三木成夫のレビュー一覧
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母性本能や、母乳についての記述は、現在の一般的な考え方に対して、そぐわない点もあるし、あくまで、三木成夫さんの、「気づき」を講じたものであるため、学術的な裏付けには乏しいが、それでもなお、学ぶことの喜びに満ちた名著として、輝きを失わない本だと思った。
学ぶこと、そして、知識を蓄えることで得られる最大のご褒美は、まるで関係ないような一つ一つの点であるところの知識同士が、思わぬところでつながりを持つことに気づく瞬間の喜びにあると思う。
この講演の中で、三木さんが語るのは、そうした気づきから得られた、壮大な仮説だが、その語り口からは、常に喜びが迸り出ている。
普段顧みられない内臓の感覚や、太陽や月な -
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2016.4.17
に書いた読書メモ。
解剖学の本だからなんて敬遠したら、人生、損するかも。
生命の神秘を楽しく垣間見れる。
なんで小中学校で、こういう授業が無いんだろう。おもしろおかしい。
内臓の感受性。
世界は舐め回して知覚する。
デッサンが上手い人は乳児期にいかに畳の目を舐め回したか、による。
なんて論が展開される!
舌と腕は、脊椎動物の進化において、兄弟みたいなものらしい。
そういえば、私は今でも色んな物を撫で回す。触って確かめたい衝動に駆られ。。
排泄、食事、睡眠、出産、などなど身体のふしぎに関するあれこれ。
目から鱗と幸せな笑いの連続。
生きとし生けるもの全てが愛おしくなる。 -
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表紙に載っている奇妙な顔らしきイラストは何を表しているのか、分かる方はそう多くないでしょう。これは人間の胎児で受胎32日目から38日目の顔だそうです。お母さんが妊娠に気づくか気づかないかの時期にお胎では赤ちゃんが海で泳いでいた魚類から陸に上がり始めた両生類、そして爬虫類の顔へと30数億年の生命の歴史を遡って刻々と変化を繰り広げているということです。この神秘的な出来事の解説がこの本の冒頭で「だれが人間を創ったのだろう」という見出しで述べられています。
著者は今から30年ほど前に亡くなられた解剖学者ですが、今になっても文庫本として出版されるところにこの本の中身の貴重さが伺えます。名著というべき書物 -
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人類の胎児は、母胎の中で成長する過程において、太古の原始生命体が上陸を始めてから経験した体内器官の変化と同じ変化を経験しているはず。そしてその顔も、まさしく生物の進化と同じく魚類、爬虫類、獣と経て、人間の顔となっているはず。それを確かめるには生の胎児を解剖するしかない。それを禁忌と筆者は感じつつも、解剖医としての本能には抗えず、堕胎した胎児を集めてその頭を落とす……。
序盤の、受精鶏卵の中で成長する胚子の血管に注射針で墨を流し込むとゆうのですでにショックを受けたが、思えばそういった研究がなければ現代医学もあり得なかった。
胎児の受胎から一箇月ころのスケッチがいくつか掲載されていて、みていたら『 -
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ネタバレ読みやすいが内容は深い。
・内臓感覚が大事
・舌は内臓感覚が体壁感覚で支えられたもの
・赤ん坊は舌で舐めてものを把握する。このときの体験が成長してからの知覚に影響する
・生き物では性と食の2つの相が交代している。意識していなくてもひとりでにそうなっている。
・生命の主役は内臓系(植物器官。心に関係)で体壁系(動物器官。脳に関係)は手足にすぎないのに、現代人は表に出ている体壁系にばかり注意を払う
・内臓系こそ生命のリズムなどを感じ取る中心
・精神=こころとあたま
・思考が生まれる三歳児の世界には先史時代の面影がある。
・人の胎児の肉体の変化や、3歳までの成長過程は進化と似た道筋をたどる(ゲーテ -
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読み初めはオカルティックでどうだろう、眉唾なものなのではないかと思ったけど、読み進めていくと、生物学者の筆者が実際に研究した末にオカルト的勘と結果が結びついてくる面白さがあった。人間の胎児のみならず、様々な生物の胎児、原初生物を出して論じている。
途中、夢野久作の「ドグラ・マグラ」に出てくる胎児の夢という架空の論文の話が出てくる。その中にもやはり胎児は十月十日の間に長い生命の夢を見ているのだという趣旨の描写があり、この実験が行われる前、昭和の時代から夢野久作はこれを先見していたのではないかと書かれていた。この本を読んだ後に「ドグラ・マグラ」を読むとより楽しめるのではないか、と思った。 -
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すんません。わたしには最後の方が難しすぎて,何を言いたいのか(というか,言いたいことは分かるけど,なんか科学的なお話ではないような気がする…)という本でした。
本書を手に取ったわけがすでに思い出せないんですよね。本書の次に読んでいるのも同じ著者のものです。先に紹介した『ながいながい骨の話』共々,一緒に読もうと思って手に入れたのですが,それがどうしてなのかを思い出せないんです。おそらく昨年の12月ごろのことだと思うんですが…。
さて,本書の発行は昭和58年で,わたしが勤め始めた年のことです。そんなずいぶん前の科学読み物なのですが,「研究」というものの楽しさというか夢中さというか,新しい発見 -
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教養文庫シリーズを持つ出版社6社の共同企画「チチカカコヘ」からの一冊。かなり長いこと、ワタシの読みたい本リストに入っていて、「チチカカコヘ」に押されてようやく手にした次第。
「人間は宇宙のリズムを内蔵している」なんて言われた瞬間、宇宙モノ好きなワタシはもうノックアウト。ものの例えで、「小宇宙」という表現が使われたりするけれど、文字通りの「小宇宙」が自分の体内にあると思うと、急に自分が大きな存在になった気がしてくる。
解剖学者である著者は、我々すべての人間は宇宙によって創造されたのだから、我々に宇宙のリズムが内蔵されているのが当然、という信念で人間の行動を丹念に解き明かしてくれる。保育園での講