オマル・ハイヤームのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この作品には背後世界を否定的に捉えて現世での生を重視し、しかし現世の生における成功も否定している点で、一種のニヒリズムが見て取れる。
また、神が定めた運命を「降りかかる」と表現しているように、生をただ虚しいもの・一場の夢と捉える厭世主義的価値感を持ち、また「母から生れなかったものこそ幸福だ!」という様に反出生主義の色も強い。
そうした遣る瀬無い無常感を満たすために、オマルは酒や酒姫に現世での刹那的喜びを見出した。その結果113番「明日のことなんか何を心配するのか?酒姫よ!さあ、早く酒盃を持て、今宵も過ぎていくよ!」のように、もはやそうした快楽で満ちているかの様に見える。
しかしそれは彼にとって矛盾する行いでもあった。それは140番
さあ、 ハイヤームよ、 酒に酔って、
チューリップのような美女によろこべ。
世の終局は虚無に帰する。
よろこべ、 ない筈のものがあると思って。
に悲痛な叫びとして表れている。ここから、やはり彼の刹那的享楽主義はただのそれではなく、哲学的思考の結果としての深い絶望と矛盾から迸るペシミズムの成す刹那的享楽主義であろう。
従来のイスラム教的観念から異なる(逸脱した)自然観・生命観を持つ彼の歌は、ペルシア文化賛美の面も持つ。たとえば酒を賛美し、古代ペルシアの王たちや、暦法(ノールーズ)をこよなく愛しているところなどが挙げられる。
しかしオマルは生まれるのが早すぎた。市民階級が勃興したのちに生まれていれば、もう少し彼も周りのウラマーを気にせず思いの丈を綴れたであろうに。
他の厭世主義との比較であれば、虚無である刹那を楽しもうと唱えている点で、遁世した西行ら東洋のペシミストたちと異なる点だ。
余談であるが、読んでるとめちゃくちゃ酒が飲みたくなる詩集でもある。特にこの133番は酒を飲みながらぼやきたい詩No.1だ。
酒をのめ、それにそ永遠の生命だ 、
また青春の唯一の効果だ。
花と酒、君も浮かれる春の季節に、
たのしめ一瞬を、それこそ真の人生だ! -
Posted by ブクログ
イスラームの詩というと、難しそうだったり考えもつかないことが書かれているイメージだったけど、これは違った。
どの詩も身にしみるものばかりで、余計な感傷が一切ないのがかえって感情に訴えるのか、胸を打つものが多かった。その詩は無常観がありペシミスティックだけど、斜に構えたものではない。真理を追求し続けた学者が見るまぎれもない現実を写しており、酒、チューリップ、酒姫(少年)、歌が出てくるが享楽的な感じはしない。『明日なんてあると思うな、今このときを楽しもう、今日目を楽しませる若草が、明日きみの体から生えていないとは限るまい』明日も神も信じないからこその真実味、そこからくる美しさ、文化も年月も超えた良さがここにある。 -
Posted by ブクログ
大いなる人間あるある、かつ、世界あるある的テクストの洪水。
しかしまあ、作者の視点の広範なこと!事物をどこからでも見つめる。
地中深くに潜ったかと思いきや、空よりも高くなる。
ぶれない4行詩。いつの間にか勇気付けられている。無常感もあり。無神論感もありはしないか?
4行詩というスタイルはTwitterとなって現代に息づいています……てきとーなことを言いました。「酒を飲め」なるフレーズが連発で読むだけて酩酊しそうになりますな。
「凄いです」という言葉はあまりに安易なので読後感をしたためる際には使わないことに決めています。
凄いです。
そしてありがとう青空文庫。 -
Posted by ブクログ
オマル・ハイヤーム、この世界、現世、もともとつれだされた世界なんだ、何のために来て去るのやら、生きて得るところ何があったか、わかりもしないでしぶしぶ去るのだ。だからーサーキよ酒をもって来てくれ、いまこの一瞬を人生を楽しもう、明日は我が身、重ねた盃も歌い踊った美しい舞姫もいつのまにかいなくなって砂漠の砂の中にかけらとなって残るのみ、この淋しさは何処からくるのかまさに哲学的な問い掛けのようだ、生きる喜びと酒神と好きな女性がいればそれだけでいい、他に何を求めようか一瞬を楽しめ人生の若き時は短いゆえ夜を徹して飲み通す、この不可思議な世界に存在する、いまを、過ぎてゆく時間を、我を感じてみよう、この世のありとあらゆる悦楽を味わい尽くしたいものだ、いずれ去る時がやって来る、永遠の別れ、この不可思議な世界、人間なんて、どうして殺しあうのか、いずれ去る身ゆえにそんな暇はない酒を持って来い、もってこい、もってこい、もっとこい酒姫、今宵も一献一献飲み潰れるまで!
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Posted by ブクログ
ネタバレようやく、読んだ。イランにアメリカ・イスラエルの攻撃が始まった翌日に。
仏教ですかというくらい無常観が謳われているので、馴染み深かった。
「解き得ぬ謎なぞ」、「生きのなやみ」、「太初はじめのさだめ」、「万物流転ばんぶつるてん」、「無常の車」、「ままよ、どうあろうと」、「むなしさよ」、「一瞬ひとときをいかせ」という章も好きだったし笑。
以下好きだった詩。
51
われらの後にも世は永遠につづくよ、ああ!
われらは影も形もなく消えるよ、ああ!
来なかったとてなんの不足があろう?
行くからとてなんの変りもないよ、ああ!
56
天に聳えて宮殿は立っていた。
ああ、そのむかし帝王が出御の玉座、
名残りの円蓋で数珠かけ鳩が、
何処クークー、何処クークーとばかり啼ないていた。
101
九重の空のひろがりは虚無だ!
地の上の形もすべて虚無だ!
たのしもうよ、生滅の宿にいる身だ、
ああ、一瞬のこの命とて虚無だ!
103
世の中が思いのままに動いたとてなんになろう?
命の書を読みつくしたとてなんになろう?
心のままに百年を生きていたとて、
更さらに百年を生きていたとてなんになろう?
106
ないものにも掌の中の風があり、
あるものには崩壊と不足しかない。
ないかと思えば、すべてのものがあり、
あるかと見れば、すべてのものがない。
124
さあ、起きて、嘆くなよ、君、行く世の悲しみを。
たのしみのうちにすごそう、一瞬を。
世にたとえ信義というものがあろうとも、
君の番が来るのはいつか判らぬぞ。
(130)
さあ、一緒にあすの日の悲しみを忘れよう、
ただ一瞬のこの人生をとらえよう。
あしたこの古びた修道院を出て行ったら、
七千年前の旅人と道伴れになろう。
135
あしたのことは誰にだってわからない、
あしたのことを考えるのは憂鬱なだけ。
気がたしかならこの一瞬を無駄にするな、
二度とかえらぬ命、だがもうのこりは少い。