玉木俊明のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ<目次>
序章 「世界史」はいかにしてはじまったのか
第1章 大航海時代~グルーバル交易ネットワークの誕生
第2章 世界史から見た「宗教改革」
第3章 宣教集団にして死の商人~イエズス会の世界戦略
第4章 科学革命とキリスト教
第5章 カール5世とスレイマン1世~16世紀前半の世界
第6章 フェリペ2世vs主権国家~16世紀後半の世界
第7章 世界史に組み入れられた戦国日本
まとめ
<内容>
教養新書としては、ざっくりな内容かもしれない。帯に「歴史総合」を学ぶ人必読!の怪しい文字も…(つられて買った私も…)。専門は16~18世紀のバルト海貿易だそうで、まあ、タコつぼの専門を脱することも必要かもしれないが、それは読者側の仕事のような気もする。わかりやすいことはわかりやすい。でももうちょっと中身が欲しい気もする…。 -
Posted by ブクログ
歴史を暗記で覚えようとしていた過去の自分にこう言いたい。歴史は流れで覚えろと。おかげで、こういう本を読むときは毎回苦労するハメになります……
内容としては、古代の移民から、中世の商人たち、奴隷貿易から現代の難民まで、様々な「移民」について各章ごとに、簡潔にまとめられている印象です。なので読みやすいことは読みやすいのですが、自分みたいに基礎知識が抜けていると、言葉がサラサラと流れていってしまうこともしばしば……
やっぱり印象的なのは、現代に近い話かなあ。イギリスとスコットランドの問題、難民の問題、EUの問題、それの元を辿っていくと、ヨーロッパ諸国の帝国主義的な拡大や、領土の勝手な分割による民族問題などがあります。そのあたりが割とわかりやすく解説されていたので、今後その関連のニュースを見るときは、もうちょっと身近に考えられそう。
アメリカの拡大と移民の話も、個人的に面白かった。国を拡大していくにつれ、人口も増え格差が表われ、その不満を覆い隠すために、アメリカに移民を渡らせたヨーロッパの国々。そして、国の労働力不足を補え、また広大な土地を持っていたため、大量の移民を受け入れることができたアメリカ。
結果、アメリカは押しも押されぬ大国になったわけですが、こういう流れがあったと分かると、別に英雄が出てこない歴史も、それはそれで面白いなあ、と思えるわけです。
様々な名も分からない人たちの流れがあって、今の世界があると思うとロマンチックな気もするのですが、その負の遺産も一方であるわけで……日本も移民をめぐって揺れている時期でもあるので、そんなことも考えないといけないなあ、とも思いました。 -
Posted by ブクログ
2019年8月現在、Brexitで世界を賑わす英国について、その歴史を今一度把握してみたい、という思いにかられて本書を手に取りました。
島国とはいうものの、やはり大陸欧州との関係は密接です。11世紀にイングランドを征服したノルマン王朝の始祖ギヨーム(征服王)は、フランスでは地方領主たるノルマンディー公でした。こうして、イングランドの貴族階級はフランス語を話し、民衆が英語を話すという社会の重層構造が生まれたとのことですが、以前フランスで勤務していたときに、この事実からフランス語が英語に対してより洗練されている言語、と宣っていたのを思い出しました。
その後、プランタジネット朝では英仏にまたがる領土を有するも、十字軍遠征での出費や、ジョン(失地王)の失政を経て、ほぼ現在の領土と同規模に縮小。14世紀にはフランスとの100年戦争で、島国となります。テューダー朝、スチュアート朝、ハノーバー朝と王朝が変遷していく中で、ピューリタン革命、名誉革命、産業革命を経て、英国は中央集権国家として形成されつつ、貿易で先行していたオランダを凌駕し、蒸気船や海上保険、電信ネットワークを支配することにより、世界に冠たる大英帝国となります。
二つの大戦後はアメリカのヘゲモニー下で、大陸欧州と距離をとりつつ、米国とも緊密な関係を結んでいますが、Brexitにより英国がスコットランド、北アイルランド、ウェールズ、イングランドを統合するその体制を維持できるかが注目されます。 -
Posted by ブクログ
高校の時の世界史を学んだ時には、現在の国が過去にどんな歴史を辿ってきたのか、という視点に縛られてしまい、地域や民族という観点から俯瞰的に歴史を考えることが出来ずに苦戦したのを覚えています。
本書では、アレスサンドロス大王から母を訪ねて三千里まで、様々なトピックを切り口に、当時の情勢を明快に解説してくれています。
特に興味深かったのは、確率論のきっかけとなったフェルマーとパスカルの往復書簡についてです。二人はサイコロによるギャンブルをする場合の賞金の分け方について手紙で数学的議論を交わします。
現在の生命保険や損害保険は、確率・統計学なくして成立しえませんが、その端緒が17世紀の二人のフランス人の手紙のやり取りにある、という事実に大変感銘を受けました。いつの時代も、未来を切り開くのは個人の発想と他人とのアウトプットなのでしょう。 -
Posted by ブクログ
本書では、オランダ、英国、米国が、情報網をどのように掌握したか、またそれを活用して、ヘゲモニーの一時代をどのように確立したかについて、著されています。
ヨーロッパ商業の国際展開の中核であったオランダと、活版印刷技術が商取引のテンプレート化に果たした役割について、本書を読んで初めて認識しました。
また、電信網を張り巡らせ、情報を迅速に伝達・収集することによって情報帝国としての地位を確立した英国。19世紀にはユーラシア大陸を横断する電信網や海底ケーブルまで敷設し、グローバル電信網を構築していた事実に驚きました。これが今に続く、海運・金融セクターでのロンドンの国際的な地位の確立に大きな役割を果たしていることがよく分かりました。
更に、アメリカが電話網の構築により、よりライブな情報である音声の伝達を通して新たな情報帝国として台頭し、IMFのような国際機関やブレトンウッズ体制の構築により20世紀に超大国となったこと。
本書での中心は、上記3か国についてですが、個人的にはフランスのユニークな腕木通信という情報伝達ネットワークが、ナポレオンの情報戦略を支えていた、という件を興味深く読みました。フランスはインターネットに先駆けミニテルを発明・展開したことも良く知られています。
またサミュエル・モールスがなぜ電信信号を発明したか、その動機には、彼の妻の死があることを本書で初めて知りました。重要なことをいち早く情報として伝達することを実現するためなのですが、もともと画家であった彼がモールス信号を発明するに至る背景に、彼の妻への愛を感ぜずにはいられませんでした。 -
Posted by ブクログ
歴史というと、年号を覚えて、普段使わないような難しいことをひたすら覚えて、同じような名前が何度も出て来るのを覚えて......。
そんな、恐ろしく退屈な暗記科目、と思ってはいないだろうか。
あるいは、そんなの誰も知らねえよ!と叫びたくなるようなマニアックな問題にさらされ、しかしマニアックな人々はそれを常識とでも言わんばかりに平気で解いて、テストでの屈辱を覚えたりしてはいないだろうか。
しかし本来歴史とはそういった学問ではないはずだ。
人の営みというものは面白く学びを得られるもののはず。
本書はそこに焦点を当てて、少し変わった角度から現代との関わりを感じさせる構成になっている。
例えば、ヴァイキングとイスラーム商人、織田信長とイエズス会、数学者が作った保険など、ブックガイドもついており、好奇心を刺激する。
フェルマーが作った保険の基礎、「確率論」。
それぞれ数学者、保険、確率論と区切ると全然面白くないし、覚えられない。
でも、自分に引き寄せて「未来を予測する方法」を知ると、その偉大さと、世界と歴史がどうつながっているかわかり、興味がわく。
本書は高校世界史の知識があれば、さほど難しいものではない。
ちょっと優秀な中学生であれば、知っていることもあるかもしれない。
でもそうでない、普通の読者は、教科書や教師を離れて別の視点を得ることで、今までバラバラになっていた知識が統合する面白さを感じられるし、何より歴史、つまり「未来」に向けて学問が目指すものを理解し、定着させることができる。
学ぶことの面白さを感じさせる良い本だ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ論旨の軸足がブレておらず落ち着いて読めるヨーロッパの覇権争いを興味深く執筆
なされております。
上級の高校生の副読本として教養高めるのに適しています。或いは、大学機関に
於ける教養課程から専門課程ですら、使えるような幅広さや深みを持ち合わせてる
良書だと思います。
ただし、筆者は左ですから。その辺り差し引かないと思想に取り込まれるでしょう。
読み始めて「あれ」と。間もなく「ああ・・そうだろうな」トドメが「あとがき」。
資本主義と帝国主義・重商主義といった発展段階は、これらの要因に依存しながら
(こういう言葉?表現出てくる時点でアレなんだろうなと)
かたや、
1).国民国家の野望を遂げるため。
積極的な政策的介入に乗り、護送船団方式的かつ英国中央集権な
<管理貿易>の道を選ぶのか。
2).コスモポリタン・世界市民的商人による自主性に委ねる、自由市場の放任。
まさしくボーダレス的世界を先駆けで商いを臨む、グローバリズムの先駆 け的な商人たちの非公式ネットワークによる市場開拓。時代の求められる要素 は存外国民性や国民気質に依存しておるのかもしれませんね。 -
Posted by ブクログ
新書ながら世界史のエピソード・うんちくが満載 私としては大いに刺激を受けた
より深く極めたいテーマは、それぞれの参考図書にあたれば良いと思う
歴史を生き生きと学ぶことのできる貴重な一冊でした
1.交易の価値
侵略・征服というほうが華々しいが、現実には双方がWin-Winとなる交易の意義が大きい
ただし「アヘンと奴隷の貿易」のように、交易とは言えない場合もある
ちなみに、奴隷は綿花と、
1-2.「輸送」を握る者が交易を支配する
大航海時代のポルトガル・スペイン
大英帝国
現在の国家をベースに盛衰を見ると誤る スペイン国王の領地
イエズス会も布教と交易特に軍事商品鉄砲・大砲
2.イスラム・インド・中国の存在感も
世界史の中で、欧米が主導したのは産業革命以降のここ3百年
それまでは、他の地域が高い文明・産業を誇っていた
現代の世界史はそこへ触れることが少ない
3.グーテンベルグの印刷革命
聖書を大衆に 宗教改革
文字を大衆化
ビジネス文書を標準化
当時より、欧米は「標準化」と手数料ビジネスモデル作りが巧い -
Posted by ブクログ
ネタバレ情報だけ届いても、実は世界は動かない。
実際に物が(経済的に許容できるコストで)動くってのは凄いよねってのと、今読んでいる「東インド会社とアジアの海」にも繋がるなあと思って読んだモノの、いくら新書でもさすがに軽すぎる。浅すぎる。ちょっとがっかり。
特に、著者独自の見解?であるディアスポラ後のアルメニア人、ポルトガル系ユダヤ人の役割の大きさについて、裏付けるモノが少なく、語尾が「思われる」ばかりになっていて、ちょっとそれでは困る…
産業革命よりも、航海条例こそが、英国の世界帝国化に大きな役割を果たしている!とか、「世界の工場」よりも「世界の物流の支配」の方が大きいとかについては、裏付けが提示されていた(様に思えた)事と、中国が「世界の工場」とかした後も揺るがない、現在の米国の優位性に繋がるモノを読み取れた。 -
Posted by ブクログ
世界秩序について、現在を起点にしてではなく時間と空間を俯瞰して考えていく。そこにはそれぞれの時間と空間の繋がりが、ある時は重なり合い、ある時は別々のものとして現れてきた。それぞれの世界史ではなく、地球の世界史が続いてきた。
本書は、リベラールアーツの学びとして、自分自身が向き合う様々な場面で活きる知識といえよう。
それでは、世界秩序が収斂していく中で何が決め手となったのか。本書では、情報と物流を手元に集めて、自ら働きかけることではないかと問う。そうする中で、自動的に富が集まるようになるのがヘゲモニー国家という世界秩序の覇権を握る存在である。
中国が「再興」するにおよび、これからどうなるのかを考えるところで本書は締めくくられている。中国はヘゲモニー国家になりえないと説く。かつてのイギリス、アメリカにはなれないのだと。どうだろうか、この点はもう少し多面的な評価が必要ではないだろうか。本書の頁数ではもう少し足りない。 -
Posted by ブクログ
非常に面白く感じました。
気になりましたのは筆者の誠実すぎる引用なんです。
「ウォーラステインでは・・」
きちんと引用先示して反対意見も筆者なりにNOと書いている訳ですよ。
引用先や資料先より知識を体得し血なり肉なりにしていらっしゃるにも
関わらず、いちいちこまめに書くと読んでるこちらが
なんというか「躓く」おっとっと・・・という感じで。
ズバリと筆者のストレートな強烈なパンチを出さないと
読んでる方は騙されません・・・。「そうか・・そうだよな!」とgo!go!とはなりません。
職人気質の学者さんですよね。仮構でもぐわーっと・・
読み物ですしね・・・ -
Posted by ブクログ
競合している相手がいなくなったら、その相手の販路を利用してシェアを増やすなんてのは当たり前のこと。
だから、ローマ人がカルタゴを滅ぼしたら、フェニキア人の交易路をそのまま継承するのも当たり前の話だろう。
だけど…その交代劇は突然だったのだろうか? 歴史の転換期、ローマの商人とカルタゴの商人は同じ港で船首を並べていたに違いない。
ローマがカルタゴを滅ぼした時、カルタゴは徹底的に破壊されたというけれど?
商人たちは、相手の国をどう思っていたのだろうか?
そういう想像をし始めると、教科書だけで歴史を学ぶのって、本当に味気ないなぁと思ってしまう。