玉木俊明のレビュー一覧
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予想以上に面白い…興味深い本でした。
ヨーロッパ覇権史という書名ですが、内容は世界経済システム史の概説であり、個人的になるほどと思ったのは、工業国と資源供給国という単純化した従属関係ではなく、そこに「輸送(海運)」という確かに言われてみれば非常に重要なファクターを明示的に加えていることと、「決済」というこれまた当然ながら重要なファクターについては、それを成し得るための「電信」の重要性についても強調している点。
昨今の「資本主義の限界」についての議論の前提となる世界経済システム史についての理解を深めるための良書と思います。著者の他の著書も読んでみたくなりました。 -
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移民と世界の発展の関係を述べた書。移民を言葉の通り移動する民族と捉え、遊牧民・ヴァイキング・黒人などの多種多様な民族にスポットライトをあてている。この本を読めば現代文明に移民が欠かせないことが分かるはずだ。
私は現代社会において、移民がネガティブな印象を持たれている状況に疑問を抱いている。市民は移民が雇用や治安を悪化させてるという偏見を抱きがちで、本当に移民が与えている影響を考慮しようとはしていない。そのため私は移民が社会、特に政治体制にどう影響を持つかより深く研究したいと思っている。本著はこの考えに対して、歴史の面から多大な見識を与えてくれたため深く感謝している。 -
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タイトルにやや偽りあり。正しくは「経済からみた世界史」。
歴史の本には人物や政治を中心に語ったものが多いが、この本は経済の流れから、覇権の移り変わりを述べている。
「なぜ、歴史はこうなったのか」を考えたとき、やはり人物や政治体制よりも、経済による要因が大きいと実感する。
イギリスが産業革命により世界の工場になったが、貿易収支は赤字で、電信の手数料で大儲けしていた、というのはかなり衝撃であった。確かに、貿易黒字だけだったらその時はいいけど、その後も維持し続けることは難しい。将来に渡って稼げる手数料資本主義を構築したことがその後のイギリスの覇権につながったわけだ。
日本も、バブルの時の儲けをき -
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近代ヨーロッパ経済史の専門家による、歴史研究とは何かを追求したもの。日本におけるヨーロッパ研究の経緯を述べ、それを題材に歴史研究とはどういうものかを明らかにしている。極めて学術的であり、面白い。
「誰の興味も引かず、学生がほとんど出席していないような科目が、ただそれが必要だったという学問に内在する要請によってのみ生きながらえたのではないか。社会全体からみた場合、そういう学問は、本当は死に絶えていたはずなのではないか。それが大学という制度によって、延命措置を施されているだけではないのか」p17
「目の前の研究に関係ないものは無視するという態度は、長期的には決して効率的なものではない。研究基盤が -
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情報に焦点を当て、ヘゲモニー国家の500年にわたる興亡について書いた本。著者によると今までヘゲモニー国家といえるのは、オランダ、イギリス、アメリカの3か国しかない。その3か国を情報の視点からみると、オランダは印刷機、イギリスは電信、アメリカは電話によって情報管理をしていた。ヨーロッパの歴史に詳しく、説得力ある話の展開がなされており、役に立った。
「アムステルダムは武器貿易の中心であった。それにより、戦略、戦術に関する情報が比較的容易に入手できたことは、極めて重要であった」p26
「オランダは活版印刷術、イギリスは電信、そしてアメリカは電話を使用した。これらが要因となって商業情報の中心となり、 -
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今年(2018)の読書の収穫の一つとして、ライバル多い欧州国のなかで、産業革命をイギリスがなぜ先んじて成功させられたのか、またイギリスが覇権を握れたのは、工業国として成功よりも、ライバルが成長しても自国にお金が落ちるシステムを作り上げたからだ、というこの本の著者の玉木氏の本を読んで、長年のもやもやが晴れたこどです。
その玉木氏が書かれた本を読んでみようと思い、この本を選びました。19世紀というのはヨーロッパにとって繁栄した最高の時代でありますが、それと同時に、その踏み台とされた、アフリカ・アジア地区の国々は相当な受難の時代であったこともあわせて書かれています。
人口増加の勢いは、東南アジア -
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日本以外を取り扱っているのが世界史ですが、古代から現代まで、主要国のみに絞っても範囲が広すぎます。どこから手を着けようかと思って、何年も月日が流れていたのが現状です。
そんな私にとって、玉木氏によるこの本は、自分が面白いと思うから、人に話したくなるというコンセプトで書かれた本であり、この本の編集者によれば居酒屋で気分が良くなった時に話したくなる、というのが設定の様です。
酔っぱらっている時でも覚えていられるというのは、よほど印象強く残ったものに限られると思います。玉木氏により選ばれた13のテーマは全て、掘り下げたくなるようなものばかりでした。今後の私に良い目標ができたような気分にさせてくれ -
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歴史の楽しみ方は色々あります、どれが一番とかではなく、どれも面白いです。その1つが、歴史を通して眺めてみるものがあります。この本は、覇権争奪の歴史として5000年間を通して、覇権がどのように移ってきたのかが理解できるようになっています。
私が中学高校で習ってきた世界史は、西洋史が中心で、いかに欧州が優れているのかを学んできたように思いますが、なぜ欧州が世界の国境線を引けるほど強力になったのか、今一歩理解できていませんでした。
勢力を蓄えるためには、どんな場合も黎明期、成長期があります、その秘策は何であったのか、その点を知りたかった私にとっては、この本に書かれている内容は大変に参考になりまし -
Posted by ブクログ
情報という観点から世界のヘゲモニー国を見た歴史書。活版印刷で欧州の商業習慣が統一化されそれが世界に広まった、その情報が承認国家であるアムステルダムに集まりオランダのヘゲモニーが始まる。それを受け継いだイギリスは産業革命を実現したがその裏では電信を主要な航路や陸路に引いて情報を集約、またその手数料を稼いで金融帝国を作り上げた。アメリカは電話を電信網では知らせることに成功し、特にその広大な国土を文化的に統一することで国民経済を作り上げ、イギリスにはない経済力を持った。その後インターネットを解放したがそれは情報を集約することにはならず曲のない世界が出来つつある。
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Posted by ブクログ
なぜ,現在の「世界のルール」を決めたのが西洋だったのか。軍事力に裏付けされた経済という視点から,ヨーロッパ擡頭の世界史を眺める。歴史部分は良かった。でも今後を占う終章には反グローバル的な何か妙な偏りを感じた。
"日本はモノづくりを維持し、アングロサクソンとは違う資本主義を目指すことが、世界経済にもっとも大きく貢献することになると信じる"
"近代世界システムの特徴は、「飽くなき利潤追求」にある。それには「未開拓の土地」が必要とされるが、もはやそれが存在しなくなった現在、世界は労働者の賃金に「未開拓の土地」を求めていると考えている"p.204 -
Posted by ブクログ
書店で見かけて気になって買った一冊。中身の大部分に繰り返しが多いのは少し微妙だが、学問的見地よりも少しゆるく語られる序章、終章、あとがきあたりが面白い。
オランダ、イギリス、アメリカと覇権国家が移っていくグローバリゼーションの歴史が語られる。なぜ覇権を握ったのがポルトガル、スペイン、フランスでなくオランダやイギリスだったのか、その理由が分析される。明治維新で日本人が最も学んだのはイギリスだったが、この時代のイギリスがいかに世界を牛耳っていたか、その感覚がよくわかる。例えば20世紀に入る頃には、イギリスが世界中と電信で情報交換できるようになっていたというのには驚くほかない。
終章では近代ヨーロッ