【感想・ネタバレ】ラヴクラフト全集3のレビュー

あらすじ

幼い頃から天文学に興味をもちつづけたラヴクラフトは、広大な宇宙においては人類の存在など儚いという根本認識のもとに、死後オーガスト・ダーレスによりクトゥルー神話としてまとめられてゆく一連の小説群を執筆した。本巻には、時空を超えて存在する超知性体〈大いなる種族〉の姿を描く、まさにラヴクラフト宇宙観の総決算ともいうべき『時間からの影』をはじめ、アーカムやアブドゥル・アルハザードがはじめて言及される初期の作品から、ロバート・ブロックにささげた最後の作品まで全8編を収める。【収録作】「ダゴン」「家のなかの絵」「無名都市」「潜み棲む恐怖」「アウトサイダー」「戸口にあらわれたもの」「闇をさまようもの」「時間からの影」「資料:履歴書」「作品解題/大瀧啓裕」

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Posted by ブクログ

ネタバレ

1989年6月23日発行の11版。
訳者の大瀧啓裕氏はダーレスのことが嫌いなのか……。
「不肖の弟子」扱いなど個人的感情がくどいほどにじみ出ている。
あなたのエッセイじゃないのだから解説に個人的感情を入れるべきではないだろうに。

「ダゴン」
窓に! 窓に!

「家のなかの絵」
人肉食で無限のパワーを。

「無名都市」
狂える詩人アブドゥル・アルハザード。

「潜み棲む恐怖」
この巻で一番好きなお話。
怪奇!土竜男!

「アウトサイダー」
寓話的。
新たな物語の話型となっている点ですばらしい。

「戸口にあらわれたもの」
ほんとインスマウスの住人はろくなことをしない……。
結末を冒頭に持ってきた構成が秀逸。

「闇をさまようもの」
ラブクラフトの遺作。
無闇に廃墟に入るものではない。好奇心は猫をも殺す。
アザトホース、ナイアルラトホテップ、ヨグ・ソトホースと有名どころの名前が出るのも遺作らしい感がある。

「時間からの影」
〈大いなる種族〉の容姿がさっぱり想像できない。
言葉で形容できないところに真価があるのか。
次男がいい息子すぎる。ほんと父親思いやで……。

「資料:履歴書」
おまけ。
ラヴクラフトの「環境」がわかる。
黒人やタスマニア人を「生物学的に劣っている」と考えている点や彼のヒトラー評とムッソリーニ評は興味深いものがある。
特にムッソリーニに「敬服」していた点は現代から見れば眉をひそめてしまうが、ラヴクラフトの意外な一面として面白い。

総評。
雨、廃墟、屋敷がキーとなる話が多くおどろおどろしい感じが良い。
短編の集まりで長さ的にも読みやすい。
が、各話の途中で眠たくなってしまう。
ただ、繰り返しになるが解説での訳者のダーレス批判が目に付く。
嫌いというほど積極的な感情ではないかもしれないが、嫉妬に近い感情を持っているのかもしれない。
また訳者はラヴクラフトの作品群をクトゥルフ神話としてひとまとめにされることを快く思っていないらしい。
ラヴクラフト作品のことは自分が一番知っているんだと言いたげな文章が呆れを通り越して実に微笑ましい。

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2012年11月11日

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