芝健介のレビュー一覧
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ヒトラーの反ユダヤ主義は、当初は「異質な人種」としてのユダヤ人から「公民権」を奪い、最終的にはドイツから追放すべきであるというレベルだった。
ナチ党の世界観の本質的な構成要素をなす反ユダヤ主義については、『わが闘争』で、この「ウィーンでの修業と苦難の時代」においてみずからが「いままで内心で経験した最も大きな旋回」経験であったとして、新約聖書のパウロの「ダマスカス回心」にまでなぞらえており、「私は弱よわしい世界市民から熱狂的な反セム主義者になった」と印象的に跡付けている。
ヒトラーは、ドイツ民族にとって生物学的に劣った、危険な「人種」であると見なし、ユダヤ人を「寄生虫」や「疫病」に例え -
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[整然とした狂気]人類の歴史において、最も悲惨な形相の1つを呈したといっても過言ではないナチスらによるホロコースト。ともすれば「ヒトラーが反ユダヤ主義のために開始して……」と単直線的な理解になりがちなこの問題に、深く、そして複合的な視点からその原因や成り立ちを追った作品です。著者は、ナチスやファシズムに関する著書・訳書を多く手がけられている芝健介。
答えの出ない問題だとは思うのですが、それでも本書を読むと「なぜこんなことが」という疑問が次々と浮かんできます。本書の7割ほどが当時どのようにホロコーストに至ったかという事実でできあがっているのですが、「ナチスの閉じた理論内」ではその1つ1つのス -
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知りたくないけど、知らなければならない歴史の1ページ。
本書でも指摘があるように「ホロコーストはヒトラーが指示によるユダヤ人が大量虐殺」と思っていたが、事実は随分異なることがわかった。
経緯をざっくりまとめると、
・当初ナチスが目指したのはユダヤ人の追放
・ヒトラーが首相就任後、ユダヤ人からの諸権利剥奪、「アーリア化(ユダヤ人の公職追放や財産没収)」、国外追放開始
・政治犯、捕虜、障害者、エホバの証人(徴兵拒否のため)らとともにユダヤ人も強制収容所へ移送(飢餓や寒さ、衛生状態の悪さでの死者多数)
・強制収容所にて、主に軍需産業向けに強制労働開始
・ナチスドイツの占領地拡大にともない、域内の -
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戦争体験者がいなくなった時に、如何なる戦争責任論を以て、戦争を防ぐか。碩学の論文・討論集。
印象に残った点を二つ挙げる。
一つは、従来日本で語られてきた戦争責任論は、個人の体験・証言に依存したものであるということだ。個人の戦争体験は、圧倒的な迫力を以て聞き手の感性に訴えかけるものだが、普遍性に乏しい。論理的に構築された、普遍性のある戦争責任論を打ち出していく必要があると感じた。
もう一つは、「戦後責任」というワードは、韓国語に翻訳不可能であるという点だ。韓国では未だ朝鮮戦争が終結しておらず、戦後は訪れていない。世界を見渡せば、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争、ウクライナ戦争など、1945 -
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ホロコース関係の本は何冊か読んだので、わりと知っていることが多いのだが、その起源から、どのように拡大していったかということについて、バランスよくまとめてあって、頭の整理ができた。新書の入門書ではあるが、多くの本が出ていて、諸説がある問題なので、概説書として良いと思いった。
初版は2008年なので、その後もいろいろな研究が進んだと思われるが、最後の章でさまざまな研究の位置付け、議論の論点などがまとめてあるのが役に立つ。
こうして全体像を見てみると、改めて、ホロコーストというときに、アウシュビッツだけに意識がいってしまうが、それは絶滅収容所のある意味最終型であって、それ以前にもさまざまな形での -
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特にホロコーストに関しての書籍ではあるが、ホロコーストに至るまでの過程が概説としてわかりやすくまとめられているので、ナチス関係の入門書としてもわかりやすい。
またこうやって概説として歴史を知ることは、個々の出来事として知っていた点を、線として理解出来るのでとても助かる。
ヒトラーが政権を取ったからホロコーストが起きたなんて粗い話ではなくて、以前から反ユダヤ感情は高まっており、その反ユダヤ感情を煽るかたちでヒトラーが政権を取る。それに当初からユダヤ人を絶滅させようなどという考えはなく、他国に追放するというかたちを取ろうとしていた。だが、支配圏が広がることで当然ユダヤ人も増えていき、最終解決策と -
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必ずしも、はじめからユダヤ人の絶滅をナチ党が考えていたわけではない。しかし、占領下のフランスが、マダガスカルへの移送を当時のドイツに打診してきたように、ヨーロッパからの追放という形での対応があり、おそらくヨーロッパでのユダヤ人への抑圧はあったのだろう。ベロックの『ユダヤ人』を読んだあとだと、なまなましく感じる。
また、処分という名目で殺害されたのが、必ずしもユダヤ人だけではなく、優生学的見地から自国内の障害者や弱視者なども含み、ドイツが戦線を東に広げるに従って戦争捕虜を労働力に使い使えなくなると殺害していた。殺害されたユダヤ人600万人(推計)の上に独ソ戦の捕虜や、運動家、ボルシェビキなどが -
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ヒトラーという人物について、何者でもなかった若年期からその生涯を追い、過度な神格化や悪魔化をされがちなヒトラーの「正体」を見極めていく本。
様々な伝説や喧伝、はたまた罵倒や悪評に埋もれがちなヒトラーの等身大のラインを浮き彫りにしていく本と言えるだろう。
ヒトラーの歩みに合わせて、自然とドイツ第三帝国の興亡も辿れるので、そこらへんのドイツ史の通史的理解にも良い。
後半では本人死語のヒトラー評について解説しているが、『帰ってきたヒトラー』まで挙げられているのは少し驚きであった。
ヒトラー率いるナチスが国民に提供し、人気を博したのは「無責任さ」であったとする下りがある。他責傾向が増し、自身の持つ -
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ネタバレホロコーストの全体像を描き出した一冊。
「いずれにせよ本書を通して、ホロコーストというユダヤ人大量殺戮について、狂気に満ちた独裁者ヒトラーがアウシュヴィッツで行うよう命令し、実行されたといった直線的なものでは決してないことを理解して欲しい」(あとがき、P267)
ドイツ国内、ヨーロッパにあった反ユダヤ主義の雰囲気。
ユダヤ人位相→隔離→殺害と進んでいった様子が明らかにされている。強制収容所、基幹と支所、労働収容所、そして絶滅収容所へ。
ゲットーにおける様相の違いなど。
また、ユダヤ人のみならず捕虜・障害者・政治犯など様々な人々が非人間的な扱いを受けた。
「ゲットー」(Ghetto)ユダヤ人強 -
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恐ろしいタイトルですが、現実を見たいという気持ちがあり購入。
【現実、と書きましたが世の中には「ホロコーストはでっち上げだ」という説もありますが、そのあたりはそれぞれの考え方ということで。。。
僕は存在したと考えています】
おぞましい歴史、本当に信じられないようなことです。
これがただの作り話なら僕は興味ありません。こういうえぐいのは好きではないので。
しかし、歴史として存在すると考えると本当に辛い。
そしてこの虐殺とともに気になっていた点、それは
「なぜヒトラーという独裁者が誕生したのか?」
という点です。
いくら力があっても嫌われ者がずっと大将であるはずがない、とおもったからです。