青木新門のレビュー一覧
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一章、二章と読みやすさを携え、これはノンフィクションなのだろうかと思うぐらい物語性に富んでいた。非現実のような現実。知らなかった事実。目を背けていた死との対峙。まざまざと眼前に突きつけられ、しかし己の未熟さを責めるわけでもなく、それを温かく、著者の体験として迂遠ながら間接的に教え諭してくれるような、そんな小説だった。第三章は、著者も言うように仏教用語のオンパレードで、ここにきて本作品がノンフィクションであることを思い出させる。司馬遼太郎が、専門用語による緻密な記号の羅列により成立する文は、学術論文ならさもありなん、小説においては控えるべきとあとがきで書いていたため、著者も加筆修正を加えようかと
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生死観を変えてくれる力のある本だ。死が怖いものではなくなり、身近な優しいものに感じられてくる。そして生きることが愛おしくなる。▼著者は生活に困窮し新聞の職安欄を見て葬儀の会社に入り、納棺を担当する。それは、筆者が(仏の)「光」と出会うきっかけとなった。生者が忌み嫌う死人が、筆者を光の救いの道へ導く。釈迦と親鸞の教えを、実体験の肌で直接感じ取って、分かりやすく語ってくれる。他方で、近代科学の視点も通して説く世界観は、説得力を有する。眠っている目を開かせてくれる本である。▼また、詩人として、すばらしい詩を、「死・生・光」とういう、新たな視点で見せてくれる。
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映画『おくりびと』の原作。死に対し真っ正面から向かい合う作者の態度に感動した。
映画が話題になっていたときはさほどきにしていなかったことだが作者のいう「納棺夫」というのは長らく差別的な目を浴びせられてきたということだ。作者も親類から早く仕事を離れてほしいと頼まれている。しかし死者と関わりをもつ人々は納棺夫のほかにも看護師、警察、医師などがいるわけであるし、このような人々がいなければ社会はなりたっていかない。作者は納棺夫として卑屈になるのではなく使命感をもって取り組むことによって周りの信頼をあつめるようになった。このあたりが現代社会の偽善性とでもいうべきものを鋭くついているような気がした。
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青木新門(1937~2022年)氏は、富山県生まれ、早大中退後、富山で飲食店を経営する傍ら文学を志し、吉村昭の推挙で「文学者」に短編小説が載る。しかし、経営する店が倒産し、冠婚葬祭会社に入り納棺専従社員(納棺夫)となった。
1993年、納棺夫としての体験を『納棺夫日記』として地元の出版社・桂書房から出版しベストセラーとなる。それを読んだ本木雅弘が青木氏を訪ね、映画「おくりびと」が制作されることになったが、本の内容と映画の脚本が異なること等を理由に、青木氏の意向で、本書は映画の原作としてクレジットされなかったという。「おくりびと」(監督:滝田洋二郎、主演:本木雅弘)は、2008年に公開され、アカ -
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【気づき】
・渡辺和子
死と言う制限があるからこそ、限られた人生で自分は何をすべきか、何を大切にして生きるかを考えられるのです。p.21
・キリストも良い事しかしていないのに、弟子に裏切られ、群衆の罵詈雑言を浴びながら、十字架に磔になって無残な死を遂げている。p.25
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良いことをすれば良い報いが起こるとも限らない。
どのような生き方をしようが、死に方をするか分からないから、こそ丁寧に生きる。
・石飛幸三
誤嚥性肺炎による飲み込む機能の低下自体が治らないため、病院としては胃ろうや経鼻胃管を勧めることになる。
しかしこれは別の問題を誘発することになる。
高齢者にとって、食道と胃の接合部分 -
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ネタバレ2016年、21冊目です。
このタイトルと同じ書籍を読んだことがあります。
4人の著者の一人である大津秀一さんの終末期医療の現場経験に基づいて書かれた本だったと思います。確かテレビでも取り上げられていました。この本は大津さんに加えて、3人の著者が「死」に向き合うことについて書かれています。
渡辺和子さんは、「置かれたところで咲きなさい」の書籍が有名なノートルダム清心女学院の理事長です。一期一会を大切に生きることを書かれています。
著者の一人で「納棺夫日記」で有名な青木新門さんの死をもっと身近なもととして感じ、生活から遠ざけない生き方をしようと書かれています。現代人が死やそれにまつわる出来事か -
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映画「おくりびと」の原作ではないが、元となった本。納棺夫というのは正式な職業名ではないが、この本をきっかけに、納棺をする人が世間に認知されるようになったようだ。
著者は葬儀屋で働いていて、たくさんの死体に向き合ってきた。その時の体験から、「死」そのものについて考えるようになった。突き詰めていく過程で、宗教、具体的には仏教、なかでも浄土宗の教えにたどり着く。生と死の間にある人がみるという「光」について、考証を重ねてゆく。
宗教と科学や医療や哲学など、いろいろな方面から偉人の言葉など借りつつ、死の概念を説明している。生にフォーカスするあまり、死は怖く、忌み嫌うものとしてタブー視されているのが現状で -
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久しぶりに本が読みたくなって本屋に行ったら、この本に目が止まった。
「おくりびと」でも有名になっていて興味があったし、
1冊しか置いてなかったからすぐ買った。
最近私も身内をおくったので、死というものはどうなんだろうか?って思ってたし。
専門的な内容の箇所はちょっと難しかったけど、
作者の納棺夫としての日々はとても興味深かった。
美しい死というものはどういうものだろうか。
身内は今思えば美しい死だったと思う。
最後は自分の生きたいように生きたはず。
ずっと病院に行け行けと言っていたにもかかわらず、
やっぱり自分の家が良かったのだ。それで良かったんだと思う。
周りに迷 -
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青木新門著「納棺夫日記」を読みました。
実は、今「OPローズダスト」を読み出したところだったのですが、「おくりびと」がアカデミー賞を受賞した翌日、職場の人がこの原作をぜひ読んでとわざわざ貸してくれたため、せっかくのお薦めだからとこちらを先に読み始めたのでした。
映画「おくりびと」も見たいところだったので、やはりこの原作も気になっていました。
原作は3章からなっており、1章と2章は、まさに作者が納棺の仕事を通して書かれた日記の文章になっています。
そして、3章は「生と死」について、仏教の考え方をとおして作者の考えが述べられています。
そして読み終わって感じたことは、