天野郁夫のレビュー一覧
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2023/10/14 「大学の誕生」 天野郁夫☆☆
大学に職を得て初めて読み解ける。新たな経験の有り難さ。(日赤も然り)
本書は長く本棚に在ったが、Parisツアーでソルボンヌ大学に触れ、ヨーロッパにおける大学の成り立ちを考えたことから本書を手に取る。
するとこれが面白い、作者の筆力に感嘆!
一橋大学経済―東大院のキャリア アイセックの先輩を想起した。
大学制度の歴史は「国家そのもの」
伊藤博文と森有礼は、「憲法」と「教育」を国家の骨格とした
①大学 リベラルアーツ哲学+法・医・神 バカロレア資格 研究と教育
②専門学校グランド・ゼコール 工学・農学・商学 -
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帝国大学の歴史は即ち長男・東大の歴史でもあるが、九大の教員としては、帝国大学の四男坊・九州大学を中心に読んでみると、長男と四男との制度的格差を痛感できる。シビアな言い方をすれば、帝国大学そのものも、戦前の家父長制の中に位置づけられていたと言える。
7帝大の創設時期をマクロ的な日本経済史に大凡位置付けてみると、東大(1886年)は企業勃興期、京大(1897年)は日清戦後期、東北大(1907年)と九大(1910年)は日露戦後期、北大(1918年)は大戦景気、阪大(1931年)と名大(1939年)は高橋財政から戦時経済期に相当する。したがって、同じ「帝大」であっても、それぞれの創設や学部の新設過 -
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ネタバレ[ 内容 ]
日本の大学はどのような経過をたどって生まれたのだろうか。
そのダイナミックな展開をつぶさに描く本書の下巻は、東京と京都の帝国大学との距離を縮めようとして、官立・私立ともに専門学校などの高等教育機関が充実してゆくありさまを見る。
帝国大学はその数を増し、一方で、専門学校はそのなかに序列を生じていった。
そしてついに、大正七年の大学令の成立により、現在につながる大学が誕生するのである。
[ 目次 ]
第6章 「東西両京の大学」
第7章 帝国大学への挑戦
第8章 興隆する専門学校
第9章 序列構造の形成
第10章 「大学令」の成立
エピローグ 大学の誕生
[ POP ]
[ お -
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片手間に読んでたので全部読むのに半年近く時間がかかってますが、新年一発目の出張に行く途中のTG641機内でやっと上下巻全部読み終わった。新書で上下分冊というやり過ぎ感を著者も反省していらっしゃるようなのだが、そりゃまあ、第一人者がこんだけ「大学が誕生するまで」について気になっている諸々を書いていたらこの分量にもなりますよねえ、という内容。
それにしても充実した内容で、およそ「大学というシステム」について一度でも興味を持ったことがあったら、非常に面白い本だし、読んでおくべき本ではないかと。取り扱っているのは大正末期ぐらいまでの、1930年体制前までの話だけれど、出てくる議論がいちいち、今も似た -
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近代教育史の大家による、明治時代を中心とした学歴社会の形成史。概説というよりは専門的であり研究所というには平易で選書レベルなのかと思っていたらもとは選書。なにより、注があるのありがたく、教育史研究に臨む際の手引きとしてもすぐれている。やや古い感はあるが、日本の教育がなによりも実業などの必要に応じて(各省分立的に)急ピッチで形作られてきたこと、その再編成の起点として森有礼の「国家ノ須要」による統合が設定されることで一つの頂点がつくられ以降私学や地域の挑戦を受けつつも基本的には官尊民卑の風潮を色濃く持った教育空間が形成されてきたことを跡付ける。
特に自分の関心でいえば教員社会の章で、師範学校は普 -
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天野さんの著作ではかなり読みやすい。
帝大の設立と発展については別の作品でも触れられているけど、教授会と大学の自治、学問の自由を賭しての文部省とのやりとりが分かる。でも文部省とは戦えても財務省には手も足も出ない。泣ける。
関係ないけど、
本郷には東大に足跡を残した先人の14の銅像がある。なかで山川健次郎の胸像だけが見下ろす位置に設置されており、かつ没後数十年後におこされている(他の人はたいてい没後3年後くらい)。山川は学問の自由を守った総長で、かつ東大と京大の総長を兼任したほどの人物なのだが。これって山川が会津藩士だったから?じゃないよね。 -
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ネタバレ東京大学が帝国大学になり、また東京帝国大学になっていった背景でなぜ変遷を辿ったのか、その中で、教育とは?大学とは?で英米仏独など各国の大学を参考にしようとした背景・・・興味深いものがあります。そして明治時代の帝国大学の士族・平民別の学生構成割合などは当たり前でしょうが、士族が多いということに改めて新鮮な印象を持ちました。そして法学校が明治・中央・法政と誕生したが、各々が米・独・仏法を専門としていたということは全く初耳で、これも面白かったです。帝国大学以外の専門学校群が大学となる経緯も今から考えると不思議な気がします。帝国大学以外では札幌農学校と東京高等商業専門学校の2つが学士資格を与えていたと
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ネタバレ[ 内容 ]
日本の大学はどのような経過をたどって生まれたのだろうか。
本書は、その黎明期のダイナミックな展開を二巻にわたって、つぶさに描くものである。
上巻では、明治一〇年の「東京大学」の設立と一九年の帝国大学誕生の成立から説き起こす。
その後、帝国大学が自己変革していくさまと、帝国大学に対するかのように生まれる官立・私立の専門学校の隆盛へと物語は進んでゆく。
人と組織が織りなす、手に汗握るドラマ。
[ 目次 ]
プロローグ 帝国の大学
第1章 帝国大学以前
第2章 帝国大学の発足
第3章 帝国大学の整備
第4章 専門学校群像
第5章 「私立大学」の登場
[ POP ]
[ おすすめ -
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分量に圧倒されながらもなんとか読み終えた。
今日の諸問題に解決を試みるときに、大学が歩んだ歴史を参照することは有効な手立てだろう。
以下は、大学職員として意識しておきたいこと。
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明治後期の高等教育機関の設置は、ヨーロッパの産業の発展を見て、
日本も科学専門教育の拡充を意図した。
特に帝国大学は取捨選択の末、ドイツ型への大学に一歩を踏み出した。
札幌農学校の例をみてもそう。P.65
慶應義塾はリベラルアーツを実践。
P.128
修養のための大学 菊池大麓
大学に「修養に重きを置くもの」と「学術技芸の専攻に重きをおくもの」の2種を設ける。この2種を兼ねさせることもできる。
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藩校や寺子屋から、東京大学や各地の帝国大学へかわっていったのか。
私塾がどのように大学に変わったのかわかる。
発足当初は明確な理念、富国強兵、殖産興業を旗印に国づくりに必要な人材を育成する、欧米に頼る人材を国内に輩出することを目的として大学は設置された。
その後制度が整備される反面、各大学の個性は薄れる形に。
国立大学が国立大学法人となり、改めて大学はなぜ存在するか、大学の総体ではなく個別のアイデンティティが問われるようになる。現代の大学の位置付けを考えるための一助になればと思い本書を手に取った。解は得られないが歴史は非常に面白い。ある意味本書は会社で言う創業者の思いを伝え聞くようなも -
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旧帝大として現代まで生き続ける帝国大学の歴史について、時代背景を交えながら詳細に解説する新書。
設立の意図、莫大な費用などがありありと描かれており、大学の設立が明治の初めという時代の一大事業であったことが良くわかる。
「大学をつくる」というのは現代でも別の意味で困難であるのだろうが、帝国大学においては全くのゼロからのスタートでありながら、国家の存亡をかけた事業としての位置付けであり、どれだけ困難でプレッシャーがかかった事業であったかを知ることができた。
もう少しページ数を増やして、学生の声を登場させてくれるとより理解しやすかった気もする。 -
Posted by ブクログ
「歌のわかれ」などを読んでて、主人公が四高で進学と試験とで四苦八苦してる描写があるのですが、そこらへんの制度がよく理解できてなかったのです。(今の東大の教養学部、高校とどう違うのか的なところが…)
今回のこの本、知りたかった旧帝大の設立の歴史や、一高をはじめとする高等学校・大学予科辺りの話が書かれてまして良かった。(ただし、制度や定義がしょっちゅうグルグルかわるので、文字だけの説明だと理解が追いつかない。つど図示して変更前後の対応などを整理して欲しいレベルのややこしさ…!)
その他、夏目漱石のお弟子さん達が教授になったり海外留学してたりした時期の大学の事情や、漱石が断ったことで有名な推薦博士制