あらすじ
イスラエルはなぜ国際社会の反対や懸念をよそに,ガザを徹底して攻撃するのか.パレスチナにユダヤ人の民族的拠点をつくるという思想・運動である「シオニズム」.ホロコースト以前に東欧で生まれ,建国後はイスラエルを駆動し続けるこの思想の起源と変遷をたどり,その多様性と核心に迫る.現代世界を読み解く必携の1冊.
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Posted by ブクログ
なかなか読み応えがある新書で、途中から国家とか民族という概念を考えさせられた。
イスラエル建国は西欧キリスト教社会の免罪符でもあり、厄介払いの側面もあるという指摘はなるほどだ。しかも欧州から見れば『遅れている』アジアに建国され、痛みを直接感じるものでもなかった。
現在のイスラエルの国家体制は、エスニック・デモクラシーというよりも、エスノクラシー(特定の民族による独裁体制)という意見を紹介している。ユダヤ人の文化が自生するためには、人口的な多数派の国家が必要で、多少の民主主義の制限は仕方ないと考えているのが、基底にあるらしい。
著者は、ヒステリックにも見えるイスラエルのナショナリズムを『犠牲者意識ナショナリズム』(これは日本人にもあてはまる可能性がある)と指摘している。ホロコーストを教育に採り上げても、その社会的背景は省略されていることや、ハマスの襲撃をホロコーストの拡張概念で捉えて、背景にある歴史的な経緯には考えが至ってないと、指摘している。著者は一方で、ユダヤ人に対するポグロムやホロコーストに対しての国際社会のケア不足を指摘しているが、パレスチナの人の現状に対して国際社会はどうケアすればよいのだろうか。
Posted by ブクログ
『ガザとは何か』を読んで非常にショックを受けたので、イスラエル側で起きていること、その根源にある思想についても学びたくて本書を読み始めた。
思った以上に根が深く複雑に入り組んだ問題であり、なかなか読み進めるのに困難な部分もあった。
(世界史が苦手で避けてきた人生だったので…)
印象的だったのは「ネーションに基づく秩序を国際社会ぐるみでパレスチナに押しつけるうねりが生まれた」という一文だ。
都合よく見て見ぬふりをしてきている国際社会にも、大きな責任がある。
双方の状況を知ってなるべく偏りのない意見を持とうと考えて読んだのだが、それでもやはり暴力では何も生まないという気持ちは変わらない。
ユダヤ人が辛い境遇を生きてきたことはもちろん事実だが、それとガザへの攻撃は無関係だ。
緊迫が続く中東に少しでも光がさすことを切に願う。
Posted by ブクログ
シオニストになるべく理由と世界の流れがあったこと
どこに行っても邪険にされる彼らへのケア不足
一部のキリスト教信者にとって都合が良いイスラエル
パレスチナへの現在進行形でのケア不足
これらを無視してはいけないこと
Posted by ブクログ
パレスチナ問題について、今までは過激なシオニストの思考回路が理解しづらかったところがありました。しかし本書を読んで、東欧史からの流れで考えると、少しは彼らの思考回路が分かった気がします。だからといって決して虐殺が許される訳ではないのですが。イスラエルに物理的な壁(分離壁)ができて20年以上経ちますが、それによって、相手も同じ人間であるという意識が薄れていってしまっているのかもしれません。
Posted by ブクログ
19世紀以降、主に20世紀から半年前(2025年9月)までのユダヤ人とシオニズムの変遷を一気に読んだ。これまで、ユダヤ人のイメージと言えば科学者や芸術家、実業家などで抜きん出て成功している人がまず浮かんだが、確かにどの民族というか集団であっても、成功できる人もいれば、貧しさに身動き取れず抜け出せない人もいる。民族ゆえの厳しさが重なればなおさらだ。
これだけニュースで流れてくるのに、未だによく分からないイスラエルについて、初めて少しだけ理解できた気がする。とはいえ、現代に近づけば近づくほど、複雑になり再び理解が追いつかなくなってしまった。
Posted by ブクログ
本来は「いつかはパレスチナの地でユダヤの国を作りたい」という、とても共感できる理想からはじまったシオニズム。かつて離散を経験し、各地で抑圧され続けてきたユダヤ民族が、結束してカナンの地に国を作るという野望が、イスラエルという国として実現されるというドラマチックな物語の背後で、その主義思想としてのシオニズムがどのように展開していったのかという興味深い内容。
2度の世界大戦を挟む激動の200年の間でシオニズムは様々な思想に分かれ、塗り替えられ、現在のパレスチナとイスラエルの対立構造に陥ってしまう。その過程と因果関係が非常に精緻な文章で語られており、ユダヤ民族の見方が大きく変わった。
わたしたち日本人は東の果ての島国に住む遠い存在と感じがちだが、同じ歴史の只中にある。こうして歴史を学ぶことの大切さが身に染みた。