【感想・ネタバレ】花の回廊―流転の海 第五部―のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年09月19日

凄惨な人間生活。
熊吾の激しさ(暴力と経済力)が、そして運が回復してきたように感じる。
それと対になる、蘭月ビルの人々の生活。破滅的な生き方をする者、他人の生き血を吸う者、そうした生活の中でも文化的に精神的に生きる者、ぐれずに育つ子供たちの純真さ。
人間と人間の打ち合いの中で鍛えられる伸仁。

コン...続きを読むプラや、多様性、パワハラはなどなどは、大切なことだが、他方でこうした人間との打ち合いによる鍛え方の機会をなくすのかも知れない。だが、果たして、人間のそんなものが無くせるはずもなく、綺麗事とお題目だけで、楽園を実現することもできない。自分の中にも、そうした闇はあるし。自覚できない中で。。
そうした人間への耐性をつけるというか、打ち合うこともどこかで大切なのかもしれない。それも、人間理解というやつか。。。私自身にとっても、そうした打ち合いは足らず、自身の闇にも漸く気が付き始めたところ。

人間の汚さ、怖さと共に、恩を返そうとする人間もいるという実相も描かれて、儚くも希望も感じさせる。
歴史の実相も折々に描かれていて、親や、祖父世代がどの様に感じて暮らしてきたのか、そんなことも追体験させてくれる。

解説を読んで、熊吾を主人公として人間を描くだけでなく、子どもの視点からのビルドゥングスロマン小説、芸術小説という二重性があるという捉え方を教わる。親子関係、もっというと人間関係とは、とは、こうした両義性を持つものなのかも知れない。同じ時代を過ごしていても、同じ現実に則していても、異なる実相にいるという、そうした捉え方を提示しているのかも知れない。

それにしても、厳しく育てながらも、最大限の本質的な愛の言葉である、お前の心根は綺麗だということを直接息子へ伝えるシーンがあり、熊吾と房江の伸仁への愛情深さを強く感じた。

会社の同僚と、家族ぐるみでの飲み会の時の、親としての顔を見て改めて、親子、家族というものの良い面を感じる。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2012年12月11日

流転の海シリーズ第5巻です。
中古車業連合会の計画がつぶれた後、大阪で駐車場経営を任され、家族三人がやっと一つ屋根の下で暮らせるようになるまでの経過と、それまで伸仁が暮らしていた蘭月ビルの住人の人間模様が描かれています。

この巻は特に、熊吾が今までかかわってきた人々との縁に助けられることが多く...続きを読む、因果応報を感じました。
情厚く義理堅く愛情深く、自分にまっすぐ正直に生きた人生が今の熊吾を助けているのです!!
人生ってそういうものよね、やっぱり。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2021年08月06日

富山での生活に見切りをつけ、大阪に戻ってきた熊吾一家。
しかし、信頼していた部下に金を持ち逃げされた事実は、熊吾の信頼までも失うことになり、夫婦は水道も電気も通っていない空きビルに暮らし、伸仁は熊吾の妹の家で両親と離れて暮らすことになった。
この、伸仁が暮らす蘭月ビルという2階建ての集合住宅が、今回...続きを読むのメイン舞台と言っていい。

ひと癖もふた癖もあるような住民が暮らす貧乏長屋は、伸仁の格好の遊び場であり、そこの複雑な人間関係は、伸仁の心の成長になにがしかの影響を与えたと思う。
そこに南北にわかれた朝鮮の人たちの思惑があり、一言を言い間違えれば命の危機が訪れるような緊迫感がある。

資金のすべてを失った熊吾は、中古車販売の夢をいったんあきらめ、モータープール(駐車場)の経営を知人に持ち掛け、その準備を請け負い、住込みの管理人として生活する。
しかしこれで終わる男ではないだろうから、時間はまた新たな展開を迎えるのだろう。

伸仁は体が弱く、学校の成績もそれほど良くはないのに、小さなころから町の大人たちの中でうまく立ち回ることができる。
それは人をよく見ているから、なのだろうか。
作家というのはこんなに小さなころからその芽をそっと育んでいるのだとしたら、勝てないなあと思う。
伸仁が生き生きと描かれているので、シリーズの中では一番好きかも。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2012年01月20日

1~5部までひろみさんに貸してもらって、一気に読んだ。
登場人物のキャラクターも話の展開も面白くて、読み終わってすぐに読み返したけど、2回目に読んだときは作者の思想とかが表に出すぎてる気がして、共感できなくなってきて4部の途中で読むのやめちゃった。
でも、人物のとらえ方とかはすごく鋭くて的を得ている...続きを読む気がする。「自分の自尊心よりも大切なものを持って生きにゃいけん」とか、覚えておきたい台詞も多い。
ひろみさんいわくもう6部が出てるそうなので、貸してもらえたら続きが読みたいなぁ。
熊吾親子がどうなるかが気になる。

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