あらすじ
太古の昔、全宇宙を支配していたという邪悪な神々は絶えてしまったわけではない。再びこの世を掌中におさめる時がくるのをいまなお待ちうけているのだ。本書は、悪夢のようなクトゥルフ神話を生んだ鬼才ラヴクラフトの全集第2巻である。宇宙的恐怖にみちた暗黒世界への鍵ともいうべき作品「クトゥルフの呼び声」そして「エーリッヒ・ツァンの音楽」魔神たちの秘密を知った青年を襲う恐るべき出来事を描いた、随一の長編「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」を収録。
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Posted by ブクログ
『肉体器官の作用が極度に均衡を失って…』『見る者をして、部屋の隅々から妖気の立ち昇る思いを感じさせるのだった』だの持ってまわった小難しい言い回しが多いのが著者(翻訳?)の特徴。おかげで「古風」で「変に不気味」で「妙なシズル感」がある文章。
その上長編でサラッと読むめない、序盤で何となくオチの予想が付く。けれど何回も読み返してしまう「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」。
特に後半のドロンドロンな展開が同じく後半の主人公であるウォレット医師の勇気と行動によって思わず読み進めてしまう展開にしているのがなんかいい。
Posted by ブクログ
「クトゥルフの呼び声」始まり、短編「エーリッヒ・ツァンの音楽」をはさみ、長編「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」で終わるこの第2巻はこれぞラヴクラフトという感じがした。
ちなみに、今のところラヴクラフト全集1~4巻までしか読んでいなく全部読んだわけではない。各話の軽い感想を書いていく。
「クトゥルフの呼び声」はまさにクトゥルー神話の原典ともいうべき話でクトゥルフを始めとする地球上に潜む人間をはるかに凌駕する者達の存在や、それを示唆する魔導書の存在、海底に沈む古代都市など、クトゥルー神話にとって重要な物々が一つにまとまった話である。地球に潜む秘密のあまりの大きさにSFでありながら、頭がクラクラする様な思いがした。
「エーリッヒ・ツァンの音楽」は怪談話の様な怖さがある話しである。主人公がかつて暮らしていた下宿で経験した奇っ怪な体験。命からがら逃げたし生き延びたものの、住んでいたはずの街は存在自体がなくなってしまっていた。あれは何だったのか、詳細が書かれずに読者は想像するしか無い。初めてラヴクラフトの作品を読んだ時に感じた感覚に似ている。都市伝説のような感じがする話しである。
「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」は長編である。本書の3分の2がこの話である。最初に結末から話し始めるという始まり方といい、魔術を利用した常識はずれの長寿を扱っているところといい「戸口に現れしもの」に似ている。まず本編は過去に生きた魔術師の暮らしぶりが、残された文献から得られた情報という形で現れる。更に、その魔術師を研究している青年、これがチャールズ・ウォードであるのだが、の人生についても本人からの証言や、記録などによって語られる。本編は一連の出来事に遭遇し、それに対応したある老医師の語りという形で語られるのである。
初めは、志半ば似て倒された邪悪な魔導師の一生が語られ、次にその魔術師の研究に没頭し、最終的に悲劇的な最後を迎える青年。その青年を救おうと、駆けずり回るも、自身も不可思議な出来事に巻き込まれ、全てを理解する老医師。それぞれの一生が事細かに、かつそれぞれの場面場面が自然と移っていく文章は素晴らしとしか言いようが無い。
最後現代に蘇った魔術師と、老医師の短いながらも緊張する対決シーンといい、ラヴクラフト不朽の名作と謳われるだけあって、見所満載の素晴らしい話しである。