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日本独自の食文化、和食。出汁や醤油、豆腐に豊かな海産物は欠かすことのできない食材だ。なぜこれらの食材は日本で育まれたのか。その理由は日本列島にある。例えば、昆布出汁。軟水でこそその旨味を十分に引き出せるが、日本は活発な地殻運動により急峻な山地が形成されて川の流れが早くなり、ミネラルが溶け込む時間が短いために軟水が多いのだ。そんな和食と日本列島の切っても切れない素敵な関係をマグマ学者が丁寧に紐解く!
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Posted by ブクログ
出汁や醤油など特徴的な味付けで他国とは異なる和食。和食が食べれる日本に生まれてよかったと思う一方、なんで日本で特有の食文化が生まれたのだろうと疑問を持ち、この本を読んだ。 本書では、日本の調味料や酒などの作り方からおいしく作る条件を教えてくれるだけでなく、「なぜその条件が日本特有なのか」を地質学...続きを読むの観点から説明してくれる。食文化に地域性がある理由がとても腑に落ち、地質学の知識も増え、とても有意義な読書だった。
あとがきにこの本の意図するところが書かれて います。 2013年2月、「和食」がユネスコ無形文化遺産 に登録されました。 そこで農林水産省は和食の特徴をこう表現して います。 「日本の国土は南北に長く、海、山、里と表情 豊かな自然が広がっているため、各地で地域に 根ざした多様な食材が用いられて...続きを読むいます」と。 しかし「表情豊かな自然」はなにも日本だけに 限られたものではないです。「日本」を他の国 に置き換えた文脈も成立してしまいます。 そこで地質学です。 なぜ日本の水は美味しいと言われるのか。なぜ 出汁という旨味が発展したのか。なぜ瀬戸内海 は豊かな漁場なのか。 これらはすべて日本という地形だからこその産 物なのです。 何万年もかけて形作られた日本列島が、現在の 和食を育てたと言っていいのです。 自然のありがたみを噛み締める一冊です。
マグマ学者で美食家の著者ならではの視点で日本の食材についての蘊蓄と地学的側面から解説。日本という特別な環境があってこそできた食材であることがわかり、奇跡に感謝したくなります。地学知識はちょっと難しいところがあるかもですが、食材を見る目が変わるかも知れませんね
日本食の魅力を四季でなく地質学の観点から見つめた、食と地学の奇跡のコラボ。 水質やその本となる地質、日本列島の形成の過程の説明から、日本酒、醤油であったり琵琶湖の鮒寿司、江戸前の寿司などの由来を解説する。 火山、地震と引き換えに奇跡的に得た日本食の魅力。 これは楽しい1冊でした。まずは今年のB...続きを読むEST。
和食が各地で多彩であり、そして美味しい理由を、日本列島の成り立ち、地形、気候など地学的な観点から解き明かしたとても興味深い本。 科学的根拠に基づく説明は外国人にmake senseしやすいのでガイド時に役立ちます。
火山学を専門とする著者が、日本の地質や地形と食文化(和食、酒、しょうゆ、出汁など)との関係を語る。 国内の各地のジオパーク活動とも関係させれば、地域が盛り上がるかな・・・。
副題として、「和食と日本列島の素敵な関係」とある。その地域に独特の食文化と食があるということは、理解できる。食を地質学から考察するというのがユニークである。 著者は地球科学者でマグマ学者。世界中の山や海底から採取してきた石のつぶやきに耳を傾けながら、太陽系唯一の「海惑星・地球」の進化や、地球上...続きを読むで最も火山や地震が密集する日本列島の歴史を調査してきた。著者は、無類の食いしん坊で、素敵な食材や料理を育む背景には、地球や日本列島のダイナミックな営みがあると思い、「美食地質学」を考究することを始めた。日本列島の形成の歴史、プレート運動、火山の恵み、そして水の恵みが、料理と深い関連がある。 地球は表面に水が存在したので、海惑星となり、地球だけにしかないプレートテクニクスが作動して陸惑星となった。日本列島は、2500万年前に、アジア大陸から分裂して誕生した。その時に日本海ができた。そして、約1500万年前に現在の位置にできた。日本には、4枚のプレート(ユーラシアプレート、北アメリカプレート、太平洋プレート、フィリピン海プレート)があり、それが地震が頻発する。マグニチュード6以上の地震は世界の地震の10%集中する。また、活火山は世界には約1500座あり、日本は111座あり約7%ある。地震や火山が集中するゾーンを「変動帯」という。日本は「変動帯」にあるので、多様な食材が生まれた。また中央に山脈ができた。 豊かで変化にとむ日本列島の自然は、海から、山から、そして四季折々に多様な食材をもたらしている。その食材の持ち味を最大限に活かす独自の文化「和食」を生み出した。 和食を支える水。料理に水は欠かせないが、水は地質にも密接に関係する。 日本のほとんどの地域の水は軟水で、軟水はクセがなくまろやかな味わいなので、素材の味を生かした料理にむく。その水が、和食の特徴を支えるのが出汁である。昆布は、カルシウムの多い水だと昆布のぬめり成分であるアルギン酸と結合して昆布の表面に皮膜を作り、グルタミン酸が抽出されなくなる。昆布の出汁を取るには、軟水が必要なのだ。 スープの原型は、古代エジプトの獣肉を煮込んだ。獣肉のイノシン酸が旨味成分となる。フランスのブイヨンはその代表だ。カルシウムが多い硬水が、より清浄なブイヨンとなる。縄文人は、獣肉を属していたが、天武天皇の675年の肉食禁止令が、獣肉文化が普及しなかった。 京都の水は、軟水、超軟水だから昆布出汁を基本とした和食となった。豆腐も軟水で美味しくなる。沖縄は硬水食文化がある。島豆腐、ソーキそば。硬水の方が豚肉の旨みが引き出し、食べる昆布文化となった。富山県利賀村は硬水であり、フランス料理のオーベルジュがあり、堅どうふがある。 硬水系の水は、力強く個性的な日本酒を生む。醸造過程で硬水のカルシウムが麹菌の酵素分泌を促す。発酵がよく進み、力強い酒が誕生する。 西洋では、パンやビール、ワインのような酵母による発酵や、チーズやヨーグルトなどは乳酸菌を利用。東アジアではカビを用いた発酵食品、紹興酒、テンペ、醤油、味噌がアジアモンスーンの影響を受ける湿潤な気候がカビ発酵文化が生まれた。麹菌に対して鉄分の多い水は、糖化がうまく進まない。和歌山県湯浅は、鉄分の少ない水だったので醤油発祥の地となった。その技術を、小豆島、龍野に持ち込み醤油産地となった。ここでも鉄分が少ない水があった。その地は、花崗岩や流紋岩で、鉄分が少ない水となる。 そばは、冷涼な気候と火山性土壌、くろぼくに生育する。活火山の近くにそば処がある。火山性土壌に含まれるアパタイトと呼ばれるリン酸塩鉱物は水に溶けにくく、多くの植物はそのリン酸を吸収することができないが、そばはアパタイトからリン酸が吸収できる。5000年以上前の縄文時代前期に蕎麦を栽培されたことが、わかっている。その時は、粒のまま雑炊のように食していたが、鎌倉時代に中国から挽臼が伝わって、そばの粉食が始まった。 土壌の種類(火山灰土壌、黒ボク土、砂質土壌など)やミネラルバランスが、野菜の生育、味、形、栄養価に影響する。土壌にあった作物が長年の経験から栽培されるようになった。 関東ローム層は、リンが十分に作物に吸収されないため、野菜の栽培には適さない。徳川綱吉5代将軍は、これを克服するために、江戸野菜を生み出した。綱吉の母親お玉の方は、京都の八百屋の娘だった。京都から江戸に引っ越した母親は江戸には野菜がないと嘆いていた。鷹狩りに行った綱吉が(江戸川区)小松村で食べた野菜が美味しかったので、小松菜とつけた。綱吉は下肥や干鰯、落ち葉を使って、土壌改良を進めた。そこから、地域によって様々な江戸野菜ができた。練馬大根、谷中生姜、千住ネギ、葛西蓮根、品川蕪、早稲田茗荷など。千葉の八街は、根粒菌による落花生が産地となった。 うどんのコシは、瀬戸内海の独特な地形と香川には河川が少ないことが影響している。瀬戸内式気候があるからである。そして、瀬戸内海の魚介類の豊富さと独特の潮の流れがタイやタコのおいしさを作った。潮の流れが強いことで、筋肉質になりこの筋肉質を動かす物質が旨み成分となる。江戸前の魚介類は、泥の内海が穴子を育む。リアス式の海岸が、森の成分が川に注ぎ込まれ、海でプランクトンが豊富になり、牡蠣などの貝類が美味しくなる。森は海の恋人なのだ。 琵琶湖は断層を伴う断層湖だ。琵琶湖は400万年前に東海湖と呼ばれ、それが徐々に北上し、100万年前に今の位置にきた。かっては海と接続していたが、ビワマスやコアユが陸封された。 地質学という専門分野を、「食」という身近なテーマと結びつけることで、一般の人々の興味を引きつけ、科学への関心を高めるきっかけとなる。ワインの「テロワール」のように経験的に語られてきた事柄に、地質学的な観点から科学的な根拠や説明を与えようとする試みだ。食材とその土地(地質、風土)との繋がりを意識させることで、地域固有の食文化や産物への理解・関心を深め、その価値を再認識させる。食を通じて地球環境や自然の恵みについて考えるきっかけを与える。 テロワール。その土地と風土、並びにその旬を、地質学から問いかけるのは、身土不二に近い考え方でもある。「身土不二」とは、「身」と「土」は「二つにあらず(不二)」、つまり身体と土地は切り離せない一体のものである。人間の生命と身体は、長い歴史の中で培われた。
日本の食文化が地形や地質と関係していることを説明する。 日本列島は2500万年前にアジア大陸から分裂して、1500万年前に現在の位置まで移動した。日本列島が大陸から分裂したのは、太平洋プレートが沈み込んで上部マントルと下部マントルとの境界付近に横たわっていたものが浮き上がることで、マントル内の上昇...続きを読む流が生じたためと著者は考えている。 この時代に、もともと一つの火山列島だった伊豆小笠原マリアナと九州パラオが分裂して、四国海盆とパレスベラ海盆という新しい海底地盤がフィリピン海プレートの中に誕生した。生まれたての熱いプレートである四国海盆が沈み込み、プレート自体が溶けて大量のマグマが発生した結果、西日本の太平洋沿岸に巨大火山が生まれ、地下では巨大な花崗岩体が形成されて、紀伊山地や中国山地、九州山地が隆起した。 300万年前、それまで北向きに動いていたフィリピン海プレートが北西へと向きを変えた。それによって、西日本には西向きの力が働くようになり、1億年前にできた中央構造線が動き出した。 200万年前から隆起し始めた赤石山脈は、フィリピン海プレートの沈み込みに伴う圧縮によって形成されたと考えられる。 マグマは地下数十kmの深さで発生するが、地表に達して火山となるのは1~2割で、ほとんどのマグマは地下で固まる。固まったマグマは周囲の岩盤より軽いため、浮力が働いて上昇するため、東北日本の山地が形成された。 花崗岩は、マグマが地下でゆっくり冷え固まったもの。白っぽい粗粒の岩石で、国会議事堂や城の石垣として使われる。御影石は、かつて六甲山系でとれた花崗岩がブランドとして全国に広まったもの。花崗岩は鉄に乏しく、カリウムに富むため、そこから湧き出る伏流性は、鉄分を嫌う麹菌やカリウムを栄養源とする酵母菌を用いる日本酒の製造に適している。日本の酒処の背後には、いずれも花崗岩の山が控えている。 花崗岩のほとんどは、日本列島がアジア大陸の一部だった白亜紀に形成された。白亜紀に大量のマグマが生成されたのは、海洋プレートの移動が速かったことが原因の可能性が高い。白亜紀のチョーク層には、ところどころに厚さ1mほどの黒色頁岩が挟まれており、有機物の分解が進まない無酸素状態が少なくとも10回以上繰り返されたことを示している。当時の大気中の二酸化炭素濃度は1000~3000ppmで、平均気温は15度以上も高かったため、極域の海水は氷結せずに塩分濃度が高くならず、沈み込まなかったため、海洋循環が停止した。その結果、海中への酸素供給が止まって、大規模な無酸素状態となった。白亜紀の温暖化の原因は火山活動と考えられ、その原因はマントル対流か活発になったことと考えられるが、その理由はよく分かっていない。 旨味成分のグルタミン酸は、乾燥昆布に染み込んだ水によって抽出されるが、カルシウムが多い硬水では十分に抽出されない。京都盆地の地下には、堆積した新しい地層が帯水層となって地下水盆が形成されている。京都の水はカルシウムが少ない軟水のため、この地が昆布出汁を基本とした和食の中心地となった。 世界の発酵食品は、酵母や乳酸菌を利用したものが多いが、モンスーンの影響を受ける東アジアでは、カビを用いた発酵食品が特徴である。 黒ボクと呼ばれる火山性の土壌では、リンがアパタイトと呼ばれる粘土鉱物に固定されてしまい、多くの作物はリンを吸収することができないが、ソバは吸収することができるため、火山性土壌でも育てることができる。 関東地方に広く分布する関東ローム層は、黒ボクと呼ばれる腐植土の下にある褐色の粘土質の土壌を指す。火山近傍に広がる荒地を覆う火山灰などの砕屑物が風で運ばれて再堆積した風塵と考えられる。 徳川綱吉の時代に川越藩主に任ぜられた柳沢吉保は、雑木林の落ち葉を堆肥として利用した三富新田の開発を進めた。この農法は作物の生産性向上に大きく寄与し、武蔵野台地一帯へと広がっていき、現在の東京野菜に引き継がれている。 関東地方の基盤は、深さ4000m以上のお椀型の窪地になっている。房総半島は、海溝型巨大地震による地殻の跳ね上がりによって隆起した。関東平野は、利根川をはじめとする河川が運ぶ土砂が、房総半島に堰き止められるように堆積することで広がった。 伊勢湾から琵琶湖、若狭湾にかけての沈降帯が連なっているのは、この地域のフィリピン海プレートの沈み込み角度が緩く、マントルの補償流が侵入できないことが原因と考えられる。
軟水と硬水。二つの水の性質が、我らの食文化のルーツにつながっているとは。目に見えない地下水脈から流れる水が私たちの生命の営みと、文化の基礎を支えてくれている。この本は知らなかったことをプレートの話から食文化の話までを織り交ぜて静かに教えてくれる。また読みたい一冊。
食に対しての見方が広がった。 元々、食を科学的に理解したい欲求はあったから自身にはピッタリの内容だった。 ただ地質系の話は少し苦手なため、その点だけ読み進めるのに少し苦労した。
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「美食地質学」入門~和食と日本列島の素敵な関係~
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