あらすじ
ポールは、その予知能力をもってしても陰謀者の策謀を止めることができないでいた。彼に忠誠を誓っているはずのフレメン内部の裏切り、名義上の皇妃イルーランの暗躍に、死から蘇ったダンカン・アイダホの偶人〈ゴウラ〉を用いた計略――そんななか、ポールの愛妃チェイニーが帝座を継ぐ子を懐妊する。だが月が墜ちる幻視に苦悩するポールは、過酷な選択を迫られることに……。壮大な未来叙事詩、悲劇の第二部。解説/堺三保
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Posted by ブクログ
読み終わった直後の感想としては、ポールの最後は美しかった。
どうしたって予知で見た未来に抗えなく、その中でもより痛みの少ない選択をするように苦悩する姿からここまで多大な権力をもつ者でもこういう葛藤をすることに人間味を感じる。徳治主義から法治主義への移行についても一回読むだけだとあまりその意味はよく分からなかったけどキーワードとして引っかかった。
(あとがきにある専制政治への警鐘という指摘、腑に落ちた。)
上巻から匂わされていたチェイニーの死、その場面自体があっさり描かれてだったところも良かった。それによってポールの心情や子どもを守るためのポール陣営のそれぞれの動き、ポールの最後のシーンがより映える感じがした。
あとはポールとチェイニーの子供が男の子と女の子の双子だったことも鳥肌が立った。DUNEシリーズがSFの金字塔と言われること、スターウォーズもこの作品の影響を受けていることを元々聞いていたので、重なるところがあってゾクゾクする。結局は血統が統治の根幹。
ダンカンをめぐる動きにはヒヤヒヤしながらも、最終的な復活にかなりワクワクして、上下巻とも暗く悲しいこの物語に光を差してくれた。アリアとの関係に今後の期待あり。ダンカンは統治機構の中でどんな役割を担うのだろう。
印象に残った言葉
「すべての人間は干渉者なのだ」by スティルガー
「民は政府に従属するが、支配される側も支配者側に影響をおよぼす」アトレイデス家
まだ作品全体を咀嚼できてない感じ。
もう一回くらい読んでみてもいいかも。
最後に、訳者によるあとがき、良かった。
特にイギリスの清教徒革命でのクロムウェルとポールの物語が一致するとの考察(東インド会社はギルド、清教徒は禅スンニ派、議会はラーンスロード)は、なんかこういう流れって世界史で見たことあるような…というのを見事に解説している。また、世界観はイスラーム寄りであるのにポールの宗教政府で使われている用語はキリスト教のものが多いというのも面白い。教養があるとこうも読めるのか、こういう楽しみ方があるのかと刺激にもなるから、あとがきまで含めて良い。