あらすじ
「エピローグ」では、主人公たちのその後が描かれる。彼らそれぞれに、どんな未来が待ち受けているのか……。訳者・亀山郁夫が渾身の力で描いた「ドストエフスキーの生涯」と「解題」は、この至高の名作を味わうための傑出したすばらしいガイド=指針となるにちがいない。【光文社古典新訳文庫】
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Posted by ブクログ
日本列島が最強寒波におおわれている頃、この凍てついたロシアの地で繰り広げられる物語もまた、クライマックスへーー。
昨秋から4か月におよんだ読書の旅も、ついに完結。
いやあ、それにしても長かった。
まずはおつかれ、私!!
3巻から徐々にスピードアップしていた展開は、4巻でさらに凄みをまして、5巻のエピローグまで一気読みでした。
ミーチャ、有罪になってしまったのか、うわあ……。
そしてイワンはこれからどうやって生きていくんだろうか。
それにしても話が長くて読むのが辛くて、途中で何度も投げ出しそうになったけれど、なんとか最後までたどりついたいま、この作品と出会えて本当に良かったと思っています。
なんとなく、最近は自分の経験のなかで、小説ってこういうものだ、というイメージをもっていたのですが、それを根底からくつがえすような構成と世界観。
はじまりがあって、事件がおこって、結末をむかえて、という流れに加えて、登場人物が話すごとに、頭の中に万華鏡のような球体が形づくられて、切り取り方や光の当て方でいくらでもキラキラと見え方が変わる。
人の心の、とらえどころのなさや危うさが、あますところなく表現されている。
運命のあやで無実の罪人になってしまったミーチャに、アリョーシャがかける、
「兄さんは苦しみを受けることで、もうひとり別の人間を自分のなかに甦らせようとしたんです。ぼくに言わせれば、一生どこへ逃げようとも、そのもうひとり別の人間のことをつねに忘れずにいるだけでいいんです……それだけで兄さんは十分なんですから。」
という言葉が好き。
苦難に巻き込まれた人の、怒りや絶望を絶ち切って、人生の主導権を自分自身に取り戻す意味が込められていると思う。
5巻は、約半分が訳者の亀山郁夫による解題でしめられているけれど、本編を読み終わってから読むと、これがまためちゃくちゃ面白い。
今回は途中で挫折することをさけるために、とにかく先へ進むことを優先して読んだけど、再読の際はもっとディテールに着目して読めたらいいなあ。
細部の描写で個人的に印象に残ったのは、最後の裁判でカテリーナやラキーチンの、風俗を生業にするグルーシェニカに対する差別心がむき出しになる場面。
ドストエフスキーの冷静な観察力に驚いてしまった。
それにしても、この重量の作品を読み通すには、2020年代に生きる身としては、学生時代に読むか、社会人の場合は生活上の何かの優先順位を下げて時間をつくらないと、かなりむずかしいと感じる。
私は学生時代(はるか昔)にカラマーゾフを読まなかったので、たまたまとはいえ、人生の中でこの作品に向き合う時間を与えられたのは幸運だったと思う。
めぐり合わせに感謝しよう。
そして同じく最後までたどり着かれた皆さまも、おつかれさまでした!!
さようなら、カラマーゾフの兄弟たち、また会える日まで。
Posted by ブクログ
完結巻。長い長い物語の終わり。訳者の解説で続編の存在に触れられている通り、シナリオとしては未完、アリョーシャの物語はまだ始まったばかりだ。それなのに読後は爽やかな気分になる。快晴の冬の朝のようだ。
劇的なシーンは前巻の裁判で最後であり、主要キャラクターの顛末を考えても決してハッピーエンドとは言えない。それでは物語の終わりと第二の小説への序章として必要だったのだと思う。
Posted by ブクログ
長い物語の中で、いくつもの父と子の関係が描かれている。
ヒョードルと実子たちと私生児
二等大尉とイリューシャ
血のつながりだけではなく、「父=教え導く者」としての関係性も散見される
長老とアリョーシャ
アリョーシャとコーリャ(コーリャに父がおらず、偏った考えで突き進むところも印象的)、こどもたち
そして、ロシア正教に基づく神と登場人物たちの関係
勤めを果たさない父を持った4人のカラマーゾフの兄弟のうち、外の世界に父を求めたアリョーシャだけが、精神の安寧を、救いを得たようにみえる。
最後のシーンでアリョーシャは、両親の元で幸せに過ごす幼少期の尊さを少年たちに説くが、今後の自分たちの繋がりを強調する。
両親に恵まれなくても、求めれば導きを得られ、精神を貶めず引き上げていくことはできる、という思いが込められているように読めた。
…しかし、面白かったけど長かった!
普通の会話でも登場人物が軒並み「!」と叫んでいて、エネルギー過剰、、とやや当てられて(嵐が丘でも同じ印象を受けた)さらにイワンの1人語り問答のわけのわからなさもあって、途中ちょっと停滞しました。
でもモームが紹介している中で「冗漫で読み飛ばすこともある(大意)」と書いていたので、そっか〜理解しきれなくても一度読み通してみよう、と少し気楽に付き合えました。
ロシア正教について予備知識があった方がより面白いかな、と初心者向けのキリスト教の本を併読したことで、ドミートリーの罪の意識などが多少理解しやすくなって良かったです。