東郷和彦のレビュー一覧
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[「棘」と付き合う]近年の日本外交にとって大きな課題の一つとなっているいわゆる「歴史認識問題」。尖閣諸島、竹島、北方領土問題とも絡みながら複雑に展開するこの問題を改めて概説するとともに、その解決に向けた方策が具体的にまとめられた一冊です。著者は、外交官として欧亜局長や駐オランダ大使などを歴任された東郷和彦。
「歴史認識問題」を、空間的にも時間的にも広い枠組みの中で組み立てようとする著者の視点から得られるものは非常に多いのではないでしょうか。本書を読むと、日本国内における議論と海外(必ずしも歴史認識問題の当事者に限られず)における受け止め方に、愕然とするほどの差異があることがよくわかります。 -
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このところの国境問題について、入門書としてあちこちに取り上げられている2冊の新書がある。一つは昨年5月初版の「日本の国境問題」(孫崎享著、ちくま新書)であり、もう一つは今年2月初版の本書だ。私が本書から教えられたことは、①韓国人があれほど竹島支配に心情的にこだわるのには歴史的背景がある、②北方領土問題・尖閣諸島問題では、相手方政府のメンツをつぶす日本政府のナイーブな言動が日本の立場を極めて悪くしてきた、③ロシアと日本は対中国で利害を共有しうるのだから、北方領土問題には解決の糸口はある、という3点。 もちろん、北方四島・竹島・尖閣の三問題についての歴史的経緯も分かり易く記述されていて、読む人それ
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予想より面白くてサラサラ読めた。
沖縄と北方領土の返還交渉の振り返り、その経緯と相違点、各々の問題点。
沖縄返還時の裏チャネルを使った二元外交も、うまくいかない北方交渉も、ポイントは同じく「愛国心」と「醒めた現実主義」。
そのバランスが結果として良い方にでた沖縄と、「愛国心」が出過ぎてバランスを崩した北方四島。その領土問題の発端も違うから難しいけれど。
「まず還ってくること」に比重を置いた沖縄の現状と、「どう還ってくるか」に振れたことでまだ戻ってこない北方の実情。100%の正解なんてないだろうけど、その時々で全力の外交が行われた結果。
愛国心って大事なのかやっぱり。 -
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佐藤優さんの上司だった方で、まともなのはこの人、とこの著書でも感じさせられます。
「国益」を一歩もゆずらない、という態度は、「内側」には通用しても外交はできません。でも、狭い世界の中で、自分たちの言い分だけを「ブレず」に言い続けるだけでいると、みるみる状況が悪くなっていることが実感できます。
「左」「右」や、「チャイナスクール」などとレッテルを貼っては言い分を認めない態度は、新たな発想を閉ざし、結局は対話を開始することができない状態を固定化してしまうはずです。
歴史にifは意味のないことですが、2000年代のはじめに、あと少し、状況が正しい方向に動いていたら、と思わずにはいられませ -
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日本が抱える3つの領土問題の本質について,分析しています。
特に,元外務省官僚だった著者の東郷氏が,当時,当事者として関わった「北方領土問題」について語っているのを読むと,「領土問題は,双方の歩み寄りが,色んな形で必要なんだなあ」ということがよく分かります。「両国間には領土問題は存在しない」「もともとここはうちの土地だ」なんて言っているだけでは,外交は進まない。
日本は「武力による問題解決をしない」と決めた以上,少しずつ前進する如かないのだと思います。
ナショナリスティックな構えだけで突き進むのは大変危険です。
本書を読んで,冷静な対処が一番大切なんだなあって思いました。
そして, -
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全部で2部構成、第1部は東郷和彦さんの主張が丁寧に、こってりと。
第2部は、お2人での対談という構成となっています。
その東郷さんは元外交官、佐藤優さんの上司として、
主に北方領土問題に携わってこられた方です。
凄く頭の良い方なんだなぁ、、と感じました。
それだけに、部下としてついていく方は大変そうだ、とも。
その東郷さんの主張、読み解くのはなかなかに骨でした。
一点して、保阪さんとの対談となった第2部はわかりやすかったです。
印象に残ったのは、徹底的にリアリズムを貫いているとの点でしょうか。
外交の最前線におられただけに、なんとも説得力のある言葉として響いてきました。
“交渉で決 -
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過去の事実から、中国・韓国・ロシアとの問題にどう向き合って、
今後どう進めていくべきかを、東郷さんの解釈で語る一冊。
外務省トップの方でもあるのでこんなこと、発言があったのかの
事実に気付かされる。
中国問題では、
加害者でもあり被害者でもある日本の立場を考えた周恩来の
発言があったという事実。
また話題となる村山談話についても、
村山談話とは言っても、当時の自社さきがけの閣僚全員が
署名した閣議決定であること。決して一人歩きの発言ではない、と
いうことがどうもネトウヨは分かっていない。
なお自民党でとりまとめたのは、当時の通産大臣の橋龍である。
また、
「未来志向」の談話、とあるが「未 -
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北方領土
1年ちょい前に本書が発刊されたときには北方領土交渉の糸口は無かったが、東郷氏は2011年10月3日のラジオ「ロシアの声」でプーチンはガスプロム社長に「日本、韓国、中国などとの協力発展についての拡大的な提案を準備するよう支持した」と発言した話を紹介し、この紹介順が日本に対するメッセージになっていると言っている。
ともかく昨年の森元首相訪問、に続き安倍首相訪問で交渉再開ができることにはなった。ただし東郷氏の見立てでは四島一括返還にこだわる限りは交渉は決裂するし、メドベージェフ訪問以降北方四島のロシア化は進んでいる。少なくともプーチンは平和条約締結後に色丹、歯舞諸島の返還をするというのは -
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●は引用、→、無印は感想
領土問題(外交)は、時代とともに、歴史的背景(太平洋戦前・戦中、占領期、冷戦期、冷戦後)、経済的背景(日本のバブル期・ソ連の崩壊直後・中国の経済開放直後とそれ以降)によって変わっていく。
北方領土、竹島、せんがく諸島。同じ領土問題でも、それぞれ問題点(歴史的、領土的、領土的)が違う。そのことを理解させられる。
北方領土問題については、その歴史的事実を認識していたが、竹島、及びセンガク諸島問題がそれぞれ日露戦争(韓国併合)、日清戦争(台湾割譲)という日本帝国の植民地の歴史としての認識は欠けていた。
●私は、特に、この孫副隊長の発言には、仰天した。もしも中国が本当 -
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ネタバレ前半は東郷氏による講義形式で、後半は保阪氏との対話形式で各領土問題を解説、解決の糸口を探ります。
東郷氏は領土問題には「法的」「政治的」「歴史的」な3つの側面があると分類し、各問題に対して、前提となる史実、条約文書などをあげながら、一つずつわかりやすく解説してくれます。領土問題は「政治的」な解決しかありえなく、しかしそれが「歴史的な」問題からくるナショナリズムと結びついたときには、その問題を解きほぐし何らかの解決に導くという事にはきわめて大きな困難が伴う、と指摘します。
ナショナリズムとの結びつきという側面でとらえると
竹島>尖閣諸島>北方領土
という評価になるのでしょうか。
こと竹島に関