巽好幸のレビュー一覧
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46億年前に誕生した地球、そして日本列島についてとても分かりやすく解説した本。本書後半に、日本に地震や火山噴火が頻発するのはどうしてかを説明しているが、これがまたいい。
本書を読むと、まさにタイトルにある「地球は生きている」を感じる。地球は一つの生命体で、地震や火山はまるで地球が呼吸しているかのようだ。
地球の内部は意外に知られていない。それもそのはず、これまで人類が地球の中に最も深く到達したのは1万2,261メートル。約12km。ここまでしか「見ていない」のだ。
凄い記録のようだが、地球の半径は約6400kmなので12kmといっても大したことない。
が、これが人類の限界。一方、上に目を向けると、人類はどこまで到達したのか。月までは約38万km。上と下ではかなりの違いがある。
しかし、科学者は見たこともない地球の内部がどうなっているのかを探り、多くのことがわかってきた。地球にだけあるプレートテクトニクス、海が、地球の内部の対流現象をどのように引き起こしているのか、ダイナミックに語る。
日本列島の周辺は、地球上の十数枚しかないプレートのうち4つも集まっており、日本列島は地球上で最も活動的な変動帯に位置する。このため火山大国、地震大国になっている。
地球上には約1500の活動的な火山があるが、日本列島にはそのうちの111もある。地球表面のわずか0.1%にも満たない国土に10%近い火山が密集している。
また、比較的大きな地震をみると世界中の20%程度が日本列島で発生している。
しかし、これが水紫水明と形容される日本の山や川の美しさを作っている。
この地球は太陽からの適度な距離とその大きさにより原始大気を纏うことができ、そのことで水惑星として進化の道を歩んできた。この水惑星ではプレートテクトニクスが作動し、生命が育まれてきた。一方で地球の長い歴史のなかでは想像を絶するような大事件も勃発した。そんな試練を乗り越えて生命は進化し続け人類が誕生するに至った。
将来発生が確実な南海トラフ地震への備え、地球温暖化といった人類の活動が地球に大きな影響を与えるようになった気候変動、こういった試練を人類の知恵で乗り越えていかなければならない。そのためには地球のことを正しく知ること。これが大事だと思う。
地球、地殻、マントル、地震、火山などについて、いろんなエッセンスが詰まった本。こういう本を読むと更にこれはどうなっているのだろうかという関連疑問が次々に湧いてくる。地球に対する興味が尽きない。 -
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あとがきにこの本の意図するところが書かれて
います。
2013年2月、「和食」がユネスコ無形文化遺産
に登録されました。
そこで農林水産省は和食の特徴をこう表現して
います。
「日本の国土は南北に長く、海、山、里と表情
豊かな自然が広がっているため、各地で地域に
根ざした多様な食材が用いられています」と。
しかし「表情豊かな自然」はなにも日本だけに
限られたものではないです。「日本」を他の国
に置き換えた文脈も成立してしまいます。
そこで地質学です。
なぜ日本の水は美味しいと言われるのか。なぜ
出汁という旨味が発展したのか。なぜ瀬戸内海
は豊かな漁場なのか。
これらはすべて日本という地形だからこその産
物なのです。
何万年もかけて形作られた日本列島が、現在の
和食を育てたと言っていいのです。
自然のありがたみを噛み締める一冊です。 -
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各章ごとに「まとめ」があり,専門的な内容であるにも関わらず分かりやすく書かれてある。
■マグニチュードが1大きくなると地震のエネルギーは約32倍。2大きくなると1000倍大きくなる。
■マグニチュードが9以上の地震は数百キロメートルを超える範囲で大断層が動く。そのエネルギーはほぼ日本の年間総発電量に匹敵するほど。
■3.11後,日本列島では8つの火山で噴火が起きたが,6つは地震とは無関係な場所にある。
■御嶽山は80万年前から活動を始めていたが,歴史時代には噴火の記録が残っておらず,かつては死火山と考えられていた。
■地震が噴火を誘発する場合は地震に関連した現象によって,マグマ溜まりが刺激を受けてマグマが上昇を始める。
■日本列島周辺は4つのプレートがせめぎ合う地球上でもまれな地域で列島の下へ沈み込む2つのプレートは地震を起こしやすい条件を備えている。
■日本海溝から沈み込む太平洋プレートは地球上でもっとも古く約2億歳で,冷たくて重いため年間8センチメートルもの高速で押し寄せてきて,東北日本を圧縮する。
■南海トラフから沈み込むフィリピン海プレートは1500万年前に誕生した若いプレートで温かくて軽いプレートのため簡単には沈み込めず,その反作用として西南日本を強烈に圧縮する。
■日本列島は3.11以降「火山活動期」に入ったとは言えないというのが筆者の結論。
■列島にはいつ噴火してもおかしくない火山が110もある。
■プレートが地球の表面を覆っている理由は地球の中心が5000度を超える高温であるため。マントルは堅いプレートの下で対流している。
■プレートテクトニクスが作動しているのは太陽系惑星の中で地球だけ。
■国内高さランキング20位以内の半分以上が地球史の中で最も新しい地質時代である「第四紀」(約260万年前以降)の火山。
■地殻を太らせてゆくマグマは二酸化ケイ素などの軽い成分が濃集しているためマントルに比べるとずっと軽くなり,この軽い地殻が地球時間では流れるマントルの上に浮いていて,それがだんだんと分厚くなる。この地殻とマントルの釣り合いを「アイソスタシー」という。
■イギリス諸島では数千万年前を最後にマグマの活動がなかったため,それ以降地殻は成長していない。
■富士山の体積は約550立方キロメートル。富士山を全部崩してその土砂を使うと瀬戸内海の半分以上を埋め立てることができるはず。
■富士山の圧倒的な大きさの原因は伊豆半島を含む「伊豆・小笠原弧」が本州にぶつかっている「衝突帯」であるため。
■日本列島の火山は陸上だけではなく海域にも多く分布しており,富士山をしのぐ超巨大火山がいくつもある。
■日本最大の火山は富士山ではなく東京の南約1,130キロメートル,小笠原諸島父島の南南西に位置する噴火浅根火山(北硫黄島)であり,富士山の体積の6倍にも達する。仮にこの火山が陸上にあるとしたら,その裾は富士山の約2倍,高さは5,500メートルに達する。
■火山観測活動で噴火を予知することに成功した例は2000年の北海道有珠山西山噴火。しかし,噴火予知は短期的若しくは直前に限られており,何年も前に噴火を予知するいわゆる中長期噴火予知は現状では不可能。
■「島原大変肥後迷惑」
・雲仙眉山の崩壊による岩屑雪崩が有明海に突入し高さ10メートルの以上の津波が発生
・15,000人の犠牲者
■カルデラ
・釜や鍋のような凹みのある道具を意味するスペイン語に由来
・火山活動によってできた直径2キロメートル以上の窪地を指す
・浸食カルデラ:火口が侵食されて少し大きくなったもの
・馬蹄型カルデラ:山体崩壊により生じたU字型の窪地
・陥没カルデラ:地下に大量に溜まっていたマグマが一気に噴き出した結果,地下に巨大な空洞ができ,その天井が崩れてカルデラとなるもの
■縄文時代以来,日本人は巨大カルデラ火山の噴火に遭遇していない。
・厖大な量のマグマを一気に噴き上げ,火山灰と火砕流が広い範囲を覆い尽くす
・過去12万年ではM7以上の巨大カルデラ噴火が日本列島で少なくとも10回は発生
・支笏湖の西,約50キロメートルに位置する洞爺カルデラでは約11万年前に大規模な噴火が発生
・九州には4つの巨大カルデラが集中している。最大は阿蘇カルデラで東西18キロメートル,南北25キロメートル
■阿蘇カルデラは一度の噴火で形成されたものではない
・約27万年前,約14万年前,約12万年前,約9万年前に噴火
・最後の噴火では火山灰が北海道でも15センチメートル降り積もり,大規模火砕流は九州中部のみならず現在の山口県や天草諸島まで達した
・この噴火は阿蘇山最大の噴火であるのみならず過去約260万年(第四紀)の間に日本列島で起こった最大規模の噴火
■マグマの語源:糊のようにネバネバしたものを表すギリシャ語
■有馬型温泉の源は長い間謎であったが,最近になって南海トラフから沈み込むフィリピン海プレートから絞り出された高温水がその起源である「プレート直結温泉」であることが解った。
■地球の内部を溶かしてマグマを作る方法
①温度が上がること
②圧力が下がること
③水が加わること
■二酸化ケイ素成分の多い流紋岩質のマグマはとにかく軽く,このような性質のマグマが巨大なマグマ溜まりを作るとそのマグマ溜まりには大きな浮力が働き,その天井全体を押し上げて破壊しようとする。天井の地盤がこの力に耐えきれなくなると,天井のいたるところに割れ目ができて,そこでは圧力が下がる。その結果割れ目の部分での発砲が急速に進み,更に割れ目が成長することになる。こうしてマグマ溜まりが地表と直結し噴火が起きる。
■災害の大きさと頻度との間には「ベキ乗」(累乗)の関係がある。
・災害の規模が大きくなると頻度が急激に少なくなる
・「ベキ乗則」といい,万有引力の法則,円の面積と半径の関係も「ベキ乗則」に従う
・世の中の富は一部の人たちが独占しているという「パレートの法則」も「ベキ乗則」
・AKB48総選挙の結果も「ベキ乗則」に従うらしい
・地震の規模と発生頻度との関係も「ベキ乗則」であり,「グーテンベルグ・リヒター(GR)則」と呼ばれる
・日本列島で起きてきた火山噴火の規模と頻度は一つの関係式で表すことはできない
・山体噴火とカルデラ噴火は噴火様式が異なる
■日本列島の110ある活火山のうち,巨大カルデラ噴火を起こした火山は7つであり,北海道と九州にしか分布していない。つまり,この地域に限って融解ゾーンで作られた流紋岩質マグマが上昇・集積する条件が揃っている。
・巨大カルデラ火山は歪み速度が小さい地域に分布
・東北地方や中部地方は火山が密集するが歪み速度が大きい傾向があり巨大カルデラ火山は存在しない
■現在は,およそ過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山を「活火山」と呼んでいる。
■それぞれの事象が小さい確率で全く独立してランダムに起こる場合,その発生確率は「ポアソン分布」で示される。
・今後100年間にM7以上の巨大カルデラ噴火が起こる確率は1%弱(M8程度はその3分の1程度)
・箱根の強羅噴火クラス以上の巨大噴火は2%弱の確率
・阪神淡路大震災発生日前日における今後30年間の地震発生確率は0.02%~8%
■一つの火山の形成史を地質学的に明らかにするには一人の地質学者が一生をかけるくらいの時間が必要であるが,論文の数もそれほど稼げないので,現在の日本の大学はそのような学者を抱えるつもりがない。 -
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ネタバレこの本のタイトルはなぜこのタイトルか、読み終わると解るようになっている。
世界一の火山国、地震国である日本。そうなっている原因はせめぎ合うプレートにあるという。日本東岸の太平洋プレート、北海道から関東までが乗る北米プレート、糸魚川静岡構造線から西の日本列島が乗るユーラシアプレート、日本南岸に位置するフィリピンプレートである。
地球上に14枚あるとされるプレートのうち4枚が日本列島の下か至近にある。これが地震のもとになっているのは周知の通り。
では火山活動にはどのような影響を与えているのか。
プレートが沈み込むときに水分が抜け、その水分が地中で温度が上がり周囲の岩石を溶かしながらマグマだまりを作る。そのマグマが地表から吹きだせば火山となるのだがそのメカニズムはいまだ推測の域を出ていない。
日本には100以上の火山ある。先の御嶽山の噴火でもわかるように実は噴火の予測は非常に難しい。北海道の有珠山は数十年周期で噴火を繰り返すため精密に観測されていることと、専門の研究家がいたおかげで2000年の有珠山噴火の際には「今後144時間内に噴火の可能性大」と事前に警報を出すことができた。実際には警報発令から143時間後に噴火が起きたが住民は避難済みで人的な被害を回避できた。しかしほとんどの火山は観測下監視下になく予報のしようがない。
日本の火山噴火の様式には山体噴火(山体に火口が開き爆発するもの。富士山はこちらのタイプ)、とカルデラ噴火(山全体を吹き飛ばすような大噴火が起き、広範囲に火山灰や火砕流被害がおよぶ、阿蘇山噴火が例)に分かれる。
富士山の宝永噴火のエネルギーは2.1エクサジュールと推計される。一方でカルデラ噴火の例である鬼界カルデラ噴火のエネルギーは1600エクサジュールで圧倒的にカルデラ噴火のエネルギー量が大きく被害も甚大となる。日本で最後のカルデラ噴火となる鬼界カルデラ噴火は7300年前九州南岸で起こったがこの噴火により火山灰は遠く関東まで飛び、九州一円の生物は絶滅したとみられる。日本では過去12万年の間に7座が10回のカルデラ噴火をしている。これらの山は北海道と九州しかない。
九州で阿蘇山噴火並のカルデラ噴火が起きれば、九州一円は火砕流に覆われ、ほぼ全滅する。また火山灰はその後の24時間で大阪のあたりでも50センチをこえる降灰となるはずで木造家屋は重みに耐えきれず全壊となる。道路は5センチ、鉄道は10センチを超える降灰があると使えなくなる。おそらく北海道東部を除き、交通は全く止まる。日本国民ほぼ全員が被災する災害となる。(北海道でカルデラ爆発がおきれば北海道は火砕流で全滅するが火山灰は太平洋に落ちるので総体の被害は少ないだろう)
富士山や箱根が山体噴火をすれば関東一円には甚大な被害がでるだろう。
火山研究の最新情報を知ることができ、面白く読んだ。
また、地球で起きているプレート移動は他の惑星にはないという。(他の惑星は一枚のプレートでマントルがカバーされており、移動したりずれたりすることはない、と)その理由は地球には海があるから。
「日本海・その深層で起こっていること」でも驚きをもって読んだことだが、太陽系の中で居住可能な星は地球のみ。その地球の上でこれだけ複雑な地質、海があるのは日本だけ。
日本国や日本人が特別、とは思わないが、日本という国の特色に思いをはせて本を閉じた。 -
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プレートテクトニクスでは分からないどうやって大陸と海洋が別れたかなど仮説かもしれないが凄く納得できる。
地球の構造が中心から核、マントル、地殻がありマントルの対流で近くが動いて大陸移動したと言うのが一般的なプレートテクトニクスの理解だろう。ではそれぞれの構造は?と言うと核がほぼ鉄(とニッケル)でできていると言うのはまだ知ってる人が多いかもしれない。
マントルの組成は二酸化ケイ素と酸化マグネシウムが主でなんと月の石の酸素同位体測定の結果と全く一致する。原始の地球に原始の惑星「テイア」が激突し、その破片が重力の作用でできたのが月だと言う説が有力らしい。次に地殻だが大陸と海洋では組成が異なる。構成物質は二酸化ケイ素とアルミ、鉄、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウムの酸化物であり種類はマントルと一致するのだが、二酸化ケイ素の割合がマントル、海洋地殻、大陸地殻と次第に減る。大陸は二酸化ケイ素が60%ほどの安山岩質で海洋は50%ほどの玄武岩質なのだ。
安山岩質は軽い、そして玄武岩質は冷えるとマントルより重い。海嶺ではマントルが地中からわき上がってきて冷えて海洋地殻を生み出す。では大陸地殻はどこで生まれるかと言うと海溝だ。海洋地殻が沈み込む時温度が上がり、一部が融けマグマになる。この時できたマグマが冷えて固まると安山岩質の大陸地殻ができる。日本もそうだが環太平洋の火山帯は大陸を作る工場のようなものなのだ。中国などは大陸棚は自然の延長で大陸国家に属すると言うが、大陸ができるのが海溝の沈み込みなら自然の延長で島嶼国家に属するとも言えるわけだ。
火山帯はだいたい2列に並んでいる。日本海溝に対し平行に那須火山帯がありその後ろに平行して鳥海火山帯がある。海洋プレートの潜り込む角度によってマグマが発生する深さが決まっており、プレート深さ110kmと170kmでマグマができる。この時に関係してくるのが海=水の存在だ。沈み込む海洋地殻の含水鉱物は深さ100kmまでに水を吐き出し、沈み込む海洋地殻の上にある大陸側のマントルが水を受け取る。地殻に引きずり込まれ下降したマントだが岩質によって深さ110kmと170kmでまた水を吐き出す。水が上昇すると圧力が低い浅い所では融点降下の原理で個体のマントルが融けマグマが生まれる。この時一部が融けたマントルは粘度が低く軽いため固まりになって上昇する。地殻に引きずられて沈み込むマントルがあれば、それを穴埋めするために上昇する熱いマントルもある。この熱と上昇するマグマが出会って出来たのがマグマだまりと言われるものと考えていいだろうこれが火山のしくみだ。
他にも大陸の生成やダイヤモンドがどうやって地上に運ばれたか(一説では音速で地中を移動すると言う)など雑学も満載。JAMSTECはこの仮説を実証しようと深海掘削船ちきゅうで海底のマントル掘削を計画している。 -
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古代史の地質学的な背景を探っていく内容だが、著者自身が古代史そのものに入れ込んでいる。
ヤマト王権が奈良に生まれた理由の一つとして、この地が平坦な盆地で比較的水に恵まれ、稲作に適していたことが指摘されている。唐古・鍵を中心とする「おおやまと」地域は、盆地へ流れ込む最大の河川である初瀬川が流れ、湿地の近くにあったため、盆地内でも米の生産力が高く、それを背景に勢力を誇っていた。初瀬川流域に広く分布する斑レイ岩は鉄に富み、それが初瀬川に運ばれて稲の根腐れや病害を防いだり、空気中の窒素を固定する鉄還元菌の生育を促す効果をもたらした。3世紀の中頃を過ぎると、おおやまと地域は多くの移住者を迎えて新田開拓や技術開発を進め、米や手工業の生産力が飛躍的に向上した。洪水の危険性が低い川の上流域に、大規模な灌漑水路(纏向大溝)が建設され、おおやまとの中心となった。
5世紀後半から8世紀初頭までの間は、乾燥・温暖と湿潤・寒冷の幅が大きい気候不順期だった。735年と737年に疫病(麻疹)が大流行し、人口450万人のうち150万~200万人が死亡した。ヤマト王権が大神神社を創始して以来続いてきた祭祀国家を鎮護国家へと変更することが、アマテラスの子孫であり、神祇を祀ることが使命である天皇の存在そのものを否定することにならないよう、聖武天皇と橘諸兄が採用した方策が神仏融合だった。 -
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同年にでた『大地と人の物語』のように、神話や伝承、歴史を地学の立場で語る本が増えている。
来ちゃうのか?ブームが!
本作は日本古代史を地学的に掘る。
日本の歴史を学ぶものは、例えば「ヤマト(奈良盆地)の豪族の政権が強くなったの、なぜ?」という問いに「コメがたくさん取れたし、海からの距離もちょうど良かったし…」みたいな答えは用意できるし、まあ知っているわけだが本書では「じゃあなぜ奈良盆地のオオヤマトのあたりでコメがとれる?」と、もうひと掘り、問いを立ててくれる。
とくに、中盤、熊野の山や奇岩、鉱物などを扱う部分は読み応えがあって、いい学びになった。
ちなみに、「門外漢」が古代史を語る時あるあるの、「だからこの神話は実話だと思う…」とか「学会で黙殺された新事実!」みたいな断言口調のアホなことは基本言ってこない、押し付けがましくはない本なので、その辺は安心できる(もちろん、特に後半部で、学説が割れていたり定説のない事象に、「私はこの説の立場をとって語る」みたいな話の振り方はあるが)。 -
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火山学を専門とする著者が、日本の地質や地形と食文化(和食、酒、しょうゆ、出汁など)との関係を語る。
国内の各地のジオパーク活動とも関係させれば、地域が盛り上がるかな・・・。
食べ物と地質との官界、例えば、
・出汁:
日本の山は険しいので河川は急流、水に溶け込む成分が少ない(軟水)。軟水は昆布にしみ込んでグルタミン酸を抽出する(出汁の旨味となる)。
ヨーロッパで一般的な硬水で獣肉や鶏肉を煮込むとイノシン酸が抽出される(ブイヨンの旨味スープとなる)。
・醤油:
関西では、花崗岩や流紋岩が広く分布し、水には細菌が嫌う鉄分が少なく酵母の栄養となるカリウムなどが多いので優れた醤油ができる。塩水濃度を上げることで発酵を抑えて色を薄くするなどすると、薄口醤油
関東では河川(利根川)が長く上流部に石灰岩が分布するのでカルシウムやマグネシウム成分が関西よりは多い。そのため発酵が進みやすく、濃口醤油
・瀬戸内海の真鯛
フィリピン海プレートが斜めに沈み込むことで中央構造線が右横ずれをして瀬戸と灘の地形ができ、潮流の速い瀬戸で筋肉質になる旨味の強いマダイ(明石鯛) -
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副題として、「和食と日本列島の素敵な関係」とある。その地域に独特の食文化と食があるということは、理解できる。食を地質学から考察するというのがユニークである。
著者は地球科学者でマグマ学者。世界中の山や海底から採取してきた石のつぶやきに耳を傾けながら、太陽系唯一の「海惑星・地球」の進化や、地球上で最も火山や地震が密集する日本列島の歴史を調査してきた。著者は、無類の食いしん坊で、素敵な食材や料理を育む背景には、地球や日本列島のダイナミックな営みがあると思い、「美食地質学」を考究することを始めた。日本列島の形成の歴史、プレート運動、火山の恵み、そして水の恵みが、料理と深い関連がある。
地球は表面に水が存在したので、海惑星となり、地球だけにしかないプレートテクニクスが作動して陸惑星となった。日本列島は、2500万年前に、アジア大陸から分裂して誕生した。その時に日本海ができた。そして、約1500万年前に現在の位置にできた。日本には、4枚のプレート(ユーラシアプレート、北アメリカプレート、太平洋プレート、フィリピン海プレート)があり、それが地震が頻発する。マグニチュード6以上の地震は世界の地震の10%集中する。また、活火山は世界には約1500座あり、日本は111座あり約7%ある。地震や火山が集中するゾーンを「変動帯」という。日本は「変動帯」にあるので、多様な食材が生まれた。また中央に山脈ができた。
豊かで変化にとむ日本列島の自然は、海から、山から、そして四季折々に多様な食材をもたらしている。その食材の持ち味を最大限に活かす独自の文化「和食」を生み出した。
和食を支える水。料理に水は欠かせないが、水は地質にも密接に関係する。
日本のほとんどの地域の水は軟水で、軟水はクセがなくまろやかな味わいなので、素材の味を生かした料理にむく。その水が、和食の特徴を支えるのが出汁である。昆布は、カルシウムの多い水だと昆布のぬめり成分であるアルギン酸と結合して昆布の表面に皮膜を作り、グルタミン酸が抽出されなくなる。昆布の出汁を取るには、軟水が必要なのだ。
スープの原型は、古代エジプトの獣肉を煮込んだ。獣肉のイノシン酸が旨味成分となる。フランスのブイヨンはその代表だ。カルシウムが多い硬水が、より清浄なブイヨンとなる。縄文人は、獣肉を属していたが、天武天皇の675年の肉食禁止令が、獣肉文化が普及しなかった。
京都の水は、軟水、超軟水だから昆布出汁を基本とした和食となった。豆腐も軟水で美味しくなる。沖縄は硬水食文化がある。島豆腐、ソーキそば。硬水の方が豚肉の旨みが引き出し、食べる昆布文化となった。富山県利賀村は硬水であり、フランス料理のオーベルジュがあり、堅どうふがある。
硬水系の水は、力強く個性的な日本酒を生む。醸造過程で硬水のカルシウムが麹菌の酵素分泌を促す。発酵がよく進み、力強い酒が誕生する。
西洋では、パンやビール、ワインのような酵母による発酵や、チーズやヨーグルトなどは乳酸菌を利用。東アジアではカビを用いた発酵食品、紹興酒、テンペ、醤油、味噌がアジアモンスーンの影響を受ける湿潤な気候がカビ発酵文化が生まれた。麹菌に対して鉄分の多い水は、糖化がうまく進まない。和歌山県湯浅は、鉄分の少ない水だったので醤油発祥の地となった。その技術を、小豆島、龍野に持ち込み醤油産地となった。ここでも鉄分が少ない水があった。その地は、花崗岩や流紋岩で、鉄分が少ない水となる。
そばは、冷涼な気候と火山性土壌、くろぼくに生育する。活火山の近くにそば処がある。火山性土壌に含まれるアパタイトと呼ばれるリン酸塩鉱物は水に溶けにくく、多くの植物はそのリン酸を吸収することができないが、そばはアパタイトからリン酸が吸収できる。5000年以上前の縄文時代前期に蕎麦を栽培されたことが、わかっている。その時は、粒のまま雑炊のように食していたが、鎌倉時代に中国から挽臼が伝わって、そばの粉食が始まった。
土壌の種類(火山灰土壌、黒ボク土、砂質土壌など)やミネラルバランスが、野菜の生育、味、形、栄養価に影響する。土壌にあった作物が長年の経験から栽培されるようになった。
関東ローム層は、リンが十分に作物に吸収されないため、野菜の栽培には適さない。徳川綱吉5代将軍は、これを克服するために、江戸野菜を生み出した。綱吉の母親お玉の方は、京都の八百屋の娘だった。京都から江戸に引っ越した母親は江戸には野菜がないと嘆いていた。鷹狩りに行った綱吉が(江戸川区)小松村で食べた野菜が美味しかったので、小松菜とつけた。綱吉は下肥や干鰯、落ち葉を使って、土壌改良を進めた。そこから、地域によって様々な江戸野菜ができた。練馬大根、谷中生姜、千住ネギ、葛西蓮根、品川蕪、早稲田茗荷など。千葉の八街は、根粒菌による落花生が産地となった。
うどんのコシは、瀬戸内海の独特な地形と香川には河川が少ないことが影響している。瀬戸内式気候があるからである。そして、瀬戸内海の魚介類の豊富さと独特の潮の流れがタイやタコのおいしさを作った。潮の流れが強いことで、筋肉質になりこの筋肉質を動かす物質が旨み成分となる。江戸前の魚介類は、泥の内海が穴子を育む。リアス式の海岸が、森の成分が川に注ぎ込まれ、海でプランクトンが豊富になり、牡蠣などの貝類が美味しくなる。森は海の恋人なのだ。
琵琶湖は断層を伴う断層湖だ。琵琶湖は400万年前に東海湖と呼ばれ、それが徐々に北上し、100万年前に今の位置にきた。かっては海と接続していたが、ビワマスやコアユが陸封された。
地質学という専門分野を、「食」という身近なテーマと結びつけることで、一般の人々の興味を引きつけ、科学への関心を高めるきっかけとなる。ワインの「テロワール」のように経験的に語られてきた事柄に、地質学的な観点から科学的な根拠や説明を与えようとする試みだ。食材とその土地(地質、風土)との繋がりを意識させることで、地域固有の食文化や産物への理解・関心を深め、その価値を再認識させる。食を通じて地球環境や自然の恵みについて考えるきっかけを与える。
テロワール。その土地と風土、並びにその旬を、地質学から問いかけるのは、身土不二に近い考え方でもある。「身土不二」とは、「身」と「土」は「二つにあらず(不二)」、つまり身体と土地は切り離せない一体のものである。人間の生命と身体は、長い歴史の中で培われた。 -
Posted by ブクログ
日本の食文化が地形や地質と関係していることを説明する。
日本列島は2500万年前にアジア大陸から分裂して、1500万年前に現在の位置まで移動した。日本列島が大陸から分裂したのは、太平洋プレートが沈み込んで上部マントルと下部マントルとの境界付近に横たわっていたものが浮き上がることで、マントル内の上昇流が生じたためと著者は考えている。
この時代に、もともと一つの火山列島だった伊豆小笠原マリアナと九州パラオが分裂して、四国海盆とパレスベラ海盆という新しい海底地盤がフィリピン海プレートの中に誕生した。生まれたての熱いプレートである四国海盆が沈み込み、プレート自体が溶けて大量のマグマが発生した結果、西日本の太平洋沿岸に巨大火山が生まれ、地下では巨大な花崗岩体が形成されて、紀伊山地や中国山地、九州山地が隆起した。
300万年前、それまで北向きに動いていたフィリピン海プレートが北西へと向きを変えた。それによって、西日本には西向きの力が働くようになり、1億年前にできた中央構造線が動き出した。 200万年前から隆起し始めた赤石山脈は、フィリピン海プレートの沈み込みに伴う圧縮によって形成されたと考えられる。
マグマは地下数十kmの深さで発生するが、地表に達して火山となるのは1~2割で、ほとんどのマグマは地下で固まる。固まったマグマは周囲の岩盤より軽いため、浮力が働いて上昇するため、東北日本の山地が形成された。
花崗岩は、マグマが地下でゆっくり冷え固まったもの。白っぽい粗粒の岩石で、国会議事堂や城の石垣として使われる。御影石は、かつて六甲山系でとれた花崗岩がブランドとして全国に広まったもの。花崗岩は鉄に乏しく、カリウムに富むため、そこから湧き出る伏流性は、鉄分を嫌う麹菌やカリウムを栄養源とする酵母菌を用いる日本酒の製造に適している。日本の酒処の背後には、いずれも花崗岩の山が控えている。
花崗岩のほとんどは、日本列島がアジア大陸の一部だった白亜紀に形成された。白亜紀に大量のマグマが生成されたのは、海洋プレートの移動が速かったことが原因の可能性が高い。白亜紀のチョーク層には、ところどころに厚さ1mほどの黒色頁岩が挟まれており、有機物の分解が進まない無酸素状態が少なくとも10回以上繰り返されたことを示している。当時の大気中の二酸化炭素濃度は1000~3000ppmで、平均気温は15度以上も高かったため、極域の海水は氷結せずに塩分濃度が高くならず、沈み込まなかったため、海洋循環が停止した。その結果、海中への酸素供給が止まって、大規模な無酸素状態となった。白亜紀の温暖化の原因は火山活動と考えられ、その原因はマントル対流か活発になったことと考えられるが、その理由はよく分かっていない。
旨味成分のグルタミン酸は、乾燥昆布に染み込んだ水によって抽出されるが、カルシウムが多い硬水では十分に抽出されない。京都盆地の地下には、堆積した新しい地層が帯水層となって地下水盆が形成されている。京都の水はカルシウムが少ない軟水のため、この地が昆布出汁を基本とした和食の中心地となった。
世界の発酵食品は、酵母や乳酸菌を利用したものが多いが、モンスーンの影響を受ける東アジアでは、カビを用いた発酵食品が特徴である。
黒ボクと呼ばれる火山性の土壌では、リンがアパタイトと呼ばれる粘土鉱物に固定されてしまい、多くの作物はリンを吸収することができないが、ソバは吸収することができるため、火山性土壌でも育てることができる。
関東地方に広く分布する関東ローム層は、黒ボクと呼ばれる腐植土の下にある褐色の粘土質の土壌を指す。火山近傍に広がる荒地を覆う火山灰などの砕屑物が風で運ばれて再堆積した風塵と考えられる。
徳川綱吉の時代に川越藩主に任ぜられた柳沢吉保は、雑木林の落ち葉を堆肥として利用した三富新田の開発を進めた。この農法は作物の生産性向上に大きく寄与し、武蔵野台地一帯へと広がっていき、現在の東京野菜に引き継がれている。
関東地方の基盤は、深さ4000m以上のお椀型の窪地になっている。房総半島は、海溝型巨大地震による地殻の跳ね上がりによって隆起した。関東平野は、利根川をはじめとする河川が運ぶ土砂が、房総半島に堰き止められるように堆積することで広がった。
伊勢湾から琵琶湖、若狭湾にかけての沈降帯が連なっているのは、この地域のフィリピン海プレートの沈み込み角度が緩く、マントルの補償流が侵入できないことが原因と考えられる。