鶴見太郎のレビュー一覧
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世界史では古代キリスト教との関係とホロコースト、現代史ではイスラエルと中東問題、そして金融と学術に長け、陰謀論とともに語られるユダヤ人について、細切れではなく古代から現代までのユダヤ人の歴史を通史としてコンパクトにまとめた良書。その際、著者は「主体か構造か」という枠組みでの整理を示して、理解を助けている。
中世から近世、近代と、少数民族として各国に存在したユダヤ人が、支配層にとって都合の良い中間集団として同化せず生き残ってきたことで、農民や庶民からは時として怒りの矛先が向けられる対象となってきたことを「反ユダヤ主義を生む三者関係」として示している。
また、近代にはホロコースト以前にポグロムと言 -
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一気通貫でマクロとミクロ、主体と構造という軸でマイノリティのユダヤ人が大国に振り回されつつ、ネットワークや律法(トーラー)を遵守する啓典の民としての高い識字率を、使った官僚や貿易、金融の担い手として生き延びてきた背景を述べる。もちろん農民や貧民も多く、改宗したものも多い。
パレスチナから出たユダヤ人はキリスト教、イスラム教とゾロアスター教(ベルシア)との、間で生き延びドイツ系が、アシュケナージ(イディッシュ語)、スペイン系がスファラディームとして分かれた。
ホロコーストの前に民衆による虐殺ポグロムが東欧各地であり、各地で上記のようなポジションのユダヤ人は差別の的となり、結局1700万人中600 -
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そもそもユダヤ人ということを知らなかったし、日本史派で世界史はほぼ初週だが非常に読みやすい本だった。
ユダヤ人について、アインシュタインしかり、天才が多いというイメージと、ホロコーストの被害者である、というイメージが漠然としてあっただけだった。
前者に関しては、天才が多いのは、ユダヤ教の根底として「律法」「教育」を重視する側面があったから、ということと、各国家において、歴史のマイノリティとして国家の法に適用しつつ、ユダヤ共同体として「うまくわたってきた」から、なのだと理解した。
また、後者に関しては、ホロコーストがすべてではない、ということも理解した。東欧で起こったポグロム然り、ユダヤ人 -
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ユダヤ人の歴史
古代の興亡から離散、ホロコースト、シオニズムまで
中公新書 2839
著:鶴見太郎
出版社:中央公論新社
地続きである大陸にすんでいる民族の歴史はすさまじいものです。
まさに避けようものない悪夢が、歴史の中心をなしています。
ユダヤ人、旧約聖書ではみずからを、イスラエルという、ユダヤ、ユダとは、イスラエル12部族の内の1つの部族である
イスラエルと神ヤハウェとの間には、いくつか契約を結んだ
アブラハムが結んだ契約、割礼を要求する民族としての契約
つぎに、モーセが結んだ契約、シナイ契約と呼ばれる、民族ではなく戒律による契約、モーセの十戒である
そして、申命記での契約、 -
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難しかったけど読み応えあった。世界史の授業で習ったことも多く書かれていたけれども、著者の先生もあとがきで書かれていたように高校世界史ではユダヤ人はキリスト教誕生前とホロコーストくらいしか登場しなくて、ユダヤ人とのコンテクストで世界史の流れを習うことはなかったからどの章も興味深かったな。
民族離散、「国の法は法なり」と法的解釈、他宗教世界での繁栄と興亡、現代における文化多元主義と多文化主義、そして最後に紹介されたユダヤ現代史の三大拠点に生きる三名のユダヤ人 - ゼレンスキー、ネタニャフ、エレナ・ケイガンの三様な生き方などなと無限の組み合わせを経て生き続けてきたユダヤ人の歴史の上に立っているのを -
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「全史」と銘打った、ウクライナの歴史に纏わる本で、「上巻」の続きとなる「下巻」である。
「ウクライナの歴史」を古い時代から説き起こし、この上巻では20世紀初め頃に至る迄が綴られた「上巻」に対し、この「下巻」はそれ以降なので、扱われている期間は短い。しかしながら、本のボリュームは上下共に似たような分量になっている。
「下巻」については、20世紀初め頃の革命や内戦という様相から、戦間期や第2次大戦の頃、その後の様々なこと、更に「ウクライナ」の独立、最近の情勢と、非常に密度が濃い感じに纏まっている。概ね2020年頃迄の事柄が綴られる。
「下巻」の末尾には、「上巻」の部分も含めて、ウクライナの歴史に纏 -
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古い時代から最近に至る迄の経過、挿話を扱う「全史」ということで綴られた本の「上巻」である。
「ウクライナの歴史」を古い時代から説き起こし、この上巻では20世紀初め頃に至る迄の事柄が綴られる。
本書はソ連産れで、ウクライナで学位を得て研究教育活動に従事し、現在は米国で活動している「ウクライナ史」研究者が綴ったモノということになる。
本書は物語風で読み易くなっているとも思う。かなり古い時代から、興味深い挿話が積み重ねられていると思う。注釈を参照するような面倒な感じでもなく、「ウクライナ史」というようなモノになじみが薄い人達でも普通にさっと読めるような体裁に美味く纏められている。
本書を読んでいて、 -
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アブラハムに始まり、現代のイスラエルとガザの戦い、そしてウクライナ・ロシア戦争まで広範な時代を豊富な情報に満ちていて、ユダヤ民族史を知っているつもりの私にも目が開かされる驚きだった。特に中世でのユダヤ教とイスラム教の親しかった時代、むしろキリスト教よりもこの2つの宗教の親和性があったのは、確かにそうかも知れない。ナチスドイツのホロコーストは主犯格ではあるが、ポーランド、ウクライナなどでのポグロムなどのユダヤ人虐殺などの背景があったにも関わらず、ナチスにすべての罪を被せて追及されずに現代に至っている!なんとドイツ敗戦後の1946年7月にもポーランドでポグロムが起こっていたらしい。ロシアでのユダヤ
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3000年におよぶユダヤ人の歴史をコンパクトにまとめた一冊である。コンセプトは「組み合わせ」。国を持たないユダヤ人たちは、それぞれが住む国で「国の法は法なり」としてその国の法律に従う一方で、自分たちの宗教とその律法を守り続けてきた。そして、ユダヤ人集団が社会の中で適合する位置を探り続けてきたというのだ。しかし、それは宗教と自分たちの文化を守るが、条件が変わるとほかの集団からたやすく攻撃される立場である。貴族と結びついて徴税を請け負う仕事をしていたポーランドでは、農民の恨みを買いポグロムを招き、それはホロコーストにもつながった。しかし、今のイスラエルは、国際社会の中で最適な位置を探ろうとしている
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書店で平積みされているのを見かけて気になっていたのと、某Podcastで話題に上がっていて、これはやはり買わないと!と思って購入。
今参加している聖書読書会、前回の課題箇所がどんぴしゃで、読み初めて数ページで「買ってよかった!」とかみしめた。
こちらタイトルそのまま、
ユダヤの3000年史。
それこそ旧約聖書の時代から、ディアスポラ、ホロコースト、シオニズムに至る、古代近世現代を網羅するユダヤ民族の歴史が詳細に描かれている。
まず、「ユダヤ人」って定義が難しい。
ユダヤ教を信奉する人、ユダヤ民族の血をひいている人、…どこからどこまでをそう定義するのか?
そして長い間国土を持てなかったユ