鶴見太郎のレビュー一覧
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本書は歴史的にあまり着目されてこなかったロシア・シオニズムの成り立ちと特質に光を当てるものだが、その焦点は西欧・アメリカ・更には現代イスラエルにまで届く骨太な論考だった。
主な個人的発見としては以下。
・ナリョナリズムの大家や社会学者にユダヤ人が多いこと。これは間接的にユダヤ人のアイデンティティが影響しているものと推察できる。
・シオニズムはむしろディアスポラの中で他民族と対等にふるまいたいための手段と捉えられている向きが強く、パレスチナに行くことが全てではない
・ヨーロッパの東西、政治・社会・文化に対する捉え方の違いから、シオニストと言っても多数の派閥が存在していた
読みながらアリソンの「 -
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2025年のサントリー学芸賞。まず、なんと丁寧で誠実な本なのだろう、と思った。先行研究のリサーチと参考文献・論文の読み込みの深さが尋常じゃない。それが素人でもわかるほど、隙のない本だった。しかも、それでいて読みにくくなく、分かりやすすぎない、絶妙なバランスに仕上がっていて、これは新書の中の新書である、と言って良いのではないか。パレスチナとイスラエル、ロシアとウクライナ、イランとアメリカ。現在進行形で行われている国際紛争の根っこにある問題の一端が掴めた、ような気がする。が、まだ一端である。そして、心に残った一節はこちらです。
差別とは、必ずしも蔑むことだけを意味するのではない。あるカテゴリの人 -
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イエス生誕前まで「神の国」の担い手はユダヤ人であり、律法だった、しかしイエス以降、人類は律法に変わって、福音(イエスやその使徒たちの教え)より導かれることになる。そして週末と最後の審判を経て「神の国」が到来する、と、
アウグスティヌス(4世紀5世紀活躍した古代、キリスト教最大の教父)が、神の国の歴史観の中で、キリスト教とユダヤ教の関連を書いている。ユダヤ人はイエスを殺しメシアであると信じなかったために、ローマ人に苦しめられることになったが、一方で世界中に拡散して、ユダヤの教典(聖書)によりメシアなるものがあり得ることがキリスト教徒の捏造ではないことを証言してくれるのがユダヤ人と言う考えのもと、 -
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ユダヤ人の歴史を古代から現代まで、約3000年を1冊にまとめ、この1冊でユダヤ人の歴史の基本的な知識を把握できる。
参考文献に世界史の教科書を使われてることもあり、各時代の歴史の解説は分かりやすかった。
また、私が今まで認識してた歴史用語に齟齬がありそこを丁寧に解説してくれて、新しい発見もかなりあった。
ユダヤ人の歴史という事もあり、現在のパレスチナやイスラエルの紛争に直結する話や、ウクライナ、ロシア戦争にも直結する話が多い。
ニュースで報道される、パレスチナやウクライナなどの中東と東欧について理解するのに、かなり助けになる本だと感じる。 -
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世界史では古代キリスト教との関係とホロコースト、現代史ではイスラエルと中東問題、そして金融と学術に長け、陰謀論とともに語られるユダヤ人について、細切れではなく古代から現代までのユダヤ人の歴史を通史としてコンパクトにまとめた良書。その際、著者は「主体か構造か」という枠組みでの整理を示して、理解を助けている。
中世から近世、近代と、少数民族として各国に存在したユダヤ人が、支配層にとって都合の良い中間集団として同化せず生き残ってきたことで、農民や庶民からは時として怒りの矛先が向けられる対象となってきたことを「反ユダヤ主義を生む三者関係」として示している。
また、近代にはホロコースト以前にポグロムと言 -
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一気通貫でマクロとミクロ、主体と構造という軸でマイノリティのユダヤ人が大国に振り回されつつ、ネットワークや律法(トーラー)を遵守する啓典の民としての高い識字率を、使った官僚や貿易、金融の担い手として生き延びてきた背景を述べる。もちろん農民や貧民も多く、改宗したものも多い。
パレスチナから出たユダヤ人はキリスト教、イスラム教とゾロアスター教(ベルシア)との、間で生き延びドイツ系が、アシュケナージ(イディッシュ語)、スペイン系がスファラディームとして分かれた。
ホロコーストの前に民衆による虐殺ポグロムが東欧各地であり、各地で上記のようなポジションのユダヤ人は差別の的となり、結局1700万人中600 -
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「全史」と銘打った、ウクライナの歴史に纏わる本で、「上巻」の続きとなる「下巻」である。
「ウクライナの歴史」を古い時代から説き起こし、この上巻では20世紀初め頃に至る迄が綴られた「上巻」に対し、この「下巻」はそれ以降なので、扱われている期間は短い。しかしながら、本のボリュームは上下共に似たような分量になっている。
「下巻」については、20世紀初め頃の革命や内戦という様相から、戦間期や第2次大戦の頃、その後の様々なこと、更に「ウクライナ」の独立、最近の情勢と、非常に密度が濃い感じに纏まっている。概ね2020年頃迄の事柄が綴られる。
「下巻」の末尾には、「上巻」の部分も含めて、ウクライナの歴史に纏 -
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古い時代から最近に至る迄の経過、挿話を扱う「全史」ということで綴られた本の「上巻」である。
「ウクライナの歴史」を古い時代から説き起こし、この上巻では20世紀初め頃に至る迄の事柄が綴られる。
本書はソ連産れで、ウクライナで学位を得て研究教育活動に従事し、現在は米国で活動している「ウクライナ史」研究者が綴ったモノということになる。
本書は物語風で読み易くなっているとも思う。かなり古い時代から、興味深い挿話が積み重ねられていると思う。注釈を参照するような面倒な感じでもなく、「ウクライナ史」というようなモノになじみが薄い人達でも普通にさっと読めるような体裁に美味く纏められている。
本書を読んでいて、 -
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社会と以下に組み合わさるかというユダヤ人の歴史。
第1章 古代-王国とディアスポラ
イスラエル王国とユダ王国に別れ、ユダ王国だけが残りバビロニアに捕囚される中でユダヤ教が生まれた。それまでの宗教は「古代イスラエルの宗教」という。
宗派の中での権力差があまりない為、強国に見逃されてきた。
第2章 古代末期・中世-異教国家のなかの「法治民族」
チーズバーガーはユダヤ教にとって冒涜的存在(肉と乳製品を一緒に食べてはダメ)。その根拠が「あなたは子山羊をその母の乳で煮てはならない」ってのも面白い。
ラビ(律法学者)が議論し、それを下ろすというスタイルのお陰で教義が変わることもなく、またササン朝と結び