【感想・ネタバレ】デフレーション ”日本の慢性病”の全貌を解明するのレビュー

あらすじ

従来議論されていたマネーサプライの調節だけでは、わが国が現在陥っている今日的なデフレ現象は解明できない。名目賃金の変化など新しい視点から「なぜ日本だけが?」の答えを捉え直す、現代デフレ論議の決定版!

(本書は2013/01/18に日本経済新聞出版より刊行された書籍を電子化したものです)

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Posted by ブクログ

デフレ論争。
デフレ20年の記録。

リカードの貨幣数量説。
マーシャルはマネーサプライより、実物的な要因によって生み出される、とした。
M=kPy kはマーシャルのk。yが増大すれば、Mが変わらなければ、物価Pは減少する。しかし、yの増大にともなってMが増えれば、Pは減少しないはず。しかし、yが増大してMが変わらなければ、金利は上昇するはず。しかし実態はかわらなかった。これをギブソン・パラドックスという。
ケインズの時代は、Mが増大したが、Pは減少した。
ブラウン=オズガによると、交易条件によって物価水準がきまる。

貨幣数量説は正しいか。ミルトン・フリードマンなど。絶対価格の変化か相対価格の変化か。
テーラールール=金利水準を決定するルール。カーター大統領とボルガー議長の時代
マネーサプライだけでは、インフレデフレは制御できない。

ポール・クルーグマンモデル=金利がゼロ水準で流動性のわなに陥っている状態でも、現在のマネーサプライを増やせば、将来の物価上昇の期待を通じて、デフレを解消できる。
しかし、個人の集合を代表的な個人で代表することはできず、実社会では、異時点間の消費の代替の弾力性はないに等しい。

価格の決定の論理=社会的に正義にかなうか否か。フェアなことは通用する(仕方ないと社会が思う)が、アンフェアな価格付けは社会が拒否するので通用しない。

2部門アプローチ=一次産品は需要によって価格がきまるが、二次産品はコストによって価格が決まる。一次産品は、需要と供給によって価格が決定するが、二次産品は、価格は一定で、需要がない場合は供給が減ることで調整が完了する。

日本だけがデフレだったのは、賃金の下落があったから。雇用が賃金か、と選択を迫られたときに雇用をとった。
賃金は非伸縮性が高いが、非正規雇用の増加によって、全体として伸縮性が実現した。

貨幣数量説の弱点は、均衡点と均衡点を比較すれば成立するが
その過程を説明できないこと

目の前でデフレが進行している時、インフレ期待は生じないだろう。しかし、合理的個人、で代表させて説明しようとする合理的期待モデルでは、経済主体が合理的であれば、変数をいじることで、インフレ期待が生じることになる。

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2013年04月16日

Posted by ブクログ

いわゆる「どマクロ」で過去20年の日本経済を分析。
今までリフレ派の本ばかり読んできたが、吉川さんの論のほうがすんなり頭に入る。
貨幣数量式は成立しないというのは今までいろいろ目にする機会があったが、ヘリコプターマネーは貨幣数量式が前提だといわれると目から鱗。
DFCGやニューケインジアンが実際の政策分析に役立たないといわれて久しいけれど、その実例を目にすることができた。

でも、、、ブランシャールのマクロ経済学を絶賛していたドラえもんが、ニューケインジアン的な考えでリフレに賛成していたのだろうかという疑問がわいてきた。

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2013年03月04日

Posted by ブクログ

本書もライフネット生命の出口会長お薦めの書。第7章の結論は秀逸。わずか20ページでデフレとは何なのかをコンパクトにまとめている。全部書き写したいくらいだが、中でも核心部分だけ抜き出す。
「デフレは『一般的な物価水準』の下落である。デフレは特定のモノやサービスの価格が下落するのとは違う。個々のモノやサービスの価格が下落するのとは違う。個々のモノやサービスの価格が下がるのは「相対価格」の下落であり、デフレではない。多くのモノやサービスの価格がそろって下落し続けるデフレは『貨幣的な現象』である。だから、デフレを説明するうえで最も重要な変数はマネーサプライだ。こうした経済学の背後にある理論は『国際標準』の理論、「貨幣数量説」である。デフレを止めるために、日銀はインフレ・ターゲットを掲げてマネーサプライを増やせ、逆にいえば、デフレが止まらないのはマネーサプライが十分供給されていないからだ。

 金利がゼロでなければマネーサプライの増加は『金融緩和』、つまり利子率の低下をもたらす。それは利子率の変化に感応的な投資や消費を刺激して、経済にプラスの影響を与えるだろう。この点に異論はない。しかし、ゼロ金利の状態では話が違ってくる。実際、これまでハイパワード・マネーあるいは貨幣数量を増やしても、それが実体経済にプラスの影響を与え物価を上昇させる、ということはなかった。

 貨幣数量説の最大の弱点は、それが『均衡』に関する命題―均衡において物価水準は貨幣数量に比例する、という命題―にすぎない、ということだ。この理論は、『均衡』については雄弁すぎるほどに語るのだが、個別の物価の変化を反映した指数としての一般物価水準がどのようにして均衡水準に行き着くのか、時間経路について全く語らない。また、『均衡』ではなく、現実の時間経路で貨幣がどのような役割をはたすのかについても黙して語らない。

 デフレが続いているのは、貨幣数量が不足しているからだ、と主張している経済学者・エコノミストがいいる一方で、日本経済が長期的に停滞している原因は『実物的』(リアル)なものだと主張する人もいる。…「人口減少説」は、驚いたことに多くの人の支持を得ているようだ。

 労働人口の減少が経済成長にマイナスの影響を与えるのは事実だ。ただし、その影響は『数量的』には一部の人が想像するよりはるかに小さい。
 先進国の経済成長は、働き手の頭数で決まるのではなく、『一人当たりの所得』の上昇を通して成長してきたのである。

 筆者の考えは、デフレは長期停滞の原因ではなく、『結果』だ、というものだ。

 ここで指摘したいのは、15年デフレが日本企業のイノベーションに与えた「デフレ・バイアス」である。…デフレの中で消費者の『低価格指向』―単に同じモノで名目価格が安いというのではなく、『相対価格』が安いモノへの需要のシフト、という意味での『低価格志向』がどんどん強まっていった。これに加えて、グローバル経済における国際競争、円高の下、日本企業は一貫して『1円でも安く』コストダウンを図るべく、『プロセス・イノベーション』に専心してきた。
 その結果、日本経済の将来にとってより大きな役割を果たす『プロダクトい・イノベーション』がいつしかおろそかになってしまったのではないだろうか。

 経済の成長にとって最も重要なのは、新しいモノやサービスを生み出す需要創出型のイノベーションである。

 それにしても、なぜ日本だけがデフレになったのか。2000年代に入り、日本以外の先進国も低インフレの時代に入った。しかし、日本だけがデフレに陥ったのはなぜか。その理由は、日本の賃金決定に生じた大きな変化だ、というのが筆者の考えである…。

 1990年代後半、大企業を中心に、高度成長期に確立された旧来の雇用システムが崩壊したことにより、名目賃金は下がり始めたのである。そして、名目賃金の低下がデフレを定着させた。

 デフレをめぐる考察が行き着く先は経済学だ。『国際標準』の経済学に基づく政策提言が『空振り』に終わったのは、経済学に問題があるからである。

 デフレと金融政策をめぐる論争は、混迷する現代マクロ経済学の反映なのである。」

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2021年08月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

本書は、週刊ダイヤモンドで2013年経済書籍ランキング1位を獲得したもので、今日的なデフレ現象の原因について、経済学議論を省みながら自説を展開するもの。機を見るに敏ではないが、アベノミクスの三本の矢への世の中の関心が、とかく学際的な議論・主張を行う本書に注目を寄せる契機になったことは言うに及ばない。

【ポイント】
・デフレは、過去15年の我が国のマクロ経済政策を巡る議論の中で、まさにキーワードだった
・その答えはマネーサプライの中にはない。スタンダードなマクロ経済学では、貨幣(マネーサプライ)を増やせば、利子率の低下や投資・消費の刺激といった期待(流動性のわながあっても将来への期待)が高まり、デフレは止まるという(貨幣数量説)。しかし、ゼロ金利状態では話が違い、現に貨幣数量を増やしても実体経済にプラスの影響を与え物価を上昇させる、ということはなかった
・人口減少、生産年齢人口の減少が、日本経済の長期停滞原因➔デフレの正体という説も正しくない。確かに経済成長にマイナスの影響は与えるが、インパクトは小さい。むしろ一人あたり所得の上昇、即ち設備投資等を通じた資本ストックの増加と技術進歩によるところが大きい

・デフレは長期経済停滞の結果である。
・「失われた20年」と言われるが実際は10年。日本の一人当たり実質GDP成長率は、米国と比べるとそれほど遜色はなかった。しかし、金融問題、即ち不良債権問題、金融システムの動揺(とりわけ97-98年の金融危機)、それに伴う株価の低迷は、90年代~2003年にかけて日本の成長を大きく阻害
・さらに、デフレに陥るほどの長期停滞を招来した究極の原因は、イノベーションの欠乏。デフレ・バイアス=消費マインドの低価格志向(安いモノへの需要のシフト)+企業のプロセス・イノベーション(グローバル競争での1円でも安いコストダウン)➔新しいモノやサービスを生み出す需要創出型のイノベーションがおろそかになった
・日本だけがデフレに陥ったのは何故か=日本だけ名目賃金が下がったから。終身雇用制の崩壊後、大企業を中心に「雇用か、賃金か」という選択に直面した労働者は、名目賃金の低下(雇用を守ること)を受け入れた
・1%の物価上昇のためには、2.5%の賃金上昇、そのためには失業率が2%台になる必要がある。

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2014年03月11日

Posted by ブクログ

これまで経済学で取り扱われてきた貨幣数量説などの理論を改めて確認、検証するとともに、単に貨幣供給を増加させる政策を行うだけではデフレを解消できないことを筆者は主張している。また、デフレの要因としてプロダクトイノベーションの不足とプロセスイノベーションの隆盛によるコストカットをあげている。

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2013年09月17日

Posted by ブクログ

なぜ日本だけがデフレになったのか?
そして、アベノミクスの大胆な金融政策はデフレに効果は有るのか?

マネーサプライの増加によってデフレを脱却できると言う根拠はクルーグマンの論文に代表される。通常はインフレ抑制は金利の上げ下げを通じて調整される。ゼロ金利の場合マネーサプライを増やしても「流動性のわな」に陥り貨幣はただ保有されるため金利政策の有効性は無くなり、物価の上昇には寄与しない。クルーグマン・モデルでは将来ゼロ金利から脱却し通常の状態に戻った場合を想定する。そのためゼロ金利下であっても量的緩和によりマネーサプライを増やすことで通常金利下の将来のマネーサプライを増大させることが出来ると考える。現在の物価に働きかけることは出来なくとも将来物価が上昇すると期待させることができれば、期待インフレ率が上昇するため実質利子率が低下し需要が喚起されると言うものだ。何となく言いたいことは分かる。

みんなが値段が上がると信じ込めば、今ものを買ったほうが得だと言うことになるからモノが売れると書いてしまうとかなりうさんくさいのだが、これが現在の国際標準の経済学の答えでも有る。これに対する著者の反論は2点。クルーグマン・モデルでは足下のデフレは将来のインフレを生み出すと言うがこれは実世界とかけ離れていると言うのが1点。もう一つは実質利子率が低下(=期待インフレ率が増大)すれば速やかに需要が回復すると言うモデルになっているのは投資を無視しているからで、実質利子率の変化と需要との間の定量性がかけている。アベノミクスにしても株価の上昇にともなう資産効果はみられるが、金融緩和とインフレ率についてははっきりするのはだいぶ先のことだろう。議論はきちんと経済学の数式を用いて説明されているが専門外であり、説明はパスです。

リフレ派は08年以降の日銀のバランス・シートの対名目GDP比伸び率が欧米に比べて不十分だと指摘して来たが、00〜08年の間すでに十分な緩和をしていることを説明していない。02年当時マネーサプライを増大させれば日本のデフレは止まると豪語したアメリカの経済学者や政策当局の人間は当時既に年率25%の伸びだったと言うことは知らず、ある者はでは50%にすればと言った。伸び率の変化はどこを基準点にするかで全く景色が変わってしまう。

ではなぜ日本だけがデフレになったかの著者の答えは賃金の低下。バブル崩壊後の日本では雇用の安定を重視し賃金低下を受け入れた。ボーナスの低下、ベアゼロ、定期昇給の見直し(実質的には給与カーブの変化や年棒制の導入など)、給与カーブが変わらなくても退職者の穴埋めを非正規労働などの低賃金労働で代替すれば全体としては賃金(会社からみれば労務コスト)は低下する。個々の企業が労務コストを下げようとするのは合理的な行動で当然とも言えるが、国全体としては平均賃金が下がりデフレの原因となっている。

例えば製造業からサービス業へのシフトはアメリカでも起こっており02〜10年の間、ヘルスケア・教育関連産業の雇用は20%増加し、この分野の賃金は32%増加した。日本では同時期医療・福祉の雇用は38%増加したが一人当たり賃金は13%減った。そして製造業の雇用は13%減ったが賃金は2%増えた。

デフレの正体で主張された労働人口減少原因説もばっさり切られている。戦後の高度成長期に労働人口が1%増加したのに対し、GDPは年間平均10%成長している。人口と景気に相関が有るのはそうだとしてもデフレの原因をそれだけで説明するのは明らかに無理がある様だ。

一人当たりGDP伸び率の比較では90年代の日本は欧米に対し著しく劣っているが2000年代ではEUより悪いが欧米とはほぼ差がない。2000年代に入っての日本のデフレは景気の悪さでは説明がつかない。

吉川氏の回答はデフレを克服するのは新しい需要を創出するプロダクト・イノベーションだと言う。それはおそらく正しい答えの一つなのだろうがだとすると経済学者にはデフレ退治はできないと言うことなのだが・・・

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2013年09月09日

Posted by ブクログ

「マネーサプライ(M)の増加が実体経済に影響を与えたことはこれまでなく、これからもない」…典型的な反リフレ本かと思いきや、合理的なミクロ経済主体を単純に積算することによりマクロを考えようとすることの「合成の誤謬」を指摘しているところが目新しい。従って本書によれば、人々の間に合理的期待を形成させてデフレを脱するのは不可能である、ということになる(そもそも目下のデフレすら将来のインフレ期待を醸成する、とするクルーグマン・モデルの存立根拠を疑う)。確かに日銀がB/Sを膨らませたくらいで日本人の心理的ベクトルがインフレ方向にビシッと揃う、というのはなさそうな気がする。

日本にデフレが定着した理由として本書が挙げているのが、90年代後半~00年代初頭の金融危機によるデットデフレーションが企業をイノベーションではなくコストカットに走らせ、さらに大企業における労使が「昇給より雇用」を選択したため、財の価格に大きな影響を与える名目賃金が低下したというもの。労働生産性が高まらず賃金が上昇していない業界は多々あるわけでうなずける部分が多い。00年代半ば以降の円安局面で、日本の製造業の競争力が高まった時にできたはずのことが沢山あったはずなのに、と残念に思う。

Mが日本では財の価格に影響を与えないとすることの理論的根拠としてカレツキーの「二部門間アプローチ」に触れているが、納得できる部分が多くて面白いと思った。

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2013年06月20日

Posted by ブクログ

「デフレは要因ではなく、名目賃金低下の結果」
という主張と、それを裏付ける検証が面白かった。

以下気になったこと。

リフレ派、反リフレ派の本を読むのは初めてだったので、
前半で著者が「ゼロ金利の状況下では金融緩和は意味をなさない」としている部分が気になった。
リフレ派はゼロ金利下でどういうふうに金融緩和が効果をもたらすとしてるのか?
(ゼロ金利を想定してないという馬鹿なことはないでしょう)

名目賃金はなぜ欧米では上昇しているのか?
日欧米の違いは一応説明されているが、下落と上昇では理由が異なるはず。

カレツキーの二部門アプローチ以降のモデルの説明は著者の発展なのか。
論文探れよという話だけど、カレツキーのアプローチで得る結果は同じなのか、異なることもあるのか。
国際的にどれだけカレツキーが支持されているのかも気になる。

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2013年06月09日

Posted by ブクログ

日本を代表するケインジアンの対マネタリスト/リフレ/量的緩和派への反論。彼らの理論はあくまで将来のインフレ期待がおこるときに成り立つものであり、必ずしもマネーサプライが期待を動かすという経路が理論的に確立されている訳でもなく、実証的証拠が確定している訳でもない。マネーサプライが価格にインパクトを当てるのは、主に子もディティであり、賃金は長期的な特性から、価格決定時に公正が求められ瞬時に最適化されるものでは全くない。特に日本においては、雇用数が守られる分賃金の下方硬直性が顕著であり、マネーサプライが賃金にインパクトを与える経路は、賃金決定の理論的側面から言っても細いとする。

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2013年06月02日

Posted by ブクログ

 「デフレ」という経済用語がこれだけ一般社会で語られていることは過去に無かったのでないだろうか。
 「アベノミクス」と「黒田日銀の異次元の金融緩和」がマスコミを賑わす中、20年来の「デフレ脱却」ができるのかどうかが、飲み屋や茶の間でも語られている現在、本書は実にわかりやすく「デフレーション」を考察している。
 「ゼロ金利の下でもマネーサプライを増やせばデフレは止まるのか」が本書のテーマであるが、現在の「黒田日銀」とは違い、本書は「できない」とはっきり断言している。
 しかも、その内容は「デフレ20年の記録」「大不況1873~96」「貨幣数量説は正しいか」とわかりやすい。
 数式の部分は難解だが、この理論と考察、データをみれば、「マネーサプライ」を増やしても「マネーは効かない」という本書の立場は説得力がある。
 また、本書では繰り返し「デフレに陥ったのは日本だけ」と問い返している。
 本書の「結論」では、デフレの原因として「名目賃金の低下」を指摘している。
 もし、そうだとすると「デフレ克服」には「名目賃金の上昇」が必要なのだろうか。
 しかし、「年功賃金の崩壊」や「非正規雇用の増大」などの現状を見ると、それを変えることは極めて困難だろうと、いろいろ考えさせられてしまった。
 本書は、日本経済の現状を一段深く考察できる良書であると高く評価したい。
 一気に読み終わり、その後また読み返してしまった。

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2013年05月09日

Posted by ブクログ

デフレの原因とその脱却方法の提案については、これまでもいろいろな本を読んできましたが、結局、今のところコンセンサスはない、というのが結論のようです。この本では、世界史的に見た過去の大きなデフレの実例と、現在の日本のデフレの原因についての様々な学説を紹介し、これについて批判を載せてくれており、頭の整理には非常に役立ちました。
特に、CPIの決まる要因が、貨幣数量というよりやはり有効需要でしょ、というのは、現実に照らしてみてとても説得力があるように思います。でも「だから期待を政策で変えることは所詮不可能」というのもどうかな、と思います。群集心理というのは、なにか きっかけがあれば雪崩を打って変わることがあるというのは事実ですし、その「きっかけ」としての「理論」は、必ずしも「論理的に必然」である必要はなく、単に「たしかにそれはありそうだ」と世の中の大勢の人に「信じられ」ばいいだけだから、と思うからです。で、その「ありそう」というのは、その理論そのものが正しいからというよりも、「あの人がそういうならそうなんだろう」という「人」の面の方が実際のところ大きいわけで、それが今の「黒田総裁効果」なのではないかと思います。
ともあれ、少なくとも理論では世の中が動かないことが、この本を読んで改めてよくわかったように思います。

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2013年04月21日

Posted by ブクログ

日本のデフレの原因は名目賃金の低下、つまり労働分配率の下げすぎが主因。非正規雇用の増加だけでなく、賃金におけるボーナスという仕組みも一因。

賃金支払いのしくみとして考えたときに、ボーナスって大きかったんだということを、再認識させられました。

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2015年06月14日

Posted by ブクログ

文字が大きいので、それほど分量はないのですが、読むのに時間がかかってしまいました。
内容は、結構わかりやすかったです。デフレの原因もなんとなく納得できました。 モデル式の詳細は読み飛ばしましたが。

ただ、デフレ対策について、何らかの指摘があるのかと思って読んだのですが、それについては「イノベーション」という結論だったので、がっかりしました。

しかし、タイトルを見かえせば、「全貌を解明する」本であって、デフレ克服の示唆を示す本ではなかったですね。

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2014年01月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

最初の方は日本がデフレに陥った過程を概説し、わかりやすかったのだが、後半の理論的な部分はさっぱり。経済学を専門的に学んでいない一般の読者も想定しているのであれば、もう少し、丁寧な説明が欲しかった。

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2014年04月20日

Posted by ブクログ

リプレーション政策の批判がメイン。ただ、それをとても細かく説明してあり、また、文体が軽いので読みやすい。ただ、リフレの是非はこの本を読んでもよくわからない部分がある。言っていることと実際に起きていることが違うから。あと、後半のリアルビジネスサイクルに対する批判はデフレとは関係ない気がする。

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2013年12月20日

Posted by ブクログ

初めの数章を読んでいて、一般向けに平易に書かれていたので理解は出来たのだが、クルーグマン批判の辺りは専門的すぎて理解出来ず
本書の内容の当否は2015年春には分かるので、改めてその頃読んでみたい

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2013年08月11日

Posted by ブクログ

先生が片手間に書いた本だから仕方ないとは思うが、誤字・脱字が散見され、本の質というか編集の質が低い。折角、内容は良いのだから・・・

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2013年07月15日

Posted by ブクログ

リフレ派批判の急先鋒として話題の本。全うな議論が多くて、参考になる部分多数。特に、実質的なワークシェアリングによる「名目賃金の低下」がデフレーションの主因であるとの指摘には、目から鱗。記述が荒かったり、引用が多すぎたりするのには、ちょっと納得感が少ないけど、良書です。

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2013年03月29日

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