あらすじ
戦後八〇年,戦争体験者がほぼ亡くなるという新たな状況が生じつつある.体験者の声が遠くなるなか,いかに戦争責任を問う議論を継承し,発展させていくことができるだろうか.これまで議論を牽引してきた世代,そして現代的観点から批判的更新を図る若い世代による徹底討議を中心に,未来へ向けて戦争責任論の可能性を開く.
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Posted by ブクログ
戦争体験者がいなくなった時に、如何なる戦争責任論を以て、戦争を防ぐか。碩学の論文・討論集。
印象に残った点を二つ挙げる。
一つは、従来日本で語られてきた戦争責任論は、個人の体験・証言に依存したものであるということだ。個人の戦争体験は、圧倒的な迫力を以て聞き手の感性に訴えかけるものだが、普遍性に乏しい。論理的に構築された、普遍性のある戦争責任論を打ち出していく必要があると感じた。
もう一つは、「戦後責任」というワードは、韓国語に翻訳不可能であるという点だ。韓国では未だ朝鮮戦争が終結しておらず、戦後は訪れていない。世界を見渡せば、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争、ウクライナ戦争など、1945以降も戦争は起こっている。戦争を過去のものとし、忘却に走らせる負の側面が戦後という言葉にはあるのかもしれない。
戦争は明白な人権侵害行為であり、決して発生させる訳にはいかない。「日本の戦争は間違っていなかった」などの矮小な議論に終始するのではなく、人類の最悪の犯罪行為を如何にして防ぐか。これについて考えるヒントが、本書にはある。