あらすじ
斉の君主の子・田嬰(でんえい)の美妾・青欄(せいらん)は、健やかな男児・田文(でんぶん)を出産した。しかし、5月5日生まれは不吉、殺すようにと田嬰は命じる。必死の母・青欄が秘かに逃がした赤子は、奇しき縁で好漢風洪(ふうこう)に育てられる。血風吹きすさぶ戦国時代、人として見事に生きた田文こと孟嘗君とその養父の、颯爽たる人生の幕開け。全5巻。(講談社文庫)
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Posted by ブクログ
前300年頃。孟嘗君は本名を田文と言い,戦国の四君の一人です(四君:孟嘗君,魏の信陵君,趙の平原君,楚の春申君)。
斉・魏・秦の宰相になり,食客を数千人も抱えていたそうです。薛の君主になったので薛公ともいいます。
田文の養父である風洪(ふうこう)、この本では,孟嘗君だけではなく,田文の養父の風洪(ふうこう)(大商人白圭)の話が半分ぐらいあります。その他に,公孫鞅(商鞅),孫臏(孫武とともに孫子と呼ばれる人)も登場します。
孟嘗君『人の命は,すでにあるものを守っていくというようなものではない。日々作ってゆくものだ。今日作ったものは明日には壊れる。それゆえ,いのちは日々生み出すものであろう。長生きとは,今日よりましな自分を明日に画いて今日を生きる。それしかあるまい。』
(追記)白圭『人に儲けさせてもらった金だ。人に返すのは当たり前だ』
白圭は儲けを慈善事業につぎ込んだ。白圭の商売は人を救う色合いが濃厚なため,いくら白圭が儲けても,人は彼を憎まなかったという。
(再読)
斉の田文いわゆる孟嘗君がその名声を高めたのは、魏の宰相としてついた頃からだろう。それは、仁というより、義を重んじた行動をしたことからだと思う。盟約を破らず、多くを望まず、戦争は最後の手段で、勝ってもほどほどにして憎悪を抱かせるほど勝たないということだ。春秋戦国時代で、正しいことを貫くのは非常に困難だ。猜疑心にまみれ、食うか食われるかの時代で正義を貫くのは凄いというより、愚かと言われるぐらいのことで、それを実行したのは、孟嘗君と晏子ぐらいだろう。これも、白圭、孫臏、商鞅、父の田嬰こと靖郭君などその時代の非凡な人に濃厚に接していたことも影響を受けているのだろう。
Posted by ブクログ
この度、宮城谷昌光の「孟嘗君」を読み始めました。
まだこの第1巻を終えたばかりですが、登場人物がそれぞれ個性的な感性を持っていて、面白いです。
またまた持病の睡眠不足が悪化しそうな本に出会ってしまったという思いです。
舞台は春秋戦国時代の末期、そのうちの前半あたりでしょうか。
史上初めて中国統一を成し遂げた秦の始皇帝が出てくる、その少し前の時代だと思います。
中国の各地にいろいろな国が乱立していて、歴史の教科書では何が何だかわからない時代のひとつですね。
物語の節々に、戦国時代の各国の情勢や現代人には馴染みのない言葉について解説がされています。
話の流れがぶった切られるわけで、嫌いな人は嫌いかもしれませんが、僕のような歴史初心者にはありがたい。
したがって、歴史小説はちょっと……という人でも問題なく読めると思います。
さて、全5巻のこの大作、これからどのように展開していくのか、ひじょうに楽しみであります。
そして第1巻の時点ではずっと赤子のままだった孟嘗君こと田文。
彼の成長と活躍にも期待がかかります。
余談ですが、行きつけの本屋さんに第1巻しか置いてなかったので、すぐに続きを読めないことが残念でなりません。
↓↓以下は自分なりに物語を整理するという意味で書いていて、大ざっぱにネタバレしてますので、未読の方はご注意。
第1巻は、孟嘗君(田文)の誕生と、彼の養父となる男、風洪(白圭)、そして革命的な大志を抱く青年、公孫鞅(商鞅)の登場から始まります。
物語の本流は、赤子の田文を連れた風洪一味の斉(東の国)から魏(真ん中あたりの国)、そして秦(西の国)にまで至る長旅。
その旅の果てでなされる公孫鞅の仕官が、第1巻の山場と言えるでしょう。
ひとつの旅を終えた風洪が、偶然にも田文の出生にかかわる人物に出会ったというところで、第2巻へバトンを渡します。
Posted by ブクログ
全5冊の1冊目ですが、宮城谷氏の小説の中では非常に読みやすい一冊。冒険活劇のノリに近く、構えずに気楽に楽しめます。
史記でお馴染みの人物も登場してきますので、小説の中の人物を通して
歴史の一端を垣間見ているようで、話に引き込まれていきました。
三国志以外の中国史に興味を持ち始めた方にオススメです。