あらすじ
「憲法は〈国のかたち〉を表現している」「〈国のかたち〉は、改憲しても変わらないこともあれば、改憲しなくても変わってしまうこともある」―― 27回の改正を経てきたアメリカ合衆国憲法の歴史から、「立憲主義」の意外な奥深さが見えてくる。「憲法改正」「解釈改憲」をめぐる日本人の硬直した憲法観を解きほぐす快著。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
アメリカの建国から現在までの歴史を通してのアメリカの憲法の制定と改正に関する歴史の物語です。海外出張に当たっての飛行機での睡眠導入にもなるかなと思って読みはじめたのですが,内容がとても面白く,眠るどころか最後まで通して読んでしまいました。アメリカ史の把握と言うことにもありますし,アメリカにおける憲法の位置付け,そしてその位置付けが確保されるまでの背景など,経緯とともに興味深く読みました。
日本の憲法についてもいろいろと意見がありますが,個人的には,少なくとも,憲法についてどう考えるという議論はあってもよいと考えています。何も考えないままに最高法典として触れてはいけないものとして盲信するのは,最高法典としての位置付けを損なうことや,その重要性を損なうだけでしかないように考えます。議論をしたうえで,改正をしないのなら改正しない,改正するのなら改正するということを進めて行くのは,おかしなことではないと思いますし,アメリカではそのようにしていたということがこの作品からもわかります。
Posted by ブクログ
アメリカの憲法史。予備知識の不足が過ぎて厳しい面もあるが、勉強になった。
世界最古の現存する成文憲法とも言われるアメリカ合衆国憲法であるが(著者は厳密にはそうではないとしている)、過去27回の改正を行っている、元はイギリスのコモンローを構成する、マグナカルタや権利章典を受け継いでいる。独立当初にバラバラだった13州の調整を取らなければならず、最初はとりあえず成立させ欠落していた権利章典を改正で追加する。大きな変化は南北戦争であり、奴隷制の否定に関わる部分を明確にしていく。また南北戦争や大恐慌時代など大統領が憲法の解釈を超えて行動したことや、実質的に解釈が変わったことも多い。
ただアメリカ合衆国憲法には時代の価値観はあまり記載はなく、それが時の流れに耐えうる少ない改正につながったと著者は考えている。改正の要件は連邦議会両院議員の2/3および州議会議員の3/4である。著者の憲法改正に対する立場にイデオロギーの側面は見当たらず、方法論として、改正は時の要請にあったものはすべきである、拙速な改正やすでに何十年のその仕組みでやってきたものの全面改訂は混乱につながる。実際自衛隊は解釈の変更によってすでに国民にある程度認知された存在になっている。
Posted by ブクログ
米国の憲法改正から憲法解釈や日本国憲法との関係性について書かれた一冊。
英国からの独立時に制定された合衆国憲法から27回の改正を経ている米国の憲法について、フェデラリストとアンチフェデラリストの間で改正についての議論を重ねた結果現在のかたちに至ったことや南北戦争終戦後に13条、14条、15条の修正憲法により人種差別の撤廃を謳ったことや憲法解釈をめぐる最高裁と大統領の関係を判例を用いて解説されていたりと米国の憲法を通して自分の知らなかった憲法の
側面を知ることができました。
また、ルーツにあるのが欧州の列強各国から自国を防衛することを目的としていることも知ることができました。
日本では一度も改正されていませんが、独立から現在までの歴史の流れのなかで改正が行われたうえで第二次世界大戦終戦後の日本国憲法制定に至ったのではないかと感じました。
三権が改憲や解釈についてそれぞれ監視機能を持ち、米国では約230年のあいだ基本的な方針は変わらずにきたことも感じました。
10章にある日本国憲法と米国の憲法の考え方の違いは非常に興味深く、社会で解釈において悪いイメージがあることについて大きく考えの変わりました。
そして、憲法についてそれぞれが理解し、解釈を持つことが投票権を持つ国民として大事であり、そのための知識として一助となる一冊でした。