【感想・ネタバレ】Yuming Tribute Stories(新潮文庫)のレビュー

あらすじ

いまも胸にのこる後悔、運命と信じたはかない恋心、忘れえぬ異国の光景、取り戻したかったあの瞬間の空気。そう、願いがかなうものならば――。メロディーを耳にしただけで、あの頃の切ない想いを鮮やかに甦らせてくれる永遠の名曲たち。不世出の天才シンガーソングライター、ユーミンのタイトルが、6人の作家によって新たなストーリーへと生まれ変わる。唯一無二のトリビュート小説集。(解説・酒井順子)

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Posted by ブクログ

ネタバレ

松任谷由実デビュー50周年記念オリジナル小集。全作書き下ろし。ユーミンの名曲タイトルから6人の女性作家が新たに奏でる小説のハーモニー。令和4年7月1日発行。

小池真理子 「あの日にかえりたい」(1975年)
桐野夏生 「DESTINY」(1979年)
江國香織 「夕涼み」(1982年)
綿矢りさ 「青春のリグレット」(1985年)
柚木麻子 「冬の終り」(1992年)
川上弘美 「春よ、来い」(1994年)

ユーミン世代ではないので、リアルに記憶にあるのは「春よ、来い」くらい。といっても、歌詞なんて気にしてなかった年頃だったので、いまいちよく分かっていない。本当は、曲を聞いて、歌詞を読んでからこの本を読もうと思っていたのだけど、まぁ、積読になってしまっていたので、ひとまず読んでみた。
ユーミン世代のお姉さまたちに読んでもらって、感想と解説を求めようと思う。
NHKのドラマでもやっていたのは知ってたけど、見逃したんよね。

以下、各小説ごとの感想。
「あの日にかえりたい」
1970年代に東京の大学に出てきた女子学生。恋?と友情のあいだで迷い、友情のために嘘をついたのに、気付かれて疎遠になってしまう。でも、年賀状のやり取りは続く。あの日、嘘をつかなければ、ずーっと大人になった今の2人の友情の形は違ったのかな。

「DESTINY」
30歳を過ぎた真面目だけど、マザコンなのでは?という男性の恋。きっとこういう誠実で真面目で、仕事も安定してるけど、恋愛下手な男性っていると思う。女性も然り。

「夕涼み」
結婚して子どももいる姉が、年の離れた妹の結婚をお祝いしつつ、結婚後に起こる、女性が抱える悩み、窮屈さ、夫婦関係の悩み・・・。そんな思いを妹がしなくてもよい結婚を姉は願う。敢えて海外で見た女性たちの様子を例えのように出しているのが、美しいというか、生々しくない。海外でも日本でも、女性が抱えるものは同じなのね。ちょっと切ない。切ないけど、この姉の願いが多くの人に広がって、何かが変わっていくといいな。

「青春のリグレット」
自分の方が相手を好きで好きでたまらなくて結婚した方が幸せなのか。それとも、相手の方が自分のことを好きで好きで大切にしてくれて結婚した方が幸せなのか。
私も思い当たる恋愛があり、んー、と考えてしまった。

「冬の終り」
地方の寂れた?スーパーのフードコートで働く女性。時々シフトが一緒になる女性のことが気になる(恋愛ではない)。ある時ユーミンの曲が店内でかかったとき、その女性と心が通じ合ったような、近づいたような気がして、スーパーの他のおばちゃんたちと深入りしないでおこうと思いながらも、行動は深入りしていて、ちょっとクスッとしてしまった。いいね、女の友情。これは女の友情だと私は思う!柚木麻子さんはこういう話うまいな~。

「春よ、来い」
実は一番よく分からなかった話。でも、私なりに解釈した。
知らない誰かのために、自分に与えられた特別な能力を使って、知らない誰かの幸せを願う。
きっと私たちの世界って、どこのだれか知らないけど、心のなかで「頑張れ!」と応援したくなったり、「この子の優しさがこの子を幸せにしますように」とそっと願いたくなったり、そういう小さな小さな誰かに対する優しい気持ちが集まって、巡りめぐって、自分にも幸運がやってきているのかもしれないと思う。

さて、近いうちに、ユーミンの曲を聞いてみよう。

0
2024年12月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ユーミンの曲からイメージした短編集
一流の女流作家ばかりなのでどの作品も興味深く面白かったし、贅沢だと思う。
最後の「春よ来い」が1番印象に残った
願いごとひとつ叶えられるとしたら、
自分だったら何にするだろ?
自分や身内、知り合い以外について願わないといけないという条件がつくと案外難しい。
でも思いついたらきっとわくわくしそうで楽しい思考だなと思った

0
2023年12月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ユーミンの曲を女性作家さん達がトリビュートし
創作された物語の短編集。
小池真理子「あの日にかえりたい」
まだ共同玄関や共同トイレが一般的だったころに
学生時代を過ごした主人公の郷愁の物語
既に老年に入った主人公が人生を振り返るような
切ない物語。短編の中に人生の流れがつまっていて
さすが小池真理子さんだなと思った。

桐野夏生「DESTINY」
村上春樹が愛読書の争いごとを好まない青年の物語
変わらぬルーティーンの中ではっと目についた
女学生に少し惑わされてしまうけれど、また
普段の日常に戻っていく。何も劇的なことは
ないのだけれどシニカルでとても良かった。
村上春樹とか山田風太郎とか主人公の愛読書が
渋いのが良かった。

江國香織「夕涼み」
THE、江國さん。
江國さん定番設定の仲良しの姉妹が出てくる。
主人公は姉の花、妹の結婚のお祝いに関東郊外から
都内の独身時代のいきつけの串揚げ屋さんに出てくる。
妹との会話の中で、重大な悩みではないけれど
少し心を重くする家族の悩みを反芻したり。
平和な姉妹のやり取りの中に差し込まれる花の
夫婦のやり取りの回顧がちょっとゾクっとした。
家族って平和とか安心の象徴と思われるけど
責任とか逃げられないとか閉ざされた重しも
含まれていてそういうことをとても上手に表現していて
幸せな気持ちとちょっと背筋が寒くなる気持ちが
両方感じられて読み物としてとても面白かった。

綿矢りさ「青春のリグレット」
柚木麻子「冬の終り」
この2編は軽く読んでしまったので特に感想はなく。

川上弘美「春よ、来い」
一番ページ数をとっていて短編の中に
永井カナコ38歳、上原多恵13歳、衣笠雄大29歳の
三人のことが交互に視点が変わって描かれている。
当初三人に接点はなく大人二人には秘密があって、
13歳の子供はいじめを受けている。
衣笠雄大のパートは少しユーモアがあってお父さんも
良い味だしていて、上原多恵ちゃんのパートは悲しいけど
どうにもできないむなしさ、子供の無力さが感じられ
でもそれでも頑張って毎日淡々と過ごしている
強さも感じられる。永井カナコさんのパートは
パートナーも含め皆優しさに満ちていて
とても良かった。最後ハッピーエンドってわけではない
けれど、焚火にあたるしっかりとした暖かさではなく、
白熱灯に手をかざした暖かさのようなふんわりじんわり
した余韻があって、少しだけ良い方向へ行きそうな
終わり方でとても良かった。
一旦全部読み終わってからもう二度も春よ来いだけ
読み直している。毎回じんわりと目が潤む、
そしてこれでいいんだよって自分のこと含め皆の人生を
納得できるような読後感。さすが川上さん。

0
2023年05月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

解説にも書いてあったが、ユーミンの楽曲はそれぞれの曲に自分だけの思い出と固執したイメージが伴う中、この人にとってのこの曲はこんなイメージなのかぁと新しい側面を見れて面白かった。
青春時代のすれ違いがリアルに描かれている「あの日にかえりたい」が一番好きだった。

数多くのユーミン好きに、あなたならどれを選曲するか聞いてみたい。私なら「リフレインが叫んでる」で書くだろうなぁ、なんて。

0
2025年06月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ユーミンを聴きながら読む、曲を小説に合わせて読むのは初めての体験。音からも世界の広がりが感じられて面白かった。

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2023年04月03日

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