吉川洋のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
本書もライフネット生命の出口会長お薦めの書。第7章の結論は秀逸。わずか20ページでデフレとは何なのかをコンパクトにまとめている。全部書き写したいくらいだが、中でも核心部分だけ抜き出す。
「デフレは『一般的な物価水準』の下落である。デフレは特定のモノやサービスの価格が下落するのとは違う。個々のモノやサービスの価格が下落するのとは違う。個々のモノやサービスの価格が下がるのは「相対価格」の下落であり、デフレではない。多くのモノやサービスの価格がそろって下落し続けるデフレは『貨幣的な現象』である。だから、デフレを説明するうえで最も重要な変数はマネーサプライだ。こうした経済学の背後にある理論は『国際標準 -
Posted by ブクログ
吉川洋 「 人口と日本経済 」経済成長と人口の関係についてのエッセイ。著者の結論は 「経済成長と人口は関係ない」「需要は必ず飽和する」「経済成長するには プロダクトイノベーションが必要」
*マルサス/人は豊かになれば子供をたくさんつくる→食料の供給は 人口増加に追いつかない→人口は 食料不足、非婚化により抑制
*ケインズ/投資は人口などにより決まる→人口減少=投資減少=不況→失業。投資に代わり 消費が有効需要を支える必要あり→所得を貯蓄にまわす富裕層から 消費をする一般大衆へ所得配分
目からウロコだったのが
*ヴィクセル/最適な人口=1人あたり福祉水準を最大にする人口
*人口知能時代の人 -
Posted by ブクログ
ネタバレ解するに、日本に蔓延している「人口減少ペシミズム」とは、一つは国富の源泉たる労働人口の減少、もう一つは人口減少と同時進行する高齢化に伴って増大する社会保険料負担の2点に由来するのだと思います。
前者の「国富の源泉たる労働人口減少」が真実なら、後者の社会保険料負担増加は必然なので悲観するのも無理はないですが、本書では前者のテーマを歴史的・統計的に論駁します。
日本だけを見ても、人口と労働生産性が比例しないケースがたびたびあった。つまり両者は比例せず、別の要素が関わっていると解釈すべきである。とすれば、人口減少の中でも国富(本書ではGDPにフォーカス)を増進させることは可能であり、そうなれば社 -
Posted by ブクログ
「いまこそ、○○○に学べ」というとき、
○○○に入る人物は、ごまんといるのだろう。
学者や思想家、政治家から、芸術家、スポーツ選手に至るまで、
多くの偉人たちの膨大な知識の蓄積の上に僕たちは生きていて、
こうしている間にも、新たな知が生み出されている。
それらの知識を、たとえGoogleがすべて電子化したとしても、
一人の人間がそれらすべてを把握することは不可能だろう。
そのような中では、
純粋にまったく新たなアイディアや知識というものはあり得ず、
どんなに画期的な考えであっても、すでに誰かがどこかで
言ったり書いたりしたものの焼き直しに過ぎないという人もいる。
僕にはそのあたりの話はよ -
Posted by ブクログ
ネタバレ本書は、週刊ダイヤモンドで2013年経済書籍ランキング1位を獲得したもので、今日的なデフレ現象の原因について、経済学議論を省みながら自説を展開するもの。機を見るに敏ではないが、アベノミクスの三本の矢への世の中の関心が、とかく学際的な議論・主張を行う本書に注目を寄せる契機になったことは言うに及ばない。
【ポイント】
・デフレは、過去15年の我が国のマクロ経済政策を巡る議論の中で、まさにキーワードだった
・その答えはマネーサプライの中にはない。スタンダードなマクロ経済学では、貨幣(マネーサプライ)を増やせば、利子率の低下や投資・消費の刺激といった期待(流動性のわながあっても将来への期待)が高まり -
Posted by ブクログ
なぜ日本だけがデフレになったのか?
そして、アベノミクスの大胆な金融政策はデフレに効果は有るのか?
マネーサプライの増加によってデフレを脱却できると言う根拠はクルーグマンの論文に代表される。通常はインフレ抑制は金利の上げ下げを通じて調整される。ゼロ金利の場合マネーサプライを増やしても「流動性のわな」に陥り貨幣はただ保有されるため金利政策の有効性は無くなり、物価の上昇には寄与しない。クルーグマン・モデルでは将来ゼロ金利から脱却し通常の状態に戻った場合を想定する。そのためゼロ金利下であっても量的緩和によりマネーサプライを増やすことで通常金利下の将来のマネーサプライを増大させることが出来ると考える -
Posted by ブクログ
「マネーサプライ(M)の増加が実体経済に影響を与えたことはこれまでなく、これからもない」…典型的な反リフレ本かと思いきや、合理的なミクロ経済主体を単純に積算することによりマクロを考えようとすることの「合成の誤謬」を指摘しているところが目新しい。従って本書によれば、人々の間に合理的期待を形成させてデフレを脱するのは不可能である、ということになる(そもそも目下のデフレすら将来のインフレ期待を醸成する、とするクルーグマン・モデルの存立根拠を疑う)。確かに日銀がB/Sを膨らませたくらいで日本人の心理的ベクトルがインフレ方向にビシッと揃う、というのはなさそうな気がする。
日本にデフレが定着した理由とし -
Posted by ブクログ
「デフレは要因ではなく、名目賃金低下の結果」
という主張と、それを裏付ける検証が面白かった。
以下気になったこと。
リフレ派、反リフレ派の本を読むのは初めてだったので、
前半で著者が「ゼロ金利の状況下では金融緩和は意味をなさない」としている部分が気になった。
リフレ派はゼロ金利下でどういうふうに金融緩和が効果をもたらすとしてるのか?
(ゼロ金利を想定してないという馬鹿なことはないでしょう)
名目賃金はなぜ欧米では上昇しているのか?
日欧米の違いは一応説明されているが、下落と上昇では理由が異なるはず。
カレツキーの二部門アプローチ以降のモデルの説明は著者の発展なのか。
論文探れよという話 -
Posted by ブクログ
日本を代表するケインジアンの対マネタリスト/リフレ/量的緩和派への反論。彼らの理論はあくまで将来のインフレ期待がおこるときに成り立つものであり、必ずしもマネーサプライが期待を動かすという経路が理論的に確立されている訳でもなく、実証的証拠が確定している訳でもない。マネーサプライが価格にインパクトを当てるのは、主に子もディティであり、賃金は長期的な特性から、価格決定時に公正が求められ瞬時に最適化されるものでは全くない。特に日本においては、雇用数が守られる分賃金の下方硬直性が顕著であり、マネーサプライが賃金にインパクトを与える経路は、賃金決定の理論的側面から言っても細いとする。
-
Posted by ブクログ
「デフレ」という経済用語がこれだけ一般社会で語られていることは過去に無かったのでないだろうか。
「アベノミクス」と「黒田日銀の異次元の金融緩和」がマスコミを賑わす中、20年来の「デフレ脱却」ができるのかどうかが、飲み屋や茶の間でも語られている現在、本書は実にわかりやすく「デフレーション」を考察している。
「ゼロ金利の下でもマネーサプライを増やせばデフレは止まるのか」が本書のテーマであるが、現在の「黒田日銀」とは違い、本書は「できない」とはっきり断言している。
しかも、その内容は「デフレ20年の記録」「大不況1873~96」「貨幣数量説は正しいか」とわかりやすい。
数式の部分は難解だが -
Posted by ブクログ
デフレの原因とその脱却方法の提案については、これまでもいろいろな本を読んできましたが、結局、今のところコンセンサスはない、というのが結論のようです。この本では、世界史的に見た過去の大きなデフレの実例と、現在の日本のデフレの原因についての様々な学説を紹介し、これについて批判を載せてくれており、頭の整理には非常に役立ちました。
特に、CPIの決まる要因が、貨幣数量というよりやはり有効需要でしょ、というのは、現実に照らしてみてとても説得力があるように思います。でも「だから期待を政策で変えることは所詮不可能」というのもどうかな、と思います。群集心理というのは、なにか きっかけがあれば雪崩を打って変わる -
Posted by ブクログ
同い年のケインズとシュンペーター、その違いと交差点を、経済書らしからぬ読みやすい構成で楽しめた。
s:企業家は単に生産要素を結合して生産活動を組織化するだけでなく新結合(イノベーションと呼ぶ)を遂行する
k:貨幣改革論
企業家を成金に変える事は資本主義に致命的な打撃を与える。それは不平等な報酬を許容する心理的均衡を破壊するからである。
k:一般理論 穴を掘って埋めるといった
無駄な公共投資ではない。Wise Spending
s:景気循環論 不況と回復は経済の進化のプロセスにおいて不可欠
ケインズは需要不足は与えられた条件だとして政府による政策を考えた。シュンペーターは需要が飽和したモノや -
Posted by ブクログ
昨年の日経による、「経済学者に聞いた今年のベストセラー」みたいな企画で上位だったため、読んでみた。
タイトルは「いまこそ、~~学べ」となっているが、
金融危機後の世界経済に対して、二人の思想を用いると、
どういったアイディアが出てくるかという点の議論は意外と少なかった。
ただ、それを補って余りある、同い年生まれの
ケインズとシュンペーター両名の人生をたどりながら、
それぞれの思想を解説していく手法は読んでいて素直に面白かった。
経済の知識が多少いるかもしれないが、
(自分はそこまであるとは思わないけど)なんとかなるレベル。
最終章 二人の遺したもの (タイトルからすると、ここがもっと分厚