あらすじ
お花のかどわかし、そして熊吉も長年の同僚であった長吉との騒動も終わりを迎え、ぜんやの周りは少しずつ元の時間が戻りつつあった。だが時は落ち着くことを許してくれず、刻々と進みゆく。お梅と俵屋の若旦那の縁談、熊吉の出世話、そしてぜんやに転がりこんできたお転婆姫――。前を向き、進め若人! 一升飯が食えるほど美味い魳の塩焼き、華やかな盛り付けの京風弁当、体を芯から温めてくれる鯨汁。様々な場面で、料理が人を勇気づけます。傑作時代小説第五弾!
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Posted by ブクログ
今回は熊吉が奉公している薬種問屋俵屋の若旦那とお花ちゃんの友人である海苔屋『宝庄』の養女お梅の縁談話から。
俵屋に奉公していた長吉がお花を巻き込んで、大騒ぎになってしまったことから俵屋では婚礼話どころではなくなってしまい、六月もお梅は宙ぶらりんの状態。
そのための話し合いをぜんやですることになるんですが、お妙の料理を食べているうちに自然といい雰囲気になり、これからもぜんやで一緒に食事をすることに(*^^*)
ですが、ここで終わらないところが……。
二人が帰り、貸し切りの紙をお花が剝がしていると造りのいい駕籠がやってくる、そこから降り立ちたのは只次郎の姪で、大奥勤めをしているはずのお栄だった。
彼女は大奥で庭を散歩する将軍と出会い、閨に侍らぬかと言われて、暇を貰ってきたのだという。
後ろ盾もなく、一度寵愛を受けたとしても、二度あるとは限らない。大奥での出世を望んでいたお栄にはそれは耐えられないことだったというのが、いかにも只次郎の姪!(この辺りを詳しく楽しくお知りになりたい方は永井沙耶子さんの『大奥づとめ』をお勧めします)
ここから様々なことが動き出すのですが。
今回は本当にいい話ばかりなんですが、お花ちゃんが少し引け目を感じてしまうんですね。お栄は同じ年で学問がとてもできる、お梅ちゃんは俵屋へ嫁げば大店の女主人となってしまう。
そして、また熊吉も大事な薬を若旦那と共に作る立場へ。
熊吉もお花ちゃんも不安を抱えながら、前へ進んでいくのがいいなぁ。お花ちゃんが自分の口で夢を語ることができるようになったのも成長♪
この言葉は解禁してもいいなぁ、悩め、悩め、若者たち! たどり着いたところに目指したものがないこともあるけど、努力してきた道筋は跡をしっかりつけている。その跡は成長という名前がついている(*^^*)
楽しかった、癒されました。今回も素敵な一冊でした。