岩崎育夫のレビュー一覧
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シンガポールは140年間イギリスの植民地であったが、日本軍に占領され、日本軍の植民地になり、虐殺が行われた。
そのことが、シンガポール人としてのアイデンティティ確立に働いたといえる。
経済成長至上主義のシンガポールは、エリート官僚選抜のための教育制度を設立。
敗者復活もなく大器晩成型の人間にも、官僚への道へ至る機会は与えられない。
だが、それゆえに短期間に発展した。
がゆえに、シンガポール文化というものはない。
マレーシアからの追放によって、
飛躍的に経済成長したシンガポール。
だが、文化の豊かさに関してはマレーシアの方に軍配が上がりそうだ。 -
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とっても短いシンガポールの歴史を、
主に政治、経済成長の観点からまとめた一冊。
シンガポール在住の筆者ということもあり、
歴史事実の背景からしっかり調べてあって、
なぜシンガポールが東南アジアでも独特の国として、進化を遂げ、東南アジア随一の経済先進国としてなったのかが、背景からよくわかる。
筆者のいうとおり、
ひとりあたりGDPで日本を上回る経済成長が実現できたのは建国者であるリークァンユーの力によるものだが、その代償も小さくはなかったということもよくわかる。
筆者が最後にシンガポールはまだまだアイデンティティを模索中の国だとまとめている。
今後若い世代を中心として、
新しいシンガポール -
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東南アジア各国の歴史、政治、経済がコンパクトにまとまっていて、興味がある人には非常に有益な本だと思う。
東南アジアの各国がどのように国家を形成し、植民地化、戦争経験を経て、現在の発展に至ってきたかをダイジェスト的に紹介されている。
個人的には、
戦時中の日本の蛮行や、なぜ植民地化の色合いが各国バラバラなのか(タイだけ植民地を免れてたり)など、興味をひかれる話がたくさん。
東南アジア、ASEANの今後は多様性の中の統一というインドネシアの国是に沿った考え方をもって緩やかな連携を目指していくべきという筆者の提言はまさにそのとおりだと思う。その中で、日本や我々がどのように東南アジアと関わっ -
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ネタバレそもそもなぜ東南アジアが植民地化されたのか?結局は資源、そして土地と労働力。そんな中で唯一植民地化を免れたのがタイ。その理由の一つである近代化改革「チャクリー改革」が、日本の明治維新と似た性格を持っていたという点に驚いた。もともと世界史を毛嫌いしていたが、同時期に世界各地でいかなる動きがあるのか、相違点でなく共通点を発見するのも楽しいかも知れない。近現代史の概略を知った上でASEAN創設の背景を知ることができ、歴史を流れでつかむことの大切さをまず思い出させられた。さて、問題はここからである。地域的にフォーカスして考えていくとなると、まだまだ他書との読み合わせも必要だ。その際ベースとなり、いつで
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ネタバレヨーロッパ諸国の東南アジア進出が始まった16世紀から現在までを5章に分け、これに序章、ASEANを扱った第6章、終章で構成。
●序章―東南アジアの土着国家
東南アジアの11国家は、面積・人口ともに大小さまざまで、経済発展段階も文化も大きく異なる。
・仏教文化圏:ミャンマー、タイ、ラオス、カンボジア
・イスラム文化圏:インドネシア、マレーシア、ブルネイ
・キリスト教文化圏:フィリピン、東ティモール
東南アジアはいくつもの中小規模の土着国家に分節していた(ひとつの国の支配下に置かれることは無く)多民族国家である。土着国家間で興亡を繰り返していた。これら土着国家の共通点は、「インド化した国」 -
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ラッフルズがインド・中国の貿易の中間点で、便利な港として「発見」したジャングルの島が、イギリス植民地、日本占領時代を経て、マレーシアの一部になるも追い出され、「誰にも祝福されない」独立を成し遂げてから、いかにして水も資源もない小国が今の経済発展を成し遂げていったか、ということを分かりやすく解説する本。
イギリスの分割統治の話(p.21)や、日本占領時代はナショナリズム意識を生むための「膨大な犠牲を払った学習機会」(p.56)としても捉えられる話なんかは納得だった。本書にも書いてあるが、シンガポールに行って、国立博物館の展示を見ていて思ったが、日本占領時代は苦難の時代だけれども、イギリス植民 -
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2016/2/10
シンガポールの改革を進めてきたリー・クアン・ユーの一生のような本。
・極めて合理的な政策により経済成長してきた反動で、この国では文化・宗教といった経済以外の教養が忘れられている。
・リー・クアン・ユー時代の人民行動党はこれまで野党の勢力が少しでも拡大すると厳しく弾圧してきた。
・ゴー・チョク・トンやリー・シェンロンの時代になり、自由な言論が許されるようになってきたこともあり、海外誘致の姿勢により国内を顧みてこなかったつけが回ってきている状況。
今後の舵取りは、経済成長一辺倒であった10年前よりも、遥かに難しいだろう。
資源をもたない経済大国シンガポールの今後の動向は今後も -
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一人当たりGDPで日本を抜き、アジアでもっとも豊かな国と言われるシンガポール。本書では、シンガポールの英国植民地時代から現代に至る200年の軌跡が描かれている。筆者も文中で述べているように、政治・経済に重点が置かれている面はあるが、そちらの分野に興味がある私にとっては良かった。リー・クアンユーというカリスマ政治家がいかに現在のシンガポールを築き上げたのか、その手法についての解説が非常に興味深かった。経済至上主義で発展を遂げてきたシンガポールでも、民主化の動きが起こるのか。人民行動党の一党独裁はいつまで続くのか。今後もシンガポールから目が離せない。