【感想・ネタバレ】家計と世界情勢の関係がまるわかり! 暮らしと物価の地政学のレビュー

あらすじ

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石油・天然ガス・小麦・トウモロコシ・半導体…
重要物資をめぐる国際情勢が手に取るようにわかる!

ロシアのウクライナ侵攻を発端に起こった物資の不足や供給網の混乱。
加えて気候変動も影響し、世界的に物価が高騰。
さまざまな物資を輸入に頼る日本では、生活に欠かせないモノやサービスの値段は常に国際情勢や世界経済の影響を受けています。

本書では、21の重要物資をめぐる国際情勢を統計データや地図とともにわかりやすくビジュアル解説。
国際貿易において、各国のパワーバランスや利害、紛争、気候変動などがどのように影響しているのか――
物価高の背景も含めた世界のいまがわかります。

\ニュースの理解がぐんと深まる!/
世界が直面している問題をわかりやすく解説
◎ロシア産の原油がインドを経由してEUへ
◎ウクライナ侵攻で変化した世界の天然ガス市場
◎輸出される鉄鉱石の70%近くを買い占めている中国
◎レアアースの調達で脱中国を目指すアメリカや日本
◎肉類の消費拡大により飼料用としてトウモロコシの需要が激増
◎アメリカが日・韓・台と連携で中国への半導体規制を強化

各物資について、生産量・輸出量・輸入量のランキングや生産国・輸出国・輸入国それぞれの動き、日本の輸出入事情や国内での流通状況まで、統計データや図解をふんだんに使って解説しました。
人々の暮らしやビジネスにも大きな影響を及ぼす重要物資。
重要物資から見た世界情勢とともに、世界経済のしくみ、主要国を取り巻く地政学についても面白く知ることができます。

【目次】
第1章 世界経済のしくみ
第2章 国際貿易の基礎知識
第3章 現代世界の地政学
第4章 鉱物資源の地政学(石油/天然ガス/石炭/ウラン/鉄鉱石/リチウム/コバルト/レアアース/金)
第5章 食料資源の地政学(小麦/コメ/トウモロコシ/大豆/牛肉/豚肉/鶏肉/魚介類)
第6章 産業資源の地政学(半導体/自動車/綿花&衣料品/軍事兵器&防衛費)
第7章 人とお金の地政学

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Posted by ブクログ

「暮らしと物価」というと日用品などの生活雑貨について詳しく書いてあるのかと思いきや、勿論それにも関係するが、より根本的な資源についての本。データも新しく、資源ごとに分かりやすく整理されたページでの世界情勢に絡めたシンプルな解説も秀逸。読後、日常生活に影響するニュースへの感度が上がり、世界を見渡す力がつくかも。

ー 国家の安全保障は、主に「地域安全保障(狭義の国家安全保障)」「エネルギー安全保障」「食料安全保障」「経済安全保障」という4つの分野に分けられる。この4大安全保障を堅持することが国家運営の基本となる。日本はエネルギー自給率が13.3%(2021年時点)、食料自給率が38%(2022年時点)であり、不足しているエネルギー資源や食料は、外国からの輸入に依存するしかない。

先ず、この現状認識。分かってはいるが、軍事もエネルギー資源も食料も、日本は自国のみではやっていけない。一部で鎖国していた江戸時代に戻すべきという主張もあるが、この依存度をどのように調整できるか、調整する事が結果的に良策か否かがポイントだ。

私的ながら、いや、私的な書評ゆえ、自分が押さえたい部分を抜粋する。しかし、似たような本を読めば繰り返し出てくるものもあり、記憶力の頼りなさを恥じる。

ー 中国から欧州に至る航路において、中継地となる港湾の運営権および利用権を次々と獲得。パキスタンやアラブ首長国連邦、スリランカ、ジブチ、ギリシャなどの港に中国の船舶が自由に出入りできるようになった。しかし、スリランカは中国への債務の返済が困難になったことで港湾の運営権を移譲しており、中国の「債務の罠」に対する警戒感が各国で強まっている。

ー 海洋進出においてはシーレーンの構築とともに、シーパワーの獲得を目指している。アフリカのジブチに建設された港は中国にとって国外初の軍港であり、海軍の拠点を着々と拡大している。
さらに、インド洋の島国であるモルディブにも中国が進出。2023年11月に就任したモルディブのムイズ大統領は政策を転換し、それまで駐留していたインド軍が撤退。新たに中国から軍事援助を受けることで合意した。中国軍がモルディブに駐留することで、インド太平洋における中国の拠点はさらに拡大することになる。

ー 2021年末頃から1バレル70ドル前後だった原油価格は上昇傾向になり、2022年2月にロシアがウクライナへの軍事侵攻を開始すると、一気に価格が高騰した。これはロシアへの経済制裁でEUやイギリス、アメリカがロシア産の原油を禁輸にしたことが主な要因。世界の原油価格の指標となるブレント原油は、侵攻直後に1バレル130ドル超まで高騰した。その後、世界経済の停滞などもあって価格は徐々に下がっていったが、2023年に入り再び上昇。これはOPECプラスによる協調減産が主な原因となっている。OPECプラスとは、中東の産油国が中心のOPEC (石油輸出国機構)にロシアやメキシコなど10カ国を加えた枠組み。1960年に設立されたOPECは、供給量の調節などで原油価格の決定に大きな影響力をもっていたが、北米のシェールオイルが市場に出ると影響力は徐々に低下。そこで、2016年に23カ国まで枠組みを拡大し、影響力を取り戻した。OPECプラスは2025年末まで協調減産を継続すると発表している。

ー 欧米からの禁輸措置を受けたロシアは、経済制裁に同調しない中国やインドに対して原油の輸出を拡大。それぞれ14億人もの人口を抱える中国とインドは原油の国内需要が高いうえに、市場価格より安値で原油を購入できるため、ロシアからの輸入量を一気に増加させた。その結果、2022年のロシアの原油輸出量はむしろ前年比で増加し、2023年にはそこから若干低下したものの、ウクライナ侵攻前とほぼ同じ水準であった。中国とインドへの輸出だけで、総輸出量の80%以上を占めている。それだけでなく2023年には、インドなどからEU各国に向けた石油精製品の輸出量が急増していることも明らかになった。中国やインドにとっては、ロシアから安値で購入した原油の精製品を市場価格で売ることができるため、利益の残る貿易となっている。ロシアは中国とインドへの原油輸出量を増やすことで禁輸措置による影響を最小限にとどめており、ロシアの戦費を断ち切る目的は果たされていない。

ー 2011年にノルドストリームが開通した。欧州各国がロシアの天然ガスに依存する一方で、ノルドストリームの開通によりウクライナを経由するパイプラインのガス供給は半減。ウクライナではロシアとの外交カードの効力が低下した。2014年にウクライナで親欧米派の新政権が発足すると、ロシアはウクライナに侵攻してクリミア半島を併合。2022年にはより大規模な軍事侵攻が始まった。侵攻後はロシアからのガス供給が激減。同年9月にはノルドストリームが何者かに爆破され、さらなるがス供給の減少につながった。

ー 原子力発電の燃料となる低濃縮ウランを生産できる国は限られている。高度な濃縮技術を保有し、ウランの濃縮処理を低コストで実施できる一部の企業だけが、世界中の原発で消費されるウラン燃料を生産している。なかでも圧倒的なシェアを占めているのがロシアのロスアトムとその子会社である。原子力発電の発電電力量が世界1位であるアメリカも、ロスアトムから低濃縮ウランを調達している。

ー リチウムイオン電池の正極には、リチウム以外のレアメタルも使用されている。正極材は構成する鉱物の組み合わせでいくつかの種類に分類されるが、需要の高い三元系リチウムイオン電池やNCA系リチウムイオン電池には、コバルト、ニッケルなども必要となる。

ー リチウムイオン電池において負極材として使用される黒鉛(グラファイト)においても中国が世界で圧倒的な生産シェアを占めている。

ー 日本はリチウムの自給率がほぼ0%であるため、ほとんどを輸入に依存している。炭酸リチウムはチリから約70%を輸入。水酸化リチウムは中国から約80%を輸入している。日本でもリチウムの主要な用途は、EVやPHV(プラグインハイブリッド車)に搭載するリチウムイオン電池である。

ー リチウムやコバルト、レアアースといった重要鉱物の調達で脱中国に取り組む動きであり、IPEFの枠組みの中で安定した供給網の確立を目指していく。今後は資源の開発や精錬技術の提供などでも連携が期待されている。IPEFにはアメリカだけでなく、オーストラリアやインドネシア、フィリピンなど重要鉱物の主要生産国も参加しているため、鉱物資源の乏しい日本にとっては有益な枠組みとなる。

メモ書きはまだまだある。お腹いっぱいだ。

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2024年12月22日

Posted by ブクログ

エネルギー、鉱物資源、食料資源、産業資源など多様な重要物資を巡る世界情勢を図表や最新データを使って分かりやすく解説する本。
中身がびっしり盛り込まれているため、とても頭に詰められるものではないが、日頃、新聞やニュースで知る国際的な政治経済、地政学上の問題をじっくり再確認できた。
石油、天然ガス、石炭、レアアースなどの重要資源生産に占めるアメリカ、中国、ロシアのウエイトが高いこと、原子力発電の燃料となる低濃縮ウランについてロシアが圧倒的なシェアを占めていることが強く印象に残った。
また、気候変動のあおりを受けた「気候難民」が近年急増しているという事実は今まであまり意識していなかった。

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2024年12月05日

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