【感想・ネタバレ】ホロコースト ナチスによるユダヤ人大量殺戮の全貌のレビュー

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Posted by ブクログ

[整然とした狂気]人類の歴史において、最も悲惨な形相の1つを呈したといっても過言ではないナチスらによるホロコースト。ともすれば「ヒトラーが反ユダヤ主義のために開始して……」と単直線的な理解になりがちなこの問題に、深く、そして複合的な視点からその原因や成り立ちを追った作品です。著者は、ナチスやファシズムに関する著書・訳書を多く手がけられている芝健介。


答えの出ない問題だとは思うのですが、それでも本書を読むと「なぜこんなことが」という疑問が次々と浮かんできます。本書の7割ほどが当時どのようにホロコーストに至ったかという事実でできあがっているのですが、「ナチスの閉じた理論内」ではその1つ1つのステップが非常に「合理的」であったことに改めて背筋の凍る思いがしました。


〜第二次世界大戦前のヨーロッパには、構造的・文化的共通性があった。だが、それがいま失われつつある。そのなかで共通の記憶を考えたとき、大戦中のホロコーストの記憶ではないかという認識が広まりつつある。ホロコーストにまつわる記憶は決して均質ではないが、ヨーロッパ各国・各地域に遍く存在する。そしてそこには、犠牲者の追憶や人間の尊厳の回復への強い願いが見られる。〜

アウシュヴィッツを訪れたときを思い出した☆5つ

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2016年07月03日

Posted by ブクログ

余計な感情抜きに、ホロコーストの全体像を把握できる。細かい情報も軽く入ってるので、ここからもっと詳しく知りたいと思えるようになってる。
絶滅収容所と強制収容所の違いなど、結構知らなかったことがたくさんあった。
映画で主に取り上げられるドイツやポーランドの当時の状況ぐらいしか知らなかったけど、他のドイツ領となったところの状況ももっと詳しく知りたいと思った。

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2016年04月08日

Posted by ブクログ

特にホロコーストに関しての書籍ではあるが、ホロコーストに至るまでの過程が概説としてわかりやすくまとめられているので、ナチス関係の入門書としてもわかりやすい。

またこうやって概説として歴史を知ることは、個々の出来事として知っていた点を、線として理解出来るのでとても助かる。
ヒトラーが政権を取ったからホロコーストが起きたなんて粗い話ではなくて、以前から反ユダヤ感情は高まっており、その反ユダヤ感情を煽るかたちでヒトラーが政権を取る。それに当初からユダヤ人を絶滅させようなどという考えはなく、他国に追放するというかたちを取ろうとしていた。だが、支配圏が広がることで当然ユダヤ人も増えていき、最終解決策としてユダヤ人絶滅にシフトしていく。
システマティックにユダヤ人を殺害する過程もアインザッツグルッペンと呼ばれる移動虐殺部隊を利用した殺害から、ガストラック、ガス室への変化なども、効率化を図るという視点で興味深い。

ナチス関係の書籍は文庫や新書だけでもかなりある。ちくま文庫なんかにはより専門的なものもあったりするので、ここからいろんな本にアクセスするのも良いだろう。

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2024年05月01日

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必ずしも、はじめからユダヤ人の絶滅をナチ党が考えていたわけではない。しかし、占領下のフランスが、マダガスカルへの移送を当時のドイツに打診してきたように、ヨーロッパからの追放という形での対応があり、おそらくヨーロッパでのユダヤ人への抑圧はあったのだろう。ベロックの『ユダヤ人』を読んだあとだと、なまなましく感じる。
 また、処分という名目で殺害されたのが、必ずしもユダヤ人だけではなく、優生学的見地から自国内の障害者や弱視者なども含み、ドイツが戦線を東に広げるに従って戦争捕虜を労働力に使い使えなくなると殺害していた。殺害されたユダヤ人600万人(推計)の上に独ソ戦の捕虜や、運動家、ボルシェビキなどが上積みされる。
 ユダヤ人に対しては人種絶滅というお題目が掲げられ徹底的であったという特別な事情があるが、そもそも、命や人に対して情が薄い。一次大戦の戦後処理でドイツが経済的に追い込まれていたということはあるのだろうが、戦線が拡大し併合していく国のさきざきで、まず労働力としてユダヤ人たちが追い込まれていく。領土がふえれば、そこに住む人もふえるわけで、東へ向かってひろがっていく。ヨーロッパのイメージからドイツやその近辺のイメージが強いが、ポーランドや特にハンガリー系のユダヤ人の死亡者数も多い。現地の人々にユダヤ人を撲殺することが強要されたりと 占領下だったとしてもやらされた方だってたまったものでないのではないか。現地の人にしてみたら、隣近所の可能性だってあるのだから。 
 この本が書かれた時点ででてくる数字や史料によるのだろうが、官吏の作った記録帳などが、相当程度残っているようだ。膨大な紙の断片的記録があるのかもしれない。この本では、アウシュヴィッツだけではないホロコーストの全体像のあらましがわかる。
 歴史としてどう考えるかについても、その経緯について一章をさいてふれられている。いまなお、ヒトラーが最終決定権を握っていたのかは決着がつかず、多くの忖度があったかもしれないことは記憶にとどめておくべきだ。また、散発的な蜂起があったり、脱走に成功したわずかな人々が、助けを求める事実はあったが、実際に手がついたのはほとんど戦後といっていい。なぜ、こんなにたくさんの人が唯諾諾と殺されてしまったのか、また殺したのかはわからないことなど多い。
 
 
 

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2023年12月29日

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狂気に満ちた歴史の一言。ホロコースト、ナチスの残虐行為の歴史の全体像が見える。

社会の不満が積もったことでナチスの台頭を許してしまった歴史は、現代社会にも通づる部分がありそうな気がする。グローバル化や多文化政策の急進によって、労働者階級の反感が増したり、極右政党が誕生したり、過去の苦い歴史の懸念が頭によぎる。

加えて近年は新型コロナの影響もあり、不満のはけ口としてポピュリズム運動に拍車がかかる可能性も否定できない。まさに今このような歴史を振り返る必要性があるのかもしれない。

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2021年02月23日

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ホロコースト=ユダヤ人大虐殺だと思っていたが障害者や反逆者など、ユダヤ人以外も犠牲になっていたことが分かった。都合の悪い歴史を葬り去るのではなくきちんと向き合っているドイツを日本も見習わないといけない。

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2020年08月11日

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ネタバレ

ホロコーストの全体像を描き出した一冊。
「いずれにせよ本書を通して、ホロコーストというユダヤ人大量殺戮について、狂気に満ちた独裁者ヒトラーがアウシュヴィッツで行うよう命令し、実行されたといった直線的なものでは決してないことを理解して欲しい」(あとがき、P267)

ドイツ国内、ヨーロッパにあった反ユダヤ主義の雰囲気。
ユダヤ人位相→隔離→殺害と進んでいった様子が明らかにされている。強制収容所、基幹と支所、労働収容所、そして絶滅収容所へ。
ゲットーにおける様相の違いなど。
また、ユダヤ人のみならず捕虜・障害者・政治犯など様々な人々が非人間的な扱いを受けた。
「ゲットー」(Ghetto)ユダヤ人強制居住区 約400箇所
起源は中世ヴェネツィア。隔離・移動制限はあるものの、安全だった。
ワルシャワ・ゲットー、ウーチ・ゲットーなど。
ハイム・ルムコフスキ(ウーチ・ゲットーのユダヤ人評議会議長)
対ソ戦での苦戦→東への移送は無理となった。
ゲットーも受け入れられない状況。
ヘウムノ絶滅収容所1491.12ガス殺の始まり
(独:クルムホーフ)
「ラインハルト作戦」「ヴァンゼー会議」
「強制収容所」は1933年ナチ党政権獲得後に作られた。

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2016年02月23日

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ヒトラー政権によるユダヤ人政策の推移を解説する。
紆余曲折が順を追って解説される他、
ゲットーの仕組みや生活ぶりが興味深かった。
終章であるホロコーストと歴史学では
ホロコーストをどのように捉えるべきか
研究された成果を紹介しており、
より深く学んでみたいと思わされる。

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2014年05月17日

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 新書だったので、手に取りました。
 普通の市民の集まりが、こういう大虐殺を起こす。ある意味、今まで読んだ大量殺人の本より、怖い。
 もう少し、この方面の本を読んで行きたいです。

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2011年07月18日

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恐ろしいタイトルですが、現実を見たいという気持ちがあり購入。

【現実、と書きましたが世の中には「ホロコーストはでっち上げだ」という説もありますが、そのあたりはそれぞれの考え方ということで。。。
僕は存在したと考えています】

おぞましい歴史、本当に信じられないようなことです。
これがただの作り話なら僕は興味ありません。こういうえぐいのは好きではないので。
しかし、歴史として存在すると考えると本当に辛い。

そしてこの虐殺とともに気になっていた点、それは
「なぜヒトラーという独裁者が誕生したのか?」
という点です。

いくら力があっても嫌われ者がずっと大将であるはずがない、とおもったからです。

そしてこの本を読むと独裁に繋がるみちすじにある、強烈な「反ユダヤ主義」という【共通の敵を作る】組織論、そしてその組織論を成り立たせるためのホロコースト、このナチスのやり方がどれほど強烈かが伺えます。
虐殺は何があっても絶対反対です。

しかし誤解を恐れずに言うと、【ヒトラーの組織論】これは非常に興味深い。


この本を読んだ後に映画「シンドラーのリスト」をみると感動なんかではない、辛い涙が出てしまいます。

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2011年05月27日

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ネタバレ

[ 内容 ]
ヒトラー政権下、ナチ・ドイツによって組織的に行われたユダヤ人大量殺戮=ホロコースト。
「劣等民族」と規定されたユダヤ人は、第二次世界大戦中に六〇〇万人が虐殺される。
だが、ヒトラーもナチ党幹部も、当初から大量殺戮を考えていたわけではなかった。
本書は、ナチスのユダヤ人政策が、戦争の進展によって「追放」からアウシュヴィッツ絶滅収容所に代表される巨大な「殺人工場」に行き着く過程と、その惨劇の実態を描く。

[ 目次 ]
序章 反ユダヤ主義の背景―宗教から「人種」へ
第1章 ヒトラー政権と迫害の開始―「追放」の模索
第2章 ポーランド侵攻―追放から隔離へ
第3章 「ゲットー化」政策―集住・隔離の限界
第4章 ソ連侵攻と行動部隊―大量射殺
第5章 「最終解決」の帰結―絶滅収容所への道
第6章 絶滅収容所―ガスによる計画的大量殺戮
終章 ホロコーストと歴史学

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

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[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

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2011年03月30日

Posted by ブクログ

 ヒトラーが大量のユダヤ人をアウシュヴィッツで殺した、といった単純な理解を超えて、「ホロコーストの全体像を描くことを目的に、ナチ体制という加害者側から見た虐殺にいたる過程と殺戮の様相を記し」(p.265)たもので、反ユダヤ主義の背景から、ユダヤ人問題の「解決方法」が、追放→ゲットー→ソ連のユダヤ人の大量射殺→大量殺戮となっていくいきさつ、過程を詳しく解説している。ゲッベルス、ゲーリング、ハイドリヒ、アイヒマンなどナチ政策や虐殺の現場に深く関わった人物の解説もある。
 絶滅収容所と強制収容所というのがあったり、射殺が心理的負担が大きいとか、ホロコーストに対する歴史学の見方とかが印象的だった。特にゲットーに供給された腐ったジャガイモの話はひどい。マイダネク絶滅収容所の親衛隊員の話は最悪だった。また、掲載されている「行動部隊による殺戮」、「現地人による”ポグロム”」などの写真は衝撃だった。ただ、とても詳しいが、どちらかと言うとホロコースト研究の入門書という感じで、おれには難しかった。(13/08/21)

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2013年08月23日

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