あらすじ
手軽でお洒落。若者たちの間で流行っている薬「アイスキャンディ」の正体は覚せい剤だった。密売ルートを追う鮫島(さめじま)は、藤野(ふじの)組の角(すみ)を炙り出す。さらに麻薬取締官の塔下(とうげ)から、地方財閥・香川(かがわ)家の関わりを知らされる。薬の独占を狙う角、香川昇・進兄弟の野望……。薬の利権を巡る争いは、鮫島の恋人・晶(しょう)まで巻き込んだ。鮫島は晶を救えるか!? 直木賞受賞の感動巨編!
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Posted by ブクログ
3.8
新宿鮫シリーズ第四弾。
その手軽さから、若者の間に静かに浸透して行く新種のシャブ・キャンディ。
その販売ルートに、今までに無い違和感を感じた鮫島は、売人の容疑者を泳がせネタ元を辿ろうとする。
一方、ライブツアーに出た晶は、昔のバンド仲間・耕二の元に身を寄せるが、何とその土地はキャンディのネタ元・香川兄弟の一族が警察機構から政治家までを支配する帝国だった。
鮫島が最も恐れていていた晶に伸びる魔の手。
麻薬取締官との激しい争いも絡み絶対絶命の状況に。
Posted by ブクログ
若者たちの間で流行っている薬「アイスキャンディ」。
錠剤を口にすると、すっと頭が冷静になり、感覚が鋭敏になる。そして何よりも安い。
今までになく手軽でお洒落な覚せい剤の出どころを追う鮫島。
そして鮫島とぶつかる麻薬取締官事務所。
取引の主導権を巡って争う「アイスキャンディ」の卸元と、東京の暴力団。
地方の財閥一族の愛憎。
そして鮫島の恋人・晶の運命。
いくつもの物語が平行して動き出す。
徐々に終焉に向かって収束していく後半は、とにかく続きが気になって、本を置くことができない。
妨害されようと、時間が足りなかろうと、とにかく一歩一歩確実に犯人たちを追いつめていく鮫島。
しかし事態は一歩一歩では追い付けないくらいの急転直下を迎えるのである。何度も。
それでもあきらめない鮫島の姿を読むのは、とてもスリリングで楽しい。
物語の構成も素晴らしいと思う。
ただ、地方財閥の香川一族が…。
こわいもの知らずのやんちゃな次男という仮面の下は、自分に甘く自己中心的な進。
頭が切れて冷静な長男という仮面の下は、若い頃の心の痛手が消えることなく、屈折した愛情を抱えたまま破滅していく昇。
いやこれ、20代ならまだしも、いい大人がこのメンタルはダメだろう。
しかも、思い通りにことを進められるだけの権力を持っているときたら、それは社会の迷惑でしかない。
癒えることのない心の傷を抱えているからと言って、不特定多数の若者に覚せい剤を売ったり、他人の人生を踏みにじったり、家名に泥を塗ったり、何も知らない家族を醜聞に巻きこんだりする権利はない。
自分だけが悲劇の主人公のつもりなのか、いい年をして。
本気で読んでいたから本気で腹が立つ、彼らに。
メインストーリーがいいだけに余計。
それほどに面白かったということなのだけど。
香川一族、嫌いだな。破滅するなら一人でして、って感じ。