あらすじ
ユダヤ教を信仰する民族・ユダヤ人。
学問・芸術に長けた知力、富のネットワーク、ホロコーストに至る迫害、アラブ人への弾圧――。
五大陸を流浪した集団は、なぜ世界に影響を与え続けているのか。
古代王国建設から民族離散、ペルシア・ローマ・スペイン・オスマン帝国下の繁栄、東欧での迫害、ナチによる絶滅計画、ソ連・アメリカへの適応、イスラエル建国、中東戦争まで。
三〇〇〇年のユダヤ史を雄大なスケールで描く。
■目次
序 章 組み合わせから見る歴史
第1章 古代 王国とディアスポラ
1 ユダヤ教以前のユダヤ人?――メソポタミアとエジプトのあいだで
2 ユダヤ教の成立――バビロニアとペルシア帝国
3 ギリシアとローマ――キリスト教の成立まで
第2章 古代末期・中世――異教国家のなかの「法治民族」
1 ラビ・ユダヤ教の成立――西ローマとペルシア
2 イスラーム世界での繁栄 西アジアとイベリア半島
3 キリスト教世界での興亡――ドイツとスペイン
第3章 近世――スファラディームとアシュケナジーム
1 オランダとオスマン帝国――スファラディームの成立
2 ポーランド王国との邂逅――アシュケナジームの黄金時代
3 偽メシア騒動からの敬虔主義誕生――ユダヤ教の神秘主義
第4章 近代――改革・革命・暴力
1 ドイツとユダヤ啓蒙主義――同化主義なのか
2 ロシア帝国とユダヤ政治――自由主義・社会主義・ナショナリズム
3 ポグロムとホロコースト――東欧というもう一つのファクター
第5章 現代――新たな組み合わせを求めて
1 ソ連のなかの/ソ連を超えるユダヤ人――社会主義的近代化
2 パレスチナとイスラエル――「ネーション」への同化
3 アメリカと文化多元主義――エスニシティとは何か
むすび
あとがき
参考文献
ユダヤ人の歴史 関連年表
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
イエス生誕前まで「神の国」の担い手はユダヤ人であり、律法だった、しかしイエス以降、人類は律法に変わって、福音(イエスやその使徒たちの教え)より導かれることになる。そして週末と最後の審判を経て「神の国」が到来する、と、
アウグスティヌス(4世紀5世紀活躍した古代、キリスト教最大の教父)が、神の国の歴史観の中で、キリスト教とユダヤ教の関連を書いている。ユダヤ人はイエスを殺しメシアであると信じなかったために、ローマ人に苦しめられることになったが、一方で世界中に拡散して、ユダヤの教典(聖書)によりメシアなるものがあり得ることがキリスト教徒の捏造ではないことを証言してくれるのがユダヤ人と言う考えのもと、神はユダヤ人を滅ぼさなかったとあるのが興味深い。聖書の力で、キリスト教の証言者としての存在感がある一方で、ローマ帝国以降、ユダヤは政治的独立を失い、非抑圧状態になるがそれはユダヤの行いが間違っていたことによると言う考え方。
ペルシャやイスラムの各王朝や権力ともユダヤ人は昔はそれなりに良い関係を保っていた。
イスラムとユダヤは偶像崇拝しないと言う点で近く、イスラムは同胞に利息をとる金貸しはしない規定があり、ユダヤは外国人には金利貸ししても良いと言うことになり、、しかし偶像崇拝者とは商取引禁止というハラハーがあり中世ヨーロッパで比較的キリスト教とうまくやれていたときには、偶像崇拝者からキリスト教徒を除外するとのレスポンサがラビから出る、など、歴史の面白さ、今だけのイスラム圏とイスラエルの対立を簡単にでっち上げで語ることはできない。
迫害社会の形成 ロバート・ムーア
迫害は十字軍によるエルサレム奪還、
キリスト教的正義感の盛り上がりの中で激しくなり、ユダヤ人だけでなくキリスト教徒でもハンセン病、同性愛、売春婦苦労者なども、排斥対象となった。長い歴史の中で、イスラムやキリスト教やその時々の帝国王朝権力のもと庇護されたり利用されたり迫害されたり権力と庶民の間のレイヤー、装置になったり、がさまざまな地域時代で繰り返される。
マイモニデス、
スピノザ、汎神論すなわち自然を含む宇宙のすべての存在が神をなすとする立場。それらを超越して、おそらく人間のような形で神は存在するとする伝統的立場と対立する考え方。神が気まぐれに自然を動かすのではなく、神はすなわち自然であるという考え方。この汎神論では自然の領域にも単一の法則が見出せることを言って、すなわちこの考え方は科学が前提。スピノザは合理主義をさらに進めたことで、伝統的なみかたをかなり否定した。マイモニデスのように聖書はなにかの比喩と考えたのと同じように。
アシュケナージと、スファラディーム。
ポーランド、と、オスマン帝国。
今でもウクライナでネオナチやユダヤ迫害がロシアからの攻撃の口実にされる
ウクライナにおける、ロシアにおけるユダヤ人の歴史
カバラー
神秘主義
ユダヤ啓蒙主義、ハスカラー
ポグロム ロシア語で、民衆間の集団暴力
常にユダヤ人がさらされる三者関係
社会や富の構造、構成の変化で変わるユダヤ人の立場、ユダヤ人への攻撃、、
クリスタルナハト、バビヤール、ナチファクター、ホロコースト
ソ連時代ハバロスク近郊ビロビジャンにユダヤ自治州実際にはユダヤ人移住は多くない
ユダヤ人はボリシェビキという偏見、クリミヤは候補になったがユダヤ人自治州にはならなかった。
「差別とは必ずしも蔑むことだけを意味するのではない。あるカテゴリーの人々が、一様に同じ性質を持つことを、当事者一人ひとりの固有性を無視して、決めつけることに差別の基礎がある。」
シオニストのパレスチナ入植
労働シオニスト、
修正主義シオニスト
ディルヤーシーン村事件
ダレット計画
アシュケナジームがひきいるシオニズム、イスラエル
ミズラヒーム東方系
イスラエルの社会心理学者ダニエル・バルタル
現在のイスラエルでは、アラブ人アラブ諸国からの攻撃をおしなべてホロコーストのアナロジーで理解する傾向がある。ボグロムのアナロジーで現実を捉えてしまうのと同様の事態。この結果、シオニストの加害行為への方法さえも不当な被害として理解する思考が状態化してしまっている。バルタルはこうした認識を「概念拡張」と呼ぶ。この認識は2023年10月7日にハマスがガザから影響した際にもおおいに「拡張」された。そこでは長年続くイスラエルによる抑圧への言及、さらには直後に始まる報復によるパレスチナ人の犠牲に対する懸念表明さえも忌避されることになる。
少し文言を変えて引用したのが上記。
10/7について、筆者は、ハマースがガザから越境し市民を虐殺した際にも、と書いており、
後半の、
長年続くイスラエルによる抑圧への言及、さらには直後に始まる報復によるパレスチナ人の犠牲に対する懸念表明さえも…
と書いているが、ハマースがガザを出て市民を虐殺という言葉が気になる。
実際のその後のイスラエルのガザへの空爆経済封鎖学校病院へ爆撃によるパレスチナ人大虐殺、民族浄化をたんにパレスチナ人の犠牲と表しているが、虐殺と言われるに値するのは、イスラエルの行動の方ではないか。ハマースはテロ行為を行ったと言うことになっているが長年の抑圧の結果であり、人質は丁重に扱っていたとされており、イスラエルの大虐殺民族浄化とは比較にならないと思うからだ。日本の研究者の新書本でも、懸念と忖度があるのだろうか。ここまで壮大なユダヤ人の歴史に触れて読み応えあったが一気に血の気がひいた。261ページ。
最後のあとがき、にも、
あとがき執筆中も止まらない画像谷清がさらに割ればの女とまで及ぶ3劇を見る。煮付け、ユダヤシの重みを感じないわけにはいかないと書いておられるし、ご自身にお子さんが生まれたことなども書いていられるので、他意や悪意はないと思うがまさに指摘される「拡張」が無邪気に展開されているようで、壮大な3000年のユダヤ史著述という素晴らしいお仕事の中、どうしても気になった。
ユダヤ人の特性が活かせる組み合わせ、構造の模索と探究
自らの特性が生かせる隙間にうまく入り込むという意味での主体性
最後にまとめられているゼレンスキー、ネタニヤフ、、エレナケイガンの個人史もまた個人の思想や思考、嗜好と世界情勢ローカル情勢経済文化環境の組み合わせに大きく影響されていることがよくわかる。
Posted by ブクログ
まえがきに「世界史未履修でも通読できる」と書いてあるけど、履修してから読んだほうが絶対面白い。むしろ、高校世界史Bの補完、「もう一つの世界史」のような側面があると思う。世界史好きからすると、「人類史全てを語る」世界史のダイナミックさにもう一度触れているようで、たのしい。
・イスラームとユダヤ教が非常に似ていることを確認。C教と違って両者とも聖職者は不在で、法学者が偉い。バグダードでウラマーとラビがアラビア語で議論してたって。
・マイモニデスとスピノザが一つの軸で語られてるのめちゃめちゃ気持ちいい
・アシュケナジームとスファラディームの通史を完全に押さえられるから素敵。大航海時代のアムステルダム、最盛期のオスマン帝国、ポーランド=リトアニア王国と、世界をまたにかけてダイナミックな歴史を展開しているユダヤ史の面白さで、満ち足りる。
・近現代史の専門家が通史を書くと、近現代の章だけ異様にこみいって特定のテーマに偏った記述になる(しかも中途半端)というのはあるある。
逆に古代〜中世、近世は適切な距離感で描かれている。
あとがきで、著者は学部時代にアラブを勉強していたら社会学に出会って、いろいろあってユダヤの通史を書くに至ったと書いてある:なんで?
視野が広がった。モチベーションが上がった。社会学も気になる。
Posted by ブクログ
複雑に捻れている現在のイスラエル周りのこと、少しでも知りたいなと思って手に取りました。
情報の密度がとても濃い文章で、頭から煙を出しながら必死に文字を追いました。
元々の世界史、地理の知識が乏しいのであまり理解はできていませんが、一応通して読んで良かったなと思っています。
意図なくキリスト教系の大学に進学し、必修だったためキリスト教に関する授業を受けました。
その中で安息日の労働はみなさんが考えてるのと違って、電球のスイッチオフとかもそうなんですよと話されたのがとても印象に残っていて、大学の講義以来その話を見る機会となり、読みながら興奮しました。ほんとだ!と。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教…複雑すぎて全然わからないです。
印象に残ったのはラビ、ポグロムなどの単語。この本で初めて知りました。
違う本で、周知の知識として単語が出てきて、知ってる!となれたのが嬉しく、それだけでもこの本を読んで良かったと思ったくらいです。
『夜と霧』を読んで以来、考えを大事にしているスピノザが出てきて、スピノザのやばいとこ知るの怖い!と思ったら冷静に見ていて、やっぱ最高!となった(p116)
「神は他の民族を差し置いてヘブライ人たちを神自身のために選び取った(「申命記』第十章十五節を参照)とか、神は彼らの返くにいるが他民族の近くにはいない(『申命記』第四章四〜七節)とか彼らだけに正しい律法を授けてくれた(同書第四章八節)とか、また他の民族を差し置いて彼らだけに自分の存在を知らせてくれた(同書第四章三十二節など参照)とか聖書で言われているのも、すべてはヘブライ人たちを律法に服従させるため、ただ彼らの理解力に合わせてそう語っているだけなのだ(同書、一四六~四七頁。)
p282
文化多元主義と多文化主義の話は、色んなことに通じそうだなと思った。
理解が合ってるかわからないけど、文化多元主義の方が良いなと思ってる。
マイノリティの言うことばっかり聞いて 多数派が割を食ったり、言うことを聞き続けなければならないという偏った雰囲気ではなく、多様化ならどちらもあって良いよね、という。
雰囲気としたのは、人々の感情でのことで、数値だけで言えばどうしても多数派が減るとは思うからそこは仕方ないかなとは思う。
p294 ネタニヤフのお兄さんの話初めて知った。
イスラエルが行ってることで許せないこともたくさんあるけれど、その行動に出ることについて、許したり認めたりする意味ではなく、仕方ないなという気持ちがはじめて沸いた。だからといって肯定はできないですが。
憎しみあいの応酬は避けるべきといっても 私はその失う痛みを知らないから綺麗事を言える。
失った人たちは綺麗事よりも、目の前のことを破壊したくなるくらいに傷ついたって主張するのかな。
悲しい。
とてつもなく複雑に絡み合った歴史で驚きました。
一冊の本に書き上げることは著者も校正も編集も皆さんとても大変だったでしょう。
全てを理解できるほどの知識が自分にないことが悔やまれますがこの本をきっかけによりユダヤ人や国際情勢について理解を深めていきたいと思えました。
Posted by ブクログ
3,000年にわたるユダヤ人の通史。ローマ帝国やオスマン帝国、ロシア帝国、イギリス帝国など歴史の強者に翻弄されてきた歴史がよくわかる。
ホロコーストは必ずしもナチス・ドイツによるものだけではなかったこと、当たり前のことながらユダヤ人は必ずしも一枚岩ではないこと、アメリカとイスラエルは当初から蜜月ではなかったことなど新たに気付かされることも多い。
そして最も印象に残ったのは同化の難しさだ。為政者が融和的であっても市井では不満が歪みとしてたまり民族対立に至ることもあるし、融和が進むかと思うタイミングで民族主義が過激化することもある。歴史はどうやら融和と対立のグラデーションを行ったり来たりするようだ。これを人類がいまだに乗り越えられていないことは今まさに世界で起こっている対立からも明らかだ。
その点を踏まえると労働力不足の名のもとに移民的労働者を受け入れる日本は安易すぎるかもしれないし、将来、融和や同化が進まず対立に至るという同じ轍を踏まないでほしい。
Posted by ブクログ
自分の無知を改めて認識させてくれる、まさに読書の醍醐味のような本。これほどの研究内容が新書で読めてしまってよいのかと思うほど。
神話時代のユダヤ教の成立からいかにしてシオニズム(これもひとくくりにできないが)が形成されていったか、が活写されており、さらに途中で世界史のダイナミックなイベントが頻繁に入るので、ものすごく勉強になる。
著者はユダヤ(これに限らずと思うが)の在り方を「主体と構造」の関わりから一貫してとらえる。社会の状況を構造とし、ユダヤはその構造に合わせる形で主体や思想を様々に変化させながら適応してきた、という意味らしい。
明確な領土を持たないがゆえに、構造に合わせながらアイデンティティを維持していくあり方、それゆえに、世界史のイベントごとに姿を現すことが多い、という指摘にハッとさせられる。決して、経済力のみをもって中東/アメリカのイベントに関わっているわけではない。自分も、ユダヤは領土を持たないゆえに知識を中心とした産業に資本を集中しており、それが近現代の金融/情報社会にマッチするゆえに影響力を持つ、と単純に理解していたのだが、いかに偏った見方であったかを確認できただけでもこの本は価値がある。
ホロコーストのみが語られがちな受難も、付随するポグロムの被害はむしろ東欧やロシアで大きかったことなどは日本ではほとんど知られていないと思う(自分も知らなかった)。その背景も単なる民族や宗教的差別でなく、当時の構造が複雑に影響したものであることも、もっと知られてよいことだろう。ドイツ以外の国がポグロムの後始末に対してほぼ沈黙している、というのも、2026年現在も続くウクライナ侵攻を考えると複雑な気分にさせられる。
アメリカでユダヤ資本が影響力を持つことになった経緯もさることながら、福音派の後押しが政治的な影響力として大きい、ということも見逃せない点で、こうした文脈を抑えておくだけでもニュースの解像度が上がってくると思う。
本書の内容とは少しずれるが、ソ連でユダヤが当初は良い扱いを受けていたというのも知らなかった点で、社会主義の歴史についても少し調べてみたくなった。そういった興味の連鎖を引き起こさせてくれる本はそうそうなく、その意味でも素晴らしい本だと思う。
Posted by ブクログ
同じ著者の近著、シオニズムを理解するための、ロングレンジでの歴史的背景がおよそ理解できた。近著にも書かれていた部分もあったが、ユダヤ人が東欧を中心とする世界に分散(ディアスポラ)していった過程が理解できたし、既にアラブ人が住んでいるパレスチナに国を作った過程、その国が先住民と敵対する理由も知った。ホロコーストだけでなく、東欧でのポグロムが、建国だけでなく現在にも影を落としているという指摘は、納得できた。ユダヤ人は居住国の法の下で自分たちの法に従って代を重ねてきたというところは、この宗教の強さを感じた。アメリカは今やイスラエルに次ぐユダヤ人の居住国であるが、ユダヤ教がカスタマイズされてきているという。興味をそそられた。
Posted by ブクログ
ユダヤ人の特性と「組み合わさ」る事によりユダヤ人の歴史が動いてきたと考える所が非常に興味深かった。むすびの「ダイナミックに動き続ける場所にこそ、ユダヤ人ははまりやすい」という言葉が印象深かった。この本を読むことで、今後のゼレンスキー(ゼレンシキー)とネタニヤフの行動の見方が自分の中で変わる気がした。こういうのが本との出会いの良い所である。
Posted by ブクログ
2025年のサントリー学芸賞。まず、なんと丁寧で誠実な本なのだろう、と思った。先行研究のリサーチと参考文献・論文の読み込みの深さが尋常じゃない。それが素人でもわかるほど、隙のない本だった。しかも、それでいて読みにくくなく、分かりやすすぎない、絶妙なバランスに仕上がっていて、これは新書の中の新書である、と言って良いのではないか。パレスチナとイスラエル、ロシアとウクライナ、イランとアメリカ。現在進行形で行われている国際紛争の根っこにある問題の一端が掴めた、ような気がする。が、まだ一端である。そして、心に残った一節はこちらです。
差別とは、必ずしも蔑むことだけを意味するのではない。あるカテゴリの人々が一様に同じ性質を持つことを、当事者一人ひとりの固有性を無視して決めつけることに差別の基礎がある。
Posted by ブクログ
理系だったため世界史を習った高校一年の記憶を引っ張り出しつつ読んだ。
アンネの日記などユダヤと言われるとホロコーストのイメージが強い
俗っぽい表現になるが、時代や世界情勢、本書でいう組み合わせによってうまく入り込むユダヤ人たちの動きが非常に不運な偶然による産物がホロコーストやポグロムと知った
最近のパレスチナやイスラエルの情勢もなんとなく揉めてるだけとしか思っていなかったがシオニズムの過激化やネーション化の徹底によるものと学んだ
また読み直せたらと思う
Posted by ブクログ
ユダヤ人は移住先の環境に合わせて自分たちを変化させ、国を持たずともイスラエル建国まで生きてきた。この苦闘を知らずにして今日のパレスチナ情勢を語ることはできないだろう。民族対立を単なる対立と捉えるだけでは解決の糸口が掴みにくい。当事者が歩んできた歴史を学び、当事者の側に立って解決を目指していくことが必要になってくる。そのことを痛感させてくれる1冊だった。
Posted by ブクログ
三千年もにわたるユダヤ人の歴史を描いた新書。
聖書の時代から現在にわたるまで、一般の世界史の表舞台にはあまり登場することも少ないユダヤ人の歴史について、このようなかたちで通覧できるものは貴重。
通常の世界史では、歴史の一部でしか取り扱われることがないため、新しく知ったことも多かった。
Posted by ブクログ
ユダヤ人3千年の歴史。
旧約聖書の時代から中東戦争まで。
とても新書には収まらないはずなのに、時代毎の主要な出来事を平易な表現で記述しているので、全体の流れが把握しやすく、とてもわかりやかったです。
これはなかなか優れた本だと思いました。
ユダヤ人がこれからの世界の中でどのような存在でありたいと考えてるのか、あるいは、そのような意識の有無などについて、さらに知りたいと思いました。
Posted by ブクログ
以前、Netflixでユダヤ人を特集してるのを見たけど、他の文献で確認された史実と、聖書に書いてある事や人々が伝えている伝承を区別して使い分けているから、分かりやすい。ユダヤ教とイスラム教の類似性が、ユダヤ教とキリスト教の類似性よりも大きいとは知らなかった。ユダヤ人の総本山がロシアであるとは知らなかった。第二次世界大戦までは、一部を除いて、平均的なユダヤ人は、貧困にいた事も知らなかった。
Posted by ブクログ
最近ユダヤ人に関するニュースをよく見るので、ユダヤ人とは を知りたくて読みました。内容ですが、ユダヤ人の歴史を簡潔にまとめてありました。世界史を全く知らない身としては、かなり難しかったです。
書籍を読んで、ユダヤ人がイスラエルを建国した理由、ユダヤ人でも様々な分類わけできる点、各国のユダヤとの関係を理解できました。
以下は書籍で使われていたユダヤ教についての単語を、GPTでまとめました。
ヤハウェ:ユダヤ教における神の名前。ヘブライ語ではYHWHと表され、ユダヤ教では直接口に出すことを避けることが多い。
カナンの地:聖書で、神がアブラハムとその子孫に与えると約束した土地。現在のイスラエル、パレスチナ周辺にあたる地域。
ラビ:ユダヤ教の宗教指導者・教師。律法や聖書を教え、礼拝や共同体の活動にも関わる。
スファラディーム:主にスペイン・ポルトガル系のユダヤ人。のちに北アフリカ、中東、オスマン帝国などへ広がった。
アシュケナジーム:主にドイツ・東欧系のユダヤ人。ポーランド、ロシア、リトアニア、ウクライナなどに多く住んでいた。
ハスカラー:18〜19世紀ごろのユダヤ啓蒙運動。近代的な教育や科学、世俗社会への参加を重視した動き。
シオニズム:ユダヤ人の民族的故郷をパレスチナ地方に建設しようとした民族運動。のちのイスラエル建国につながった。
ポグロム:ユダヤ人に対する集団的な迫害・暴動・虐殺。特にロシア帝国や東欧でのユダヤ人襲撃を指すことが多い。
シナゴーグ:ユダヤ教の会堂・礼拝所。祈り、聖書朗読、学習、地域の集会の場。
改革派:ユダヤ教を現代社会に合わせて柔軟に解釈する立場。礼拝や生活習慣も比較的自由。
保守派:伝統を大切にしながらも、時代に合わせた変化も認める立場。改革派と正統派の中間的な位置づけ。
正統派:トーラーやタルムードなどの律法を厳格に守る立場。食事規定、安息日、礼拝など伝統的な生活を重視する。
Posted by ブクログ
高校の教科書には、ユダヤ人がほとんど登場しない中世から近世までの間も含めたユダヤの歴史
一度読んだだけでは、とても頭に入りきらないし、とても一言では言い表せないのがユダヤ人ですなぁ…
ウクライナのゼレンスキー大統領がユダヤ人であるということも初めて知りました。
Posted by ブクログ
イスラエルの戦争の動機や要因を根本から知りたくて、この本を手に取った。
イスラエルを形作るユダヤ人は常に他国という構造に挟まれながら生きてきた。構造と主体を筆者は重要視するが、その視点から読み解くと分かりやすくなる。
悲惨な過去はユダヤ人の戦争動機を肯定する材料にはなり得ない。しかしながら、その背景を考慮せずにただ批判するだけでは建設的な批判にはならない。
有意義な批判を行うために必要な1冊。
Posted by ブクログ
- 歴史の「歪み」と、寄せ集めの民の重力を見つめる
中公新書から2025年に刊行された鶴見太郎氏の著書。
ユダヤ人の通史だが、著者の筆致は客観性に徹している。ラビン暗殺といった歴史的悲劇すら淡々と、簡潔に記述していく姿勢が、歴史の逃れられない冷徹さを際立たせている。
関心を惹かれたのは、生存戦略としての「法(テキスト)」の扱いだ。
申命記にある「外国人からは利息を取ってもよい」という神の言葉の解釈。この宗教的根拠が、彼らに金融という独自の活路をもたらした。一方で、この仕組みが為政者との便宜的な関係を生むと同時に、庶民の怨嗟を買い、外部社会との間に決定的な「金利の歪み」を定着させた。この構造が数千年の流転にどう影を落としたかが、冷静に解き明かされている。
イスラエル内部の複雑な構造も、本書を読んで腑に落ちた点だ。
「欧州の白人ユダヤ人対パレスチナ」という単純な構図ではない。ホロコーストの記憶を持つアシュケナジーム、アラブ圏にルーツがあり右派を支えるミズラヒム、世俗的なナショナリズムを貫くロシア系移民。異なる背景を持つ人々が、「ユダヤ人」という共通のレッテルによって寄り集まっている。
アシュケナジームのエリート層が企図した「理性的」な和平案が、国内の情念や生存本能によって暗殺という形で葬り去られた。この事実を前にすると、中東の平和の遠さを実感せざるを得ない。
あらゆる事象に歪みがあり、それでも成り立っているのがこの世界なのだろう。その歪みそのものを受け入れ、アービトラージ(裁定)を繰り返しながら生きていく。不条理な現実を読み解くための、確かな補助線となる一冊だった。
Posted by ブクログ
どの時代を切り取ってみるかでイメージが大きく変わるのが「ユダヤ人」だと思う。近代史以降は知っていることがほとんどだったが、古代から遡ると知らないことも多く、興味深かった。ユダヤ人と地政学というテーマで何か書籍があれば読みたいなと思った。
Posted by ブクログ
現在起こっているイラン戦争の何故を理解したくて読みました。ユダヤ人について全く知識がなかったためとても勉強になりました。
迫害され続けたユダヤ人が国に執着する理由がよくわかりましたが、それでもイスラエルの今のやり方には賛同できません。戦争から学べるものは因果応報しかないのでしょうか。
Posted by ブクログ
私のユダヤに関する知識が不足しているが故に、十分に消化出来なかった。長いユダヤ教、ユダヤ人が辿った歴史を丁寧に論ずる学術色が強い本である。古来よりいくつかの派閥があったこと。ニューヨークに住んでいるとき、異様に見える服装、姿からハシディズムは最右翼的な存在かと思っていたが、そうでもないらしい。ホロコースト、ポグロム。ドイツよりも東欧の被害者が圧倒的であること。ロシア・ユダヤ人が多くイスラエルに渡り影響を与えていること、ゼレンスキーはユダヤ系であること、など色々知らないことばかりである。たぶん三分の一も消化出来ていない。他の本も読んで深めたいと思う。
Posted by ブクログ
ユダヤ人の歴史を、単なる「犠牲者」や「富豪」といった断片的なイメージではなく、生存戦略の積み重ねとして捉える視点は非常に鋭く、また現代を生きる私たちにとっても深い示唆に富んでいる。
宿命を「生存戦略」に変えた民族の足跡
ユダヤ人の歴史を紐解くと、そこには「国を持たない」という圧倒的な不安定さの中で、いかにしてアイデンティティを守り抜くかという、壮絶な生存のドラマが見えてくる。
私たちが当たり前としている「法律」は、本来は国家という枠組みがあって成立するものです。しかし、国を持たない彼らにとって、法とは物理法則のようにどこへ行っても変わらない「戒律」であり、生き残るための「合理的な知恵」そのものだった。
妥協と固執、そして資本主義
支配者が変わるたびに、ある派閥は体制に寄り添って実利を取り、別の派閥は頑なに伝統を守る。この「柔軟さ」と「頑固さ」のせめぎ合いが、彼らを歴史の表舞台へと押し上げてきた。特に中世から近代にかけ、土地を持てない彼らが金融や経済の分野で力をつけたことは、資本主義の発展において大きな恩恵をもたらしたが、同時に「金にがめつい」という偏見や憎悪を生む引き金にもなってしまう。
迫害が生んだ「国家」への渇望
ポグロムやホロコーストといった悲劇は、単なる差別ではなく、政治的な扇動や選民思想への猜疑心が招いた「構造的な暴力」だった。この極限状態が、バラバラだったユダヤ人たちを「自分たちの国を持つべきだ」というシオニズムへと向かわせる。皮肉なことに、迫害から逃れるための主体的な動きが、パレスチナへの移住と現在のイスラエルという国家の形成、そして新たな対立へと繋がっていく。
歴史の転換点に立ち続ける理由
なぜ、彼らは常に歴史の転換期に登場するのか。それは、彼らが常に「提示された世界の構造」に対して、ただ流されるのではなく、主体的に、かつ必死に対応せざるを得ない宿命を背負ってきたからだと言える。
結びに代えて
ユダヤ人の歩みは、形のない「思想」がいかにして物理的な「歴史」を動かすかという進化の記録でもある。彼らの物語は、特定の民族の記録という枠を超えて、組織や国家が崩壊する局面で人間がどう振る舞うべきかという、普遍的な問いを私たちに投げかけているように感じる。
歴史のうねりの中で、常に「当事者」として対応し続けてきた彼らの民族性は、まさに人類史の縮図そのものだった。
Posted by ブクログ
世界史の知識があまりないので本著を読むのが、なかなか苦しかったです…
ユダヤ人と言っても様々な国の歴史のなかで、それぞれの国での、巡り合わせと組み合わせの中で生きてきており、とても複雑な民族的な歴史があると知りました。
イスラエルが誕生してからも、アメリカのユダヤ人など、他の国のユダヤ人とは考え方も違う部分もあり、どんどん多様になってる感じも知ることが出来、参考になりましたー
Posted by ブクログ
社会と以下に組み合わさるかというユダヤ人の歴史。
第1章 古代-王国とディアスポラ
イスラエル王国とユダ王国に別れ、ユダ王国だけが残りバビロニアに捕囚される中でユダヤ教が生まれた。それまでの宗教は「古代イスラエルの宗教」という。
宗派の中での権力差があまりない為、強国に見逃されてきた。
第2章 古代末期・中世-異教国家のなかの「法治民族」
チーズバーガーはユダヤ教にとって冒涜的存在(肉と乳製品を一緒に食べてはダメ)。その根拠が「あなたは子山羊をその母の乳で煮てはならない」ってのも面白い。
ラビ(律法学者)が議論し、それを下ろすというスタイルのお陰で教義が変わることもなく、またササン朝と結びついていたお陰で安定して活動できていた。ユダヤ教を知るためにはシナゴーグでタルムードを読む必要があるため識字率も高く、入ることは難しいが宗教としては安定していた。
イスラムとユダヤには共通点が多かった。協議によって教義を決めたり、宗教に根ざした行動(外見>中身)を重視していたり。
土地所有が難しくなったユダヤ人は金融業を営み、それを資金源とするキリスト教権力者への妬みがユダヤ人をも巻き込み、反ユダヤ感情が庶民の間に形成されていく。十字軍の侵攻によるキリスト教的感情の高まり、ペストの流行の際のデマ、ユダヤ人が担っていた金融業にキリスト教も入ったことで迫害は進み、改修か出ていくかという選択を迫られる。
第3章 近世-スファラディームとアシュケナジーム
ユダヤ人にはスペイン系のスファラディームとドイツ系のアシュケナジームがいる。
ポーランドでは繁栄したが経済への打撃により徐々に衰退。ウクライナでは農民の徴税をユダヤ人が任されていたため「ユダヤ人=農民の搾取者」というイメージが形成されていき、反乱も起きる。
中間マイノリティというポジションにつくことが多いユダヤ人は、経済安定時にはそこそこ繁栄するが、不安定時には下民の矛先が真っ先に向くため運命が左右されやすく、迫害も起こりやすい。
救世主待望がユダヤ人の不安定時に起こりやすいため偽メシア騒動も起きる(シャブタイ・ツヴィ)。彼は捕えられイスラームに改宗してしまう。
神について知りたいカバラーも流行る、それを簡略化し学習よりも祈りを重視し戒律を守る悦びにのって神が現れると考える集団「ハシディズム」も現れる。戒律を守ることを何よりも重視し、現在の超正統派(黒服)に繋がる。
第4章 近代-改革・革命・暴力
ヨーロッパでの民主革命より市民が平等になったことでユダヤ教の組織自治も崩壊していく(ユダヤ人も市民も同じ人種!)。しかしドイツではドイツ人の伝統の崩壊を恐れユダヤ人は違う人種だとする。
ロシア帝国ではユダヤ人は都市部に多く、貧困層が多かった。第一次世界大戦が始まると敵国にもユダヤ人がいることからスパイ活動などを恐れ迫害(ポグロム=民衆間の集団暴力)が行われた。こういった迫害から逃れるためパレスチナにユダヤ人の国を作る運動「シオニズム」が開始された。
ドイツからは優生学、人種衛生学などからドイツ人の優越意識によってユダヤ人迫害が行われた。これは第一次世界大戦の敗北の原因とするために盛んになり、それをヒトラーが活用した。当初は出国させたら良かったが、ポーランド侵攻から収監するユダヤ人が増え続けたため出国では対処が間に合わなくなった。収監所は劣悪で病気、餓死者も多かった。さらなる移送先としてドイツはソ連制圧を目指した。ポーランドのアウシュビッツでは多くのユダヤ人が殺された、現地住民がユダヤ人狩りや殺害に加担したり、それを黙認することも多くあった。ドイツ敗戦後も帰宅することができなかったりポグロムにあうことも多かった。
第5章 現代-新たな組み合わせを求めて
1939年には世界に1700万人いたユダヤ人はホロコーストにより600万人死亡し、残りの人口の中心は450万人を擁していたアメリカとなった。
男女平等を目指す流れもあり、第一次中東戦争にも女性は参加し、現在でもイスラエルでは男性が二年八ヶ月、女性は二年兵役に就く。
念願の自国をもち、イスラエルにユダヤ人が集まっていく。ユダヤ人への攻撃は自分たちがやった事の報復でもホロコーストの記憶として不当な被害へと変換してしまう。第三次中東戦争の勝利でイスラエルを正式に建国することが救世主の誕生を早めるという考えも強くなりパレスチナ人の排斥を望む声が強くなる。
ユダヤ教とアメリカは相性が良く、昨今の発展に至る。
ネタニヤフはパレスチナ人活動家のテロによって兄を亡くしている。
Posted by ブクログ
今のイスラエルで起こっている出来事を読み解くには、ユダヤ人がどういう歴史を歩んできたかを知ることが重要と考えていたが、大きな助けになった。完全に理解できたとは言えないが、またいつの日か読み返したい本。
Posted by ブクログ
ユダヤ人の3000年にわたる歴史を書いている。
おそらくユダヤ人の歴史において、もっとも知られているであろう近代以降(ホロコースト以降)は全体の半分から1/3程度である。このあたりは広く言及されがちな歴史なので、ほかにも参考となる書籍は多くある。
本書でよかったのは、古代から近世までの、あまり言及されないユダヤ人の歴史。著者自身も書いているが、ユダヤ人は近代になるまで教科書にもほとんど登場しない。そのため、本書の役割は大きいと思う。
現代のユダヤ人といえば、ホロコーストの被害者からのパレスチナを植民地化する加害者という印象が強い。ただ、そこに至るまでの、近代以前からの過程は直線的ではない。むしろいまのイスラエルは、ユダヤ人の歴史からすれば特異な位置付けになると思う。
Posted by ブクログ
古代から現代まで、ユダヤ人の歴史を詳しく解説した一冊。
なぜこれほどまでに嫌われることになったのか、はるか昔からの経緯から読み解くことができる。よく知られるホロコースト以外にも迫害されることが多く安寧の地を求めてイスラエルを建国したユダヤ人の思いを理解することができる。
ポグロムと呼ばれる民間暴力行為についても、知られていない歴史であり
ソ連で多くのユダヤ人が犠牲となった事例も知ることができ、現在のユダヤ人が抱えている感情についての理解も深めることができる。
Posted by ブクログ
現在のイスラエルの考え方を見ると過去の歴史からすると、当然の面もあるが、やはり最近のガザの問題やイラン状況見るとやりすぎ強い。過剰防衛的な意識が強い。