あらすじ
名著『マネジャーの仕事』から36年、待望の最新刊!
すぐれたマネジャーとは、カリスマリーダーでもなければ、戦略家でもない、次々に降りかかる「いまいましい問題」とエンドレスに付き合うことができるタフな実務家にほかならない――。
「マネジメント論」の常識を覆す衝撃の事実!!!
マネジメントとは、一本のロープの上を歩くだけの一次元の綱渡りではない。さまざまな場所に張り渡してある何本ものロープの上を歩く多次元の綱渡りなのだ。
好ましいマネジャーとは、MBA教育やリーダーシップ礼賛論に毒されているナルシストではなく、経験と常識を備えた「普通の人物」である。
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Posted by ブクログ
「エッセンシャル版 ミンツバーグ マネージャー論」は、本書を内容を圧縮したものです。
400ページ以上の大作ゆえ読み切るのに時間はかかりましたが、相変わらずミンツバーグ先生からは学びが多いです。
本書には、病院の看護師長、銀行の会長、国際機関の事務局長、通信企業のセールスマネージャーなど、ミンツバーグ先生が密着取材した8人のマネージャーの「典型的な一日」が付録として掲載されています。
マネージャー(管理職)は大所高所から計画を立てて指示を行い、組織を導く…なんてことは、本書を読むと幻想だというのがハッキリ分かります。
マネージャーには常に忌々しい出来事が降りかかる、という記載どおり、それぞれのマネージャーは、日々降りかかる問題にいかに対処していくかに腐心している様子が窺えます。
はたから見ると上手くいっているように見えるマネージャーも、実はそうではない(取引先に断りの電話を入れるのに逡巡している、などなど)ということがよく分かり、その生々しさには強い共感を覚えるところです。
そこには、昨今もてはやされる強いリーダーシップの裏側が垣間見え、自分自身もある意味ホッとし、勇気づけられました。
マネジメントって、実践から学び続けるしかないんだな。
Posted by ブクログ
(1回目 2018/11/08)
タイトル通りの本だった。前半はマネージャの仕事が組織や個人の性質によって異なることを述べつつ、共通して、サイエンスで一刀両断出来るような単純な仕事ではない、ということを書いている。一番大きな学びは、マネージャという仕事がジレンマを抱えながら進めざるを得ない、ということか。全体を通して読むことはできたので、今後は再読を重ねて自分の知識にしていきたい。
なお、29人のマネージャが、それぞれの環境に適したまったく異なるマネージャとしての役割を果たしていたという事実には、画一的なマネージャー像しか知らない人にとっては励まされるものがあると思う。
Posted by ブクログ
見た目以上に読み応えがありました。学生の経験の中でも、思い当たる内容がいくつかあり、非常に刺激的でした。
これまでのマネジメントを振り返ることと、自分に足りない部分、得意な部分、苦手な部分を見つめることを大いに助けてくれる本です。
Posted by ブクログ
ミンツバーグ氏の相変わらずの広い視野と深い洞察、そして挑発的な示唆。非常に刺激的な一冊ではあるが、ページ数だけではなく内容の濃さからもそれなりの覚悟が必要。
高名な経営学者でありながら、常に現場で実態を追い続け、現場を知らずによくもそんな空虚なリーダーシップ論を展開できるものだと、随所に世にはびこるリーダーシップ論への批判が展開されている。
書店に平積みされているリーダーシップ論に真っ向から対峙するスタンスの為、その類の書を求める人にはオススメしないし、あえてオススメもしたい。
読み手の脳をフル回転させるミンツバーグの本は疲れます。
Posted by ブクログ
グロービスのマネジメント本で引用されていたので手にとった本。分厚くて怯んだが読み物として非常に面白かった。
中盤は中だるみするので1章と最終章だけ読めばOK。笑
マネージャー初心者として、マネジメントのヒントを得るために読んだけれども、体系化された手法や技術などなく、実践し、経験から学び、ひたすら自分の頭で考えることを止めないことでしか成し得ないのだなということが分かった。
マネジメントとは、「仕事の喜びと責任と苦悩の世界」である。
仕事へのモチベーションをあげてくれる。
Posted by ブクログ
現実的なマネジメント論。
いつも時間に追われ、慌ただしい日常、まさにいまの自分と合致しており、少しほっとした気分になる。
アート(ビジョン)、クラフト、サイエンスからなる実践。
情報の次元、人間の次元、行動の次元。つまり、情報を分配し、人の育成とチームビルディングをし、自らプロジェクトマネジメントやトラブル対処を行うというところか。
Posted by ブクログ
上司を観察して感じていたことがそのまま書かれていた。あらゆる仕事や雑務に追われ、まとまった時間がとれない、なすべきことを見失う‥そんな状況だ。
解決するのでなく切り抜ける。なるほどなと思いつつも、この状況をしょうがないものと捉えるのは違うと思う。なすべきことを追究しなくてはならない。
状況に応じて柔軟に考え方、進め方を変える力。そのベースとなる自分の頭で考え決断する習慣を今まで以上に育む必要がある。行動計画を立てる上でとても参考になった。アート、クラフト、サイエンス。これらを一つの軸にマップを作ってみよう。
Posted by ブクログ
なかなか読むのに骨が折れたが、振り返るといいことがたくさん書いてあったと思う。権限委譲の話は特に参考になる。今まで仕事をしてきて、情報の不均質さがいかにストレスであるかをよく感じていたので、今後の仕事における自分自身の身の振り方にも気をつけたいと思う。
Posted by ブクログ
・マネジメント:実践の行為-クラフト、アート、サイエンス。「唯一で最善の方法」などない。(p.15)
・マネジャーの定義:組織の全体、もしくは組織内の明確に区分できる一部分(部署)に責任をもつ人物(p.16)。ほかの人たちの再考のパフォーマンスを引き出すこと、言い換えれば、ほかの人たちがもっとよく学び、もっとよく決断をくだし、もっとよく行動できるようにすることがマネジャーには求められる。
・マネジャーは、電話や会議や電子メールを終えて「仕事に戻る」のではない。こうしたコミュニケーションこそがマネジャーの仕事(p.40)。
・マネジャーの仕事には、情報処理の要素がきわめて多い。大量に話すだけでなく、大量に見て、聞いて、感じることを通じて情報を得なければならない(p.83)。
・マネジメントは、ためらいがちな姿勢で務まる仕事ではない。100%の姿勢で臨まなければ、好ましい結果は得られない(p.224)
・すべての基本姿勢をブレンドする:ミドルから枠外へ、外部環境との結合、組織文化の強化、戦略的に介入、すべてをブレンド、業務の円滑な流れ、ミドルの枠内で、側面から助言、リモートコントロール(p.224-225)
・マネジメントのジレンマ:思考のジレンマ、情報のジレンマ(「現場との関わりの難題」「権限委譲の板ばさみ」「数値測定のミステリー」、人間のジレンマ、行動のジレンマ、全体的なジレンマ(p.243)
・ものごとを一つにまとめ上げることは、マネジメントの本質中の本質である(p.252)
・組織のサイロ(縦割り)とスラブ(横割り)(p.261)
・新たにマネジャーになった人物は「『知らない』状態への対処の仕方を学ばなければならない」(p.264)
・マネジャーを現場に触れさせる:昨今の職場で大きな問題を生んでいるのは、現場に口出ししすぎるマイクロマネジャーより、むしろ「マクロリーダー(現場と乖離し、現場でなにが起きているのかわかっていないマネジャー)」(p.266-7)
・マネジャーは個人的な情報収集システムに頼っているので、膨大な量の仕事を抱え込むか、部下の仕事ぶりにいら立ちを感じるかのいずれかになる運命にあるようだ(p.271)
・ハードデータ(統計等)の弱点(p.273-6):①守備範囲には限りがある②しばしば過度に集計化されすぎる③手元に届くまでに時間がかかる④信頼性の乏しい情報が驚くほどたくさん混ざっている。
・大事なのは、数字に幻惑されるのをやめて、ハードデータにソフトデータを駆逐させないようにし、両方のタイプの情報をできる限り一体化させること(p.277-8)
・カオスに支配させ、カオスを支配する(p.282):秩序と無秩序のバランス
・下位マネジャーの対策:どういう状況でふるまえば、(命令に)逆らってもいいかをわきまえて」さえいれば、指揮命令系統を無視するのも一つの選択かもしれない。優秀なマネジャーは「そういう技に磨きをかけている」(p.288)
・マネジャーは謙虚がいい:マネジャーが「自信のわな」に陥らないためには、組織は健全な自信の裏返しで謙虚にふるまえる人物をマネジャーの地位に就けることなのかもしれない。しかし、ヒーロー型リーダーがもてはやされる時代に、本当に謙虚な人物がどれだけマネジャーになれるだろうか(p.290)
・私たちは、変化しているものにばかり目を奪われがちだが、私たちの身の回りにあるもののほとんどは変化していない:T型フォード、ボタン、ネクタイ等(p.296)
・優れたマネジャーの条件(p.304-5)
・マネジメントの三要素であるアート、クラフト、サイエンスのいずれか一つだけが突出すると、ナルシスト型、退屈型、計算型という好ましくないマネジメントスタイルが出現する(p.313)
・マネジメントの成功と失敗を考える枠組み:①振り返りの糸、②分析の糸、③広い視野の糸、④協働の糸、積極行動の糸(p.320)
・IMPM(国際マネジメント実務修士課程)(p.320)
・振り返りのためのチェックリスト(p.326)
・「ワールドリー」:人生の経験が豊富であること。世の中の事情に通じていること。実務処理能力が高いこと。私たちの多くがマネジャーに期待する資質、そして本当のリーダーに望む資質をこれほど的確に言い表している言葉は、おそらくほかにないだろう(p.330)
・マネジャーの選考:①欠点が明らかな人物を選ぶ②マネジメントされる側に発言権を③「外部の内部者」を探す(p.341-5)
・マネジャーの仕事の質の評価:具体的な状況を離れてマネジャーの仕事の質を評価することは不可能。①「マネジャーが機能している」などということはありえない。機能するのはあくまでもマネジャーと組織の相性(普遍的に「いい夫」「いい妻」は存在しない。存在するのは「いい夫婦」だけ)②普遍的に有能なマネジャーなど存在しない:好ましい結果を残すマネジャーとは、優れたマネジメントスタイルをもつ人物ではなく、その組織に必要なスタイルを実践できる人物。③どのような組織でもマネジメントできる「プロのマネジャー」も存在しない④マネジャーがどの程度成功しているかを評価するためには、組織がどの程度成功しているかを評価することが欠かせない⑤マネジャーがどの程度の成果をあげたかは、組織が成果を高めるのにどの程度貢献したかによって決まる⑥マネジャーの仕事の質は、常に相対的なものである。着任した時の組織の状態によって評価は違ってくるべきだし、ほかの人物がその職に就いていたと仮定した場合との比較によっても評価は変わる⑦マネジャーの仕事ぶりは、部署や組織の中だけでなく、もっと広範囲に及ぶ影響をもとに評価すべきである(p.345-8)
・健全な組織とは、自分の担当業務のことしか考えない個人の集合体ではない。システム全体を気にかけ、システムが先々まで生き延びるように気を配ることを忘れない責任感ある個人のコミュニティこそ健全な組織なのだ(p.348)
・最近、マネジャーの責任がとかく強調される。しかし、それがなにに対する責任なのかという点にはほとんど関心が払われていない(p.348-9)
・マネジャーの仕事の質は、数値で測れない。人間の頭脳を使って判断する以外にない(p.350)
・マネジャーが役割を果たすためには、ものごとをよく考える姿勢が欠かせない。必要なのは、特定のやり方を無条件に実践する姿勢でもなければ、私利私欲を満たすための巧妙な仕組みでもない。自分の頭で考えて、ものごとを判断するという、昔ながらの姿勢が大切なのだ(p.352-3)。
・マネジメントの本質を理解したければ、地べたに降りて現場に身を置くべき。そのあとで、そこから「上」に視線を移して抽象的なマネジメントの世界を理解すればいい(p.365)。
・マネジャーとして(あえて言えばリーダーとして)成功するためには、目を見張るような能力の持ち主であることよりも、情緒面で健全で、明晰な思考力をもっていることのほうが大事なのかもしれない(p.367)
・どうすれば自然なリーダーシップを生み出せるのか。リーダーシップを過度に重んじれば、リーダー以外のすべての人を軽んじることになる。その結果、リーダー以外の人々を無理強いして働かせなくてはならなくなり、コミュニティのなかで協力し合おうとする人間の自然な性質を活用できなくなる。マネジメントを成功させるためには、人々を関わらせ、自分自身が関わること、人々を結びつかせ、自分自身が結びつくこと、人々をサポートし、自分自身がサポートされることが必要なのだ(p.368)。
Posted by ブクログ
マネジャーについて実際に29人の日常観察を通じてまとめられたマネジャーの実像に関する著書である。分厚い割にはすらすらと読める。ただしまとまっているというより、いろんなことがずらずら書かれているという印象。
非常に興味深いのはいわゆるマネジメント論(ドラッカー等)のようにきわめてマネジメントを神格化したりするのではなく、実際のマネージャーはコントロールもできていないし、様々なジレンマにも直面しているし、今も昔も変わっていないというようなことが書いてあり、正直ほっとする。ドラッカー等マネジメントとリーダシップを分けるのが一般だが、あくまでリーダシップはマネジメントの一部と言い切る。
昔も今も変わらないマネジメントの特徴として過酷なペース、細切れの仕事、守備範囲の広さ、頻繁な中断、行動指向の強さ、口頭のコミュニケーションの重視、横の関係の重要性、主導権を握りづらい状況で主導権をある程度確保するための苦心が挙げられ、一言で言うと「計算された混沌」である。インターネットの影響はこの特徴をさらに助長しているという指摘もあり、興味深い。彼のまとめたモデルではマネジャーを取り囲む3つの次元が存在する。
・情報の次元:基本設定、コミュニケーション、スケジュール、コミュニケーションコントロール
・人間の次元:関わること、導くこと
・行動の次元:実行をすること、取引をすること
またマネジメントは実践であり、アート、クラフト、サイエンスの三角形で構成され、それらのバランスが大切という。従来のMBAプログラム等はサイエンス(分析)ばかり強調していることも問題視している。
最後に印象に残ったフレーズは「成功するためには目を見張るような能力の持ち主であることよりも情緒面で健全で、明晰な思考力をもっていることのほうが大事なのかもしれない」と自然にマネジメントすることの大事さを主張する。
Posted by ブクログ
マネジメントのプロといったものは幻想に過ぎない、という。
欠点のないマネジャーなど存在しないと。
マネジメントは実務を通じて学ぶしかない以上、本書を読んだだけでは何も習得したことにはならないが、ミンツバーグが「現場」から導き出した様々な知見は、マネジャーの背中を押してくれるものだと思う。