毎日新聞取材班のレビュー一覧
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少子化を人口政策的な観点から見ると、「子供が増えれば幸せなのか」というそもそもの問いが抜け落ちてしまうのかもしれない。世界各地の事情を知る読み物としても面白いが、当事者たちへの取材を読みながら、「子どもを産み育てることにまつわる幸せとは…」という問いに立ち返れたように思う。
子どもを産み育てるのが難しい状況を、「個人の自由が阻害されている」と捉えなおし、少子化対策を「個人の自由の保障」だと定義しても良いのかもしれない。労働力不足や社会保障制度の維持、市場の縮小、税収減…など少子化により想定される問題は山積み…。でも、子どもの数を増やすことが唯一の解ではないというのは念頭に置こうと思った。少子化により環境負荷が低くなるなどのメリットもあるというのは目から鱗。国による違いを見ながら、家族領域に政府がどこまで立ち入っても良いと思うかの許容度もまた異なるのだろうと思った。
・理想化されがちなフィンランドでも出生率が下がってきていて、その背景に「チャイルドフリー」という思想がある。
・ハンガリーの子育て世帯への積極的な住宅政策がかえって住居費水準を上げてしまうというのは、日本のパワーカップルが不動産高騰の一因と言われているのに似ているなぁ。
・卵子凍結は…どこまで公費で認められるのか見解がわかれそう。
・イスラエルのように家族や親族のネットワークで支え合う…というのに日本は戻れなさそう。
・中韓の状況は日本に似ていると思ったが、競争社会に全員が巻き込まれているのか?マイルドヤンキー的な存在は?
取材班の入社年次を見ると、もしかしたらご本人たちも子育て世代なのかもしれない。熱量を感じた。どの国の話も興味深いが、世界各国に拠点がある中でなぜこの7か国を選んだのか、編集会議の議論も聞いてみたいと思った。 -
Posted by ブクログ
世界7カ国の少子化事情を掘り下げながら、日本の少子化問題を考察する本。「子供が増えれば幸せなのか」というタイトルに惹かれて手に取ったが、各国事情の取り上げ方や本題へのアプローチなどが非常に分かりやすく面白かった。
少子化は何語問題なのか。人口減による経済的損失や福祉制度の破綻が指摘されるものの、それは労働生産性の停滞が問題であり、人口減が根本的な問題なのではない。少子化問題で根本的に解決すべきは、出産・子育てを思い通りにできない境遇が存在してしまうことと、人口減が止まる兆しが見えてないことにある。
少子化の議論にはリプロダクティブ・ライツ(性や生殖に関する権利)の観点と国力維持の観点があるが、多様化する世の中では「人権」の観点から議論されるべきだ。
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Posted by ブクログ
止まらない日本の少子化問題に対し、
毎日新聞の記者がアジアやヨーロッパ諸国の出産・育児支援策を調査し
今後の日本の政策の在り方について言及した本。
各国の歴史や国民性を背景にすると出産、子育てを取り巻く状況は本当に様々で
日本が際立ってレベルが低い、というわけではないことが分かりました。
と同時に、
もし国が出生率を上げたいのならばまずは
個人ないし家族単位での仕事や生活における幸福度を上げる努力をするべきで
子どもを産む数はあくまで結果論であるのだと思いました。
これらを踏まえると、
少子化対策を謳いながら子ども手当や各種給付金に所得制限を設け
増幅の対象が出産育児金、といった政策を打ち出す日本の方向性は
果たして本当にそれで良いのか、と疑問を感じずにはいられません。。
一方で、社会的弱者とされる女性の権利を保証しすぎると
出産育児も人生のオプションになる(よって出生率が下がる)、
という旨の記述がありましたが
まぁその通りではあるのでしょうけれども
通過点として必要なのでは、とも思います。
色々と思うところはありますが
全ての人に平等に恩恵を与え人生を充実させ子孫の繁栄を促す、というのは
到底無理な話であるとも思っているので
どこに特化するか、という話であるのでしょうし
こういった本を読んで、
それぞれが自分の意見をしっかり持つことが大事なのだと思いました。 -
Posted by ブクログ
少し前から気になっていた言葉「ヤングケアラー」。
テレビなどでも取り上げられるようになってきたので、気づいたらチェックするようにしてきた。
その「ヤングケアラー」が世間に認知されるようになったきっかけをつくった報道のドキュメント。
新聞社の取材班が執筆しているので、調査データなどをベースに説得力があり、読みものとしても読みやすく仕上がっている。
これまでに「存在」はしているけど「認知」はされていなかった弱者を「発見」して、社会を動かしていく。記者冥利につきるだろうそのエキサイティングな熱量を、共に感じられる本だ。
「ヤングケアラー」の問題は、本人にその自覚がない、家族の問題を他人に知られたくない、などの理由から発覚しづらく、周りの人が気づいても、それを支援に結びつける難しさがつきまとう。
だがまずは、その言葉を世に広めるという大きな一歩に貢献した取材班に敬意を表したい。 -
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ネタバレ韓国
大卒の就職率は6割、大学はSKY出身者がステータス。TOEIC800点以上、文系なら900点以上、国家試験に通ることが必須。日本以上の競争社会。
大統領の権限が強いが再任はなく任期5年。短期的な成果を求める。
日韓では就職するまでが子育て。欧米より長い。
中国
一人っ子政策が生んだ男女人口比のひずみ。大学入学には科挙に似た高考が必要。学習塾を規制した。一人っ子政策は少子化を早めた。出産適齢期の女性の減少。
政治はエリート政治=民主主義の利害調整メカニズムはない。全体としては正しい選択ができる。迅速性がある。利害調整は矛盾の解消は問題t。
フランス
支援と個人の選択の保障が原動力。単身のまま子供を持つ選択ができる。連帯市民協約(パクス)と呼ばれる事実婚制度はもともとは同性間のための制度だった。
イスラエル
合計特殊出生率は3.01。助け合う大家族制度。子供が多いほど家屋は幸せ、モラルが高いとされる。経済発展と楽観思考で人口増。人口増が好景気を生む。好循環が生まれている。もともとユダヤ教では子供を増やすことは神の命令。
日本では母親に子育ての重圧がかかるが、イスラエルでは親族や社会で子育てをする。
ハンガリー
国家予算の5%を少子化対策につぎ込む。非自由民主主義(ロシアやシンガポールと同じ道)。出産ローンは3人目を生むと返済免除。子供が多いほど生涯免税。
世界では少子化ではない。人口増は環境悪を生む。
フィンランド
近年は出生率が減少。男女格差が少なくなると出生率が上がるはずだが。子供を欲しがらない人が多い。文化や価値観の変化。
チャイルドフリー協会=子供を持たずに人生を生きようとする人々の教会。
家族は運命共同体ではなく、自己実現を目座す個人の集まり。運命共同体としていざという時の支えは必要ない。
イギリス
人口減による労働力不足は最新技術で補う。
日本の高度成長期の人口ボーナスは1.3%しかない。残りは生産性の向上によるもの。
人口減少でもGDPは減らない。日本の人口は世界ではまだまだ多い。
代わりにペット産業が子育て本能を満たしている。 -
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ヤングケアラーたちの介護(ケア)の実態をと、取材班の現場でのやりとり や 全国調査に至るまでを取材した過程 で構成された本。
昨年、新聞の記事でヤングケアラーという言葉と意味を初めて知った。1クラスに1人いるという事実も衝撃だった。
が、今回ここで書かれている内容を読んで、かなりショックだった。娘や息子と同じ年頃の子がこういった境遇に置かれているなんて。
数年前、『欠席の連絡がなかったから、先生が電話したら、お母さんの具合が悪いから休むって子がいた』という話を娘から聞いた時、ヤングケアラーについて全くの無知だった私は「そんなことってある??」と思ったことを思い出した。私も無知だったけれど、クラス全員にその話をしてクラスをざわつかせた先生も配慮不足だったのかもしれないと、この本を読んで思った。
国や自治体が支援に向けて動き出してはいるけれど、この本を読む限り、ヤングケアラーのパターンが様々で、必要な支援が多様であること、支援が必要だと声をあげられない子も多くいるであろうこと、社会や学校での認知度が低いこと、他にも問題点は山積み。 一日も早く、ヤングケアラーの子供たちが年相応の生活を送れる世の中になってほしい。
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親の仕事の事情などで来日したものの、就学できていなかったり、就学したもののじゅうぶんな日本語教育を受けられていなかったり。そういった外国籍等のこどもたちを取材したもの。
全体を通じての感想としては、もちろん様々な施策や自助努力によって、こういった子どもたちへ頑張ってサポートしている学校や自治体がある、というのは凄いことだしとても良いことだと思うけれど、それでいいのだろうかということでした。学校の先生たちの多忙化については近年ずっと叫ばれているし、自治体の財政やマンパワーは自治体によりけりで、どうにかしようと思ってもどうしようも無いことも多いのではないかと。国の施策として、法的・財政的な基盤が必要になってきているように、どうしても思われました。
日本語教育推進法などをはじめ、そういった基盤が少しずつできてきているのはいい流れだなと思います。日本に来ている外国の人たちの苦労について、「自己責任」という風潮がありますが、百歩譲って仮にそうだとしても、親の事情で(自分の意思とは関係なく)日本に来た子供たちは「自己責任」とはとても言えないと思います。子どもたちがきちんと学べる社会にするということは、単純に彼らを「助ける」というのではなくて、彼らと共に生きていけるような社会になるということであり、それは日本という国がもっといい国になることへ絶対つながるだろうなぁと思うので。 -
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毎日新聞がんばれ、と応援したくなる一冊だった。一つのテーマに取り組む取材と調査の方法も、とても興味深い。
関係者の証言を積み重ねる中で、どれだけ官僚・霞が関にとって記録が大事か、しかし記録を公にしたくない、する必要がない、という意識の根深さがわかり易く理解できた。
例えば、桜を見る会の招待者リスト。保存期間1年未満に指定されていて、追求された途端に廃棄処分される。しかし、政治家や著名人、各種団体が絡む招待者選定には、記録は不可欠、失われれば、不手際が起こり方々から非難が寄せられるだろう。
2017年の加計学園の問題に端を発した、2017年12月の公文書管理法ガイドライン改定では、「方針に影響をおよぼす」打ち合わせは記録作成が義務になった。しかし、官僚も政治家も、できるだけ意思決定のプロセスは公にしたくない。都合の悪い部分や、国民からの疑念などを避けたいため。それを可能にできるよう、どうやって改定が骨抜きにされたのか、言い逃れできるような仕組みになったのかも明らかにされている。
個人の仕事、民間企業の業務なら許されるかもしれないが、政治家、官僚は公人としての義務があるだろう。バカにしている、軽く扱っているという考え、態度が悔しすぎる。
この言葉も印象的だった。「今の官邸は問題の核心に迫られないように、批判をかわせるように、論点をずらすのがとてもうまい」、何とも切ない気持ちになる。 -
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霞が関には闇から闇に消える文書がある。国の政策決定の過程が、文字にならず、あらゆるところで検証不能になっている。日本の公文書は危機的状況にある。省庁間にはびこる因習、霞が関の「魔物」の正体を追う。(2020年刊)
・序 章 霞が関の常識
・第一章 不都合な記録
・第二章 ファイル名ぼかし
・第三章 記録を捨てた首相
・第四章 安倍総理の記録
・第五章 総理執務室の内側
・第六章 官尊民卑
・第七章 官房長官のウソ
・第八章 官僚の本音
・第九章 謀略
・終 章 焚書
本書は、毎日新聞連載「公文書クライシス」を書籍化したものである。
連載当時、興味深く思ったものであるが、なかなか毎日新聞を読む環境に無く、通読する機会を持てなかった。本書を本屋で見かけて思わず購入した。
公文書に関する不祥事が続く中で、このような連載が行なわれたことは、大変、意義があることであると思う。
新聞とは、常に新しい事に重きを置き、消費しつづけ、忘れ去られるものであるが、書籍化されることにより、多少なりとも、歴史として残されるのは喜ばしい。
内容は250ページ余りで11章という構成であるため総花的なのはやむを得ないのだろうが、折角なのでもう少し踏み込んで欲しかったと思う。