玉木俊明のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
当方は新卒で保険会社に入社し、現在は総合商社系の保険ブローカーとして勤務する人間であり、金融業界に携わっている。改めて金融業について世界史的な位置付けを見直すきっかけとなったので、以下に流れをまとめる。
アジアにおける海運の発達を経て、ヨーロッパ船が世界中の交易に利用されるようになって来た。その過程でヨーロッパ内のディストリビューターとしてのイタリア船、独自海運ルートを作ったポルトガル船の後、世界を支配したのはイギリス船であった。海上保険業の発達と、銀行の無利子収益の増大を経て、世界は一度工業化の恩恵で享受したミドルクラスの恩恵を捨て、金融の不可逆的な増大を迎え、トマピケティが指摘するような -
Posted by ブクログ
ジャレドダイヤモンドやユヴァルノアハラリを彷彿とさせるようなスケール感で、タイムトリップしたかのような読書。勉強になる。ただ、タイトルの手数料とか物流とかの話を切り口にしているかというと必ずしもそうではなく、基本的には経済史である。ただ、それが良かった。
プラットフォームとは、言い換えると構造的権力。覇権国が築いたプラットフォームを使用することに対し、他国が手数料を支払う構図。この覇権を歴史的にどの文明がどういう政治力学で手にしたのか、そして手放していったのか。栄枯盛衰が語られる。
イギリスは結局のところ、世界最大の海運国家としての地位を用いて構造的権力を行使した。更に世界の電信の大半を敷 -
Posted by ブクログ
経済学者が書いた世界史で、政治上のできごとに金融経済が絡めてある。
カタカナの人物や事件の羅列が頭に入らず、世界史の教科書が苦手だった自分でも、
身近な暮らしに近いこと(食生活や貨幣、物流)の流れを追っているので、理解しやすい。
中国ふくめアジア圏を世界経済の最初の覇者と捉えた視点が面白く。
現代の中国経済の隆盛はリヴァイヴァルであるが、大航海時代から産業革命の近代英国が成し遂げた経済の覇権と異なるのは、交易上の手数料であるという指摘が興味深かった。銀行の引落やカードの利用時のように、ものの価値に関わらず、経済活動に対する手数料の源はそこなのだろうか。 -
Posted by ブクログ
西洋史を専門とする経済学教授による、ヨーロッパから見た帝国の興隆を海運・貿易の視点から読み解いたもの。ローマからポルトガル、オランダ、イギリスへと派遣が移る歴史をバルト海、北海の海運が影響していること、奴隷制による砂糖の生産よりも綿花栽培に着目したイギリスが産業革命をもたらしたこと、電信が覇権確立に極めて大きな貢献をしたことなど、今までにない切り口から論述している。研究、分析が深く、内容の濃い素晴らしい研究成果だと感じた。
「11世紀から12世紀にかけ、世界的に平均気温が1度ほど上昇する温暖期が続いた。そのため海水面の上昇が各地で生じた。これをダンケルク海進という。そのため低地地方では、洪水 -
Posted by ブクログ
近代以降の世界の権力史を、ヨーロッパを中心にまとめたもの。オランダ、イギリス、アメリカといったヘゲモニー国家をはじめ、スペイン、ポルトガルといった海洋国家、オスマン帝国や中国、マニラなどの記述もあり、広く覇権国家について理解できた。学術的だし論理的で読みやすい。
「現在のアラブ世界の問題のいくらかは、ヨーロッパ諸国が勝手に国家なるものをアラブ世界につくったがために起こっている」p24
「ポルトガル海洋帝国が育てた果実を取っていったのがイギリスであった」p27
「火器を最初に使用したのはヨーロッパ人ではなく中国人であったが、その使用をもっとも積極的に行ったのはヨーロッパ人であった。そのために、 -
Posted by ブクログ
非常に面白く感じました。
気になりましたのは筆者の誠実すぎる引用なんです。
「ウォーラステインでは・・」
きちんと引用先示して反対意見も筆者なりにNOと書いている訳ですよ。
引用先や資料先より知識を体得し血なり肉なりにしていらっしゃるにも
関わらず、いちいちこまめに書くと読んでるこちらが
なんというか「躓く」おっとっと・・・という感じで。
ズバリと筆者のストレートな強烈なパンチを出さないと
読んでる方は騙されません・・・。「そうか・・そうだよな!」とgo!go!とはなりません。
職人気質の学者さんですよね。仮構でもぐわーっと・・
読み物ですしね・・・ -
Posted by ブクログ
今でこそ、パソコンでクリックすれば、本を初めてとして生活必需品が送られてくる便利な時代となりましたが、物流を整備・維持することが覇権を握るために必要な時代がありました。
ギリシアから始まって、イタリア、オランダ、イギリス、アメリカと多くの国が覇権を握ってきましたが、彼らに共通していたのは、その時代における「世界」の物流を制していた点にありました。覇権が移ったのも、時代の変化とともに、定義される「世界」の範囲が変わってきたことにあるようです。
英国がなぜ栄えたのか、私の習ったころの歴史の授業では、産業革命だったと習いましたが、この本では、物流を制御するために彼らが制定した「航海法」にあるとし -
Posted by ブクログ
今まで何冊か覇権を取った国(17世紀中頃のオランダ、19世紀末から1次大戦勃発までイギリス、アメリカ=ウォーラーステインによればこの3つ、アメリカは二次大戦後からベトナム戦争勃発まで、p22)の解説本を読んできました、それなりに納得してきましたが、イギリスやアメリカが世界の工場の地位をなぜ明け渡すことになったのか、自分のなかで少しもやもやしたものがありました。
また東南アジアの覇権争いで、イギリスはオランダに負けたのですが、それに対して徐々に海軍力をつけてきたイギリスが逆転したと理解はしてきましたが、それだけではなく、その影には情報力を制するシステム(電信網の構築)があったことがこの本で得た -
Posted by ブクログ
情報を切り口に、オランダから始まるヘゲモニー国家の経緯と、今後の展望について論じられております。
ドイツ発の印刷技術を起点に、広告戦略など情報の集約と拡散により、商業起点をアムステルダムに築き、世界の貿易を制したオランダ。
産業革命による機械化だけでなく、電信インフラを世界中に構築し、情報をいち早く統制することにより、域外に広大な植民地を統制・管理したイギリス。
元々の広大な領土の性質上、ポテンシャルある工業生産力だけでなく、電話による音声通信の研究・発達と共に、情報の速報性を武器に、第二次世界大戦後に、世界の中心となったアメリカ。
非常にユニークな視点で、なかなか面白い書物でした。 -
Posted by ブクログ
「はじめに」に記載のある通り、本書は、経済史をベースとして、経済的覇権(=ヘゲモニー)の変遷を軸に、世界の変貌を叙述した教養書である。
一言でいうと、とても面白かった。
経済、物流、ネットワーク、それらを構築した人々の動きに焦点を当てて叙述し、経済的な覇権を握ることがすなわち政治的な覇権に繋がっていたことが浮き彫りになっている。その点が目からうろこであった。
中国はなぜ早期に経済発展を遂げ世界一の帝国であり続けたのに、近世になりヨーロッパに逆転されてしまった
のか。
グーテンベルクの活版印刷術や、大航海時代がもたらした歴史へのインパクトがどれほど大きかったか。
また特に、産業革命以降、第一