アンドレアス・グルーバーのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレなにかのミステリ関連で本書のタイトルが出たので気になって読んでみた本書。
原文タイトルは「RACHESOMMER」。
うん?英語ではないな。
SOMMERは英語のSUMMERで夏なんだろうけど、RACHEって??
うん? そういえばシャーロックホームズに復讐の意味でこの文字が壁に描かれていた話があったんじゃないっけ??
とかなんとか思いながら表紙をためつすがめつ眺めた。
表紙は夏の夕暮れ時。ぽわっと灯のともった街灯と、そこに浮かびあがる金髪で肌を大きく出した青っぽいワンピを着ている華奢な女性の後ろ姿。そして立派な白い建造物の背景もなんとも雰囲気がある。そうか、これはヨーロッパのミステリなんだ、と納得。
プロローグの掴みはオッケー。
なに? どういうこと? この子、何者?? とじゅうにぶんに引き付ける。
場面も話の展開もスピーディで、読んでいるとただのミステリではなくサイコ系の空気もあって、程よい緊張感を伴って読み進めることができた。
が、最終的な感想は、うーん、緻密さに欠けるというか、なんだか大味だったなあというものだ。
いちいち挙げればきりがないが、いちばん肝心なのは、犯人である彼女がどうしてあそこまでの行動に出たのか、出られたのか、それがどうにも納得できないんだよなあ。
どうやらそこには多重人格がポイントになっているようだと私は理解したんだけれど、それでも本書だけではあの子のあの行動は説明不足なんじゃない? それともヨーロッパの読者さんって多重人格(解離性同一性障害)といわれればここまで基本人格とは隔たった行動をするのが当たり前という前提でもあるのかしら。
とにかく全体的に予定調和すぎるというか、表面をするっと撫でて問題解決な感じが否めなかった。
ミステリで手垢がつきすぎて今や御法度といわれるものに「夢落ち、双子、サイコパス」というのがあるけれど、本書も究極それなんだよなあ。そして追加される保護者のいない児童への性的虐待、それによる解離性同一性障害など、ちょっとおなかいっぱいです。
せっかく冒頭にゲーテの引用があるんだから、もっと緻密に書き込めばハンニバルにも劣らないスリラーになったような気もするんだけれど、みなさんはいかがでしたでしょうか。
怪物と対峙する者は、みずから怪物とならぬよう心せよ。汝が久しく深淵を見入るとき、深淵もまた汝を見入る。
====データベース====
地位も名誉もある男たちの事故死。病院に入院している少女の不審死。オーストリアの弁護士とドイツの刑事、ふたつの軌跡がであうとき、事件はそのおそるべき真の姿を現す。
ドイツでセンセーションを巻き起こした、衝撃作登場。 -
Posted by ブクログ
オーストリアの作家が主にドイツを舞台にして描いたミステリで、児童虐待という重い主題を扱いながらもスピーディーな展開で読ませる秀作。謎解きの要素は薄く、サスペンスを主軸とした捜査小説で、飾らない文章は実直な著者の人格を表しているようだ。
主人公は、やさぐれてはいるが経験豊かな中年男と、才気煥発だがまだまだ未熟な女性という二人。定石の設定ではあるが、中盤辺りまで別々に物語が進行するため、余分なやりとりが発生せず、くどさがないのが良い。真相が明らかとなる要所で二人の追跡行が交差するさまも自然だ。
オーストリア在住で経験の浅い弁護士ヴェリーンは、元小児科医や市会議員らが連続して不可解な状況下で事故死した案件を調査していた。一方、ドイツ/ライプツィヒ警察の刑事ヴァルターは、精神病院入院中の少女らが相次いで不審死を遂げている事件を捜査していた。二人は、丹念な観察力と鋭い直感力によって、隠された事実への足掛かりをつかんでいく。だが、いまだに双方での殺人は続いていた。やがて、過去に小児性愛好の金満家らに拉致され、集団で虐待/性的暴行を受けた孤児らの存在が浮かび上がる。或る一点で結びついた謎解明の手掛かり。宿命的に二人は出会い、志を共有し、行動を共にする。
立ち位置が入れ替わる加害者と被害者。卑劣な犯罪者と哀しい復讐者の実像。果たして、狂っているのはどちらか。ヴェリーンとヴァルター、それぞれの視点で見つめる深層は、悲劇的で残酷性に満ちたものだ。 -
Posted by ブクログ
妻を亡くしたシングルファーザーでぜんそく持ちの刑事と猪突猛進型の女性弁護士が、三年の時を経てふたたび出会う『夏を殺す少女』の続編。
ヴァルターは被害者の母に協力するため警察機構のルールをはずれて捜査を進めるが、警察に全幅の信頼を置いているわけではない彼女に騙され振り回されながら、ドイツ、チェコ、オーストリアと駆け巡ることになる。もう一方の主人公エヴェリーンは、信頼のおけない依頼人の弁護に翻弄されていく。
フランシス・ベーコンの「復讐心に燃える者は自らの傷口をひらく」という言葉がキーワードになっており、プロローグからアクセル踏みっぱなしの展開を見せる。骨を折られ血を抜かれて殺される犠牲者達。それを追う犠牲者の母親の執念がこれまた凄い。ヒロインであるエヴェリーンの存在がかすんでしまうほどのキャラクター。彼女が主役といっても差支えないだろう、決して共感は出来ないが。
謎の解明よりサスペンスと猟奇性に重きが置かれている。作者は本国では「サイコ・サスペンスの鬼才」と呼ばれているそうな。意外な気もしたが、本作品を読んでみるとなるほど納得。面白いんだけど、可もなく不可もなくっていう感じかな。 -
Posted by ブクログ
★3.5
事件分析官と言えば、同じくドイツのアーベルト&クリストシリーズがある。偏屈者とそれに振り回される女性相棒が猟奇的な連続殺人に挑む、という似た設定だ。どちらも気楽に読めるエンターテイメント(以上でも以下でもない)だが、本作は2人のセラピストパートを上手く組み込んでいて先行きのハラハラ感にぐいぐい引っ張られた。
ただ後半、舞台がウィーンに移ってからはスナイデルの変人ぶりが影を潜め、ヘレンの存在感がドイツの2人組より優ったような気がする。さらに事件後半はご都合主義が目立って少し雑な収束感が否めない。シリーズらしいので次作に期待したい。