三木成夫のレビュー一覧
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本書は確か『READING HACKS』で紹介されていて購入したのだと思う。
ちゃんと理解できたか?と訊かれると言葉に詰まってしまうぐらい、読むのに骨が折れたが、とても大きな浪漫が語られている。
個体の発生から誕生までというミクロな話を、地球上の生命の発生から人類の発生に至る大きな流れに重ね合わせ、感動をもって語られるとき、われわれ読者は、圧倒させられてしまい言葉も出ない。
科学なのかどうかはよくわからないが、現実を解釈する、というのは、こういうイメージを膨らませることを言うのではないかと感じた。
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(目次)
? 故郷への回帰――生命記憶と回想
民族と里帰り
「椰子の -
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とても奥が深い本だと思った。生物学と人間の精神的な発達との関連を著者の持論でうまく説明してあり、面白かった。
著者は解剖学や生理学を専門とする医師である。生命の発生からそれがどう人間にまで発達していったか、人間がほかの動物と異なる「こころ」はどの段階から特徴が出てくるのかなど、興味深い議論が展開される。
なぜ夜型人間がいるのか、ということも、生物学的なサイクルは本来波の満ち引きに合わせた24時間50分であり、それを24時間に合わせようとするからずれが生じるのだという部分も面白かった。子どもがいる人は、その発達の過程と照らし合わせて実感を持って読めると思う。 -
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解剖学者にして芸術大学の教授、と聞くと、「……トンデモ?」と疑いがちだが、一体どうして。
そもそも興味を持ったのが「ドグラ・マグラ」の「胎児よ胎児よ何故躍る母親の心がわかっておそろしいのか」からだった。時間にして16年は遡る。
もっと早く読んでおけばよかった。
詩人ともいえる優しさ溢れる語り口がまた魅力。
・体壁系と内臓系。
・鰓⇒顔と内臓露出。舌は触角。
・内臓は宇宙。小宇宙の波、内臓波動。
・動物器官の中心、脳。植物期間の中心、心臓。
・「思」アタマがココロの声に耳を傾けている。
・ヒトは季節感覚として、食と性の推移を想う。
・はらわたの声が大脳皮質にこだまする。
・ココロが芽生え、 -
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ネタバレ受精卵から胎児の個体発生においてその姿や身体構造は魚類両生類哺乳類というような系統発生を歩む。生物進化の道筋を短期間に辿って今の胎児の姿となるその意味は一体何なんだろうか。発生過程の歴史を文字通り身体に刻んで産まれてくるってどういうことなんだろう。
動物も植物も、命を持つ生物とは一体何のために存在するのだろう。
命を保つために形作っては形を崩してを繰り返す。そうやって形を持って留まる、その意味。
原子が集まって分子が集まって集まって集まって命を形作るその科学的根拠、その必要性。
何が命を必要としているのか、不思議でたまらない。
だから、この本はおもしろい。
抗えない魅力と解ききれない謎。 -
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面白い!
タイトル通り内臓と心について、解剖学者三木氏の大学講義を文書化した本。
(笑声)って記述が多用されてるけど、こんなにも大ウケの講義だったんだろか?( ・∇・)
と怪しむ気持ちはありつつも、面白い内容だったー!
印象に残ったところをメモ。
内臓は宇宙と共振する小宇宙である。
体壁系をコントロールするのが脳で、内臓系をコントロールするのが心臓である。
胎児、乳幼児の成長の過程は人類の系譜をなぞっている。
特に内臓は小宇宙でありこころは内臓からくるというテーマは、壮大な内容でありながら、実感として(それこそまさに腑に落ちる感覚)しっくりくる。
また、身近に幼児がいるので人類の系譜の -
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興味深く読んだ点は2点ある。まず内臓と仏教を結びつけて考えている点。著者は仏教における「受」=からだで感じることを縁として、不快感情がわくという。
一例として、空腹時が挙げられているが、私自身、実体験としてイライラが募ることは多い…気がする。
次に内臓にも感受性が保たれているとし、「日リズム」「年リズム」といって、宇宙的な要素が影響しているという点。
「日リズム」とは朝昼夜。「年リズム」とは春夏秋冬を指す。同じく胃を例に、夏バテや食欲の秋についてもこのリズムが影響していると著者は言う。
本を読んで、内臓はただの生命維持装置ではなく、感情を持った生き物のように思えてきた。そして、季節感にもっと敏 -
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医学部生のころに読んだ教科書以外の医学書でいまだに記憶にとどまっているのは三木成夫の『生命形態学序説』だけである。文庫化を機に未読だった本書を購入した。保育園での講演であるだけに、幼児の発達について他の著作よりも詳しく述べられていて、かつ三木の知見や思想のエッセンスも凝縮されている良著。
「あたま(脳)」と「こころ」は発生学的に区別され(体壁系と内臓系)、心の本態つまり根原の機能は「からだに内蔵された食と性の宇宙リズム」であり、そして人間と動物との違いとして重要なのは、理性の有無よりも、心のあり方の違い=情感の有無である、と畳みかけてくる。彼は「内臓の復興」つまり「こころの復活」を説く。
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生命の記憶。
個体発生では、進化の過程をたどる。逆戻りや、飛び越えなどはない。これが、生命の記憶をたどっているということ。生命の神秘なのではなく、予定されていること、決まりごとを素直にたどる。永劫回帰ということである。同じ道を通り、出生して死んで行く。
全編を通して、音楽(とリズム)を感じる(他の書評でも同じことが書かれている)。卵に墨を注入する。生命の鼓動、内臓の波動では、生命の共鳴。
左脳=ロゴス
右脳=パトス
交錯
パトス 絵・音楽
ロゴス 文字・ことば
感覚運動器官
19
月の砂漠、椰子のみ、取り合わせが絶妙
96
ジョセフ・ニーダム 発生
魚類⇒両生類=えら⇒肺
研究者としての -
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比較発生学、解剖学的な観点から子どもの発育にそって、
内臓感覚がどのように育ち、こころをかたちづくっていくかを
解き明かす。
いきものがその内に太陽や月、季節などと呼応するリズムを
持っていることの神秘から、大宇宙の中の小宇宙を内在させる
わたしたち、という自覚にみちびかれる。
こういう考え方は子を持った母なら案外だれもが持っているような
気がするが、研究者などの立場の人は従来まともにとりあわない
種類のものらしい。
「のどから手が出る」とか「舐めるように見る」というのが
非常に本質をついた表現であると納得。
講演録なので気楽に読める反面、
話が表面的だったり飛躍したり、
その後もっとまと -
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ネタバレこの間ふと考えた、「人間の身体=筒」というイメージ。口から肛門に至る消化管の「中」は人体からみれば「外」なんだよなと。で、書店で目に入ったこの本を読んでみました。解剖学的な見地からみた内臓とこころの関係。
「腑に落ちる」とか「腹に据えかねる」とか、感情を表現する慣用句に内臓がよく使われるように、内臓と感情(こころ)とは密接に繋がっています。合気道やヨーガの呼吸法では「丹田」に気を集めたりします。どうやらこの辺に大切なものを感じるセンサーがあるらしい。
まぁそんな取り留めのない事を考えながら読むと面白いんですよ。筆者はあの養老孟司先生の師にあたる解剖学の大家だそうで。
あと面白かったのは、 -
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ネタバレ専門的な内容になってくると難しくて追いつけないけれど、それを読み飛ばしてもあまりある面白さがありました。もっと専門的な知識があったら倍は楽しめたのに!とちょっとくやしい思い。いや~でも面白かった。
人間は自分が思っているとおりに自分の体をコントロールしている気がしているけれど、本当はヒトの考え方や行動は、身体や内臓の動きにかなり縛られているんだろうな~と気づかされました。そして現代人が、いかに自然な身体のリズムとは無関係に生きて行かなきゃならないのかを思い知らされた。まったくなんでこんな窮屈な生き方を選んだんでしょうね、人間は。
以下2つの話が特に印象に残りました。
・「現代人は太陽の1日2 -
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ネタバレ赤ちゃんが母親のおなかの中にいることへの記述に関心があり、また、「アイデアを形にして伝える技術」(原尻淳一氏)の中で紹介されており、気になっていたのが、きっかけで読んだ本。解剖学者の立場から、様々な話題を提供してくれるが、かなり難解。でも、受胎30~60日くらいの胎児の正面図のスケッチは、母親の子宮の中で、生物の進化がものすごいスピードで進行しながら(魚類→は虫類→ほ乳類といったダイナミックな変化を遂げながら)、人間が生まれてくることを目の当たりにするとともに、衝撃を受けた。文章全体が難解で一回読んだだけで理解することは難しい。でも、文章の所々に文学的な表現がちりばめられ、著者の文学的素養の高