岩崎育夫のレビュー一覧
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シンガポールが1819年イギリスの植民地になるまで森以外にほぼ何もない島だったというのが驚きでした。そこに住み着いたのがあくまで出稼ぎという感覚で来ている移民だったために、定住社会ができるより先に国家が先行して成立したという特殊性が本当に面白かったです。国家主導で経済発展を最優先に政策決定したために、国に固有の文化や芸術が生まれなかったという指摘も納得です。以前シンガポールを訪れた際に、発展してきれいな国なのに、なにか掴みどころがなくて得体の知れない印象を受けた理由が分かった気がしました。
それにしても本書の読みやすさ、分かりやすさは完璧の域だと思います。歴史の開始が近代、かつ一党独裁というシンプルさのおかげもあるかもしれませんが、全ての出来事の因果関係をこれほど分かりやすく書けるものかと感心しました。時代区分を明確にして、政策や政権の特徴などをいくつか箇条書きのように説明して、その結果どうなるのか、ということが理路整然と解説されています。著者の力量、編集者の能力、シンガポールの歴史そのもの、いろんな理由があると思いますがとにかく素晴らしいです。
シンガポールは物価がものすごく高いという印象です。その理由も、経済発展→少子化→移民奨励→高所得移民が増えて物価高騰、という風に非常に分かりやすく説明されています。中間層より低収入の人々がどう生活しているか疑問だったのですが、公共住宅に住んでいる率が80%という話を読んで納得しました。隣同士を異民族にしたり、年金の積立金で持ち家として購入させて定住させ、国民としての帰属意識を醸成する手法に舌を巻きました。 -
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明るい北朝鮮と良く言われるシンガポールだが、実際のところどこまで北朝鮮なのか。
その歴史の始まりは1800年代と圧倒的に若い。
歴史がなく、多民族からなる国家だからこそ、強力な連帯が必要となり、
生き残るためには何よりも経済力が優先されたという点ではむしろアメリカとの共通点が見いだせる。
ではなぜアメリカとではなく北朝鮮と比較されるのか。それは規模に応じて戦い方が違ったからだろう。
アメリカの経済力とは、圧倒的な国土と人口を背景にした自由主義の旗の下の競争戦略であり、
新しい製品、サービスが生み出され続けることに起因する。
一方シンガポールはマレーシアとインドネシアに資源を握られた少数国民国家であるがゆえ、
生産力や労働力で近隣諸国に敵うはずもなく。
国家=企業となり、国家主導、官民一体で時事に応じた産業に舵を取り続けるしか生きる道はなかった。
それは輸送中継地点という地の利を活かした貿易業、石油精製業、多国籍企業の誘致で成功し、
近年では研究開発・ハイテクなどの資本集約・技術集約型にシフトしつつある。
しかし、シンガポールは小国と言えども多民族国家であり、
舵取りする船を一隻にまとめるには、経済以外の分野でも強権を発揮する必要にせまられた。
個人の権利、表現の自由、文化振興についての厳しい制約のマイナス影響は測りにくいが、
現時点ではただ表出していないだけとも見える。
小規模国家にはやはり独裁が適しているのか?
それともただ単に、良い独裁が成功し、悪い独裁が失敗しているだけなのだろうか。
北朝鮮に限らず、経済的に失敗しているはずの多くの独裁国では長期独裁政権が続いているし、
独裁下で民主運動が活発なミャンマーは、未だ混迷から抜け出せずにいる。
自由があって貧乏なシンガポールが良かったのか、自由がなくとも裕福なシンガポールが良いのか。
国について、未来はもちろん、過去現在についてすら評価は難しい。 -
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東南アジア11か国の近現代史と現状、課題について概観した1冊。各国で宗教、民族が大きく異なり、多様性が特徴のこの地域ではあるが、こうして東南アジアとして括って外観してみると、例えば、EUや東アジアとの違いが浮き彫りになって面白い。(EUは宗教的にも近い、歴史的にも侵略、交流を重ねてきた国々が、一つの共同体としてまとまろうという動きが、ASEANとは異なる。東アジアは、歴史的に分断された国(中国・台湾、南北朝鮮)が存在するために、統一の動きは困難)
最近読んだ、池上彰さんの東南アジア本の記憶が鮮明だったので、理解を深めるには良いタイミングだった。 -
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シンガポールは140年間イギリスの植民地であったが、日本軍に占領され、日本軍の植民地になり、虐殺が行われた。
そのことが、シンガポール人としてのアイデンティティ確立に働いたといえる。
経済成長至上主義のシンガポールは、エリート官僚選抜のための教育制度を設立。
敗者復活もなく大器晩成型の人間にも、官僚への道へ至る機会は与えられない。
だが、それゆえに短期間に発展した。
がゆえに、シンガポール文化というものはない。
マレーシアからの追放によって、
飛躍的に経済成長したシンガポール。
だが、文化の豊かさに関してはマレーシアの方に軍配が上がりそうだ。 -
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とっても短いシンガポールの歴史を、
主に政治、経済成長の観点からまとめた一冊。
シンガポール在住の筆者ということもあり、
歴史事実の背景からしっかり調べてあって、
なぜシンガポールが東南アジアでも独特の国として、進化を遂げ、東南アジア随一の経済先進国としてなったのかが、背景からよくわかる。
筆者のいうとおり、
ひとりあたりGDPで日本を上回る経済成長が実現できたのは建国者であるリークァンユーの力によるものだが、その代償も小さくはなかったということもよくわかる。
筆者が最後にシンガポールはまだまだアイデンティティを模索中の国だとまとめている。
今後若い世代を中心として、
新しいシンガポールの姿を模索する動きも出てきており、良くも悪くも実験国家として、まだまだシンガポールという国もおおきく変わっていくのだと思う。
シンガポールの歴史の全体感を理解する上でこの上ない一冊。シンガポールに興味があるすべての人に。 -
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東南アジア各国の歴史、政治、経済がコンパクトにまとまっていて、興味がある人には非常に有益な本だと思う。
東南アジアの各国がどのように国家を形成し、植民地化、戦争経験を経て、現在の発展に至ってきたかをダイジェスト的に紹介されている。
個人的には、
戦時中の日本の蛮行や、なぜ植民地化の色合いが各国バラバラなのか(タイだけ植民地を免れてたり)など、興味をひかれる話がたくさん。
東南アジア、ASEANの今後は多様性の中の統一というインドネシアの国是に沿った考え方をもって緩やかな連携を目指していくべきという筆者の提言はまさにそのとおりだと思う。その中で、日本や我々がどのように東南アジアと関わっていくべきか考えたい。 -
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ネタバレそもそもなぜ東南アジアが植民地化されたのか?結局は資源、そして土地と労働力。そんな中で唯一植民地化を免れたのがタイ。その理由の一つである近代化改革「チャクリー改革」が、日本の明治維新と似た性格を持っていたという点に驚いた。もともと世界史を毛嫌いしていたが、同時期に世界各地でいかなる動きがあるのか、相違点でなく共通点を発見するのも楽しいかも知れない。近現代史の概略を知った上でASEAN創設の背景を知ることができ、歴史を流れでつかむことの大切さをまず思い出させられた。さて、問題はここからである。地域的にフォーカスして考えていくとなると、まだまだ他書との読み合わせも必要だ。その際ベースとなり、いつでも振り返りやすいのが本書であるはず。
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ネタバレヨーロッパ諸国の東南アジア進出が始まった16世紀から現在までを5章に分け、これに序章、ASEANを扱った第6章、終章で構成。
●序章―東南アジアの土着国家
東南アジアの11国家は、面積・人口ともに大小さまざまで、経済発展段階も文化も大きく異なる。
・仏教文化圏:ミャンマー、タイ、ラオス、カンボジア
・イスラム文化圏:インドネシア、マレーシア、ブルネイ
・キリスト教文化圏:フィリピン、東ティモール
東南アジアはいくつもの中小規模の土着国家に分節していた(ひとつの国の支配下に置かれることは無く)多民族国家である。土着国家間で興亡を繰り返していた。これら土着国家の共通点は、「インド化した国」「あいまいな国家領域」そして「港市国家」である。
●第1章―ヨーロッパの植民地化(16~19世紀)
植民地化に対する現地の抵抗運動は勿論あった。しかし、軍事力の圧倒的違いと土着国家内の王位継承などを巡る内紛により、抵抗は失敗する。
植民地化の初期の目的は「第一次産品貿易」(モルッカ諸島(別名、香辛料諸島)における、胡椒・ナツメグなど)の独占であった。このため、貿易港の支配に関心があった。しかし、18世紀の産業革命の頃から、工業製品に必要な天然資源や販売市場の確保のため「領域支配」へと変化する。官僚制は上級ポストを本国人がおさえ、中級下級ポストに現地人を養成。中心都市にヨーロッパ風の建物、経済は資本主義化され、栽培の強制(モノカルチャー経済)、安い賃金での買い上げ、税金により過酷な収奪を行ったが、伝統経済も残り、二重構造化した。中国人と、インド人の出稼ぎが流入し、多民族社会へと変貌。ヨーロッパによる経済収奪で、地域は貧困化。独立運動の始まり。
●第2章―日本の東南アジア占領統治
第一次大戦が勃発すると、日本の経済進出が始まる。第二次世界大戦によるにおける占領は、アメリカなどの禁輸措置などにより、軍事行動や産業活動に不可欠な鉄、石炭、石油、ゴム、スズ、銅などの一次資源を調達する必要があったため。ビルマ、フィリピン、ベトナム、カンボジア、ラオスでの独立支援と宣言(戦後無効)。マレーシア、ビルマなどでは抗日運動もあり、サンフランシスコ講和条約対象国以外にも実質的な戦後賠償(無償経済協力金)が支払われた。
●第3章―大戦後の独立と混乱(1945~64年)
独立運動の担い手としてホー・チミン(ベトナム)、リー・クアンユー(シンガポール)、スカルノ(インドネシア)等のカリスマ指導者。多民族社会での独立における国家統合と国民統合。国民意識が醸成される一方、民族間対立による混乱の発生。インドネシア、ベトナムの独立戦争とベトナム戦争。スハルトによる共産党と華人排除。
●第4章―開発主義国家と民主化(1960年代後半~90年代)
政治社会の混乱の一因は貧困にあると考えられ、「開発主義国家」を目指す。国内の反対派、政治自由を抑圧し、指導者の権威のもとに、強力に経済成長を推進。スハルトのインドネシア、マルコスのフィリピン、マハティールのマレーシア等。政治体制としては「権威主義」に属する。1990年頃の冷戦の終焉、長期政権による腐敗、都市中間層の増大による「民主化」の波により、終焉する。
●第5章―経済開発と発展(1960年代後半~2000年代)
今なお残る経済の多様性。国民所得が高い順から、シンガポール、ブルネイ、(日本)、マレーシア、タイ、東ティモール、インドネシア、フィリピン、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアである。東南アジアの最貧国カンボジアは、シンガポールの僅か1/50である。
●第6章―地域機構ASEANの理想と現実
戦後の冷戦の影響により、次のように陣営(経済体制)が分かれた。
自由主義国:インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、フィリピン
社会主義国:ベトナム、カンボジア(中国依存の国)、ラオス(≒旧仏領インドシナ連邦)
中立:ミャンマー
ベトナム戦争が始まると、タイが安全保障の危機意識を持ち、ASEANを結成。当初は、東南アジアの反共自由主義5か国によるアメリカの軍事行動後方支援の同盟という性格が強かった(1967~75)。アメリカが撤退後、経済社会を強化することが共産主義勢力に対する対抗策と考え経済協力機構に転換した第2段階(1976~90)。経済協力機構への転換。ミャンマー、ラオス、カンボジアなど社会主義国などが加盟した第3段階(1991~99)。「ASEAN経済共同体(AEC)」に発展した第4段階(2000以後)へと発展した。
●終章―東南アジアとは何か
今後東南アジアの行方に強い影響を与えるのは、「多様性の原型」「イスラム過激派勢力」である。
東南アジア全体の統一を考えた場合、ヨーロッパとは文化的歴史的背景が異なる。つまり、過去にローマ帝国、神聖ローマ帝国、オスマン帝国のような国家を跨ぐ広大な地域を支配した国がなかったことや宗教文化の共通性がない。政治社会構造や経済発展段階もかなり違う。
換言すると、東南アジア諸国が目指す方向は、それぞれの固有性(多様性)を捨てて、同質化と一体化を目指すのではなく、それを前提にしたうえで協調ということになろう。 -
Posted by ブクログ
ラッフルズがインド・中国の貿易の中間点で、便利な港として「発見」したジャングルの島が、イギリス植民地、日本占領時代を経て、マレーシアの一部になるも追い出され、「誰にも祝福されない」独立を成し遂げてから、いかにして水も資源もない小国が今の経済発展を成し遂げていったか、ということを分かりやすく解説する本。
イギリスの分割統治の話(p.21)や、日本占領時代はナショナリズム意識を生むための「膨大な犠牲を払った学習機会」(p.56)としても捉えられる話なんかは納得だった。本書にも書いてあるが、シンガポールに行って、国立博物館の展示を見ていて思ったが、日本占領時代は苦難の時代だけれども、イギリス植民地時代はとても良いものとして描かれているのが印象的だった。
今の旅行者の目に映るシンガポールからは想像もできない独裁が行われていたというのは驚きだった。例えばインド人弁護士のジャヤレトナムという人(p.100)は、1980年代に国会で不適切な言動を行ったとして潰されてしまったし、2011年ですら「野党の立候補届けが受付時間を三〇秒ほど超えたため立候補を認められなかった」(p.209)ということがあったらしい。「野党候補者を選んだ選挙区の公共住宅修繕を後回しにする」(p.208)というのもあったらしく、すごい独裁だなと思った。北朝鮮という国が近くにあるだけに、これくらいのことなら大丈夫なのかなあとか思う。
シンガポールには宗教はないが、あるとすれば「プラグマティズム」というのは、恐ろしいというか、その中で生きていく人は大変だろうなあと思う。例えば「成績の悪い者には、これ以上の教育は無駄という『効率』が、教育でも原理とされている」(p.120)なんて、恐ろしい。「生存のための政治」をせざるを得ない状況がそうさせているのだということがよく分かった。(16/07/29) -
Posted by ブクログ
2016/2/10
シンガポールの改革を進めてきたリー・クアン・ユーの一生のような本。
・極めて合理的な政策により経済成長してきた反動で、この国では文化・宗教といった経済以外の教養が忘れられている。
・リー・クアン・ユー時代の人民行動党はこれまで野党の勢力が少しでも拡大すると厳しく弾圧してきた。
・ゴー・チョク・トンやリー・シェンロンの時代になり、自由な言論が許されるようになってきたこともあり、海外誘致の姿勢により国内を顧みてこなかったつけが回ってきている状況。
今後の舵取りは、経済成長一辺倒であった10年前よりも、遥かに難しいだろう。
資源をもたない経済大国シンガポールの今後の動向は今後も注視していくつもり。