岩崎育夫のレビュー一覧
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物語 シンガポールの歴史
エリート開発主義国家の200年
著:岩崎 育夫
中公新書 2208
おもしろかった。不思議な国家、シンガポールの成立と、その特徴を解説する本です
かって、マレーシアにコンピュータを出荷した際に、中継港であるシンガポールで戦略物資と勘違いされて、税関で捕まってしまい、1週間以上も納品に遅れたことを思い出しました。そのときも、マレーシアとシンガポールとの微妙な距離感を感じたものでした。
歴史
■シンガポールの誕生
もともと、マレー半島の南端にある島であり、海賊の棲みかであった、他には少数の漁民と、農民がいた
シンガポールとは、ライオンの街と言う意味である
イ -
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今さらながら読んで良かった。
「多様性の中の統一」という指摘や、宗教のこと、東南アジアがいくつもの中・小規模社会に分節しているということ、そして土着国家←→植民国家、あるいはインドの影響――といった、他の国・地域との関係で論じていく様は、わかり易く、説得力があり、そして面白い。
但しその共感・理解のベースにはこれまでの各国での体験やベトナム生活があってこそとも実感。比較し、他国含め理解し、そうしてこそ越を更に理解できた。(読書と体験とは車の両輪)
越は唯一「中華世界」だったが、清が仏に敗れカンボジア・ラオスとともに植民地になったことで「東南アジア」したとか(p.57)、フランスはカンボジア -
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岩崎 育夫
一九四九年長野県生まれ。立教大学文学部卒業、アジア経済研究所地域研究第一部主任調査研究員などを経て、現在、拓殖大学国際学部教授。主な著書に、『リー・クアンユー――西洋とアジアのはざまで』(岩波書店)、『物語 シンガポールの歴史――エリート開発主義国家の200年』(中公新書)、『アジア政治とは何か――開発・民主化・民主主義再考』(中公叢書)、『アジアの国家史―民族・地理・交流』(岩波現代全書)、『世界史の図式』(講談社選書メチエ)などがある。
入門 東南アジア近現代史 (講談社現代新書)
by 岩崎育夫
本章では最初に、土着国家を中心にした東南アジアの原型をみておく。具体 -
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シンガポールに留学、移住するなら絶対に持って行きたい1冊。シンガポールの歴史、経済、政治、全てが学べます。
シンガポールに来る前、この国の歴史について全くわからず、なんかゆるっと「安全だけど厳しい国」という認識でしたが、この本を読む中でなぜそのシステムが必要だったのか、ということが論理的にかつ簡潔に学べます。
良くも悪くもシンガポールはリー・クアンユーによって作られたのだなと再認識できる本であり、彼の目指す社会的な方向性、政治指針が今もシンガポールに根強く残っていることがわかるはず。この本のおかげでシンガポールという世界をよりクリアに知覚できたので、とても感謝しています。 -
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中公新書の「物語」シリーズ、いくつか手にとって読んだことはあったのですが、今まで読んだ「物語」シリーズの中では一番面白かったと思います。まずその理由は、シンガポールの歴史が浅いので、1冊の本の中でかなり密度の濃い記述がなされていることでしょうか。例えば同じ「物語」シリーズのアメリカ版などは(アメリカもフランス、イギリスと比べれば歴史が浅いのですが)、歴史本に良くありがちな「浅く広く」語っていて、あまり感銘を受けませんでした。その点、シンガポールの歴史は新書250ページくらいあればかなり密度の濃いものが読めると感じます。
次に良かった点として、シンガポールの独立後の経済成長については政治を軸とし -
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体系的、時系列的にまとめられていて、それぞれの国について丁寧に説明されている。複雑な内容なのに意外と読みやすかった。
個人的に東南アジア諸国と仕事関係していくこととなったので、手に取ってみました。どういった歴史を経て、現在の経済成長著しい東南アジアになっていったのかイメージを掴むことができた。各国多様性の中紛争、内乱を乗り越えて、政府主導や華人の躍動を経験しながら現在の姿があるんだと理解した。
将来的には中国、インド、日本に迫る経済力を付けていくのだろうけど、その頃の日本を想像すると何となく頼りないよなぁ。ASEANってEUとは違って政治統合まで突き詰めてなくて、緩やかな経済統合、内政不干 -
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[昇り竜解剖図]羨望を集めるほどの急激な経済成長で、東南アジア諸国の経済や投資を牽引してきたシンガポール。ほとんど顧みる人すらいなかった19世紀初頭の「発見」から、急速な経済成長を経た21世紀初頭までの歴史を概観した作品です。著者は、シンガポールをはじめとした東南アジア諸国の研究で知られる岩崎育夫。
非常にコンパクトにシンガポールの経済、政治、そして社会についてまとめられているため、同国に関心を持つようであればとりあえずオススメしたい一冊。現実主義に徹したシンガポールの世界観がどのように形作られ、成功を収めることになったかがよくわかるかと思います。シンガポールと東南アジア諸国の関わりについ -
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シンガポールが1819年イギリスの植民地になるまで森以外にほぼ何もない島だったというのが驚きでした。そこに住み着いたのがあくまで出稼ぎという感覚で来ている移民だったために、定住社会ができるより先に国家が先行して成立したという特殊性が本当に面白かったです。国家主導で経済発展を最優先に政策決定したために、国に固有の文化や芸術が生まれなかったという指摘も納得です。以前シンガポールを訪れた際に、発展してきれいな国なのに、なにか掴みどころがなくて得体の知れない印象を受けた理由が分かった気がしました。
それにしても本書の読みやすさ、分かりやすさは完璧の域だと思います。歴史の開始が近代、かつ一党独裁という -
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明るい北朝鮮と良く言われるシンガポールだが、実際のところどこまで北朝鮮なのか。
その歴史の始まりは1800年代と圧倒的に若い。
歴史がなく、多民族からなる国家だからこそ、強力な連帯が必要となり、
生き残るためには何よりも経済力が優先されたという点ではむしろアメリカとの共通点が見いだせる。
ではなぜアメリカとではなく北朝鮮と比較されるのか。それは規模に応じて戦い方が違ったからだろう。
アメリカの経済力とは、圧倒的な国土と人口を背景にした自由主義の旗の下の競争戦略であり、
新しい製品、サービスが生み出され続けることに起因する。
一方シンガポールはマレーシアとインドネシアに資源を握られた少数国 -
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東南アジア11か国の近現代史と現状、課題について概観した1冊。各国で宗教、民族が大きく異なり、多様性が特徴のこの地域ではあるが、こうして東南アジアとして括って外観してみると、例えば、EUや東アジアとの違いが浮き彫りになって面白い。(EUは宗教的にも近い、歴史的にも侵略、交流を重ねてきた国々が、一つの共同体としてまとまろうという動きが、ASEANとは異なる。東アジアは、歴史的に分断された国(中国・台湾、南北朝鮮)が存在するために、統一の動きは困難)
最近読んだ、池上彰さんの東南アジア本の記憶が鮮明だったので、理解を深めるには良いタイミングだった。