内田幹樹のレビュー一覧
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飛行機の故障によって、飛行機がコントロールできなくなる
ということは、あり得る話である。
どうやったら、その故障を 故意に行なって、
その故意性を、隠蔽するか と言うことが重要だ。
ある意味では、空飛ぶ 密室殺人事件のようなものだ。
大気の圧力を測るスタティック孔(static hole 静圧孔)を塞ぐことで、
操縦不能となると言うことが、この物語の鍵を握る。
スタティック孔が、塞がれることで、計器のデータが狂ってしまう。
つまり、飛行機の状況把握ができなくなり、
コンピュータの故障と理解して、違った操作をしてしまうことで、
失速して、墜落する。
女性パイロット1号になる予定だった ノゾミは、
空間識失調(バーティゴ)になる恐れをもっていた。
そのために、優秀な成績を収めたが、パイロットになれず、
事故の調査分析のシゴトをしていた。
2人の機長とひとりの副機長のうち 機長二人が原因不明の病気にかかり
副機長の江波が ひとりで ワシントンまで飛ぶのを日本にもどることに変更した。
そして、操縦不能となった時に、ノゾミが 操縦不能の原因を推定して、
江波と連絡し、そして、シュミレーターで、その操縦のアドバイスをする。
幾度も危機に陥りながらも 危機を切り抜けていく ノゾミと江波。
最後は ノゾミの教官だった 滝内の誘導によって、無事着陸をする。
その展開が 実にスリリングで、ノゾミの中での葛藤の描写がすごい。
実におもしろく、一気に 読み切ることができた。 -
Posted by ブクログ
実際にANAのパイロットだった著者が、パイロット物語。
成田から 雪の吹雪くニューヨークまでのフライトの中で、
新米機長 村井、ベテラン機長 大隅、そして 査察を担当する氏原。
3人をめぐって、村井と大隅の視点で 物語られる。
氏原に対する 村井の 風評からの人物評価。
そして、査察と言うものが どんな意味があるのか?
チェックされて 機長の職位が
剥奪されてしまうという心配から、緊張する。
一方で 村井は 職人気質なところがあり、
コンピュータの指示に従うよりも
自分の技量で 美しく着陸すると言うことにこだわる。
大隅はベテランであり、パイロットの教官だったりしたので、
チェック項目は ある程度心得ている。
コンピュータ操縦といえども、自分の身体で、
パイロット技術が染み着いている。
その技量がさりげなく発揮される。
『コンピューターは計算が速いが五感をもっていない。
空を見て雲を読み、位置を考えて風を知る。
高度と速度とパワーを決めて飛ぶ。それが、パイロットの基本だ』
氏原は、胃を痛めていて、インスタントなどは受け入れない。
無口で、無表情で、評価は厳しい。
しかし、物語が進んでいく上で チェックは教育の一環であり
機長は 前ばかりではなく、後ろに気を配ることが大切と語る。
フランスでは、コーヒーのことを
『悪魔のように黒く、地獄のように熱く、恋のように甘い』
ブラジルでは、いいオトコのことをコーヒーという。
『黒くて、熱くて、眠らせない』
乗っている飛行機のコックピットで 機長がどんなことを考ているのか
そのことが、リアルに語られていて、面白かった。 -
Posted by ブクログ
飛行機好き、旅好きでよかった!
エアライン好きなら絶対に読んだ方が良い!と断言できる名著。まぁ飛行機嫌いの方は読まない本だと思いますが。。
旅客機が出てくるストーリーものと言うと、やれハイジャックだ、やれ事故だ、やれ出発空港に引き返すだの。もちろん、何か起こるからこそドラマが生まれるというのはその通りではあるのですが。
しかしこの小説は、普通に飛行機を飛ばすという話。それにもかかわらず、ここまでのめりこんで読めて、ここまで感動できる、ということを示したもの。深くパイロットという仕事を知る内田氏だからこそ描けるドラマを堪能しました。
ストーリーは、成田からニューヨークに向かうANAそっくりの架空の会社の便の話で、新米機長が査察を受ける「チェック・フライト」に臨むというもの。
絵に描いたような査察官のチェックを受けながら、新米機長と、老練の先輩機長の2人の目線で進むストーリーが絶妙で、なるほど若手とベテランの目線の違いってこういうコトかと感心させられます。後半では査察機長の目線のくだりがあるかなと期待してたのでそこはちょっと残念ですが、終盤で内容はカバーされます。
査察を受けるという設定があることで、エアラインの専門知識の説明を上手く話の中に組み入れているのがこれまた巧妙なやり方。頭で想像しながらでも全てを理解して読むのは難しいですが、100%まで理解しなくとも十二分に楽しめました。
また、航空会社パイロットという仕事の特徴として、仕事のパートナーとなる同じフライトのパイロットが毎回違う、ということがあると思うのですが、そんな環境下でも息を合わせてフライトを遂行していく醍醐味のようなものを、本著を通じて感じ取ることができるように思います。
普通のデスクワークをしている自分ですが、このような要素は自分の日々の仕事でも活かせるのかな。
また今度、ロングフライトに乗る時に機内で再読したいなぁ。冬のニューヨーク線が理想だけど。 -
Posted by ブクログ
『機長からアナウンス』で有名な元全日空の機長内田幹樹さんの航空小説。
1997年の第14回サントリー・ミステリー大賞で優秀作品賞を受賞した作品。
以前にも書いたが、わしは航空モノにヨワイ。
ヨワイったらヨワイ。
飛行機を知り尽くしている人が書いているだけに、
機内の様子は迫力に満ちているしリアルな恐怖。
何ヶ所か飛行機好きの急所をつくところがあって、
そのたびに涙ボロボロ。
電車の中で人目も憚らずウルウル。
そういえば何年か前TBSで放送されたキムタクのドラマ『グッドラック』でも、
急所を突かれまくりで毎回ウルウルになってしまったっけ。
パイロットと管制とのやりとりもホンモノの言い回しだから、
リアルだしわかりやすい。
翻訳の航空モノでまずコケるのは、このパイロットと管制とのやりとりの場面。
知識のない翻訳家が意味をわからないまま訳すものだから、
よけいわけのわからない訳になってしまう。
おそらく編集者もわかっていないから違和感だらけの訳もスルーされてしまう。
これまで何冊か翻訳の航空モノを読んだけど、
今のところズッコケ率は100%。
これから航空モノを訳す方がいらっしゃったら、
訳す前にぜひ内田さんの小説や専門書を当たってホンモノに触れて欲しい。
できれば、ホンモノのやりとりを聴いて欲しいところだけど、
そこまでは望みますまい。
素人の方でも、ユナイテッド航空の機内オーディオで聴けるので、
乗る機会があったら興味のある人は試して欲しいな。
というわけで、
日本に航空モノの作品が少ない理由がわかったような気がした。
一夜漬け的な付け焼刃の生半可な知識で航空モノを書こうとすると、
あちこちにボロが出てしまうにちがいない。
ただでさえ最近の航空機はハイテクのカタマリである。
甘い気持ちで挑戦すると痛い目に遭うかも。
航空業界出身の作家がこれからいっぱい誕生してくれるとうれしいのだが。。
ちなみに、
『機長からアナウンス』によると紅のタヌキこと砧機長のモデルは実在するらしい(笑)。
それと、
マイケル・クライトンの『エア・フレーム』について、
内田キャプテン(笑)の伝え話によって登場する場面があるので、
マニアの方は発見したらこっそりニヤニヤしてください。 -
Posted by ブクログ
この小説は、航空サスペンスではない。
しかしながら、オビにある最高傑作の文字は紛れもない真実だと思う。
この小説は、新人機長の北米路線の査察飛行という日常がテーマであり、実際に物語の進行に合わせて機は成田を飛び立ち、若干降雪で進入待機がかかるもののJFKに無事に着陸するという乗り合わせた乗客であっても平凡なフライトを取り扱っている。
しかし、この小説の中には有償飛行を行うパイロットの心得とか、若年管理職と年配部下の微妙な人間関係や査察を受けるパイロットの微妙な心理などが複雑に絡み合いなんとも緊迫感のあるコックピットを描写している。
そして、圧巻はJFKへのアプローチ。
毎回こんな緊張ではないとしても、手に汗握るランディングシーンを描ききる。