あらすじ
1人当たりのGDPで日本を抜きアジアで最も豊かな国とされるシンガポール。1965年にマレーシアから分離独立した華人中心の都市国家は、英語教育エリートによる一党支配の下、国際加工基地・金融センターとして発展した。それは、表現・言論の自由を抑圧し、徹底的な能力別教育を行うなど、経済至上主義を貫いた“成果”でもあった。本書は、英国植民地時代から、日本占領、そして独立し現在に至る200年の軌跡を描く。
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Posted by ブクログ
シンガポールの歴史に関する入門書として、シンガポールの起源から現代までの流れの大枠ができるだけ第三者の目線から記されており、理解が進んだ。
国家が社会を作った珍しい国であり、悪魔と貿易してでも経済発展させなければならないというプラグマティズムに寄せた国家運営をするに至る過程などが興味深い。
ここからリークワンユーの自伝等を読んでみたくなった。
Posted by ブクログ
物語 シンガポールの歴史
エリート開発主義国家の200年
著:岩崎 育夫
中公新書 2208
おもしろかった。不思議な国家、シンガポールの成立と、その特徴を解説する本です
かって、マレーシアにコンピュータを出荷した際に、中継港であるシンガポールで戦略物資と勘違いされて、税関で捕まってしまい、1週間以上も納品に遅れたことを思い出しました。そのときも、マレーシアとシンガポールとの微妙な距離感を感じたものでした。
歴史
■シンガポールの誕生
もともと、マレー半島の南端にある島であり、海賊の棲みかであった、他には少数の漁民と、農民がいた
シンガポールとは、ライオンの街と言う意味である
インドを植民地化したイギリスは、中国をめざしたが、途中に中継ポイントが必要であった。
マラッカがポルトガル、オランダの手に落ちると、イギリスは、シンガポールに目をつけた。
1824年、イギリスは、シンガポールを植民地として契約した
イギリスは、地域交易拠点として自由貿易港とすると、世界中から交易船があつまるようになった。
そうすると、シンガポールには、中国人、インド人、ヨーロッパ人が移民してくるようになる
■イギリス時代(1824-1942)
・シンガポールには、日本人の遊女、からゆきさんも、585人もいた
・1824年には、1万人、81年には、14万人、1901年には、23万人と増加していく
・1901年には、中国人72%、マレー人16%、インド人が8%となる。これは、現在の民族比率に近い
■日本占領時代(1942-1945)
・シンガポールでは、1942年2月から1945年8月までの日本占領時代は、「3年8カ月」と呼ばれる
・日本はシンガポールを昭南島と呼び、恐怖の日本化政策を推し進めた
憲兵隊による横暴、高インフレ、密告、そして、住民の監視・管理、体罰が、日本占領時代である
・シンガポールでは、これまでは、それぞれの民族がそれぞれに生活をしていたのであるが、日本占領を機会に、国民という意識を持ち始めるのである
・終戦後、イギリスは、日本に対して、損害賠償を放棄したため、日本へは請求ができなくなってしまう。これを、血債問題という
■自立国家の模索時代(1945-1963)
・イギリスは、マレーシアから、シンガポールを切り出して、単独の直轄植民地とした。
それは、シンガポールが軍事的に極めて重要な地点であったこと、マレー人が華人の政治的影響を懸念したことにある
・シンガポールに住む、華人、マレー人、インド人、ユーラシア人を結び付けていたものは、現地でうまれたということ、そして、英語を話すということであった
・1949年、中華人民共和国が成立すると、対立するイギリスは、華人に中国とシンガポールとの往来を禁止した。それは、共産主義思想をシンガポールに持ち込まれて困るからである。
・華人の少数は、中国に引き上げ、残りの大多数は、シンガポールに残ることを決意する
・シンガポールには、華人グループ(中国的国家)、英語教育集団(イギリス的国家)の2グループが対立する
この2つのグループを、仲介し、シンガポールをまとめようとしたのが、リー・クアンユーであった。
・リー・クアンユーは、人民行動党を結党し、シンガポールを統一していく。1959年、英連邦自治州となり、完全内政自治権が付与され、人民行動党が政権を掌握した。
・1963年マレーシア連邦が結成されると、シンガポールもマレーシア連邦に加盟する
・しかしながら、華人とマレー人との民族暴動が発生すると、その原因は、リー・クワンユーであるとして、マレーシアは、シンガポールを1965年に追放、分離する
・こうして、シンガポールは単独都市国家として、誕生することになる。
■シンガポール国家(1965-2024)
【1】リー・クワンユー時代(1965-1990)
・経済活動で国家を運用する方針を定め、そのためには、公民が一糸乱れず実行する体制が不可欠であるとした。
・共産系労働組合、学生運動、メディアなどを解散させて、政府に協力するものに入れ換えた。市民社会運動にも、容赦はしなかった。
・議院内閣制、一院とし、首相が最高指導者となる。大統領は対外的に国を代表する象徴であり、実権はほとんどない。
・5年任期で、集団選挙区と、小選挙区との組み合わせ。被選挙権は、21歳で、投票義務を課し、正当な理由なくして、投票を行わない場合は、次回以降の選挙権を喪うなど、社会的な不利益を被る。
・シンガポールは、国民皆兵であり、徴兵制、50歳までは、予備役に編入され、定期的な軍事訓練にも参加する義務がある
・英国連邦は、シンガポールを防衛する義務があったが、遠隔地のため、シンガポールはアメリカに庇護を求めるようになる。
・ASEANとは、ベトナム戦争時に結成された、反共5か国の軍事同盟としてスタートしたのであった。
・教育制度は、選抜制である。優秀な学生は、奨学金を得て、政府の重要機関に登用されるが、学力のないものは、最悪、大学を受験する資格もない。こうして、優秀な人材の囲い込みに成功する。成績の悪いものは、これ以上の教育は無駄という考え方である。
・なぜ、シンガポールが、東南アジアの経済的拠点になり得たのか。
それは、経済開発庁(EDB)を設立したおかげである。
シンガポールに進出したい外資企業は、政府の様々な役所と個別に交渉を行うのではなく、EDB、1か所だけと交渉ができるだけとした。以後の各省庁との調整は、全て、EDBが行う仕組みである。
そしてもう1つ、100%の外資を認めたことによる。
こうして、シンガポールは、製造と、金融の二大産業を育成した。
・シンガポールの政府系機関は、3つ。中央官庁、開発公社などの準政府機関、そして開発銀行や、航空会社などの、政府系企業である。
・四大華人企業
リー・コンチェン一族 華僑銀行(OCB)
ウィー・チョウヤオ一族 大華銀行(UOB)
オー・一族 華連銀行(OUB)
移民四兄弟 ホンリョングループ
【2】ゴー・チョクトン時代(1991-2004)
・ハンチントンの第三の波の時代、リー・クアンユーの権威統治に辟易していた民衆は、当初政治自由化に期待した。
・国民の4つのグループ
①批判行動グループ 数%
②政治活動はしないが、批判票を投じるグループ 20%
③政治的無関心 50%
④人民行動党を評価するグループ 30%
・外国人労働者の受け入れ
①建設業・製造業・サービス業 未熟練労働者
②中間管理職、専門技術者、研究者、弁護士、医師、会計士
③その中間、労働許可書と雇用許可書の中間のS許可書をもつもの
・外国人労働者を無制限に受け入れると問題が生じるため
①外国人労働者の比率は、30%を上限とする
②民族バランスを壊さないために、外国人労働者はアジア系民族に限定する
【3】リー・シェンロン時代(2004-2024)
・リー・シェンロンは、リー・クアンユーの長男、エリート中のエリート
・英語、華語、マレー語に堪能
・人民には、リー王朝の後継者として嫌われた
・問題
①水問題 マレーシアから水を輸入しているが、自給化できていない。淡水化プロジェクトなどの対応中
②少子高齢化 急速に高齢化するのは、シンガポールも同じ
③移民 移民の流入により、国民生活に影響がでている
・シンガポールの特徴
①経済発展が国是である
②近隣諸国よりも常に1歩でも、2歩でも先んじて、経済発展を心がけたこと
③経済発展は国家主導であったこと
④政治、民族文化が、経済発展の手段と考えられたこと
⑤シンガポールには、独自の文化が育たなかった
⑥欧米諸国には、政治と経済を使い分けていた
⑦国民の価値軸(アイデンティティ)が模索段階にある
・シンガポールとは、リー・クアンユーが手掛けてきた人工国家であり、芸術や文学などの文化がそだたなかったこと、近隣諸国からは、普通の歴史ある国家とはみなされていないこと、これがシンガポールの限界である。
目次
序章 シンガポールの曙―一九世紀初頭
第1章 イギリス植民地時代―一八一九~一九四一年
第2章 日本による占領時代―一九四二~四五年
第3章 自立国家の模索―一九四五~六五年
第4章 リークアンユー時代―一九六五~九〇年
第5章 ゴーチョクトン時代―一九九一~二〇〇四年
第6章 リーシェンロン時代―二〇〇四年~
終章 シンガポールとは何か
ISBN:9784121022080
出版社:中央公論新社
判型:新書
ページ数:280ページ
定価:860円(本体)
2013年03月25日初版
2022年07月30日8版
Posted by ブクログ
シンガポールに留学、移住するなら絶対に持って行きたい1冊。シンガポールの歴史、経済、政治、全てが学べます。
シンガポールに来る前、この国の歴史について全くわからず、なんかゆるっと「安全だけど厳しい国」という認識でしたが、この本を読む中でなぜそのシステムが必要だったのか、ということが論理的にかつ簡潔に学べます。
良くも悪くもシンガポールはリー・クアンユーによって作られたのだなと再認識できる本であり、彼の目指す社会的な方向性、政治指針が今もシンガポールに根強く残っていることがわかるはず。この本のおかげでシンガポールという世界をよりクリアに知覚できたので、とても感謝しています。
Posted by ブクログ
中公新書の「物語」シリーズ、いくつか手にとって読んだことはあったのですが、今まで読んだ「物語」シリーズの中では一番面白かったと思います。まずその理由は、シンガポールの歴史が浅いので、1冊の本の中でかなり密度の濃い記述がなされていることでしょうか。例えば同じ「物語」シリーズのアメリカ版などは(アメリカもフランス、イギリスと比べれば歴史が浅いのですが)、歴史本に良くありがちな「浅く広く」語っていて、あまり感銘を受けませんでした。その点、シンガポールの歴史は新書250ページくらいあればかなり密度の濃いものが読めると感じます。
次に良かった点として、シンガポールの独立後の経済成長については政治を軸として極めて明快な論理展開がなされていて、ものすごくわかりやすかったことです。これはシンガポール自体がある意味極めて明快な戦略を打ち立てていたからという面もありますし、それを著者がしっかり明快に記述しているからだと思います。シンガポールの生い立ち、経済成長の仕組みなど、初心者にはとても良い本と思いました。
Posted by ブクログ
シンガポール赴任者に特におすすめ。経済的観点でもある意味芸術やサブカルチャーの観点でも特異な国シンガポールの成り立ちがざっとよくわかる。著者の意見がちゃんと混ざっているのも良い。
Posted by ブクログ
リークワンユーまでの時代を読み込んだ。開発独裁国として成功を収めたシンガポールの成り立ちを簡潔かつ的確にまとめられている。中国、特に深センにおいても、シンガポールの政策を真似ている所なので、その意味でも参考になった。
面白かったのはリークワンユーといった母国語英語グループ(英国留学経験者)と母国語中国語グループ(中国からの出稼ぎ労働者)との政治的対立と克服の過程、香港もそうだが、西側の制度をアジアに的確に適応することで、日本をも凌ぐ競争力を持つ都市を設計できることだ。
Posted by ブクログ
[昇り竜解剖図]羨望を集めるほどの急激な経済成長で、東南アジア諸国の経済や投資を牽引してきたシンガポール。ほとんど顧みる人すらいなかった19世紀初頭の「発見」から、急速な経済成長を経た21世紀初頭までの歴史を概観した作品です。著者は、シンガポールをはじめとした東南アジア諸国の研究で知られる岩崎育夫。
非常にコンパクトにシンガポールの経済、政治、そして社会についてまとめられているため、同国に関心を持つようであればとりあえずオススメしたい一冊。現実主義に徹したシンガポールの世界観がどのように形作られ、成功を収めることになったかがよくわかるかと思います。シンガポールと東南アジア諸国の関わりについても頁が割かれているため、広く同地域に興味を持つ人にもオススメです。
〜比喩的に言えば、シンガポール株式会社の社長が創業者オーナーのリー・クアンユー、副社長がリーの片腕のゴー・ケンスィー、第一線の営業部長がエリート開発官僚、一般国民が事務職や現業の社員に相当する。そして、株式会社である以上、シンガポール株式会社は利益獲得に経営原理が置かれ、社長の大号令以下、社員全員が一丸となって会社の発展に励んだのである。〜
いつかあの不思議な形のホテルに足を運んでみたい☆5つ
Posted by ブクログ
上司がいるので最低年一回は出張するシンガポール(笑)実はそれまで行った事なくて、その歴史って知ってるようで知りませんでした。
占領下での残忍な行動にもかかわらず親日が多いので謎でしたが、これ読んでプラグマティズムゆえだなとハラオチしました。
英国、日本、中国、マレーシア、インドネシア、米国など関係諸国と様々なバランスで成り立っており、
政治的自由を制約してまで経済成長を追求するのはともかくとして、日本も学ぶべき所は多いですね。
この都市国家が経済戦略、政治面、文化芸術面など含めて今後どう変わっていくか注目したくなる一冊です。
Posted by ブクログ
シンガポールに旅行に行くにあたり、シンガポールの歴史って意外と知らないなと思い読んでみた。
イギリス植民地時代、日本統治下時代、リークアンユー時代あたりまででシンガポールの国としての成立ちや特性を大方知ることができ、実際に現地でその名残を感じることができて良かった。
※中華街、リトル・インディア、アラブ街がどういう経緯で出来ていったのか。
どのように経済成長を遂げたのか。
その後の政権での政治や経済の話は旅行目的であればあまり読まなくても良いと思った。
Posted by ブクログ
シンガポールが1819年イギリスの植民地になるまで森以外にほぼ何もない島だったというのが驚きでした。そこに住み着いたのがあくまで出稼ぎという感覚で来ている移民だったために、定住社会ができるより先に国家が先行して成立したという特殊性が本当に面白かったです。国家主導で経済発展を最優先に政策決定したために、国に固有の文化や芸術が生まれなかったという指摘も納得です。以前シンガポールを訪れた際に、発展してきれいな国なのに、なにか掴みどころがなくて得体の知れない印象を受けた理由が分かった気がしました。
それにしても本書の読みやすさ、分かりやすさは完璧の域だと思います。歴史の開始が近代、かつ一党独裁というシンプルさのおかげもあるかもしれませんが、全ての出来事の因果関係をこれほど分かりやすく書けるものかと感心しました。時代区分を明確にして、政策や政権の特徴などをいくつか箇条書きのように説明して、その結果どうなるのか、ということが理路整然と解説されています。著者の力量、編集者の能力、シンガポールの歴史そのもの、いろんな理由があると思いますがとにかく素晴らしいです。
シンガポールは物価がものすごく高いという印象です。その理由も、経済発展→少子化→移民奨励→高所得移民が増えて物価高騰、という風に非常に分かりやすく説明されています。中間層より低収入の人々がどう生活しているか疑問だったのですが、公共住宅に住んでいる率が80%という話を読んで納得しました。隣同士を異民族にしたり、年金の積立金で持ち家として購入させて定住させ、国民としての帰属意識を醸成する手法に舌を巻きました。
Posted by ブクログ
明るい北朝鮮と良く言われるシンガポールだが、実際のところどこまで北朝鮮なのか。
その歴史の始まりは1800年代と圧倒的に若い。
歴史がなく、多民族からなる国家だからこそ、強力な連帯が必要となり、
生き残るためには何よりも経済力が優先されたという点ではむしろアメリカとの共通点が見いだせる。
ではなぜアメリカとではなく北朝鮮と比較されるのか。それは規模に応じて戦い方が違ったからだろう。
アメリカの経済力とは、圧倒的な国土と人口を背景にした自由主義の旗の下の競争戦略であり、
新しい製品、サービスが生み出され続けることに起因する。
一方シンガポールはマレーシアとインドネシアに資源を握られた少数国民国家であるがゆえ、
生産力や労働力で近隣諸国に敵うはずもなく。
国家=企業となり、国家主導、官民一体で時事に応じた産業に舵を取り続けるしか生きる道はなかった。
それは輸送中継地点という地の利を活かした貿易業、石油精製業、多国籍企業の誘致で成功し、
近年では研究開発・ハイテクなどの資本集約・技術集約型にシフトしつつある。
しかし、シンガポールは小国と言えども多民族国家であり、
舵取りする船を一隻にまとめるには、経済以外の分野でも強権を発揮する必要にせまられた。
個人の権利、表現の自由、文化振興についての厳しい制約のマイナス影響は測りにくいが、
現時点ではただ表出していないだけとも見える。
小規模国家にはやはり独裁が適しているのか?
それともただ単に、良い独裁が成功し、悪い独裁が失敗しているだけなのだろうか。
北朝鮮に限らず、経済的に失敗しているはずの多くの独裁国では長期独裁政権が続いているし、
独裁下で民主運動が活発なミャンマーは、未だ混迷から抜け出せずにいる。
自由があって貧乏なシンガポールが良かったのか、自由がなくとも裕福なシンガポールが良いのか。
国について、未来はもちろん、過去現在についてすら評価は難しい。
Posted by ブクログ
シンガポールは140年間イギリスの植民地であったが、日本軍に占領され、日本軍の植民地になり、虐殺が行われた。
そのことが、シンガポール人としてのアイデンティティ確立に働いたといえる。
経済成長至上主義のシンガポールは、エリート官僚選抜のための教育制度を設立。
敗者復活もなく大器晩成型の人間にも、官僚への道へ至る機会は与えられない。
だが、それゆえに短期間に発展した。
がゆえに、シンガポール文化というものはない。
マレーシアからの追放によって、
飛躍的に経済成長したシンガポール。
だが、文化の豊かさに関してはマレーシアの方に軍配が上がりそうだ。
Posted by ブクログ
シンガポールはリークアンユーのカリスマで保っている国と簡単に理解していたが、大幅に理解の変更を迫られることになった。ある意味では合っていたが、そんなに単純なものではなかった。この本を読むことで、シンガポールという国の厳しい割り切りを歴史を俯瞰することで良く理解することができる。非常に読みやすい本だった。
Posted by ブクログ
とっても短いシンガポールの歴史を、
主に政治、経済成長の観点からまとめた一冊。
シンガポール在住の筆者ということもあり、
歴史事実の背景からしっかり調べてあって、
なぜシンガポールが東南アジアでも独特の国として、進化を遂げ、東南アジア随一の経済先進国としてなったのかが、背景からよくわかる。
筆者のいうとおり、
ひとりあたりGDPで日本を上回る経済成長が実現できたのは建国者であるリークァンユーの力によるものだが、その代償も小さくはなかったということもよくわかる。
筆者が最後にシンガポールはまだまだアイデンティティを模索中の国だとまとめている。
今後若い世代を中心として、
新しいシンガポールの姿を模索する動きも出てきており、良くも悪くも実験国家として、まだまだシンガポールという国もおおきく変わっていくのだと思う。
シンガポールの歴史の全体感を理解する上でこの上ない一冊。シンガポールに興味があるすべての人に。
Posted by ブクログ
昨年の出張にあわせて読んでみた本
リークワンユー政権以降のイメージしかないシンガポールの歴史について。日本も一時占領してたんですよね。
言語政策については、学生のときに学んだ気がするけど、いまはウィキペディアが詳しいですねえ。
海外含め、知らない都市に行く機会は少ないですが、行くとなったら、なんかしら本を読むようにしてます。シンガポールは、もう一冊読んだ。
Posted by ブクログ
シンガポールについてよくわかる本。
なぜシンガポールがこんなにも発展できたのか、そのストーリーが非常に論理的で納得できる。
また今後のシンガポールの課題までもが指摘されており、ただシンガポールがすごいというだけの感想で終わらずに済む。
この本を読むと、シンガポールに対する見方がより深く鋭くなることだと思います。
シンガポールに何らかのつながりがある人、興味がある人はぜひ読んでみてほしいです。
Posted by ブクログ
ラッフルズがインド・中国の貿易の中間点で、便利な港として「発見」したジャングルの島が、イギリス植民地、日本占領時代を経て、マレーシアの一部になるも追い出され、「誰にも祝福されない」独立を成し遂げてから、いかにして水も資源もない小国が今の経済発展を成し遂げていったか、ということを分かりやすく解説する本。
イギリスの分割統治の話(p.21)や、日本占領時代はナショナリズム意識を生むための「膨大な犠牲を払った学習機会」(p.56)としても捉えられる話なんかは納得だった。本書にも書いてあるが、シンガポールに行って、国立博物館の展示を見ていて思ったが、日本占領時代は苦難の時代だけれども、イギリス植民地時代はとても良いものとして描かれているのが印象的だった。
今の旅行者の目に映るシンガポールからは想像もできない独裁が行われていたというのは驚きだった。例えばインド人弁護士のジャヤレトナムという人(p.100)は、1980年代に国会で不適切な言動を行ったとして潰されてしまったし、2011年ですら「野党の立候補届けが受付時間を三〇秒ほど超えたため立候補を認められなかった」(p.209)ということがあったらしい。「野党候補者を選んだ選挙区の公共住宅修繕を後回しにする」(p.208)というのもあったらしく、すごい独裁だなと思った。北朝鮮という国が近くにあるだけに、これくらいのことなら大丈夫なのかなあとか思う。
シンガポールには宗教はないが、あるとすれば「プラグマティズム」というのは、恐ろしいというか、その中で生きていく人は大変だろうなあと思う。例えば「成績の悪い者には、これ以上の教育は無駄という『効率』が、教育でも原理とされている」(p.120)なんて、恐ろしい。「生存のための政治」をせざるを得ない状況がそうさせているのだということがよく分かった。(16/07/29)
Posted by ブクログ
2016/2/10
シンガポールの改革を進めてきたリー・クアン・ユーの一生のような本。
・極めて合理的な政策により経済成長してきた反動で、この国では文化・宗教といった経済以外の教養が忘れられている。
・リー・クアン・ユー時代の人民行動党はこれまで野党の勢力が少しでも拡大すると厳しく弾圧してきた。
・ゴー・チョク・トンやリー・シェンロンの時代になり、自由な言論が許されるようになってきたこともあり、海外誘致の姿勢により国内を顧みてこなかったつけが回ってきている状況。
今後の舵取りは、経済成長一辺倒であった10年前よりも、遥かに難しいだろう。
資源をもたない経済大国シンガポールの今後の動向は今後も注視していくつもり。
Posted by ブクログ
訪問前の予習として。
華やかで自由そうなイメージしかなかったが、
こんなにも管理社会の国だったとは知らなかった。
ここまで繁栄しても、
ずっと経済成長を目指し続けなければならないのは
何かしんどそうだと感じた。
Posted by ブクログ
これまで4回訪れたことのあるシンガポールについて知りたかったので本書を読み始めた。
シンガポールという国ができるまで、できてからほぼ今日までの政治的な動きがとてもよくわかった。
イギリスにより作られた国。
日本の侵略。
今や一大観光島になっている、セントーサ島で行われたこと。
これまでまったく知らなかった。
日本の教育を受け身で受けているだけではまったく知ることのできない,日本が大きく関わった外国の歴史。
読んで、知ることができて良かった。
Posted by ブクログ
一人当たりGDPで日本を抜き、アジアでもっとも豊かな国と言われるシンガポール。本書では、シンガポールの英国植民地時代から現代に至る200年の軌跡が描かれている。筆者も文中で述べているように、政治・経済に重点が置かれている面はあるが、そちらの分野に興味がある私にとっては良かった。リー・クアンユーというカリスマ政治家がいかに現在のシンガポールを築き上げたのか、その手法についての解説が非常に興味深かった。経済至上主義で発展を遂げてきたシンガポールでも、民主化の動きが起こるのか。人民行動党の一党独裁はいつまで続くのか。今後もシンガポールから目が離せない。
Posted by ブクログ
シンガポールの歴史と国としての簡単な紹介がコンパクトに纏められた一冊。ネットの記事とかで、日本より圧倒的に金持ち、教育レベルが高い、等の声をよく目にしてたので気になってこのタイミングで本を読んでみました。
で、感想ですが、やっぱり天国だけじゃないんだなと。まさに敏腕経営者が創設した毎年高利益を叩き出し続ける巨大企業そのものって印象でした。。。
ぶっちゃけゆとりが全く感じられない。そして予想以上な超格差社会、国民個人のアイデンティティがまさに経済生産能力で評価されてる感じで、トップに逆らったら絶対救われなそう......。
生産能力が低い僕の個人感想ですが、シンガポール、地獄っす。日本は一人当たりのGDPが高いアメリカ、シンガポールを目指すのではなく、デンマーク、フィンランドといった国を真剣に目指してほしい、マジで。
Posted by ブクログ
実態がつかみにくいシンガポールについて、前半の内容からある程度とらえることができた。ただ、中盤から、後半にかけて、各指導者の話に移るとあまり頭に入らなかった。
Posted by ブクログ
シンガポールの歴史を紹介した本。
民主主義政治は独裁政権より非効率だという。
現在の日本の政治などは、多分正にその非効率に蝕まれているように感じられる。
豊かさを求めるとするならば、迂遠な方法ばかりを選んでいるのではなかろうか。
それでも、長期的に見て、大きく誤る可能性が低いというメリットにかけているということなんだろう。
シンガポールは、どちらかといえば、独裁的な方法を選んできたようだ。
日本と比べ、各種条件に恵まれないために、効率的な方法を選ばざるを得ないという社会的な合意が底流にあるのだろう。
全く違う国だということが、よくわかった。
また、第二次世界大戦では、日本はシンガポールで恐ろしい行為を行ったということが紹介されている。
そうしたことも、しっかり覚えておく必要があると改めて感じた。