久保尚子のレビュー一覧
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この本は間違いなく僕の今年読んだ面白い本ベスト5に入る。とっても面白い。動物の知られざる能力、人間を超越した素晴らしい能力に圧倒される。
サメやカモノハシは微かな電場も感じとれる。コマドリやウミガメは磁場を感知できる。アシカやアザラシは目には見えなくても魚が泳いだ痕跡を追求できる。クモは飛び回るハエが生み出す気流を感じ取っている。げっ歯類やハチドリは超音波を発する。ガラガラヘビは赤外線が見える。鳥やミツバチは紫外線が見える…
動物が生きる環世界は人間の環世界とは大きく異なっている可能性がある。
すべてを感知できる動物はいないし、すべてを感知する必要のある動物もいない。だからこそ、すべての動物 -
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免疫学とその研究の発展、研究の実際的な描写とその大変さ、研究の医学への応用の試みと失敗、研究者たちの個性豊かなエピソード、そしてなにより人間の体の圧倒的な不思議と神秘
全てがバランス良く描かれていて、読みやすく、面白い。
著者自身が免疫学の教授で豊富な知識を有しながらも、膨大な未知を有する人体への謙虚な姿勢も持ち、さらにそこにワクワクする心も持っている。本書で紹介される研究者の多く(紹介されない多くの研究者もおそらく)もそうである。こういう方がのびのびと研究をすすめられる環境が世界中にあってほしいと願う。
また本書は多くの研究者へインタビューを行い作り上げているとのことで、著者のその行動 -
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胚発生、神経系の生成、循環系の構築と維持、脳の環境に合わせた成熟 - 受精卵から成体に至り、その有機体を維持する仕組みがDNAによって構築と伝承が行われているのは奇跡のように不思議なことだ。
明らかになりつつある生体の免疫システムもそういった生物の奇跡のようなシステムの中のひとつだ。本書は、免疫システムに注目し、その解明の歴史とこれまでに分かっていることについて一般読者に向けて解説をしたものだ。
免疫システムの解明がここまで急ピッチで進んだのは、それが人の健康と寿命の維持に役に立ち、産業として利益を生む可能性があるからでもある。本書でも紹介されるコルチゾールなどはその事例の一つだろう。本書 -
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牛痘、トル様受容体、樹状細胞、免疫チェックポイント…。免疫学の興りから最新の話題までを、基礎研究から医学応用に至るまで幅広く紹介した良書だ。
免疫でよく登場する、自己と体外から侵入してきた非自己を区別し、非自己を攻撃することで自己を守るという概念。分かりやすい考え方ではあるが、自己免疫疾患のように、細かい点を見ていくと例外も多くある。筆者は、免疫は多くのシステムが寄り集まったものであり、その全体像を一つの概念・原理で言い表すことは不可能とまで言い切る。本書は、その不思議な免疫学の、不思議さそのものを味わうことのできる本だ。
自分は一通り免疫学を大学で勉強した身だが、それでも、本書で初めて知るこ -
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嗅覚 タンパク質が嗅覚センサー
匂いは残留し、先に漂う
フェロモン=同じ種の個体間でメッセージを伝える化学的シグナル
味 :もって生まれた再帰的な性質 五味
匂い:経験と関連付けるまで何の意味も持たない
犬 息とは別の通路から人の2倍の嗅上皮と数10倍のニューロン
蛇 二股の舌でステレオ式に化学物質を収集する 餌を味わない
ナマズ 全身に味蕾 猫も甘いものに反応しない
視覚 オプシン:光を吸収する分子を捕まえるタンパク質
どこが良く見えるか どこを見ているか
見回すのは限られた視野しか持たない人間やハエトリグモだけの行為
家畜は水平方向を見渡せるが上下の視野は -
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動物の感覚、環世界についてのガイドブックという感じの本。
一般に感覚というのは、五感という形でまるめられているが、これはあくまで人間の主観からなるものであるということを丁寧に実例をあげて紹介と解説をしている。2025年3月発行で、訳者のあとがきが2025年1月とあるから情報としてかなりフレッシュな内容だとわかる。本文には、通説が否定されていたり、通説の裏付けが説明されていたりして、かなりエキサイティングで面白い。600ページを超えるボリュームだが、そのうちの100ページは引用や参考文献の紹介なので、あまり怯まないでも大丈夫だと思う。差し挟まれる注釈も洒脱で面白く楽しい本だ。時間を作って読み返す -
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ネタバレバッタを扱った研究者らがバッタアレルギーになって、ハエに研究対象変えた件で爆笑!バッタアレルギー!あるんだそんなのw
第一部では以下過程が書かれていた
樹状細胞の発見、動態の解明、ワクチンの開発
インターフェロンの発見と応用
サイトカインの発見
第二部では、・・・難しかった
免疫システムの複雑さ、さまざまな条件下での面気質手もの変化、見たいの薬について書かれていた。
盛り上がったのは、樹状細胞を利用したワクチンの利用
研究者スタイマンガ肝臓がんになり自分の体で臨床実験するところが熱くなった。寿命数週間から数カ月と言われていたが、4年以上も持ちこたえたのはやはり何かしら効いていたことを指名 -
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耐性菌と闘う―感染症医奮闘のドキュメンタリー
著者のマット・マッカーシーはプロ野球マイナーリーグの経験もある医師。感染症医としての著者マットが抗菌薬ダルバマイシンの治験をプロモートしながら、さまざまな人物・患者を通して成長していく過程のドキュメンタリーがメインストーリーです。そして常に、マットの近くにいるのが指導医ともいえる感染症医トム・ウォルシュ(がんの化学療法などの結果起こる重篤感染症の治療の世界的なエキスパート)。
マットがダルバマイシンの治験を企画しそのプロトコールが承認される過程においても、さまざまな困難があります。そんな話の合間に、ペニシリンから始まる抗菌薬の歴史を作ってきた人 -
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十九世紀までの花形学問は天文学や科学であった。しかし二十世紀のスターは間違いなく物理学だ。相対性理論や量子学など神の領域に触れるアイデアが無数に生まれた。
我々の実感や常識と相容れない理論上の概説を、時に哲学的に、物理学は投げかけてくる。特に量子論の時間や空間を超越した同時性や無限のパラレルワールドの可能性の提示は、あまりに壮大過ぎて途方に暮れるほど圧倒される考え方である。
本シリーズは極力平淡に書かれているものの、決して万人に完全に理解を保証するものではない(例えば本書ならひも理論など)。しかし物理学がこんなにも知的興奮に溢れ魅力的な学問なのだと感じさせるには十二分な本である。