が佐幕に傾いた以上、いまさら二百人で決起したところでひとびとはついてくるまい、とも思っている。その点、山県と同意見なのである。ただ山県が、
ーー死に物狂いでやってみましょう
と、気を動かせば、その気をひっさらって雲をよび、雷電を鳴動させてみせるつもりはあった。が、あきらめた。

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2016年01月10日

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