【感想・ネタバレ】胎児の世界 人類の生命記憶のレビュー

\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

地球、人体、言語、生命、果ては神の世界に至るまで、この世の究極の答えを細胞に語り掛ける宇宙誕生138億年の超絶アトラクション。

本の世界にのめり込むきっかけとなった偉大で思い出深い本です。文章量に圧倒され読み流しになるかと思いきや、読めば読む程引きこまれていくあの興奮が忘れられず何度も読み返してしまいます。

0
2021年05月26日

Posted by ブクログ

「命」を
こんなにも 平易にわかりやすく説いてくれた書が
これまで あっただろうか

私たちは 産まれてきた ただ そのことだけでも
神秘的であり、尊いことなんだ
と あらためて 認識させてもらえる

自分の命の尊さに目覚めた者は
他者の命をも慮ることができる

0
2012年12月26日

Posted by ブクログ

胎児の相貌の変化に30億年の年月を読み込む。胎児の“上陸”のシーンは圧巻。ロゴスの世界に生きる筆者が、パトスに導かれて描いた世界。必読。

0
2011年12月04日

Posted by ブクログ

これは本当に生物学の本?と問いたくなるほど読みやすい。

発生学・古生物学・進化論・医学・人文科学・宗教・心理、等々、多岐に渡る分野の議論が“生命”の名の元に、ある一点を目指して集約してくるさまに感動。
こういう分野横断的な議論を、たった一冊の新書で実現してしまうなんて!驚きを隠せない。

語り口はドラマチックに、内容は純然たる自然科学の知識・見識を悉く、奥深く用いて記されていて
生物学の入門書としても、単に読み物としても大変面白い。

大正生まれの著者による三十年以上前の書物とは思えないほど内容に新鮮な輝きがあって、筆者の先見の命に脱帽。

0
2013年09月25日

Posted by ブクログ

読み初めはオカルティックでどうだろう、眉唾なものなのではないかと思ったけど、読み進めていくと、生物学者の筆者が実際に研究した末にオカルト的勘と結果が結びついてくる面白さがあった。人間の胎児のみならず、様々な生物の胎児、原初生物を出して論じている。
途中、夢野久作の「ドグラ・マグラ」に出てくる胎児の夢という架空の論文の話が出てくる。その中にもやはり胎児は十月十日の間に長い生命の夢を見ているのだという趣旨の描写があり、この実験が行われる前、昭和の時代から夢野久作はこれを先見していたのではないかと書かれていた。この本を読んだ後に「ドグラ・マグラ」を読むとより楽しめるのではないか、と思った。

0
2024年03月25日

Posted by ブクログ

 すんません。わたしには最後の方が難しすぎて,何を言いたいのか(というか,言いたいことは分かるけど,なんか科学的なお話ではないような気がする…)という本でした。
 本書を手に取ったわけがすでに思い出せないんですよね。本書の次に読んでいるのも同じ著者のものです。先に紹介した『ながいながい骨の話』共々,一緒に読もうと思って手に入れたのですが,それがどうしてなのかを思い出せないんです。おそらく昨年の12月ごろのことだと思うんですが…。
 さて,本書の発行は昭和58年で,わたしが勤め始めた年のことです。そんなずいぶん前の科学読み物なのですが,「研究」というものの楽しさというか夢中さというか,新しい発見に向けて実験をしている科学者の興奮する姿がビンビン伝わってくるので,なかなか面白く読むことができました。
 人の胎児の発育の変化など,今じゃあ,発生学の本では当たり前に出てくる絵や写真についても,死んでしまっているとはいえ,人の胎児にメスを入れる怖さというか大胆さというか…,著者の迷いも含めて描かれています。科学者という生き物は知的好奇心を満たすために、そうせざるを得ないんですよね。

羊水を満たした、暗黒の空間のなかで繰りひろげられる胎児の世界ーそれは人類永遠の謎をして神秘のヴェールのかなたにそっとしまっておく,そんな瀬会なのかも知れない。この世には見てはならぬものがある。近代の生物学は,しかし,この一線をいともやすやすと乗り越える。自然科学の実証の精神,というより人間のもつ抑え難い好奇心が,その不文律を破ったのだ。(本書,150ぺ)

 そして,そこから得た知識は,ヘッケルの「個体発生は系統発生の短い反復である」ということを証明するものでした。

0
2023年01月10日

Posted by ブクログ

ミクロからマクロまで生命にリズムが生まれて波及する。それは空間や時間を旅するように移動を重ねて時折振り返るように反復する。その記憶は自身の経験なのか、それとも受け継がれるDNAなのか。宇宙は自然であり、人の意識の産物ではない。故に誰にも世界を制御できないし必然とも偶然とも解釈できる運命に委ねられる。そもそも意識を積み重ねた記憶は不確かなもので常に変化を遂げていく。諸行無常、万物流転、この言葉にしっくりくるのがこの書籍の読後感である。

0
2022年03月30日

Posted by ブクログ

本書は確か『READING HACKS』で紹介されていて購入したのだと思う。

ちゃんと理解できたか?と訊かれると言葉に詰まってしまうぐらい、読むのに骨が折れたが、とても大きな浪漫が語られている。

個体の発生から誕生までというミクロな話を、地球上の生命の発生から人類の発生に至る大きな流れに重ね合わせ、感動をもって語られるとき、われわれ読者は、圧倒させられてしまい言葉も出ない。

科学なのかどうかはよくわからないが、現実を解釈する、というのは、こういうイメージを膨らませることを言うのではないかと感じた。

[more]
(目次)
? 故郷への回帰――生命記憶と回想
 民族と里帰り
  「椰子の実」の記憶
  絹の道
  里帰りの生理
 母乳の味
  母乳と玄米
  哺乳動物誌
  味覚の根源――「憶」の意味
 羊水と古代海水
  出産
  脊椎動物の上陸
  いのちの塩

? 胎児の世界――生命記憶の再現
 ニワトリの四日目
  墨汁の注入
  四日目の出来事
  上陸の形象
 胎児の発生
  胎児の顔
  受胎1か月の像
  おもかげ――原型について
 再現について
  個体発生と宗族発生
  奇形の意味するもの
  胎児の夢

? いのちの波――生命記憶の根原
 食と性について
  ヤツメウナギの変態
  植物メタモルフォーゼ
  食と性の位相交替
 内臓波動
  いのちの波
  万物流転――リズムの本質
  胎児と宇宙
 永遠周行
  東洋の「道」
  遷宮の意味
  母なる海

0
2018年10月12日

Posted by ブクログ

胎児の世界から生物の進化の記憶を描き出し、生物の食の生活相と性の生活相という分析から生命のリズムを導き出して、それが宇宙のリズムと共鳴していることを示す宇宙論に至る壮大でスリリングなお話でした。

0
2018年10月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

受精卵から胎児の個体発生においてその姿や身体構造は魚類両生類哺乳類というような系統発生を歩む。生物進化の道筋を短期間に辿って今の胎児の姿となるその意味は一体何なんだろうか。発生過程の歴史を文字通り身体に刻んで産まれてくるってどういうことなんだろう。
動物も植物も、命を持つ生物とは一体何のために存在するのだろう。
命を保つために形作っては形を崩してを繰り返す。そうやって形を持って留まる、その意味。
原子が集まって分子が集まって集まって集まって命を形作るその科学的根拠、その必要性。
何が命を必要としているのか、不思議でたまらない。
だから、この本はおもしろい。
抗えない魅力と解ききれない謎。

0
2015年09月25日

Posted by ブクログ

中盤からの医学的な項目が難しい。が、心の何たるか、胎児の夢。知ってはならぬ事を知りたくなるのは知ってしまった者の常。

0
2014年09月16日

Posted by ブクログ

タイトルから予想していた内容とは違っていたが、とても壮大な世界があった。
胎児の世界は何億年もかかって生まれた進化の世界。
胎児の夢は太古の記憶をたどるもの。
人間も植物も動物も、この地球、宇宙の中では一つ。
ちょっとこれまでとは世界を見る目が変わりそうだ。

0
2014年06月14日

Posted by ブクログ

人間に限らず、幼生や胎児の発生は進化の過程をたどるという。人間の胎児もえらがある時期がありそれが綴じ合わさって顔の一部になる。

遺伝子レベルの記憶、種としての共通の記憶がの存在やどこからくるかなどを織り交ぜながら、生命の驚異、それを感じ、おののく気持ちを交えて発生について延べる。

学術書ではなく、哲学書としても読める一書。

0
2014年05月23日

Posted by ブクログ

生命記憶というのは、どこまでのことを言って良いのだろうか。

〇以下引用

「記憶」と「回想」はよく混同される。思い出すことを前提におぼえこもうとする習性が、いつの間にか身にしみついてしまったからであろう。わたしたちには、しかし度忘れといいうことがある。その一方で、知らぬ間におぼえていたものが、何かの拍子に、ふっと出てきたりする。

記憶とは、本来、回想とは無縁の場でおこなわれるもののようだ。いいかえれば、人間の意識とは次元を異にした、それは「生命」の深層の出来事なのである。

ふつう「記憶」と申しますと、それは、物心ついて蓄積されたものをさすことになっているようですが、これからお話します「記憶」とは、臍の緒の切れる以前から、つまり生まれながらにそなわったものです。

それは三十億年もまえの“原初の生命体”の誕生した太古のむかしから、そのからだのなかに次から次へと取り込まれ蓄えられながら蜿蜒と受け継がれてきたものであります。

記憶というのは、とくに意識しなくとも、ちゃんとおこなわれている。知らぬ間にからだのすみずみにまで入りこんでいるのです。これを「無意識の体得」とよんでいます

懐かしさというものは「いまここ」に「かつてのかなた」が二重映しになったときにごく自然に沸き起こってくる感情であろう。

「想」の機能は、大脳生理学のことばを借りれば、あくまでも右脳に由来するものでなければならない。外界から受け取ったものと、すでに蓄えられている「あるもの」との一致が、この場をとおして意識に上がってくるのであろう。

いのちの波は宇宙リズムの一つである

わたしたちの生命記憶は、すでに宇宙空間にまで飛翔をとげることになる

古来、中国では、宇宙の根源現象は「道」であらわされてきた。そしてこの「道」は「リズム」であるという。

「ココロ」とは、したがって、この心拍に象徴される「リズム」そのものであることがうかがわれる

人間の「こころ」は。大宇宙のリズムと共鳴する、この体の「内なる」小宇宙のリズムということになる。

0
2014年05月13日

Posted by ブクログ

生命の記憶。
個体発生では、進化の過程をたどる。逆戻りや、飛び越えなどはない。これが、生命の記憶をたどっているということ。生命の神秘なのではなく、予定されていること、決まりごとを素直にたどる。永劫回帰ということである。同じ道を通り、出生して死んで行く。

全編を通して、音楽(とリズム)を感じる(他の書評でも同じことが書かれている)。卵に墨を注入する。生命の鼓動、内臓の波動では、生命の共鳴。

左脳=ロゴス
右脳=パトス
交錯
パトス 絵・音楽
ロゴス 文字・ことば
感覚運動器官

19
月の砂漠、椰子のみ、取り合わせが絶妙
96
ジョセフ・ニーダム 発生
魚類⇒両生類=えら⇒肺
研究者としての気持ちが良く表現されている。
146
夢野久作が引用されている。
178
7日間の周期⇒月経の周期、生の原波動
182
螺旋、植物、羊の角、内臓、腸、台風、2重螺旋
197
東洋思想、道、リズムあり
203
遷宮の意味(伊勢神宮)

学生時代「産泊」とても面白い表現あり。
食(世代)vs性(世代) 回帰する。

0
2013年06月13日

Posted by ブクログ

妻が妊娠し、子どもができたので読んだ。生命のドラマチックな旅を胎児が歩んでいる姿は感動的とも言える。終盤の波の話は共感できるが説得力はない。
これを読んで読みたくなったのは、ゲーテ『ファウスト』ダーウィン『種の起源』柳田国男『海上の道』

0
2013年04月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

赤ちゃんが母親のおなかの中にいることへの記述に関心があり、また、「アイデアを形にして伝える技術」(原尻淳一氏)の中で紹介されており、気になっていたのが、きっかけで読んだ本。解剖学者の立場から、様々な話題を提供してくれるが、かなり難解。でも、受胎30~60日くらいの胎児の正面図のスケッチは、母親の子宮の中で、生物の進化がものすごいスピードで進行しながら(魚類→は虫類→ほ乳類といったダイナミックな変化を遂げながら)、人間が生まれてくることを目の当たりにするとともに、衝撃を受けた。文章全体が難解で一回読んだだけで理解することは難しい。でも、文章の所々に文学的な表現がちりばめられ、著者の文学的素養の高さが伺える。忙しい合間にも、読書をされていた方なのだと思う。
いつか、もう一度読んでさらに理解を深めたい(挑戦したい)本だと思った。

0
2012年11月18日

Posted by ブクログ

こないだの夜想bisに載っていたので気になって読んでみた
夜想bisが深刻だったのでこの本もそうかと思ったのだけど
予想外にロマンティックで大変面白かったです やたら詩的
著者は医学部教授でなくて芸大の教授なんだそうです スーパーしっくり!

0
2013年01月09日

Posted by ブクログ

この本は、現在私の頭の中にある「魚類は大きなときの流れの中で哺乳類に進化していった」というイメージに対して、さまざまな根拠を提示してそれがいかに妥当であるかを説明している。その根拠の中で印象に残っているのが3つある。
ニワトリの卵の解剖において確認した脾臓の役割、身体に障碍を持つ人間と古代動物の比較、そして人間の子供の成長の過程の3つである。
 まずニワトリの卵の解剖中に確認した脾臓の役割について。これはまず動物の胎児は母親のお腹の中にいるころ生物の壮大な進化の過程を踏むということと、魚類は(人間でいう)脾臓を使っているが、人間は脾臓を使っていないという前提がある。主人公は鶏の卵を解剖する中で、脾臓が使われている頃から使われなくなる過程を観察し、よって脾臓は前提(仮定)に従えば、魚類が哺乳類になる過程で捨てたものであるということが言える。
 次は身体に障碍を持つある子供たちの内臓と、古代から生きている動物の内臓を比較すること。似ている部分が多くあるという話である。つまり上の前提に従えば、身体障碍というのは「人間の胎児が人間になろうとする過程で体の発達が少し上手くいかなかった存在」だと言えるかもしれない。
 最後が授業でも見せてもらった、人間の胎児の成長の過程を収めた写真の章である。この章では、写真を見るのはたとえ二度目でも、とてもインパクトが強かった。しかし授業で写真を見せてもらった時と違ったのは、本には、「胎児の体の標本」を作ることに対する著者の葛藤の描写があったことだ。その描写があることによって、著者が胎児の体を切り落としているシーンを想像してしまい、写真を直視することがあまりできなかった。写真を見れば、たしかに人間の退治も植物からから魚類、両性類を通過して哺乳類になろうとしている姿がありありと感じられた。

0
2012年01月05日

Posted by ブクログ

近所の本屋にて珍しくPOP紹介してたので買ってみた。妻が妊娠三カ月なので、そういった状況も踏まえて読んでみたが・・・、読み進めるとすぐに眠くなる催眠術のような本。

でも読み終わって2週間経つんだけど、今も時折この本のことを思い出す。たまたま福岡伸一の「動的平衡2」読んでたけど読んでる間もどっちかっていうとこの本のことを考えてた。

0
2011年12月20日

Posted by ブクログ

ネタバレ

[ 内容 ]
赤ん坊が、突然、何かに怯えて泣き出したり、何かを思い出したようににっこり笑ったりする。
母の胎内で見残した夢の名残りを見ているのだという。
私たちは、かつて胎児であった「十月十日」のあいだ羊水にどっぷり漬かり、子宮壁に響く母の血潮のざわめき、心臓の鼓動のなかで、劇的な変身をとげたが、この変身劇は、太古の海に誕生した生命の進化の悠久の流れを再演する。
それは劫初いらいの生命記憶の再現といえるものであろう。

[ 目次 ]
Ⅰ 故郷への回帰――生命記憶と回想(民族と里帰り 母乳の味 羊水と古代海水)
Ⅱ 胎児の世界――生命記憶の再現(ニワトリの四日目 胎児の発生 再現について)
Ⅲ いのちの波――生命記憶の根原(食と性について 内臓波動 永遠周行)

[ POP ]


[ おすすめ度 ]

☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

[ 関連図書 ]


[ 参考となる書評 ]

0
2011年03月30日

Posted by ブクログ

解剖学・発生学を壮大な宇宙観と有機的に連携させながら解説

複数の知識が合わさっていて、
世の中に対する見方を改めさせてくれる。
とても科学的な内容も文学的な詩的な文章で書かれている。

0
2023年06月19日

Posted by ブクログ

胎児の30~40日あたりの成長を生命の進化に当て嵌めるところまでは理解できるが、三章以降は検証されえない持論展開の嵐。螺旋の成長については、分からなくもないが、世の中すべての事象に適合させるのはさすがに無理がある。人の成長におけるスパイラルアップは、安定性と着実性の観点から納得できる。

0
2019年07月06日

Posted by ブクログ

1983年刊行の中公新書のロングセラーの一冊。
著者は東大で解剖学を修めたのち、ゲーテの形態学などの影響を受けて、既成の西洋医学の枠組みの中では位置付けられない「生命記憶」を柱とした「三木形態学」を唱えるようになったが、本書は、そのエッセンスを著したものと言われる。
本書で著者は、偶々デパートで見た椰子の実に得も言われぬ懐かしさを感じた自分の経験を「生命記憶」と呼び、それを個体の進化と宗族(種族)の進化の関係から説明する。
著者は、生物の個体が発生(受精)してから成体になるまでの過程(=個体発生)と、生物の宗族が発生(起源となる原始生物の発生)してから現在の宗族になるまでの過程(=宗族発生)を重ね、それらは類似の過程を辿ると言う。即ち、我々人間は、胎児である十月十日の間羊水につかり、母の血潮のざわめき、心臓の鼓動の中で、劇的な変身を遂げるが、この変身劇は、太古の海に誕生した生命の進化の悠久の流れを再演したものなのだ。そして、それを裏付けるものとして、羊水の塩分の濃度等が海水と極めて近いこと、胎児は受胎から30日を過ぎてから僅か一週間に、外形的にも脊椎動物の一億年の上陸誌を再現したかの如く見えることなどを挙げている。
三木形態学は、現代の医学・生物学から説明し得るものではないのであろうが、一方で、その考え方は吉本隆明などにも影響を与えたという。
合理性を追求する近代科学とは距離を置いて、本書のようなアプローチに触れるのもいいのではなかろうか。
(2010年5月了)

0
2016年01月11日

Posted by ブクログ

胎児の進化は人間の歴史を感じる。

哺乳類となるためのくちびる。
それによる発声の違い。

とても神秘的で、面白い内容でした。

0
2014年01月13日

Posted by ブクログ

のっけからあまりにも詩的な文章に面食らう。生命記憶という概念自体初めて聞いたので大変興味深い。一応医学関連本だと思うが、出てくる実験やオペの話しと、著者の生命に対する強烈な美意識?のような感覚の対比が不気味。天才的なロマンチスト。こういうのは男しか書けないだろうな。

0
2013年10月10日

Posted by ブクログ

胎児の顔の変化が印象に残った。最初って魚みたいな顔…。
1億年を費やしたという海から陸への上陸史。脊椎動物への進化を、胎児は受胎の日から、30日を過ぎてから1週間で再現するという。その視点で考えると人間ってすごいね。

0
2013年07月25日

Posted by ブクログ

なんかすごいスピードで読めてしまうのが、怖いぐらいだが、不思議と引っかかるところがないのは学者さんが書いた文章じゃないような感じだからだろうか?

0
2012年12月07日

Posted by ブクログ

卵子から人間になるまでに、進化の過程を辿る胎児、、、
生命の神秘を感じます。
食と性の分化 併せ持つ人間という生き物、、、
業が深いですね。

0
2011年07月12日

Posted by ブクログ

最初、タイトルを見た時は、「胎児から、外界の音や光などの環境はどう感じられるのか」ということについて説明をした本だと思っていたのだけれど、全然違った。
もっと神秘的で、不可侵の領域に入っていく、胎児という存在そのものの不思議に分け入る本だったことを、読んで初めて知った。

人間の胎児も含めて、あらゆる生物は、発生の段階で、その種がそれまでの歴史の中でたどった「魚類→両生類→爬虫類」といった進化の歴史をひととおり繰り返すということをした後に、さらに種固有の成長をしていくらしい。
それは、ものすごく短時間の間におこなわれる出来事で、鳥の場合は、数時間のうちに気が遠くなるほど長い年月分の進化の歴史を再現していることになる。人間の場合でも、着床から30日程度経過した時点から数日の間に、進化の反復はおこなわれる。
鳥やトカゲとは異なり、人間の胎児となると、発生の過程での解剖はそう簡単ではない。そこには、神域を侵すような、畏れの感情がつきまとう。

この筆者の文章は、とても文学的で、いたるところ繊細な感傷に満ちている。特に、伊勢神宮で20年ごとにおこなわれる遷宮を生物の代謝になぞらえて語っているところは、とても面白い。その表現からは、科学者というよりも、よほど宗教家に近いような印象を受ける。
しかし、この本は、そういう筆者だからこそ書けたのだと思う。単なる実証科学的見地からは、胎児の世界というのは描写不可能なものである気がする。

やはりヒトの胎児を見ないことには・・。これは、最初の脾臓のときからの課題であった。この課題は、当然、その胎児への墨の注入という問題にまで発展してくる。この情景はよく夢に見た。ヒトの胎児の心臓に針を差しているのだ。見物人がいて、「むごいことをする」という。この問題については、意識の片すみでつねに自問自答が繰り返されていた。できる、できない、ではない。やらなければならないのだ。いつの間にか、ヒトの胎児への注入は、このわたくしにとって宿命的な一つの義務と化していた。(p.100)

さらに二日後の36日。ここには、まさにひとつの表情をもった顔が黙ってこちらを向いている。あの夏の終わりの一日、木立の窓辺で、「ハッテリア!」と心中で叫んだあの顔だ。こうして見ると、さきの34日は、魚類から両生類にかけてのものか・・。それは、この36日のまさに未然形といえるものだ。わたくしは、この二日間に起こる顔かたちの変化に、そして、ここに現れるほとんど名状し難いほどの表情のなかに、胎児の顔のひとつのクライマックスといったものを見ずにはいられない。なんというすごい表情だろう。(p.112)

羊水を満たした、暗黒の空間のなかで繰りひろげられる胎児の世界、それは人類永遠の謎として神秘のヴェールのかなたにそっとしまっておく、そんな世界なのかもしれない。この世には見てはならぬものがある。近代の生物学は、しかし、この一線をいつもやすやすと乗り越える。自然科学の実証の精神、というより人間のもつ抑え難い好奇心が、その不文律を破ったのだ。(p.151)

0
2020年07月15日

「学術・語学」ランキング