吉川洋のレビュー一覧
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少子化が叫ばれる日本の出生率は2023年に1.20まで低下した。アフリカ諸国の6.0と比べると圧倒的に低く、先進国の中でも最低レベルを推移している。一方で平均寿命は男女共に80歳を超えているから、相対的に少なくなる若年層の負担は今後暫く増加していくのは間違いない。何より寿命は誰にでも訪れるから、出生数が減少することは将来に渡り人口が減っていく事を表している。
18世紀のイギリスの古典経済学者であるマルサスが著した「人口論」は食料生産力の増加を超える人口増加は人々を経済的貧困に陥らせる事に警鐘を鳴らし、人口抑制策の導入の必要性を説いたが、今の日本の未来はその反対側の方向へと向かっている。だが世界 -
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ライフネット生命創業者の出口さんのオススメ本。
●レビュー
・人口と経済の関わりを、歴史、海外との比較、経済学者などの論考への分析などの多面的に検討する画期的一冊。
・人口は増えたほうがいいとか、減ったほうがいいとか、単純な議論ではなく、双方のメリット、現状の問題点などを洗い出している。
・人口減少に伴う諸問題(GDP減少懸念、高齢化、長寿問題)に対する解決策は、イノベーションと移民受け入れですって結論は割とシンプル。
●ほか
・マルサス、アダム・スミス、ケインズ、ミル、漱石、老子、内藤湖南など引用が豊富。
・GDPのメリット(経済のサイズを測るに便利な指標である点)とデメリット(家事の価値 -
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デフレ論争。
デフレ20年の記録。
リカードの貨幣数量説。
マーシャルはマネーサプライより、実物的な要因によって生み出される、とした。
M=kPy kはマーシャルのk。yが増大すれば、Mが変わらなければ、物価Pは減少する。しかし、yの増大にともなってMが増えれば、Pは減少しないはず。しかし、yが増大してMが変わらなければ、金利は上昇するはず。しかし実態はかわらなかった。これをギブソン・パラドックスという。
ケインズの時代は、Mが増大したが、Pは減少した。
ブラウン=オズガによると、交易条件によって物価水準がきまる。
貨幣数量説は正しいか。ミルトン・フリードマンなど。絶対価格の変化か相対価格 -
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著者のケインズの学説の進化を中心に紹介する新書「ケインズ」が面白かったので、こちらも読んでみた。
20世紀前半の2大経済学者と言っても異論はないであろうケインズとシュンペーターを当時の激動の時代と関係づけつつ時系列的に紹介したもの。
とは言っても、この2人の影響関係はよくわからなくて、シュンペーターはケインズを意識したようだが、ケインズの方はあまり眼中になかった模様。
個人的には、シュンペーターの経済学はちゃんと読んだことがないので、かなり勉強になった。彼のイノベーション論、創造的破壊論はこれまで表面的な理解しかなかったんだなと思い、「経済発展の理論」を読まなきゃという気になった。
私 -
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日本は少子高齢化により人口が急激に減っている。働き手は減り、地方都市は消滅の危機にある。もはや日本の衰退は不可避ではないかという論調が多いが、そのようなことはない。経済成長をもたらすものはイノベーションであり、人口が減っていくからといって、衰退が避けられないというものではない。以上が、本書の骨子中の骨子だと理解した。
それでは、そもそも経済成長って必要なのか、必要だとすれば何のために必要なのか、という問いも本書は投げかけている。この問いに対しての、私なりの理解を下記したい。
経済成長をもたらすものがイノベーションであるとすれば、イノベーションのないところに経済成長は起きない。では、イノベーシ -
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吉川洋 「いまこそ ケインズ と シュンペーター に学べ 」著者の結論は 資本主義経済の重要な核は ケインズの有効需要、シュンペーターのイノベーションの統合概念(需要創出型のイノベーション)
ケインズ=有効需要の理論
*経済の活動水準は需要により決まる=不況は需要不足により起こる
*投資の不安定性が資本主義経済の変動要因
*金融投資は 美人投票と同じ(自分が美人と感じる人に投票するのでなく、みんなが美人と感じる人に投票する)
シュンペーター=イノベーション、創造的破壊
*資本主義の本質=企業家によるイノベーションに基づくダイナミズム→不況はイノベーションがもたらす必然
「不況なくして 経 -
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人口問題から経済学を見るなんて面白い発想だなと思って手に取ったのだが、全くの勘違いであった。面白い発想どころか人口問題とは経済学のメインストリームであることを本書で初めて知った。
10年前にベストセラーになった藻谷氏の「デフレの正体」を著者が意識したかどうかはわからないが、経済成長は人口ではなくイノベーションによって決まる、が本書の主軸だ。確かに直接の因果を突き詰めればそうかも知れぬが、イノベーションは人間がなすものなれば、その数が多いほどイノベーションが生まれる確率も動機も高くなると見るのが自然だろう。さらに言えば経済成長と人口増減の相関を見るなら両者の微分をスケールを標準化して比較しなけれ -
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ジニ係数の定義。再分配を考慮したジニ係数は当然低い。再分配を考慮しない年齢別ジニ係数はとくに高い。平均寿命に関する格差も挙げられていて、昔は裕福さに比例した格差があったが今は格差はあまりない。19世紀末の平均寿命はアメリカと日本はほぼ差がないが、1945年まで日本は横ばいで50代?だったのに対し、アメリカは70近く?まで伸びている。衛生管理や病院の復旧度合い。GDPは不完全な指標だが、これほど重要で情報を持つ指標はほかにない。料理を自分で作るとGDPは増えないが、外食するとGDPは増える。お金の移動のない価値創造に対して、換算がされない。こういった指標は昔は戦前ヨーロッパで研究されていた。今は
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日本において進行する超高齢化と人口減少問題については、毎日のように新聞紙上にて論ぜられ、それにより国家の増大する一方の歳出に対する懸念は論を俟たない状況です。
筆者は、昭和期の高度経済成長が、労働人口の増加ではなく、生産性の向上により実現されたことを、GDP伸び率と人口伸び率の差を示して指摘し、人口減少社会でも生産性を向上させることにより経済成長を達成できると説きます。
中国製造2025やドイツのインダストリー4.0等、製造業でのイノベーションを喚起する国家的取り組みが世界的にも大きく注目されている中、日本では特定の業種(例えば自動車)で、革新的取組への意欲(自動運転、電動化など)が見られ -
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私の理解では論旨はこんな感じ。
①「人口減少は大きな問題だが、だからといって経済成長できないわけではない」
②「経済成長はよいことである。最大の成果は寿命が延びたこと。人は幸せになった」
③「日本自身の経験に照らしても、成長ドライバーは人口ではなく『イノベーション』」
まず①については、「観光立国論」のデイビット・アトキンソン氏の意見が対極だろう。氏は「日本の奇跡的な経済成長は(日本人が思っているような)国民性やらなんやらではなく、要は急速な人口増によるもの」との立場。もちろん、だからこそ構造改革を、という点で両氏は通底している部分もあるが。
②について、成長を追わずに身の丈にあった暮らし