阿川尚之のレビュー一覧
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アメリカの建国から現在までの歴史を通してのアメリカの憲法の制定と改正に関する歴史の物語です。海外出張に当たっての飛行機での睡眠導入にもなるかなと思って読みはじめたのですが,内容がとても面白く,眠るどころか最後まで通して読んでしまいました。アメリカ史の把握と言うことにもありますし,アメリカにおける憲法の位置付け,そしてその位置付けが確保されるまでの背景など,経緯とともに興味深く読みました。
日本の憲法についてもいろいろと意見がありますが,個人的には,少なくとも,憲法についてどう考えるという議論はあってもよいと考えています。何も考えないままに最高法典として触れてはいけないものとして盲信するのは -
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海上自衛隊と米海軍の交流を描いた書である。日米とも海軍について書かれた本は第二次大戦までは多くあるが、戦後は実戦がないだけにほとんど見当たらない。特に、どのような人物がいたかは全く知られていない。
本書を読んで初めてそれを知り、立派な人たちが多くいたことを知った。それは米海軍も認めていたからこそ、両者の関係が次第に強まり、かつての敵対関係が陸空に先んじて同盟関係にまで達したのであろう。
それを促したキーパーソンが両国にいたことが幸いしたこともあったが、彼らの活躍も両組織の理解があったからである。
本書は戦後の日米関係の一端を知るのに好著である。 -
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たいへんいい本を読んだ。
湾岸戦争の後
海上自衛隊の掃海部隊は、
ペルシャ湾の掃海に従事した。
その掃海作戦について、
この本で初めて詳細を知った。
アメリカ海軍に「アーレイバーク」という駆逐艦がある。
イージスシステムを搭載した防空駆逐艦だ。
「アーレイバーク」は、アメリカ海軍のアーレイバーク提督の名前をもらったことは知っていたが、
アーレイバーク提督は、日本と関係が深いことを初めて知った。
海上自衛隊の「こんごう」級は、
「アーレイバーク」によく似ている。
ほとんど同型艦だ。
先日の観艦式の予行のチケットを前日になって入手したが、
さすがに「前日」は無理で、フネには乗れなかった -
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アメリカ建国からバーガーコートまで約200年をカバー。合衆国連邦と州政府のと関係、州際条項を活用しての連邦政府の各州政府規制への努力、立法・行政との力関係の中で前判例を覆す判例を出しながら時に進展し、時に非難を招いてきた歴史を丁寧に解説。特に、連邦最高裁の権力の確立、先住民の扱いの歴史、奴隷制廃止に至る裁判史、連邦政府による経済規制の歴史、黒人差別撤廃への歴史など、アメリカ史の重要局面においてあまり紹介されていない連邦裁判所の関わり方がわかる。アメリカでは司法社会と言われるほど、出きた州法、連邦法の正統性を否定する訴訟が多く、大統領令、議会法を制定しても裁判所の判決を待たないと最終的に何が有効
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20世紀以降のアメリカがクリエイティブな発想と内から溢れる力強さを備えている理由の端緒がわかった。建国以来ずっと正しさの根拠を求めて司法が格闘しているのだ。アメリカという国は憲法を通じて正しさを生み出すことに積極的だった。建国して以来国が成長するのと歩調を合わせて、憲法やその解釈も次第に成長してきたようだ。憲法が成文化されていないイギリスも似たようなものだという認識があるが、アメリカはその嫡出子だったということだろう。
ひるがえって日本を見つめると、明治維新後は正しさの根拠は主権者たる天皇から降ってくるものだととらえ、戦後はアメリカ流の憲法を移植した。憲法だけをとって歴史的成り立ちを対比する -
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本書を読むきっかけは、米連邦最高裁が06/24に1973年の「ロー対ウェード判決」を覆した背景を知りたいと思ったから。
トランプが中絶禁止、同性婚禁止をすべく保守派の判事を最高裁に送り込んでいたのは知っていたが、日経の以下の記事を読んで、アメリカの司法制度について学ぶ必要があると考えた。
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オバマ政権下で民主党は2013年、上院(定数100)で第二審にあたる控訴裁の判事承認に必要な賛成票を60票から51票に引き下げた。共和党からの賛成が得られず、判事の承認が滞ったからだ。60票が必要な従来の手続きは承認に超党派の合意がいるため、判事に大きな偏りが出ない制度として機能してきた。賛成票 -
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アメリカの憲法史。予備知識の不足が過ぎて厳しい面もあるが、勉強になった。
世界最古の現存する成文憲法とも言われるアメリカ合衆国憲法であるが(著者は厳密にはそうではないとしている)、過去27回の改正を行っている、元はイギリスのコモンローを構成する、マグナカルタや権利章典を受け継いでいる。独立当初にバラバラだった13州の調整を取らなければならず、最初はとりあえず成立させ欠落していた権利章典を改正で追加する。大きな変化は南北戦争であり、奴隷制の否定に関わる部分を明確にしていく。また南北戦争や大恐慌時代など大統領が憲法の解釈を超えて行動したことや、実質的に解釈が変わったことも多い。
ただアメリカ合衆国 -
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大井氏が最晩年に水交会の雑誌に連載したエッセイをまとめたものである。1994年に92歳で亡くなり未完となったが、昭和一桁の時代のアメリカ留学の話を、自身や同行の保科善四郎の日記を参考にしつつも、平成の時代に書くのだから凄い。これだけでも大井氏の頭の良さが窺える。
保科さんと私という副題ながら、次第に私が何を考えていたかに重点がおかれていく。丁寧で飾らない文章は読みやすいながら、ジェファーソンやアリストテレスを引用してのアメリカ理解、「リクツヤ」の自覚、海軍留学組や現地の人々との交流、など昭和初期の海軍エリートの等身大の姿がよく表れていておもしろく読めた。 -
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これは良い本見つけた。アメリカの最高裁判所が司法審査(違憲立法審査)の権限を存分に行使して国の方向を作っていったのがよくわかった。最高裁判決が判事の政治色の影響を受けていることに違和感を感じたが、それが逆に世間の動向に合わせた柔軟な変化を生み出すことになったと思う。憲法解釈だけに縛られておらず、勢いで行く感じ(特に非常時)。憲法の中では通商条項とデュープロセス条項が便利に使われていたな。
有名な「人民の人民による人民のための政府」は「連邦の正統性の基盤が州ではなく人民にある」という意味であることが、連邦と州の争いの経緯からよく分かった。