吉川洋のレビュー一覧
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『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ――有効需要とイノベーションの経済学』(吉川洋、2009年、ダイヤモンド社)
有効需要政策を打ち出し、不況時には政府による公共投資を増やして失業率を下げ、マクロ的に新たな需要を生み出す必要性を説いたケインズ。これはディマンドサイドでみた経済学であり、戦後の成長の各国の経済政策に採用された。
一方、ミクロで見た場合の個々の企業のイノベーション(新結合)が新たな発展の原動力とするシュンペーター。彼によれば、不況すらイノベーションには必要だという。
本書は『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ』という題であるが、お互いに相入れない二人の経済学の巨星 -
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本書の主題を一言で言えば、経済成長は人口の伸びとは関係ない。ゆえに人口が減少するから経済が必ず縮小するとは限らず、イノベーションによって1人あたり所得が増えれば経済成長も可能である、というものです。
まず理屈としてはそうだろうな、確かに100%衰退するとは限らないだろうなとは思いましたが、本書の説得力があったか、と言われるとそこは微妙でした。まず本書の主張の大前提が過去の経済学の知見であること。ケインズ、シュンペーター、マルサスなどの主張が織り込まれているのですが、実は足元で起こっていることはこれまでの経済学のフレームでは説明できないことかもしれないということです。本書では人口減少だけがト -
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まさしく人口と経済の関係性を説いた書。
歴史的に過剰人口が問題だった事に触れ、マルサスの「人口論」やリカードの自由貿易論、ケインズの人口減少による投資・需要減少論、ビクセルの最適人口論、ミュルダールの子育て支援論をあげる。一方日本では人口減少と急速な高齢化によって社会保障・財政への負荷や地域社会の消滅(地方消滅)が指摘されている。ただ経済成長に関しては労働生産性(つまり資本蓄積と技術進歩・イノベーション)増加でどうにかなると語る。労働力供給と生産性向上、消費財の普及と人口移動による世帯増加が高度成長の源泉だったことをデータも交えて振り返り、4次産業革命でのAI普及でもイノベーションが鍵になる -
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本書は日本経済への悲観論に対して、主にシュンペーターのイノベーション(新結合)を中心にした解決を紹介しているように見えた。
オビに「悲観論を乗り越える」とあるが、「悲観論」を「(能動的)ニヒリズム」と読み替えたほうがわかりやすいと思う。なぜなら「悲観論」のもう一端は「楽観論」となってしまうので。楽観論という語句が与えるフワフワした印象は、本書による「日本経済の悲観論への批判」という性格を表していないと感じる。
また本書全体を見ると、結びの4章では、副題にある通り「長寿、イノベーション、経済成長」について著者の主張が明確に書かれているものの、新書サイズという点で割り引いてもかなり物足りない結 -
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人口を切り口に経済を考察する。
経済音痴の私には難しく、眠くなるページが多いが、所々なるほどと思うところもある。
それにしても三連休はよく読書した。
以下は読書メモ:
18世紀の学説では、人は豊かになれば子供をたくさんつくる。生物も、食料が増えれば数が増える。
しかし、19世紀末から先進国では豊かさの中で人口が減り始めた。
人口増加に代わって人類が経験したことのないハイペースで平均寿命が延びた。
経済成長を牽引するのはプロダクトイノベーション、それによって生み出されるモノやサービスが平均寿命の延長に貢献してきた。
人口が減ってもイノベーションによる経済成長は可能。寿命は生物学的限界かも -
Posted by ブクログ
子供の頃人口問題といえば人口爆発とか過密化とか習ったため、人口減少がそんなに悪いこと? 増え続ける人口を支える(望ましい)雇用が本当にあるの? と疑問で、少子化はともかく高齢化=長寿化は基本的にはめでたいことなのに…と素朴に思っていた身としては、そうそう、と膝を打ちたくなる話だった。少なくとも数がいりゃいいのではなく、イノベーションを創出するような高度人材じゃなきゃだめなんじゃないの、安い人件費で再び世界の工場になるような低所得を受け入れるんでなければ、と思っていたのよね。ただし、リクツでは人口減少⇒経済衰退ではなくても、「人口減少ペシミズム」に陥って、縮こまって投資、しかも近視眼的でない挑戦
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Posted by ブクログ
・ケインズもシュンペーターも障害に超一流の仕事をたくさん残した。しかしケインズのビジョンは、主著である『雇用・利子・貨幣の一般理論』で提示された「有効需要の理論」である。『一般理論』なくしてケインズは無い。
一国経済全体の活動水準は、生産要素がどれだけあるとか、技術水準がどれくらいであるかといった供給側(サプライ・サイド)ではなく、需要の大きさで決まる。需要が少なければ生産水準は低くなる。言い換えれば不況は需要不足によって起きる。これが「有効需要の理論」のエッセンスである。
・イノベーションは、たしかに「非連続的な変化」だ。シュンペーターは、このことを「馬車をいくら繋いでも鉄道にはならない」