玉木俊明のレビュー一覧
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高校の時の世界史を学んだ時には、現在の国が過去にどんな歴史を辿ってきたのか、という視点に縛られてしまい、地域や民族という観点から俯瞰的に歴史を考えることが出来ずに苦戦したのを覚えています。
本書では、アレスサンドロス大王から母を訪ねて三千里まで、様々なトピックを切り口に、当時の情勢を明快に解説してくれています。
特に興味深かったのは、確率論のきっかけとなったフェルマーとパスカルの往復書簡についてです。二人はサイコロによるギャンブルをする場合の賞金の分け方について手紙で数学的議論を交わします。
現在の生命保険や損害保険は、確率・統計学なくして成立しえませんが、その端緒が17世紀の二人のフラ -
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本書では、オランダ、英国、米国が、情報網をどのように掌握したか、またそれを活用して、ヘゲモニーの一時代をどのように確立したかについて、著されています。
ヨーロッパ商業の国際展開の中核であったオランダと、活版印刷技術が商取引のテンプレート化に果たした役割について、本書を読んで初めて認識しました。
また、電信網を張り巡らせ、情報を迅速に伝達・収集することによって情報帝国としての地位を確立した英国。19世紀にはユーラシア大陸を横断する電信網や海底ケーブルまで敷設し、グローバル電信網を構築していた事実に驚きました。これが今に続く、海運・金融セクターでのロンドンの国際的な地位の確立に大きな役割を果た -
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歴史というと、年号を覚えて、普段使わないような難しいことをひたすら覚えて、同じような名前が何度も出て来るのを覚えて......。
そんな、恐ろしく退屈な暗記科目、と思ってはいないだろうか。
あるいは、そんなの誰も知らねえよ!と叫びたくなるようなマニアックな問題にさらされ、しかしマニアックな人々はそれを常識とでも言わんばかりに平気で解いて、テストでの屈辱を覚えたりしてはいないだろうか。
しかし本来歴史とはそういった学問ではないはずだ。
人の営みというものは面白く学びを得られるもののはず。
本書はそこに焦点を当てて、少し変わった角度から現代との関わりを感じさせる構成になっている。
例えば、ヴァイ -
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ネタバレ論旨の軸足がブレておらず落ち着いて読めるヨーロッパの覇権争いを興味深く執筆
なされております。
上級の高校生の副読本として教養高めるのに適しています。或いは、大学機関に
於ける教養課程から専門課程ですら、使えるような幅広さや深みを持ち合わせてる
良書だと思います。
ただし、筆者は左ですから。その辺り差し引かないと思想に取り込まれるでしょう。
読み始めて「あれ」と。間もなく「ああ・・そうだろうな」トドメが「あとがき」。
資本主義と帝国主義・重商主義といった発展段階は、これらの要因に依存しながら
(こういう言葉?表現出てくる時点でアレなんだろうなと)
かたや、
1).国民国家の野望を遂 -
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新書ながら世界史のエピソード・うんちくが満載 私としては大いに刺激を受けた
より深く極めたいテーマは、それぞれの参考図書にあたれば良いと思う
歴史を生き生きと学ぶことのできる貴重な一冊でした
1.交易の価値
侵略・征服というほうが華々しいが、現実には双方がWin-Winとなる交易の意義が大きい
ただし「アヘンと奴隷の貿易」のように、交易とは言えない場合もある
ちなみに、奴隷は綿花と、
1-2.「輸送」を握る者が交易を支配する
大航海時代のポルトガル・スペイン
大英帝国
現在の国家をベースに盛衰を見ると誤る スペイン国王の領地
イエズス会も布教と交易特に軍事商品鉄砲・大砲
2.イスラム・イ -
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ネタバレ情報だけ届いても、実は世界は動かない。
実際に物が(経済的に許容できるコストで)動くってのは凄いよねってのと、今読んでいる「東インド会社とアジアの海」にも繋がるなあと思って読んだモノの、いくら新書でもさすがに軽すぎる。浅すぎる。ちょっとがっかり。
特に、著者独自の見解?であるディアスポラ後のアルメニア人、ポルトガル系ユダヤ人の役割の大きさについて、裏付けるモノが少なく、語尾が「思われる」ばかりになっていて、ちょっとそれでは困る…
産業革命よりも、航海条例こそが、英国の世界帝国化に大きな役割を果たしている!とか、「世界の工場」よりも「世界の物流の支配」の方が大きいとかについては、裏付けが提示さ -
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世界秩序について、現在を起点にしてではなく時間と空間を俯瞰して考えていく。そこにはそれぞれの時間と空間の繋がりが、ある時は重なり合い、ある時は別々のものとして現れてきた。それぞれの世界史ではなく、地球の世界史が続いてきた。
本書は、リベラールアーツの学びとして、自分自身が向き合う様々な場面で活きる知識といえよう。
それでは、世界秩序が収斂していく中で何が決め手となったのか。本書では、情報と物流を手元に集めて、自ら働きかけることではないかと問う。そうする中で、自動的に富が集まるようになるのがヘゲモニー国家という世界秩序の覇権を握る存在である。
中国が「再興」するにおよび、これからどうなる -
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競合している相手がいなくなったら、その相手の販路を利用してシェアを増やすなんてのは当たり前のこと。
だから、ローマ人がカルタゴを滅ぼしたら、フェニキア人の交易路をそのまま継承するのも当たり前の話だろう。
だけど…その交代劇は突然だったのだろうか? 歴史の転換期、ローマの商人とカルタゴの商人は同じ港で船首を並べていたに違いない。
ローマがカルタゴを滅ぼした時、カルタゴは徹底的に破壊されたというけれど?
商人たちは、相手の国をどう思っていたのだろうか?
そういう想像をし始めると、教科書だけで歴史を学ぶのって、本当に味気ないなぁと思ってしまう。 -
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ネタバレさらさら読めるんだが、主語が拾いにくい。端的に言えば、分かりにくい。
オランダのゲヘモニー。活版印刷の普及は商業の発展に繋がった。ヨーロッパ内での情報の共有化による価格の均一化や情報の正確性の向上から国際貿易商人の活動が活発となった。17世紀、ヨーロッパ商業の中心地はアムステルダムだった。宗教的寛容、人の移住移民による商業技術の伝搬を背景に商取引が拡大した。
さらっと読んでしまった、イギルスのゲヘモニー。イギリスは国家が自由経済に介入したからこそ成長した。イギリス帝国は電信によって維持される帝国だった。電信の敷設は、国内では国が、対ヨーロッパは私企業によって敷設された。電信は蒸気船とセッ -
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オランダを中心に、近世から近代にかけてのヨーロッパ経済について述べてあります。オランダ中心ということですから、当然海上輸送貿易についての話となります。ヨーロッパ中世では地中海世界がヨーロッパ経済の中心でしたが、それが食料や船舶用資材である森林資源の枯渇から北方(アルプス以北のヨーロッパ)が替わってヨーロッパ経済の中心となります。その中でもオランダはポーランドなど東方から穀物などを輸入して他国に再輸出する(つまりは転売・中継ぎ貿易)ことにより、ヨーロッパ経済を牽引する存在となります。またオランダはこのようにバルト海貿易を中心に栄えますので、オランダではバルト海交易を「母なる貿易」と呼ぶそうです。