小林照幸のレビュー一覧
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絶滅動物物語3にミヤイリガイが出てくるので、読んでみた。
先人達の犠牲や、医師の苦労の末、漸く日本住血吸虫症が100年余かけて収束した記録である。
日本住血吸虫症の患者の症状はあまりに酷い。だから、原因を追求し、病気を治したいという気持ちがとても理解できる。
調査していくにつれて、原因となる寄生虫が発見された。また、その寄生虫の成長の過程でミヤイリガイが中間宿主であることを突き止める。そこで、寄生虫の成長を阻止する為、ミヤイリガイを根絶させることになり、薬剤や河川の工事などを行うことにより、ミヤイリガイの生息を阻害してきた。その結果、ミヤイリガイが激減し、同時に日本住血吸虫症患者も減った。官民 -
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絶版になってたハードカバーを一度借りたものの挫折し、単行本が出たので買ってきた!!今度は3日で読み終えました。
日本各地に見られる謎の地方病の原因を紐解く話。
非常に素晴らしい本!!
前に途中まで読んだ時も思ったけど、藤井先生から始まった研究者の生涯をかけた研究リレーや杉山なかさんに強く心を打たれました。
感じたことは沢山あるけど上手く言い表せない!
ただ、私が今生きるこの環境も、さまざまな先人たちのたゆみない努力の上に成り立っているんだ、すごくありがたいことだと思った。
私は平成生まれなので昭和天皇のことはほぼわからないけど、この本を読んで皇族の方が科学や医療など、そのような学術的な方 -
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2日で読んでしまった。
文献的な記録としては江戸初期、本書は1844年に広島で水腫脹満というお腹が膨れ、重症者は死に至る古来からの謎の病気が流行している所から始まる。
私はこの本を読む前、日本住血吸虫症という言葉を今まで聞いたことすらなく、明治の時に流行した遠い昔の感染病と思い込んでいた。
しかし、最後まで読み進めるとこの感染症は私が生まれた平成まで続き、今なお世界では流行していることを知った。
未知の感染症が流行したとき、人々は過去の記録や知識を総動員して原因の究明をする。そこには多くの人の死や動物実験による犠牲がある。それでも人類はそれらを克服してきた。
この本はその一例を示しており、明治 -
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ネタバレタイトルがもう怖い。そしてサブタイトルを見ても何のことやら分からない。貝に寄生する虫が起こす恐ろしい病気だということが読み始めてすぐに分かるのだけれども、本文に入る以前に目次のすぐ後にある資料にまずものすごい衝撃を受ける。
写真のインパクトがすごい。限界かと思われるほど膨れ上がったお腹、三人並んで写った男性の比較写真で、小学生中学年くらいに見える人が実は25歳男性であること(本文によれば感染が重くなると著しく成長が阻害されるためらしい)、寄生虫のおぞましい姿やその感染経路や変態の仕方、宿主となる貝があまりに小さいことなど、もう本文を読む前からすさまじい。
これを突き止めあらゆる考えられる対 -
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ネタバレ目黒寄生虫館に行ったときに、「なぜ蚊は人を襲うのか」とセットで買った本。
なかなか難しそうな気配がしたので、読みやすそうな「なぜ蚊は人を襲うのか」を先に読んだのだった。
が、結果として難しくはあったものの、とても読みやすかった。というか面白すぎて一気に読めた。
いや、最初から最後まで悲惨な出来事なので面白いと言ってしまってはいけない雰囲気を感じはするものの、いや、面白かったとしか言いようがない!名著。
まだ解剖が一般的でなかった時代に、主婦が自ら検体に申し出るシーンや、とうとう長い闘いが終わったときの宣言とか、何度か泣きそうになったレベル。
人の力が及ばないはずの強大な魔王に「これが、ヒト -
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すぐ近くに筑後川があるものの病気予防のために川で遊ぶことを禁じられていた、それを可哀想に思ってブリヂストンの石橋正二郎さんがプールを作ってくれた、というような事を久留米市に住んでいた頃に年配者から何度も耳にした。その話が気になり、日本住血吸虫とミヤイリガイについてはWikipediaで読んで凡そは知っていたつもりであったが、本書を読み、正体不明の「風土病」について原因から治療法、根絶まで沢山の研究者の想いを感じた。
この病気を根絶する流れで、山梨の葡萄栽培とワインや筑後川河川敷のゴルフ場が出来たのは凄く興味深い。かつて、さまざまな方法で絶滅を目指したミヤイリガイが今では絶滅危惧種に指定されてい -
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単行本から26年。
今年、文庫本として刊行された。
日本住血吸虫症撲滅に尽力されたみなさんには頭が下がる。
補章で書かれている。
ミヤイリガイの発見はノーベル生理学・医学賞の受賞に十二分に価する。
地方病の終息を願い闘った人たち。
丁寧な取材を重ね執筆をされた小林照幸さん。
そのお陰で感染症について知る事もできた。
P321
ミヤイリガイと共生、共存をしてゆかねばなるまい。
単行本の『死の貝』というタイトルに
文庫版ではサブタイトル『日本住血吸虫症との闘い』が加えられたという。
その経緯を読むと、終息はしたけれど
感染症など、新たなウイルスとの共生、共存をどうするべきか。
いまも、闘い -
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古くは『甲陽軍鑑』に記述があるらしい。
武田氏滅亡直前の勝頼が府中を捨て岩殿城に向かう途中、ある足軽大将が、腹が水で膨れあがり歩けなくなり殿の供をすることが困難になったと暇乞いをした。勝頼はその足軽大将の姿をみて、その気持ちだけで十分である、と涙を流していたわった、という。
のちに「日本住血吸虫症」と呼ばれる寄生虫により引き起こる病は腹が大きく膨らむ(水腫張満)一方で、手足はやせ細り、衰弱が激しいことが特徴だ。
『腹に水がたまって妊婦のように膨らみ、やがて動けなくなって死に至る――古来より日本各地で発生した「謎の病」。原因も治療法も分からず、発症したらなす術もない。その地に嫁ぐときは