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過去を思わず未来を怖れず、ただ「この一瞬を愉しめ」と哲学的刹那主義を強調し、生きることの嗟嘆や懐疑、苦悶、望み、憧れを、平明な言葉・流麗な文体で歌った四行詩の数々。十一世紀ペルシアの科学者オマル・ハイヤームのこれらの詩は、形式の簡潔な美しさと内容の豊かさからペルシア詩の最も美しい作品として広く愛読されている。
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Posted by ブクログ
この作品には背後世界を否定的に捉えて現世での生を重視し、しかし現世の生における成功も否定している点で、一種のニヒリズムが見て取れる。 また、神が定めた運命を「降りかかる」と表現しているように、生をただ虚しいもの・一場の夢と捉える厭世主義的価値感を持ち、また「母から生れなかったものこそ幸福だ!」とい...続きを読むう様に反出生主義の色も強い。 そうした遣る瀬無い無常感を満たすために、オマルは酒や酒姫に現世での刹那的喜びを見出した。その結果113番「明日のことなんか何を心配するのか?酒姫よ!さあ、早く酒盃を持て、今宵も過ぎていくよ!」のように、もはやそうした快楽で満ちているかの様に見える。 しかしそれは彼にとって矛盾する行いでもあった。それは140番 さあ、 ハイヤームよ、 酒に酔って、 チューリップのような美女によろこべ。 世の終局は虚無に帰する。 よろこべ、 ない筈のものがあると思って。 に悲痛な叫びとして表れている。ここから、やはり彼の刹那的享楽主義はただのそれではなく、哲学的思考の結果としての深い絶望と矛盾から迸るペシミズムの成す刹那的享楽主義であろう。 従来のイスラム教的観念から異なる(逸脱した)自然観・生命観を持つ彼の歌は、ペルシア文化賛美の面も持つ。たとえば酒を賛美し、古代ペルシアの王たちや、暦法(ノールーズ)をこよなく愛しているところなどが挙げられる。 しかしオマルは生まれるのが早すぎた。市民階級が勃興したのちに生まれていれば、もう少し彼も周りのウラマーを気にせず思いの丈を綴れたであろうに。 他の厭世主義との比較であれば、虚無である刹那を楽しもうと唱えている点で、遁世した西行ら東洋のペシミストたちと異なる点だ。 余談であるが、読んでるとめちゃくちゃ酒が飲みたくなる詩集でもある。特にこの133番は酒を飲みながらぼやきたい詩No.1だ。 酒をのめ、それにそ永遠の生命だ 、 また青春の唯一の効果だ。 花と酒、君も浮かれる春の季節に、 たのしめ一瞬を、それこそ真の人生だ!
11-12世紀ペルシアの詩人らしいのだが、あまりに現代的で驚く。 現世の快楽にこだわる詩。宗教への反発から生まれた言葉なのかなあ。すごく好きだ。 訳者による解説も充実している。ペルシアの文化に触れたり、翻訳の意図がわかったりして、満足度が高い。
イスラームの詩というと、難しそうだったり考えもつかないことが書かれているイメージだったけど、これは違った。 どの詩も身にしみるものばかりで、余計な感傷が一切ないのがかえって感情に訴えるのか、胸を打つものが多かった。その詩は無常観がありペシミスティックだけど、斜に構えたものではない。真理を追求し続けた...続きを読む学者が見るまぎれもない現実を写しており、酒、チューリップ、酒姫(少年)、歌が出てくるが享楽的な感じはしない。『明日なんてあると思うな、今このときを楽しもう、今日目を楽しませる若草が、明日きみの体から生えていないとは限るまい』明日も神も信じないからこその真実味、そこからくる美しさ、文化も年月も超えた良さがここにある。
大いなる人間あるある、かつ、世界あるある的テクストの洪水。 しかしまあ、作者の視点の広範なこと!事物をどこからでも見つめる。 地中深くに潜ったかと思いきや、空よりも高くなる。 ぶれない4行詩。いつの間にか勇気付けられている。無常感もあり。無神論感もありはしないか? 4行詩というスタイルはTwi...続きを読むtterとなって現代に息づいています……てきとーなことを言いました。「酒を飲め」なるフレーズが連発で読むだけて酩酊しそうになりますな。 「凄いです」という言葉はあまりに安易なので読後感をしたためる際には使わないことに決めています。 凄いです。 そしてありがとう青空文庫。
「諦念」ということばがぴったりの作品。 (それだと仏教みたいだけど) 但し、生の儚さを諦めた上で悲観的にならず、 どこか突き抜けたような明るさに溢れている。 だったら飲んで歌って踊ろうよ~♪という具合に。 「人生オワタ\(^o^)/」っていう今時の言い回しを初めて見た時 ルバイヤートのことを...続きを読む思い出した。
オマル・ハイヤーム、この世界、現世、もともとつれだされた世界なんだ、何のために来て去るのやら、生きて得るところ何があったか、わかりもしないでしぶしぶ去るのだ。だからーサーキよ酒をもって来てくれ、いまこの一瞬を人生を楽しもう、明日は我が身、重ねた盃も歌い踊った美しい舞姫もいつのまにかいなくなって砂漠の...続きを読む砂の中にかけらとなって残るのみ、この淋しさは何処からくるのかまさに哲学的な問い掛けのようだ、生きる喜びと酒神と好きな女性がいればそれだけでいい、他に何を求めようか一瞬を楽しめ人生の若き時は短いゆえ夜を徹して飲み通す、この不可思議な世界に存在する、いまを、過ぎてゆく時間を、我を感じてみよう、この世のありとあらゆる悦楽を味わい尽くしたいものだ、いずれ去る時がやって来る、永遠の別れ、この不可思議な世界、人間なんて、どうして殺しあうのか、いずれ去る身ゆえにそんな暇はない酒を持って来い、もってこい、もってこい、もっとこい酒姫、今宵も一献一献飲み潰れるまで!
これを読むだけで、イスラム教の真髄に触れることが出来る。何度も時間を掛けて何回でも読み直したい一冊。
この詩の厭世感は今の私にとても響いて心地よい。翻訳ですら心を打つのだから原文はさぞ素晴らしいのだろう。運よくこの本に巡り会えてよかった。 もともと無理やりつれだされた世界なんだ、 生きて悩みのほか得るところ何があったか? 今は何のために来り住みそして去るのやら わかりもしないでしぶしふ世を去るのだ...続きを読む!
味わい深い一冊でした。 はじめに四行詩を読み、お酒がいっぱい出てくるので不思議に思いましたが、解説によってその背景がわかり、思わずため息がこぼれました。 社会状況からくるやるせなさ、限界。 それでもなお、今にとどまり、真理の探求への道を歩み続けること。 1000年以上前のことなのに、響き合うとこ...続きを読むろもあり、言葉の持つ力を感じました。 平易な言葉で書かれているので、それぞれの想像で読む自由さもあり、それもいいな、と。 元々の言葉がわかるともっと味わい深いのだろうなと思いました。
ペルシア詩に初めて触れた。解説の濃さにも驚いた。遥か彼方の異国の風と土とが香るような一冊だった。人生観というか、全体に漂うテーマも好き。 いくつか好きな詩があった。一番好きなものはこちら。 あすの日が誰にいったい保証出来よう? 哀れな胸を今この時こそたのしくしよう。 月の君よ、さあ、月の下で酒をの...続きを読むもう、 われらは行くし、月はかぎりなくめぐって来よう!
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