吉川洋のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
昨年の日経による、「経済学者に聞いた今年のベストセラー」みたいな企画で上位だったため、読んでみた。
タイトルは「いまこそ、~~学べ」となっているが、
金融危機後の世界経済に対して、二人の思想を用いると、
どういったアイディアが出てくるかという点の議論は意外と少なかった。
ただ、それを補って余りある、同い年生まれの
ケインズとシュンペーター両名の人生をたどりながら、
それぞれの思想を解説していく手法は読んでいて素直に面白かった。
経済の知識が多少いるかもしれないが、
(自分はそこまであるとは思わないけど)なんとかなるレベル。
最終章 二人の遺したもの (タイトルからすると、ここがもっと分厚い内容かとおもってた・・・)より、
「昔からあるモノやサービスに対する需要は必ず飽和する。」この点は両者とも一致している。
ここからが違う。
「ケインズは需要不足は与えられた条件だとして、政府による政策を考えた。」
「シュンペーターは、需要が飽和したモノやサービスに代わって新しいモノを作り出すことーすなわちイノベーションこそが資本主義経済における企業あるいは企業家の役割なのだと説いた。」
これは接点がないということではない。
二人の思想をつないでみると、
「有効需要の不足こそがマクロ経済の成長を阻害する。そういった不足を解消するイノベーション(需要創出型、Demand-Creating Innovation)こそがまさに、資本主義経済の根底を支えるものではないか。」
という主張が出来るという論調。詳細は載っていないww
この話をもっとほれればいいのに。でも、単純に読み物として面白かった。
以下、シュンペーターの考えの中での、「銀行家の重要性」についてのメモ。
新結合(イノベーションのこと)は、言ってしまえば「ベンチャー」
だからこそ、資金の出し手が必要。それが銀行家。
「銀行家は『新結合の遂行を可能にし、いわば国民経済の名において新結合を遂行する全権能を与えるのである。彼は交換経済の監督者である』」 -
Posted by ブクログ
『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ――有効需要とイノベーションの経済学』(吉川洋、2009年、ダイヤモンド社)
有効需要政策を打ち出し、不況時には政府による公共投資を増やして失業率を下げ、マクロ的に新たな需要を生み出す必要性を説いたケインズ。これはディマンドサイドでみた経済学であり、戦後の成長の各国の経済政策に採用された。
一方、ミクロで見た場合の個々の企業のイノベーション(新結合)が新たな発展の原動力とするシュンペーター。彼によれば、不況すらイノベーションには必要だという。
本書は『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ』という題であるが、お互いに相入れない二人の経済学の巨星の歴史をひもとくのが大部分を占めている。
2007年秋のサブプライム問題以後、2008年の「100年に一度」ともいわれる経済危機に際して、ケインズ経済学が「世界中で復活した」という記述がある(p.252)。本書には1980年代以降の経済の流れは記述にないので、少し補う。
ケインズ経済学は戦後、世界の多くの国で経済政策に取り入れられたのであるが、1970年台のスタグフレーション以後は衰退していった。その点、現代に至るまで興隆していったのが新古典派経済学である。いわゆる「ネオリベラリズム(新自由主義)」と呼ばれる政策パッケージであり、1980年以後は民営化や規制緩和が世界中で進められた。しかし、行き過ぎた規制緩和は不透明な投機マネーの流れを生み出し、その果てが今回のサブプライム問題とそれに付随する国際経済危機である。
この国際経済危機に対して、ケインズ経済学が復活したという。例えば、2009年1月に就任したアメリカのオバマ大統領は、総額8250億ドルの財政出動を発表するなど、ケインズ経済学への回帰が見られるのだ。その中でもオバマ大統領が「グリーン・ニューディール」を打ち出しているところが興味深い。何故なら、「ニューディール」というのは1929年の大恐慌を克服するために打ち出されたケインズ経済政策だったからである。
では、シュンペーターについてはどうか?
思うに、今日の日本は少子高齢化に伴う人口減社会への突入、あらゆる面での国際化を迎え、内的・外的に大きな変革期にある。このような変革期において、日本は科学技術に重点的に投資していかなければならない。新技術を開発し(科学の成果)、それを産業・経済活動に活かすこと(技術の成果)、すなわちイノベーションが今日の日本には必要なのである。新しい需要を生み出すためのイノベーション。まさにシュンペーターが指摘したことが今日の日本にもあてはまるのである。
(2009年6月19日)
(2010年5月22日 大学院生) -
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本書の主題を一言で言えば、経済成長は人口の伸びとは関係ない。ゆえに人口が減少するから経済が必ず縮小するとは限らず、イノベーションによって1人あたり所得が増えれば経済成長も可能である、というものです。
まず理屈としてはそうだろうな、確かに100%衰退するとは限らないだろうなとは思いましたが、本書の説得力があったか、と言われるとそこは微妙でした。まず本書の主張の大前提が過去の経済学の知見であること。ケインズ、シュンペーター、マルサスなどの主張が織り込まれているのですが、実は足元で起こっていることはこれまでの経済学のフレームでは説明できないことかもしれないということです。本書では人口減少だけがトピックになっていますが、AIやIoTといった情報技術の発展が同時に起こっており、これらの現象はわれわれを別の次元の社会に導いているのかもしれません。つまり18世紀の産業革命が近代経済学の生みの親だとすれば、現在の情報通信革命は、今の経済学が前提としている多くの「あたりまえ」を覆し、全く異なる経済学の誕生を望んでいるのかもしれないということです。
産業革命時の英国は、国力を測るのにストックではなくフローで計測すべきだと考えましたが、これは当時画期的な発想で、それまでは国が蓄積している財貨(ストック)の量が国力を表す指標だと考えられていました。現在のわれわれはGDP統計に代表されるフローこそが国力をあらわす指標だと固く信じていますが、100年後の人類からすれば「何を馬鹿なことを」と思われるようなことなのかもしれません。そういう感覚がうっすらとあるものですから、本書のようにいわゆる伝統的な経済学者の論考だけを持ってこられても、(確たる反証はないのですが)どうしても心の底から納得できない自分がいました。 -
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まさしく人口と経済の関係性を説いた書。
歴史的に過剰人口が問題だった事に触れ、マルサスの「人口論」やリカードの自由貿易論、ケインズの人口減少による投資・需要減少論、ビクセルの最適人口論、ミュルダールの子育て支援論をあげる。一方日本では人口減少と急速な高齢化によって社会保障・財政への負荷や地域社会の消滅(地方消滅)が指摘されている。ただ経済成長に関しては労働生産性(つまり資本蓄積と技術進歩・イノベーション)増加でどうにかなると語る。労働力供給と生産性向上、消費財の普及と人口移動による世帯増加が高度成長の源泉だったことをデータも交えて振り返り、4次産業革命でのAI普及でもイノベーションが鍵になることを述べている。
豊さの中で富裕層の出生率が低下するのはギリシャもそうらしいが、人口の原理とは裏腹に平均所得上昇と出生率低下、平均寿命の延びがセットで来た。平均寿命の話で、都市化の進展が寿命に悪影響であることや戦前日本の所得不平等→乳児死亡率(所得と相関)高→平均寿命短の関係を(寿命)ジニ係数を使って明らかにしたり、戦後日本は所得向上・医療改善・皆保険によって寿命を勝ち得たことを示した。ソ連の話はトッドと関係がありそう。最終章では経済(集団的物資代謝→贅沢によって加速・蜂の寓話)と経済成長(GDPという価値点数的指標の成長)について語る。先進国の成熟経済は需要の飽和(ロジスティクス曲線)に常に晒され、成長率低下圧力がかかっている。
筆者はシュンペーター的なプロダクトイノベーションを推す。ミルのゼロ成長論からの所得平等・定常状態幸福論には、筆者は江戸時代の栄養不足や災害対応を用いて鋭く反論する。最後に筆者は、そのような経済成長も平均寿命の延長に帰着すると主張する。経済成長がいいかどうかはもっと生きたいかという死生観と関わってくるのだろうと結論付けて終わる。
流石東大教授といった感じで文章も分かりやすくデータの繋がりもしっかりしていて読みやすかった。ただ一般向けということでやりにくさは感じた。平均寿命と所得の関係などは非常に興味深かったので詳しい本があれば読んでみたいと思う。戦前日本については戦死者や災害死の割合、そもそも日本を先進国に入れて議論していいのかという話もある。一人当たりの所得などを鑑みずに議論を展開しているのは紙幅の問題もあるだろうが、尽くされていないと感じた。題名通り日本経済と人口に絞って書いても良かったとは思う。 2021/2/6 -
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本書は日本経済への悲観論に対して、主にシュンペーターのイノベーション(新結合)を中心にした解決を紹介しているように見えた。
オビに「悲観論を乗り越える」とあるが、「悲観論」を「(能動的)ニヒリズム」と読み替えたほうがわかりやすいと思う。なぜなら「悲観論」のもう一端は「楽観論」となってしまうので。楽観論という語句が与えるフワフワした印象は、本書による「日本経済の悲観論への批判」という性格を表していないと感じる。
また本書全体を見ると、結びの4章では、副題にある通り「長寿、イノベーション、経済成長」について著者の主張が明確に書かれているものの、新書サイズという点で割り引いてもかなり物足りない結論に感じる。
本書を雑にまとめると「単に経済成長という数値を高めることを目的としたばかりに、マルサス、アダム・スミス的に捉えすぎて悲観的にならざるを得ない状況だが、様々な数字から見ると先細りという帰結に限定することはできない。また経済成長について視点を転じるためにスチュアート・ミル、マンデヴィル、とくにシュンペーターの視点からも捉える必要があるのではないか」という感じか。
ベタといえばベタな内容。 -
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人口を切り口に経済を考察する。
経済音痴の私には難しく、眠くなるページが多いが、所々なるほどと思うところもある。
それにしても三連休はよく読書した。
以下は読書メモ:
18世紀の学説では、人は豊かになれば子供をたくさんつくる。生物も、食料が増えれば数が増える。
しかし、19世紀末から先進国では豊かさの中で人口が減り始めた。
人口増加に代わって人類が経験したことのないハイペースで平均寿命が延びた。
経済成長を牽引するのはプロダクトイノベーション、それによって生み出されるモノやサービスが平均寿命の延長に貢献してきた。
人口が減ってもイノベーションによる経済成長は可能。寿命は生物学的限界かもしれないが、イノベーションにより「生活の質」をあげていくべき。
日本経済の将来
労働力人口 年率 -0.6%
多くの経済学者の考える潜在成長率 0.5%だが、筆者の可能と考える成長率 1.5%、そのためには年率2.0%の労働生産性の伸びが必要
一人当たりGDPは年率2%なら35年で2倍
現在30歳の人の生涯所得は現在65歳の人の2倍になる計算
問題は日本の企業がプロダクトイノベーションを成せるか。現状は日本企業は投資ではなく貯蓄に回している。
日本経済の将来は、日本企業がいかに「人口減少ペシミズム」を克服するかにかかっている。 -
Posted by ブクログ
子供の頃人口問題といえば人口爆発とか過密化とか習ったため、人口減少がそんなに悪いこと? 増え続ける人口を支える(望ましい)雇用が本当にあるの? と疑問で、少子化はともかく高齢化=長寿化は基本的にはめでたいことなのに…と素朴に思っていた身としては、そうそう、と膝を打ちたくなる話だった。少なくとも数がいりゃいいのではなく、イノベーションを創出するような高度人材じゃなきゃだめなんじゃないの、安い人件費で再び世界の工場になるような低所得を受け入れるんでなければ、と思っていたのよね。ただし、リクツでは人口減少⇒経済衰退ではなくても、「人口減少ペシミズム」に陥って、縮こまって投資、しかも近視眼的でない挑戦的な投資を惜しんでいたら、イノベーションなんか生まれないから、日本経済の先行きはやはりあまり明るくなさそう。そういえば、消費が落ち込んでいるのは何となく将来の不安に備えての節約のせい(そして節約自体が習慣化してしまったせい)というニュースを最近やっていたが、好景気と言われつつも企業が何となく将来の不安に備えて内部留保を貯め込むのを優先したツケが個人消費に回ってきたって感じなのも、投資抑制マインドが成長を阻害する構図に似ている。そうして先行き暗い感がますます強まり、さらに少子化が進みそうだわ。
それにしても、20世紀半ばまで「人間五十年」だったのだなあ。 -
Posted by ブクログ
★平易ではあるが、それで‥★人口が減ってもイノベーションで一人当たりの生産性を高めればいいし、そもそもイノベーションでしか経済は成長しない――を丁寧に語る。正直なところさほど目新しいところはなし。潜在的な需要に応えるプロダクトイノベーションの重要性は分かるが、それをどう実現するかが難しい。
本編とは直接関係ないが、増田寛也の消滅可能性都市の議論は何が新しいのかと不思議だったが、人口移動の前提を変えたのが特徴というのは初めて知った。経済学で法則として必ず成り立つのはエンゲルの法則(エンゲル係数)くらいというのは笑えた。人文科学は科学(サイエンス)とは思えないたちなので、余計に納得。