河野裕子のレビュー一覧

  • たとへば君 四十年の恋歌

    Posted by ブクログ

    相聞歌の極致を垣間みた。

    病気で自分、あるいは伴侶を失うこと、常に新鮮な目で伴侶と添い遂げることを短歌というフィルターで本当に鮮明に描いていると思う。
    エッセイを交えつつ配置された歌たち、両者の目線が混じる瞬間の感情のすれ違いや隙間を的確に描いた鬼気迫るノンフィクションであるとも感じました。

    可能なら、帯のある状態で買ってほしい。
    引用は、あえて自分の好みではなく象徴的な一首を。

    0
    2014年08月23日
  • たとへば君 四十年の恋歌

    Posted by ブクログ

    「たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらって行ってはくれぬか」

    河野裕子さんを知ったきっかけは谷川史子さんの『積極-愛のうた-』(集英社/2006年刊)の表題作で河野裕子さんの短歌が短編のモチーフとして使われていたことだった。

    谷川史子さんの漫画にも通ずる、純粋で真っ直ぐなんだけれども、芯が太く、汚れのない感情が31文字の短歌によって歌われていてとても感銘を受けた。

    河野さんの第一歌集『森のやうに獣のやうに』は絶版となっており手に入らなかった。

    この本が文庫化されていることもつい先日知り、急ぎ購入した。
    歌に生き、歌に死んだ歌人であることは間違い無いが、負けん気が強く人間味に溢れ

    0
    2014年02月13日
  • 桜花の記憶 河野裕子エッセイ・コレクション

    Posted by ブクログ

    繊細な歌をつくるイメージのあるひとでしたが、それはひとつの側面に過ぎなかった。実際はかなり骨太で、根幹的で、強い想いと響きのある歌をつくるひとだったのだ。
    ライフステージのどこにいるかによって、どのように作品が変わっていくか、なんとなくわかった。受け継がれた遺伝子は、今後どのように花開いていくだろう、楽しみである。

    0
    2013年07月09日
  • たったこれだけの家族 河野裕子エッセイ・コレクション

    Posted by ブクログ

    家族がイキイキと輝いていた頃=子育て期の母のエッセイの楽しさと、母であり妻である著者の亡くなるまで数年間の短歌の子どもによる選集。前者の生気あふれる裕子さんあっての、臨終の句の深みである。

    0
    2012年03月10日
  • 京都うた紀行 歌人夫婦、最後の旅

    Posted by ブクログ

     友人の影響で少々万葉集にはまっている。その流れで永田河野夫妻のこの本も京都人としては一読しておこうと、巣ごもり中に読んでみた。
    「たとへば君 ガサッと落葉すくふやうに私をさらつて行つてはくれぬか」
    まるで与謝野晶子のようなズバリとした表現に男性ならお手上げだろう。
    「とげとげともの言う妻よ疲れやすくわれは向日葵の畑に来たり」
    とこれはまた、立派な先生ご夫妻でも夫婦の日常は一般人と似たようなところもあると安堵する。奥様の早すぎる死を前に収録されたご夫妻の歌集である。同じ日常でも歌を通して見るとこのような豊かな人生絵巻に仕上がるのだと言霊の力
    を改めて感じた。京都大好きなご夫妻のまさに人生うた紀

    0
    2020年09月30日
  • たとへば君 四十年の恋歌

    Posted by ブクログ

    夫婦ともに歌人であるふたりの相聞歌。20代の出会いの頃から、河野さんが乳癌に罹り64歳で亡くなるまでの、互いに向けられた歌を中心に、その他彼女のエッセイなどが時系列で編集されていて、その時々の思いが伝わってくる。

    以前、NHKのなにかの番組で、永田さんのドキュメンタリーが放映していて、そのとき河野さんが亡くなるときの歌を紹介していた。それを涙ながらに永田さんが詠んでいた。その歌は本書にも掲載されている。

    さみしくてあたたかかりきこの世にて会ひ得しことを幸せと思ふ 河野裕子(P257)

    その番組の内容はもう覚えていないのだけれど、歌で過去を振り返る様子をみながら、短歌というのは、その時その

    0
    2020年08月08日
  • たとへば君 四十年の恋歌

    Posted by ブクログ

    初めて歌集を読みました。歌はド素人ですがタイトルの歌が好きでなんとなく。
    河野裕子さん夫妻の、出会いのときめきから、子育てのあれこれ、病気発症後の衝突と、
    河野さんの生涯がぎゅっとつまった本でした。
    晩年は特に、かっこつけてない夫婦の現実が伝わってきて泣けました。
    「たったこれだけの家族」という言葉が自分にもしっくりきて、
    私の「たったこれだけの家族」と過ごす時間を大切にしたいと思える本でした。

    0
    2019年05月09日
  • たったこれだけの家族 河野裕子エッセイ・コレクション

    Posted by ブクログ

    先に読んだ本の後書きに、この本の紹介があり、続けて読んだ。
    エッセイは短歌とは違う魅力があり、根底に関西出身の人が持つユーモアがあると思う。
    家族が一番がっつりと組み合っている頃の家族。
    繊細で激しい短歌とはまた違う味わいがあり、息子と娘を持つ私も、ああ同じと思える事があり、そしてやっぱり素敵な家族だと羨ましくなる。
    家族を見つめる河野さんの距離感が、いいなと思う。
    巻末のお子さん達が選んだ百首を詠むと、ざーっと家族の映画を観ている気分になり、母への尊敬と愛情を感じた。

    0
    2018年12月08日
  • たとへば君 四十年の恋歌

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    出会い、恋人になり、夫婦になり、別れる。
    二人の歌人の、その全てが詰まった本。

    そもそも、数があまりないのかもしれませんが、幸せな歌、楽しい歌があまり印象に残っていない。
    それぞれのフェーズでの、悩み苦しんでいる歌が印象的だった。
    この本の内容と直接関係はないのですが、思ったことが2点。
    ・病気で亡くなるというのは、失うと分かってから実際に失うまでの期間が長く、
     無力感、理不尽さや、失った後の時間など辛そう。
     だからこそ、色々印象的な歌が読まれるのかもしれない。
    ・心に響く歌というのは、自分の体験と似ていたり、リアルに想像できることが書かれているもの。そういった感情は、言葉にするのは難し

    0
    2018年03月02日
  • たとへば君 四十年の恋歌

    Posted by ブクログ

    我が儘を言えば妻よりは先に死にたい。遺された者の悲しみと遺していかざるを得ない者の辛さ。足らない想像力ではやはり前者には耐えられない気がする。
    様々な夫婦がいる中で、歌で通じあう夫婦というのも珍しい。歌中の一文字で相手の心模様が分かってしまうのは羨ましいようで恐いなと感じた。
    妻を始めとして家族を大事に、自分に正直に生きないといけないなと思わせてくれた一冊です。

    #読書 #読書倶楽部 #読書記録
    #たとへば君
    #河野裕子
    #永田和宏
    #2016年76冊目

    0
    2016年08月23日
  • たとへば君 四十年の恋歌

    Posted by ブクログ

    夫婦が出会ってから、妻の死までの日々を、二人の文章と、折々の短歌で綴ったアンソロジー。
    遺された夫、永田和宏さんの、河野裕子さんへの愛情が今も尽きないことがよくわかる。

    病に倒れてからのことが書かれた章は、重い病を得た人の惑乱も、それを近くで見つめる家族のつらさも、どちらも胸が詰まる思いで読んだ。
    とりわけ、同じように家族を乳がんで亡くしたことのある身には、残された側の、あの時なぜこうしなかったのか、という後悔は身につまされる。
    いつか、今度は病を得て、病の苦しみと、それを受け入れなければならない不条理にのたうち回る立場になる日が来るのだろうけれど...自分や家族はどうなっていくだろう。

    0
    2016年04月01日
  • 家族の歌 河野裕子の死を見つめて

    Posted by ブクログ

    永田和宏氏が「波」に連載した文章をきっかけに、このご夫妻を知り、以来、歌の魅力に目覚め、新しい世界を見せていただきました。
    その文章のなかで、家族の歌を連載したと記述があったので読みたいと探したのですが、当時見つけられずやっとであいました。
    やっぱり裕子さん、和宏さんの歌が好き。。。
    なぜあんなシンプルな言葉で、あんな感情を表現できるのか。。。
     いつまでも私はあなたのお母さん
         ごはんを炊いてふとんを干して  

    0
    2015年03月16日
  • たったこれだけの家族 河野裕子エッセイ・コレクション

    Posted by ブクログ

    うたを詠み続けてきた人だから当然なのかもしれないが、この人もまた、すぐれた見者(Voyan)なのだなぁと思った。散文では、力の抜けた素直な筆はこびが好ましい。
    同じ木の同じ枝にとまりつづけるふくろうを何度も見に行く話や、昭和三十年代頃の子どものころの生活の思い出などが面白い。いちばん好きなのは、はさみを使うようになった下の子が、部屋いっぱいの切りくずにうもれて、時間も周りも忘れ、長いこと一心に紙を切っている様子を観察するところから始まる「ひとり遊び」。子どもならみんな知っている、対象に身体ごと没頭するよろこびを、大人になっても、時に思い出したい。

    0
    2012年10月06日
  • たったこれだけの家族 河野裕子エッセイ・コレクション

    Posted by ブクログ

    河野裕子さん、アメリカ暮らしされたとは知らなかった。短歌の人は随筆も美しい。 外国暮らしでの力みのない日々も素敵「ひらがなでものを思ふは吾一人英語さんざめくパスに揺れゆく」。亡くなった後編まれたらしく、お子さん二人選の「河野裕子の歌百首」がいい。

    0
    2012年04月30日
  • たとへば君 四十年の恋歌

    Posted by ブクログ

    20歳から64歳で亡くなるまで、ずっと愛し愛されてきた2人の生活と愛情が短歌と共に添えられたエッセイで伝わってくる。全く違う生活をしてきたのにピタッと合う2人。羨ましい。

    亡き妻などとどうして言へようてのひらが覚えてゐるよきみのてのひら

    泣けるわ…

    そして結構短歌って生々しい表現もあるのがビックリだった。
    「口づけ」「唇欲し」「人を抱く」「嗅ぎし体臭」「抱き寄せて」「いだきあうわれら」「ブラウスの中まで…わが乳房あり」とかかなりエロティック。

    0
    2021年05月03日
  • たとへば君 四十年の恋歌

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    線が細くてはかなげだった河野さんが、小さなことにはこだわらない永田さんと結婚したことで日常生活も歌作りも安定感が増したのではないかと思いました。

    まつすぐに進むものなり二人乗りの赤い自転車でくいくいとゆく(河野)

    二人乗りの赤い自転車かの夏の万平ホテルの朝の珈琲(永田)

    ぶつかり合うことも多かったようですが、この2首から、2人の時間を楽しんでこられたバランスのとれた夫婦関係だったのだろうと感じました。

    0
    2017年05月25日