ヘンリー・ミンツバーグのレビュー一覧
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■著者はマギル大学の工学部機械工学科を卒業し、マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院にて1965年に経営学修士及び1968年に博士を取得。現在、カナダのマギル大学の教授である。
■「マネジメントは、リーダーシップを振りかざすことではなく、地に足をつけて現場に関わっていくことであるべきだ。」この言葉にこの本の全てが集約されている。
■もともとは同氏のブログに書き留めたものの中から、特に有意義だと思える42本を選んで、マネジャーが寝る前にベッドで読めるような本を作りたいと考えて編成された本である。
■日本人、日本のことが結構出てくる。著者は日本にも造詣が深いように感じる。日本語訳も自然で読みやすかった。 -
Posted by ブクログ
カナダ・モントリオールの大学院で教授を勤める著者が書き留めたブログ記事を集め、著者いわく、マネジャーが寝る前にベッドで読めるような本。
著者は、「この本はマネジメントの本だが、マネジメントの特効薬は期待しないで欲しい。私に言わせれば、特効薬を提供しようとする本は、問題をより複雑にするだけだ。本書では思いがけない発見を提供したい。」と述べているとおり、ビジネス書として、マネジメントを扱う書籍でありながら、解説らしいものではなく、ノウハウもなく、著者がマネジメントに関するちょっと思ったことを書き連ねている印象で、これまでにない読後感でした。もともとの著書名が「BEDTIME STORIES FOR MANAGERS」となっているとおり、肩肘張らずに、寝る間に1話読み進め、少しずつマネジメントについて知見を得ていく、そんな感じです。一気に読むと、著者の意図はいまいち掴めないかもしれません。
▼この本は、遊び心でいっぱいだけれど、とても真剣なメッセージが込められた本だ。マネジメントは、現場から離れた高い場所でリーダーシップを振りかざすことではなく、地に足をつけて現場に関わっていくことであるべきだ
▼生きた一頭の牛のような組織をつくればよい。そうすれば、庭の雑草のように自然に戦略が生まれ、普通の人たちが並外れたアイデアを生み出せるようになる。そうした人たちは、画一的にグローバルなのではなく、個性があってワールドリー、つまり実世界をよく知っている。
▼リーダーシップをマネジメントから切り離して考えるのはもうやめよう。両者は一枚のコインの表と裏の関係にある。「大きなビジョン」ばかりを語り、現場を見ずに遠隔操作でリーダーシップを振るおうとする風潮は、もうたくさんだ。大きなビジョンも、現場の経験をもとに、いわば一筆一筆描き上げていくべきなのだ。
▼マネジメントの過剰とリーダーシップの不足を問題にする主張をよく耳にするが、現実は正反対だ。実際には、お高く止まったリーダーシップが蔓延し、地に足のついたマネジメントが不足している。
▼マネジャーや、経営を論じる専門家や大学教授は、変革を説くことには慎重であるべきだ。それよりも、もっとコミュニティシップに関心を払ったほうがよい。
▼やることがないマネジャーほど危険なマネジャーはいない。マネジャーとは、そもそも精力的な人たちだ。そうでなければ、マネジャーになれない。そんな人物にマネジメント不可能な職務を与えると、その人は自分にできる仕事をひねり出す。
▼人は「効率」という言葉を聞くと、無意識にもっとも数値計測しやすいものに目が向く。
▼マネジメントを補強するために定量的な評価をおこなうのは、悪い発想ではない。計測できるものは計測すればよい。しかし、計測できないものを軽んじてはならない。両方を思慮深くマネジメントすべきだ。数値計測できるものはもちろんのこと、数値計測できないものもマネジメントすることを忘れてはならない。
▼いま私たちが直面している大きな問題は、多くの場合、社会の不均衡が根本原因だと、私は考えている。
<目次>
第1章 マネジメントの話
第2章 組織の話
第3章 分析の話
第4章 マネジャー育成の話
第5章 文脈の話
第6章 責任の話
第7章 未来の話 -
Posted by ブクログ
ネタバレ・マネジメント:実践の行為-クラフト、アート、サイエンス。「唯一で最善の方法」などない。(p.15)
・マネジャーの定義:組織の全体、もしくは組織内の明確に区分できる一部分(部署)に責任をもつ人物(p.16)。ほかの人たちの再考のパフォーマンスを引き出すこと、言い換えれば、ほかの人たちがもっとよく学び、もっとよく決断をくだし、もっとよく行動できるようにすることがマネジャーには求められる。
・マネジャーは、電話や会議や電子メールを終えて「仕事に戻る」のではない。こうしたコミュニケーションこそがマネジャーの仕事(p.40)。
・マネジャーの仕事には、情報処理の要素がきわめて多い。大量に話すだけでなく、大量に見て、聞いて、感じることを通じて情報を得なければならない(p.83)。
・マネジメントは、ためらいがちな姿勢で務まる仕事ではない。100%の姿勢で臨まなければ、好ましい結果は得られない(p.224)
・すべての基本姿勢をブレンドする:ミドルから枠外へ、外部環境との結合、組織文化の強化、戦略的に介入、すべてをブレンド、業務の円滑な流れ、ミドルの枠内で、側面から助言、リモートコントロール(p.224-225)
・マネジメントのジレンマ:思考のジレンマ、情報のジレンマ(「現場との関わりの難題」「権限委譲の板ばさみ」「数値測定のミステリー」、人間のジレンマ、行動のジレンマ、全体的なジレンマ(p.243)
・ものごとを一つにまとめ上げることは、マネジメントの本質中の本質である(p.252)
・組織のサイロ(縦割り)とスラブ(横割り)(p.261)
・新たにマネジャーになった人物は「『知らない』状態への対処の仕方を学ばなければならない」(p.264)
・マネジャーを現場に触れさせる:昨今の職場で大きな問題を生んでいるのは、現場に口出ししすぎるマイクロマネジャーより、むしろ「マクロリーダー(現場と乖離し、現場でなにが起きているのかわかっていないマネジャー)」(p.266-7)
・マネジャーは個人的な情報収集システムに頼っているので、膨大な量の仕事を抱え込むか、部下の仕事ぶりにいら立ちを感じるかのいずれかになる運命にあるようだ(p.271)
・ハードデータ(統計等)の弱点(p.273-6):①守備範囲には限りがある②しばしば過度に集計化されすぎる③手元に届くまでに時間がかかる④信頼性の乏しい情報が驚くほどたくさん混ざっている。
・大事なのは、数字に幻惑されるのをやめて、ハードデータにソフトデータを駆逐させないようにし、両方のタイプの情報をできる限り一体化させること(p.277-8)
・カオスに支配させ、カオスを支配する(p.282):秩序と無秩序のバランス
・下位マネジャーの対策:どういう状況でふるまえば、(命令に)逆らってもいいかをわきまえて」さえいれば、指揮命令系統を無視するのも一つの選択かもしれない。優秀なマネジャーは「そういう技に磨きをかけている」(p.288)
・マネジャーは謙虚がいい:マネジャーが「自信のわな」に陥らないためには、組織は健全な自信の裏返しで謙虚にふるまえる人物をマネジャーの地位に就けることなのかもしれない。しかし、ヒーロー型リーダーがもてはやされる時代に、本当に謙虚な人物がどれだけマネジャーになれるだろうか(p.290)
・私たちは、変化しているものにばかり目を奪われがちだが、私たちの身の回りにあるもののほとんどは変化していない:T型フォード、ボタン、ネクタイ等(p.296)
・優れたマネジャーの条件(p.304-5)
・マネジメントの三要素であるアート、クラフト、サイエンスのいずれか一つだけが突出すると、ナルシスト型、退屈型、計算型という好ましくないマネジメントスタイルが出現する(p.313)
・マネジメントの成功と失敗を考える枠組み:①振り返りの糸、②分析の糸、③広い視野の糸、④協働の糸、積極行動の糸(p.320)
・IMPM(国際マネジメント実務修士課程)(p.320)
・振り返りのためのチェックリスト(p.326)
・「ワールドリー」:人生の経験が豊富であること。世の中の事情に通じていること。実務処理能力が高いこと。私たちの多くがマネジャーに期待する資質、そして本当のリーダーに望む資質をこれほど的確に言い表している言葉は、おそらくほかにないだろう(p.330)
・マネジャーの選考:①欠点が明らかな人物を選ぶ②マネジメントされる側に発言権を③「外部の内部者」を探す(p.341-5)
・マネジャーの仕事の質の評価:具体的な状況を離れてマネジャーの仕事の質を評価することは不可能。①「マネジャーが機能している」などということはありえない。機能するのはあくまでもマネジャーと組織の相性(普遍的に「いい夫」「いい妻」は存在しない。存在するのは「いい夫婦」だけ)②普遍的に有能なマネジャーなど存在しない:好ましい結果を残すマネジャーとは、優れたマネジメントスタイルをもつ人物ではなく、その組織に必要なスタイルを実践できる人物。③どのような組織でもマネジメントできる「プロのマネジャー」も存在しない④マネジャーがどの程度成功しているかを評価するためには、組織がどの程度成功しているかを評価することが欠かせない⑤マネジャーがどの程度の成果をあげたかは、組織が成果を高めるのにどの程度貢献したかによって決まる⑥マネジャーの仕事の質は、常に相対的なものである。着任した時の組織の状態によって評価は違ってくるべきだし、ほかの人物がその職に就いていたと仮定した場合との比較によっても評価は変わる⑦マネジャーの仕事ぶりは、部署や組織の中だけでなく、もっと広範囲に及ぶ影響をもとに評価すべきである(p.345-8)
・健全な組織とは、自分の担当業務のことしか考えない個人の集合体ではない。システム全体を気にかけ、システムが先々まで生き延びるように気を配ることを忘れない責任感ある個人のコミュニティこそ健全な組織なのだ(p.348)
・最近、マネジャーの責任がとかく強調される。しかし、それがなにに対する責任なのかという点にはほとんど関心が払われていない(p.348-9)
・マネジャーの仕事の質は、数値で測れない。人間の頭脳を使って判断する以外にない(p.350)
・マネジャーが役割を果たすためには、ものごとをよく考える姿勢が欠かせない。必要なのは、特定のやり方を無条件に実践する姿勢でもなければ、私利私欲を満たすための巧妙な仕組みでもない。自分の頭で考えて、ものごとを判断するという、昔ながらの姿勢が大切なのだ(p.352-3)。
・マネジメントの本質を理解したければ、地べたに降りて現場に身を置くべき。そのあとで、そこから「上」に視線を移して抽象的なマネジメントの世界を理解すればいい(p.365)。
・マネジャーとして(あえて言えばリーダーとして)成功するためには、目を見張るような能力の持ち主であることよりも、情緒面で健全で、明晰な思考力をもっていることのほうが大事なのかもしれない(p.367)
・どうすれば自然なリーダーシップを生み出せるのか。リーダーシップを過度に重んじれば、リーダー以外のすべての人を軽んじることになる。その結果、リーダー以外の人々を無理強いして働かせなくてはならなくなり、コミュニティのなかで協力し合おうとする人間の自然な性質を活用できなくなる。マネジメントを成功させるためには、人々を関わらせ、自分自身が関わること、人々を結びつかせ、自分自身が結びつくこと、人々をサポートし、自分自身がサポートされることが必要なのだ(p.368)。 -
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『マネジャーの実像』という450ページにもわたる大著を3分の2ほどのボリュームに編集し直し、加筆が入ったのが本書である。
先日読んだ『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(入山章栄 著)によると、ミンツバーグは経営戦略論の中でもポーターから始まる今主流の"コンテンツ派"ではなく、"プランニング派"に属し、その中でも「考える前にまずはやってみるべき」という学習主義をベースにしている。
そんなミンツバーグが、29人ものマネジャーの観察を基に、その機能・仕事の仕方などを分類、系統立てた。
管理をする立場の者にとっては大きくうなずけるであろう内容が多く、「マネジメントとは『いまいましいことが次々と降りかかる』仕事で、永遠にひとときも開放されることがない」「電話や会議や電子メールを終えて『仕事に戻る』のではなく、こうしたコミュニケーションこそがマネジャーの仕事である」といった文を読んで、世のマネジャーは皆同じ悩みを抱えているのだと勇気をもらえる方も多いのではないだろうか。
だからといって、特効薬的な解決策が示されているわけではない(当たり前だが)。マネジャーという仕事と実際の現実、管理の次元や枠組みなどを知り、自分はどのようなタイプかを見つめ直し、どのようなやり方をミックスさせて自分らしいマネジメントを行うか。それを考える機会を得る上では、とても良い本だと思う。
リーダーシップよりも、コミュニティシップに基づくエンゲージメント。
トップダウンではなくミドルマネジャーによるアップアンドダウン。
1980年代の日本的経営のファンというミンツバーグらしい主張も印象的である。
難を言えば、やはりエッセンシャル版。
よいとこ取りなだけに、頭に残りにくい面はあるかもしれない。 -
Posted by ブクログ
ネタバレマネジャーについて実際に29人の日常観察を通じてまとめられたマネジャーの実像に関する著書である。分厚い割にはすらすらと読める。ただしまとまっているというより、いろんなことがずらずら書かれているという印象。
非常に興味深いのはいわゆるマネジメント論(ドラッカー等)のようにきわめてマネジメントを神格化したりするのではなく、実際のマネージャーはコントロールもできていないし、様々なジレンマにも直面しているし、今も昔も変わっていないというようなことが書いてあり、正直ほっとする。ドラッカー等マネジメントとリーダシップを分けるのが一般だが、あくまでリーダシップはマネジメントの一部と言い切る。
昔も今も変わらないマネジメントの特徴として過酷なペース、細切れの仕事、守備範囲の広さ、頻繁な中断、行動指向の強さ、口頭のコミュニケーションの重視、横の関係の重要性、主導権を握りづらい状況で主導権をある程度確保するための苦心が挙げられ、一言で言うと「計算された混沌」である。インターネットの影響はこの特徴をさらに助長しているという指摘もあり、興味深い。彼のまとめたモデルではマネジャーを取り囲む3つの次元が存在する。
・情報の次元:基本設定、コミュニケーション、スケジュール、コミュニケーションコントロール
・人間の次元:関わること、導くこと
・行動の次元:実行をすること、取引をすること
またマネジメントは実践であり、アート、クラフト、サイエンスの三角形で構成され、それらのバランスが大切という。従来のMBAプログラム等はサイエンス(分析)ばかり強調していることも問題視している。
最後に印象に残ったフレーズは「成功するためには目を見張るような能力の持ち主であることよりも情緒面で健全で、明晰な思考力をもっていることのほうが大事なのかもしれない」と自然にマネジメントすることの大事さを主張する。