小林照幸のレビュー一覧
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[艶やかなるその遺志]かつては空に羽ばたく様子が多く見られた朱鷺(トキ)。昭和前期、その名前だけは耳にしたことがあった佐藤春雄は、ある日実物を見かけ、その美しさに惚れ込み、仕事の傍ら日々の観察を欠かさないようになる。朱鷺の生活環境が年々進む開発で厳しさを増すことを憂いた佐藤は、独力ながらもその保護のために活動を続けるのだが、時代の流れと重なり、その活動は思いがけない展開を見せることに......。朱鷺と人間の知られざる交流を描いた作品です。著者は、本書で第30回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した小林照幸。
とにかく美しい一冊でした。佐藤氏を始めとして献身的な朱鷺の保護活動に勤しむ方々の姿 -
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「政治家に向いていない」という理由で政界を引退した自民党の元国会議員の久野統一郎氏の選挙出馬から引退までを描いている。
統一郎氏の父は郵政大臣を務めた国会議員の久野忠治。
統一郎氏は父の跡を継ぐ気はなかったが外堀を埋められ、立候補した。
この本では国会議員の日常が描かれたいる。昨今世襲議員への非難が高まっているが世襲議員と言えども自分の本意とは逆のことを有権者にアピールしなければならないなど様々な苦悩がある。ただ、統一郎氏が認めているように地盤のない新人は一からすべてを用意しなければならないので世襲議員がこれからも増えることは十分に有り得る。 -
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我が家には田んぼがある。自家消費分と少し売るだけの米を作るくらいの田んぼだ。
田起こしが終わって、代掻きが始まるまでに出水口に仕切りを立て、土を詰める。田んぼの水位を保つためだ。
田んぼの土をとり、水が漏れぬよう仕切りと田んぼの間に詰める。
掴む土に、ミミズが顔を出す。
田んぼに水が入ると代掻き。あめんぼう、かえるの卵、機械に巻き込まれて浮かびあがる、かえるの死骸……いろんなものが水を張った田んぼにあらわれる。
農作業で使ったトラクターは、田んぼのすぐ脇で泥を落としている。用水路から水を汲む。
近くには、真偽はわからないが昔肥溜めだったというコンクリ製の枡が残っている。
我が家のある土地は、 -
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ネタバレ山梨、広島、佐賀のある地域のみで古くから恐れられてきた謎の死の病。その原因究明から治療法の確立、撲滅までの一世紀余に亘る人々の苦闘の歴史。
……濃厚なドキュメンタリーを一気見した読後感。
元々書店で『羆嵐』『八甲田山死の彷徨』と並べられ“Wikipedia3大文学”として紹介されていたのを手に取ったもの。かつ日本住血吸虫症は小学生の頃児童向けの科学?の本に載っていた(死の床にある患者の挿し絵がトラウマ)ので、ミヤイリガイという名称と共に覚えていた、ということもある。
ま、『羆嵐』も『八甲田山死の彷徨』も実際の悲惨な事件を小説化したものであり、作品の大部分は恐怖と絶望の色が濃厚なのに対して、本 -
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今や忘れられつつある寄生虫を原因とする様々な病い。私は子供の頃遥かな記憶で蟯虫検査をしてたのを微かに覚えています。蟯虫がいると虫下しを飲まされていましたが、自分の子供たちはもう検査はやってなかったように思います。
ここで取り上げられている「日本住血吸虫症」は蟯虫とは比べ物にならない死の病とも言っていい業病で、流行地での感染率は高く、そこで暮らす人人々は正に死を賭して生活をしてました。
その病の解明と根絶のために、大学教授や医師が多くの困難を乗り越えていく様を描いたノンフィクション。結局根絶までには第二次世界大戦もあったので100年以上の年月がかかるのですが、その執念は鬼気迫るものもあるし、 -
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なんとなく名前を聞いたことあったかなぁくらいであった日本住血吸虫症。
まさかこんなにも壮絶な闘いの歴史があったとは。
調査研究にあたられた全ての方に敬意を。
また、当時の流行地に住んでいた方たちの闘いの歴史にも頭が下がる思いです。
まさか、今に続く山梨での果樹生産が盛んになった元の一つにそんな事があったなんて。
河川や用水路がコンクリートで整備される、そして関が作られる原因の中にこんな事があったなんて。
河川敷が整備される理由にこんな事があったなんて。
もちろん治水の意味が大きいのでしょうが、流行地に於いては違う意味もあったんですね。
世の中は知らない事だらけです。
ミヤイリガイにつ -
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読みやすさを考えてだろうが、ノンフィクション的な内容のフィクションになっており、どっちつかずの印象なのが残念。
データを生かすなら、ノンフィクションで読みたかったが、そうすると検証レポートのようになってしまうのだろうか。
全体的には星3つだが、この本を読んだことで、飼い猫にマイクロチップを付けようと決意できたので、ありがとう分でプラス1。
獣医師として動物愛護管理センターに長く勤める主人公を中心に、ペットを取り巻く環境や法の変遷を描いており、流れを掴みやすかった。
死なせなければならない犬猫が1匹でも減って欲しいという思いが伝わり共感度も高かった。
野犬狩りが行われていた時代や、殺処分 -
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「私は自分の人生を二十五年周期に区切っている。生まれてから
二十五年は自分のための二十五年だった。二十六歳からの二十五
年間は、家族のために使う二十五年だと思って生きて来た。医師
としての仕事は、自分のためでもあるけれど、家族を養っていく
ためのものでもある。でも、五十歳からの二十五年間は、医師の
仕事をそのまま社会に役立てることができると思っている。五十
を過ぎてからの二十五年は、私は社会のために使っていきたいと
思っているんだ」
耳鼻科医となり、結婚後に伴侶の仕事の関係でアメリカに渡り、
そこで出会ったポーランド系アメリカ人の男性医師は有言実行
の人だった。
言葉 -
- カート
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試し読み
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父は土建屋から国会議員になり、後に自民党田中派の有力
幹部となった久野忠治。政治家である父の姿を見ながら、
「とても自分には政治家は務まらない」と、息子は思って
いた。
いくつかの転職をし、旧日本道路公団で道路の建設に係わる
サラリーマン生活を送っていた息子に、ある年の正月、父は
頼みごとをした。「名古屋まで車の運転を頼めないか」。
その父の言葉で、サラリーマン生活に終止符が打たれるとは
本人も思っていなかった。父の地盤を継ぎ、二世議員として
3期10年に渡り国会議員を務めた久野統一郎の10年を綿密
に描き出したのが本書だ。
「普通の人の、普通の人による、普通の人の政治」を目指した。
議